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きょうの社説 2011年9月27日
◎元秘書に有罪 小沢氏にけじめ迫る判決
陸山会事件で小沢一郎民主党元代表の元秘書3人に有罪を言い渡した東京地裁判決は、
政治資金収支報告書への4億円の虚偽記入を認定し、その動機はゼネコンからの1億円の裏献金と結論づけた。これらは小沢氏や元秘書が否定し続けてきた事件の核心部分であり、小沢氏に政治家としてのけじめを迫る極めて重い司法判断といえる。元秘書3人の共謀認定は小沢事務所全体の責任を認めたに等しい。10月に始まる小沢 氏本人の公判の行方にかかわらず、政治責任や監督責任は免れない。それでも小沢氏は「秘書に任せていた」と責任を転嫁するつもりだろうか。 併合審理された西松建設事件では、小沢事務所が東北地方の公共工事談合に決定的な影 響力をもち、談合の本命を決める「天の声」を出していたことも認定した。小沢氏が無実を主張するなら、判決で深まったこれらの疑惑について納得いく説明を聞きたい。 陸山会事件公判では、裁判所が東京地検特捜部の不当な取り調べを認め、供述調書の大 半を不採用にした。その時点で立証は困難になるとみられたが、判決は客観的証拠から収支報告書の虚偽記入や水谷建設からの計1億円の授受について検察側主張を認めた。 判決は複雑な資金の移動について、元秘書は合理的に説明できていないとし、政治資金 の流れに一層の透明性を求めた。政治資金では菅直人前首相の献金問題も疑惑がもたれている。法の理念を厳格にとらえた今回の判決を政治家すべてが真摯に受け止める必要がある。 判決であらためて問われるのは民主党の姿勢である。小沢氏の党員資格停止処分の解除 を求める声については、国民の感覚とのズレを指摘せざるを得ない。野田佳彦首相は党内人事などで小沢グループへの配慮をにじませたが、党内融和を重視するだけでは「政治とカネ」の問題に深く切り込むことはできないだろう。 国会議員の監督責任強化を含めた政治資金規正法の改正は足踏みしたままである。「秘 書に任せていた」との言い逃れをさせない仕組みについては与野党で早急に一致点を見いだす必要がある。
◎橋爪門の復元 見学は魅力発信の好機
金沢城橋爪門の復元で、石川県が「平成の築城」に間近に触れられる見学スペースを整
備することになった。城郭復元工事は伝統の技法や豪壮な構造物などに接することができる、またとない機会である。県民のふるさと教育や観光資源に大いに活用してもらいたい。橋爪門は、金沢城三御門の中で最も格式が高いとされ、門と土塀で囲まれた「枡形」の 面積も三御門の中で最も広い。今回復元される二の門は北陸新幹線金沢開業の2014年度末までの完成を目指すが、二の丸御殿の正門にふさわしい重厚な門を忠実に復元する方針だけに、完成までの工程の多くが見どころといえる。 歴史的建造物の復元作業の見学は全国的に注目を集めており、現在も国宝の姫路城(兵 庫県姫路市)の大天守修理作業の見学が人気を集めている。金沢城では、めったに見ることができない城郭復元の工程を昨年完成した河北門に続いて、橋爪門でも見学できるのである。県も橋爪門の復元工事を観光資源として位置づけているように、「平成の築城」の工程を金沢城の魅力発信の好機として十分に生かす必要がある。 橋爪門復元の見学ステージは上屋内部の門2階部分に設けられ、上層部の木組みや屋根 、左官工事を間近に見られる構造となる。河北門復元の際には約7万8千人が県内外から見学に訪れ、戸室石を用いた石垣や漆喰(しっくい)の外壁、鉛瓦の屋根の仕上げ作業などの職人らの技に見入った。復元作業を間近に見ることによって、金沢城や加賀藩の歴史に関心を深め、整備事業への理解を深めるきっかけになった人も多かっただろう。 橋爪門の工事では一般向けの見学会や建築関係の団体を対象にした研修会の開催なども 計画しているが、河北門の際の見学効果も検証しながら、工法や整備の意義が分かりやすく伝わるように工夫を凝らしてほしい。県は河北門で実施した壁板や瓦の寄進事業を橋爪門の復元整備でも行うことにしており、多くの県民への公開が整備事業への参加意欲を促すことにもつながる。
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