民主党の小沢一郎元代表側にとって極めて厳しい司法判断となった。
資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡り、政治資金規正法違反(虚偽記載)に問われた元秘書3人の判決で、東京地裁は執行猶予付きの禁錮刑を言い渡した。
元公設第1秘書、大久保隆規被告は、中堅ゼネコン「西松建設」からの違法献金事件でも併せて有罪と認定された。注目されるのは、判決が小沢事務所とゼネコンの長年の関係にまで踏み込んだことだ。
岩手県や秋田県の公共工事では談合で業者が選定され、小沢事務所が決定的な影響力を持っていた。小沢元代表の秘書が「天の声」を発し、02、03年ごろからは大久保被告がその役割を担っていた--。地裁が示した「西松建設」事件の背景だ。
「陸山会」の土地購入をめぐる事件では、「水谷建設」からの1億円の裏献金が焦点となった。衆院議員、石川知裕被告と大久保被告に04年と05年、5000万円ずつ手渡したとの当時の社長の証言は他の関係者証言などと合致しており、「信用できる」と地裁は判断した。
その上で、当時「陸山会」事務担当者だった石川被告が政治資金収支報告書に虚偽の記載をした動機を判決の中でこう推認した。「小沢元代表から4億円を借り入れた時期に土地を購入したことが収支報告書で分かれば、その原資がマスコミから追及され、水谷側からの裏献金の事実も明るみに出る可能性があると恐れた」というのだ。ほぼ検察側の主張に沿った認定である。
ゼネコンとの癒着こそ両事件の本質だと判決は切り込んでいる。
事件を巡っては、「形式犯に過ぎない」との批判もあった。だが、判決は民主政治の下で政治資金収支を公開する意義を強調し、多額の虚偽記載を「それ自体悪質というべきだ」「国民の不信感を増大させた」と厳しく批判した。同感である。
4億円の原資について、小沢元代表側の説明は二転三転した。また、昨年来、小沢元代表は国会で説明をせず、特に自身の強制起訴が決まった昨年10月以後は、「裁判の場で無実が明らかになる」との姿勢を貫いてきた。もちろん、刑事責任については、来月始まる刑事裁判の場で争えばよい。とはいえ、秘書を監督する政治家としての責任はまた別だ。
判決は、元秘書3人の刑を執行猶予とした理由を「小沢事務所と企業との癒着は、被告らが小沢事務所に入所する以前から存在しており、被告らが作出したものではない」と指摘した。小沢元代表は民主党の党員資格停止中だ。自身の刑事裁判の動向も踏まえ、自らけじめをつけるべきだと改めて指摘したい。
毎日新聞 2011年9月27日 2時31分