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[29889] 【ネタ】よつばと? 妄想0話 (よつばと!×スプリガン)
Name: 真田蟲◆324c5c3d ID:fc160ac0
Date: 2011/09/24 18:21
これは別の作品「僕がお父さんなわけがない」の感想版に記載された感想から妄想が発展したものです。
内容としてはよつばと!とスプリガン(世界観)とのクロス。
オリジナルの島国、言葉、それに伴うオリジナル設定が多々あります。
よつばの父ちゃんの昔(前の仕事)を妄想したものなので、こんなの父ちゃんじゃない!という人は
ブラウザの戻るボタンでまわれ右を推奨します。
ちなみに、ジャンボもヤンダも今とは違う仕事をしています。
それも無理な人はごめんなさい。
あと、島民の言葉は発音のニュアンスの違いを出すためにカタカナ表記です。

簡単に言うと、よつばと!本編に入るまでの話を捏造してみました的なものです。
原作の4年くらい前ってところ。












――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

熱帯に点在する諸島群。
その一つに、アマニチュラと呼ばれる島があった。
言語形態事態は周辺の島とほとんど差異はないが、変わった文化を持つ島である。
この周囲の島々の多くが先祖の霊や動物の霊を神とあがめる文化を持っている。
過去の他国の侵略や布教によりキリスト教を信仰している、いわゆる土着信仰とキリスト信仰が混ざり合った状態が多い。
そんな中、他の島々と違いこのアマニチュラは独自の宗教形体を維持し続けているのだ。
他の島々と決定的に違う点。
それはこのアマニチュラにとっての神は島に生える植物であるという点である。
その植物の名前はこの島の呼び方でアマニ―。
この熱帯にしか群生していない、マングローブの一種である。

「そのアマニ―の化身に、呪具の確保ねぇ」

ぽりぽりと頭を掻きながら、いましがた船でこの島に上陸した青年は疲れた溜息をはいた。
彼の名前は小岩井。
T・F・アーカムの創設した巨大財閥、アーカム財団のエージェントである。
アーカム財団は超古代文明の遺産を封印しあらゆる権力から守護することを目的とした組織だ。
あまり外見に頓着していないのか、小岩井は髪は伸ばすままに伸ばしてぼさぼさである。
ひげもあまり日頃から剃らないのか、顎に無精ひげが生えていた。
彼はアーカム財団から、この島の遺産をS級エージェントと研究班が到着するまでの間守護するように命令されてきたのだった。
この島に存在するとされるアマニ―の化身と呪具。
それらは古代からあるとされるオーパーツの可能性があった。
何でも、島の文献によればその化身が呪具を使うと天候すら自在に操るらしい。

「とりあえずは島民に話を聞きながら拠点を作ろうや」

「おう、そうだな」

小岩井の背後から現れたのは竹田隆。
175センチという身長の小岩井と並ぶと、頭二つ三つ分は背が高い。その高さ210センチ。
その身長の高さから仲間内からもジャンボと呼ばれている。
彼も小岩井と同じく、アーカムのエージェントであった。

「俺たちはスプリガンが到着するまでの時間稼ぎだ。
 そう難しく考える必要もねえよ」

どうせ5日もすれば援軍が大量に来るんだぜ? と肩をすくめて軽口をいうジャンボ。

「そうだな、たった5日だ」

アーカム財団が誇るS級エージェント、スプリガンが来るまでの間の遺物の守護。
特に他の組織が遺物を狙っているという情報もない。
今回は何事もなく終わるだろうと、小岩井とジャンボは考えていた。

「そうそう、折角だしバカンスを楽しみましょうや」

「いたのかヤンダ」

「知らなかった」

「ずっといたよ! 船の上で一緒にトランプしたじゃん!」












よつばと? 妄想0話【父ちゃんの過去1】













島民には話が既に通っているのか、おおむね好意的だった。
この島にはあまり観光客がくることもなく、金銭的には比較的貧乏な島である。
アーカム財団は基本的に必要ならば武力をもって制圧することもあるが、それはしょせん“必要ならば”だ。
この島のように調査に協力的ならば友好的な関係を築きあげようと考えている。
財団としては、危険のあるオーパーツの封印、回収や、邪まなことに利用されるのを防ぐのを目的としているのであって、
アマニチュラのように別段危険思想はなく、かつ友好的ならば問題はない。
そもそも彼等の神として崇められている存在なら、その宗教感を含むすべてで一つの守護すべき遺物といってもいいかもしれない。
あらかじめこの島を調査するにあたり、事前に相応の金額の金をこの島に渡しているらしかった。

