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きょうのコラム「時鐘」 2011年9月27日
投書欄の月曜川柳「乱反射」に、「控えめなファーストレディに安堵(あんど)する」とあった。先の首相訪米の際の振る舞いを詠んだ句である
前の人、その前の人の夫人も、控えめとは無縁の姿が報じられた。揚げ句、支持率急降下でお役御免となったのだから、嫌でも控えめが目にとまる。「安堵」とは、言い得て妙である 国会中継のテレビから首相の声が流れてくる。これも以前とは大違い。甲高い声に散々いらついてきただけに、つじ説法で鍛えたという落ち着き払った声が際立つ チャップリンの映画「独裁者」は、ヒトラーを痛烈に批判した傑作。映画の偽者は、チョビひげも身ぶりも本物そっくりだが、大きな違いが一つある。記録映画で見る本物は重々しく響く音、映画の偽者は甲高い声で演説をした。独裁者をからかうのに「低音の魅力」は面白くない。チャップリンはそう考えたのか 控えめも落ち着きある声も、美徳の一つである。が、それを生かすも殺すも本人次第。「乱反射」には別の句が載る。「失言を恐れドジョウら泥の中」。評論家のご高説に劣らず、時事川柳からも政治が見えてくる。 |