「かんぱーい!!」

その日は島民たちが催してくれた宴会となった。
宴会といっても、もともとが貧しい島である。料理も酒もそれほどたくさんあるわけではない。
客人をもてなすといってなけなしの食料と酒をもって祝ってくれる島の人たち。
いくら任務中とはいえ、それを拒むなど基本的に人のいい小岩井たちにはできなかった。






「あー……頭痛ぇ……」

宴会が終わり夜も更けた時間。
小岩井は一人浜辺を歩いていた。
この島の酒は量が少ない分、酔えるようにアルコール度が半端なく高かった。
そのせいか酒に弱い安田ことヤンダと、酒は普通に飲めるはずのジャンボはテントで酔いつぶれている。
他に一緒に来た仲間たちもみな同様に酔いつぶれている。
自分は酒に強いと自負していた小岩井ですら、ひどく頭が痛むのだ。
よほど強い酒だったのだろう、もう任務中にあの酒は飲めないと誓う小岩井。
彼は酔い覚ましに夜風に当たろうと浜辺にやってきたのだった。
懐に手をやってタバコを取り出す。
カチリッと音を立てて愛用のライターで火をつけた。
喉を通って煙が肺を満たす満足感を堪能し、ふーっと息を吐いた。
ゆらゆらと揺れる煙が、視界に映る月を曇らせる。
今日は満月には程遠く、月は半分しか見えなかったがそれで十分だ。
周囲に光を遮るものがないせいか、この浜辺は夜でもしっかりと明るく感じる。
空には満点の星空。嗅覚を刺激する潮の香り。

(なかなかいい島だよなぁ……うん、気にいった)

この島は外周を歩いても一時間かそこらしかかからないと聞いていた。
酔い覚ましに一周して歩いてみるのもいいかもしれない。
少なくともまだ何日かはここにいるし、任務の関係上島の土地も理解しておいた方がいい。
そう考えた小岩井は特に深くも考えずに歩きだした。

「~~、……ラ~~~……」

「ん?」

しばらくして、歩いていると彼の耳に歌声らしき声が聞こえた。
既に短くなったタバコを携帯用の灰皿に押し込みながら周囲を見渡す。
薄暗い中でも月明かりのおかげで彼にはよく見えた。
前方の流木に腰掛け、小さな子供を抱きながらあやすように子守唄を歌う少女。
その青白く包み込むような月明かりに照らされていた少女の姿は、まるで聖母のようであった。

(きれいな歌声だな……)

この島の子守唄だろうか。
あまり聞いたことのない曲調ではあるが、妙に耳に心地いい。
普段あまり音楽に興味のない小岩井でさえ、その歌を素直に美しいと思えた。
少女はこちらに気づいていないのか、その腕に抱く子供をぽんぽんと叩いてあやしながら歌を歌い続けた。
その光景を壊すのがなんだか忍びない気がして、声をかけることを逡巡していた小岩井。
やがて歌を歌い終わったところを見計らって賞賛の拍手をした。
拍手と言っても、寝ている子を起こさぬように小さなものであったが。

「ダレ?」

拍手の音で小岩井に気づいた少女が、鈴のような可愛らしい声で訊いてきた。
こちらに顔が向けられたことでその少女の顔がはっきりと見える。
アジア人らしく鼻はあまり高くないが、こぶりで整っている。
その眉は少し太めなものの、その下に見える目は大きくて吸い込まれそうな瞳をしていた。
年のころからして15~16歳といったところだろうか。
腕に抱かれた子供はこの少女の子供かそれとも妹か弟のどちらであろうか?
この島の適齢期は14歳からと聞いているし、30代でも子供を産むと聞いている。
一応日本人である小岩井にとっては少女の子と言われれば違和感があるものの、正直どちらであってもおかしくはない。

「驚かせてしまったかな?俺は小岩井っていうんだ」

「コイワイデスキャ? ワタシハ“サージャ”ッテイイマス」

「よろしくサージャ」

「?」

使い慣れていんないであろう英語を使ってたどたどしくも会話をしてくれる少女。
そんな彼女に小岩井は握手のために手を出したが、サージャには握手がよくわからなかったようだ。
そもそも彼女は今現在両手で子供を抱いている。
握手などできそうにもなかった。
そのことに気づいた小岩井は、笑いながらその手を服で拭いてごまかした。

「綺麗な歌声だったね。
 話しかけようか迷ったんだけど、歌い終わるまで邪魔しちゃ悪いと思ってさ」

「キレイ……?」

「ああ、この島の子守唄かなんかかい?
 俺はあまり音楽には詳しくないけど、君がさっき歌っていた曲はなにかこう、来るものがあったよ」

「クルモノ?」

「感動したってことさ」

「フフッ、アリギャトゴザマス」

サージャは褒められていると理解すると嬉しそうに笑った。
くすりと小さく小岩井も微笑む。

「コイワイハ、アーキャムノオキャクサマキャ?」

「そうだよ。アーカム財団の人間だ
 この島には今日ついたばかりでね、さっきまで宴会してくれてたんだけど」

「フフッ、オジサンタチエンキャイダイスキナー?
 タイヘンダタロ?」

「……まぁね」

その後もいくつか他愛のない言葉を交わした二人。
しばらくして、そろそろ子供を寝かせてくると言ってサージャが立ち上がった。

「その子は名前、なんていうんだい?」

「コノコキャ? マダナマエナイ」

「そうなの?」

「ウン、マダナマエオリテキテナイ」

おりてきてない? どういうことだ。
まだ決定していないということだろうか。
この島は生まれてすぐには子供に名前をつけない風習でもあるのかもしれない。
そんな疑問をもった小岩井ではあったが、特にこの時は深く考えなかった。
彼女の腕の中で眠る子供は、年は1歳になるかどうかといったところだ。
この薄明かりの中では正直、性別の判断はできなかった。

「ジャアナ、コイワイ!
 マタアエタラアソブ、イイナー!」

「そうだな、まだ4日もあるし会えるんじゃないか?」

「ダトイイナー!」

ご機嫌で帰っていくサージャを手を振って見送った小岩井。
彼は彼女がいなくなった流木に腰掛けると、再びタバコを取り出して吸い始めた。
それが小岩井とサージャとの初めの出会いだった。







次の日、死屍累々のテントの中で小岩井は目を覚ました。

「…………」

頭をぼりぼりと掻きながらもテントから這い出る。
寝起きで少しかすむ目で、昨日宴会前に島の周囲に設置したレーダーに何か反応がないか確認する。
少なくとも今現在、この島の周囲にはあやしい船影などはないようである。
おそらく危険性もあまりないだろうと、防護ジャケットを装備するのをやめた。
最低限のナイフと鋼糸ワイヤーとトカレフのみを装備して村を散策する。
島民たちもすでに起きているものもいるらしく、皆自分たちの仕事の準備に取り掛かっていた。


「コイワイ―!」

「おっと」

昨晩の宴会で知り合った島の子供たちが嬉しそうに寄ってくる。
一人の男の子がタックルするようにして飛びついてきた。
そのこを危なげなく受け止めながら、集まってきた子供たちに挨拶をする。

「おはよう、みんな」

「オハヨー!」

「コレキャラミンナデツリイク! コイワイモイクキャ?」

どうやらこの早朝から子供たちは釣りにいくらしい。
見れば皆手に釣竿や網を手にしている。

「いや、俺はこれから仕事があるからな
 また機会があったらその時はお願いするよ」

「ソウキャー……ザンネンナー?」

少し残念そうにしながらも、少年たちは彼に手を振り去って行った。
向かった方向からして、これから浜辺の岩場にいくのだろう。
確かにあそこならば、なかなかにいいものが釣れそうだ。
昨日の夜の散歩の時の風景を思い出しながら、そんなことを考えつつ小岩井は目的の場所に向かっていった。

「まだ酒の匂いが少し残ってるな……」

そこは、昨晩も宴会で使用されたこの島の集会場のような建物だった。
集会場とは言っても、広さ15畳ほどの一室しかない一階建だ。
日本で言う公民館にある多目的ホールな扱いとでもいえばいいのかもしれない。
昨日のドンチャン騒ぎで散らかっていた記憶があるが、今はもう綺麗に片付いていた。

「おう、おはよう小岩井さん」

「おはようございます村長」

集会場に小岩井が到着したのに気づいたのか、一人の男性が建物から出てきた。
島民の男性らしく日焼けした肌と白くなった髪。整えた口髭を生やしている。
人懐っこそうな目をした優しい老人だ。
80歳と聞いて始めは驚いた。
まだまだ60代でも通用するほど若々しく元気な爺さんである。
彼はこの島で唯一、流暢な英語を話せる人物であった。

「おや? 小岩井さんだけかね?」

「はははっ、皆昨日の酒が残っているせいか今日は使い物になりませんね。
 申しわけないが今日は俺一人になります」

「ふむ……あれしきの酒で、若いのに小岩井さん以外はだらしないのう」

「本当にすいません」

「まぁええじゃろう、まだ化身の子供はまだ来ておらん。
 中に入って待つといい」

最初の話では、小岩井を含めて数名がまずアマニ―の化身と言われている子供と接触する予定であった。
だというのにこの体たらく。
歓迎されてとはいえ任務中に酒を飲み、あまつさえ二日酔いで動けないなどとかなり恥ずかしいことではある。
しかしある種の閉鎖的な土地で行動する以上、現地の人間とのコミュニケーションはかなり重要だろう。
小岩井達に昨晩の宴会を拒否することはできなかったのだ。
しかたがなかったとはいえ、この現状を上層部に知られれば後でこってりと説教されることは目に見えている。
彼はそのことを思うと小さくため息を吐くのであった。

「それとすまぬがのう、化身とはいえまだまだ子供じゃ
 一応その武器も会う前に外しておいてもらえると嬉しいんじゃが……」

「これは失敬」

確かに村長の言う通りだ。
武器など持っていれば余計な威圧感を与えてしまいかねない。
今回は呪具は一緒には見ないことにはなっているが、それでも化身とされる子に会うのだ。
伝承では呪具を使い天候まで操ったとされている。
むやみに敵意を抱かれるような真似はしないほうがいい。
それに、そのことを抜きにしてもその子供はまだ1歳かそこららしいのだ。
そのような幼い子供に武器を装着して面会するなど、普通に考えれば駄目だろう。
納得した小岩井は腰のベルトに装着していたナイフと鋼糸のワイヤーを取り外すと部屋の隅に置いた。
トカレフはホルダーごと外して同じようにして部屋の隅においやる。
彼は無地のTシャツにカーゴパンツという完全にラフな格好になった。

「それで、その化身とされる子供ですが、名前はなんというのですか?」

「それがな、まだ名前はないのじゃよ」

「名前がない?」

そう聞いて、彼は昨晩の出会いを思い出していた。
浜辺の流木に座り歌を歌っていた少女サージャ。
彼女が抱いていた子供も名前がないと言っていた。

「この島の人間はな、アマニチュラ様に名前をつけてもらうのじゃ。
 それは化身の子でも例外ではない。」

「神様に名前をつけてもらう? どうやってですか?」

「どうやってと言われてものぉ。
 ある日突然、名前を告げる声が降りてくるとしかいえんのぉ」

降りてくる……それはそういう意味だったのか。

「む?来たようじゃの……」

村長が集会所の外に人の気配を感じて外に出た。
何か話しているのが聞こえるが、小岩井はおとなしく中で座って待つ。
やがて村長に促され5人の人間が入ってきた。
村長が先導し、一人の少女を囲うようにして4人の男が歩いてくる。
彼等は弧を描くようにして小岩井の前に座った。

「サージャ?」

「オウ、コイワイダ! マタアエタナー」

嬉しそうに笑うその少女は昨晩彼が出会った少女、サージャであった。
昨晩と同じく子供を抱いている。
あの時は夜の薄暗闇の中のせいで子供の顔はよくは見えなかった。
だが今見れば、その子が他の人間と違うことなど一目でわかる。
なぜならそのこの頭髪は緑色をしていたのだから。

「む? 君はサージャと既に知りあっとったのかの?
 なら話しは早い。この子はサージャ。
 アマニ―の化身を産んだ母親じゃよ……」

この子が母親。
ならやはりその腕に抱かれている緑の頭髪をした子供こそ……

「そしてサージャが抱いているのがその子供。
 今代のアマニ―の化身として生まれた子供じゃよ……」

緑の髪という、およそ自然ではありえない髪の毛をした子供。
その子は化身などという大層な存在であることなど我関せずといった具合に未だに寝息を立てていた。






これが、後に小岩井よつばと呼ばれる子供とその父親になる青年との出会いであった。








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