チラシの裏SS投稿掲示板




感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[29891] 【習作】協専ハンターの小規模な生活(HxH)
Name: おんどり◆0d01a232 ID:f5dba046
Date: 2011/09/24 21:01
この作品は少年漫画「ハンター×ハンター」の二次創作です。
コンセプトとして
「ハンター協会にスポットをあててみよう」
というものがあります。

原作の設定に拡大解釈や捏造を加えた世界で、協専のハンターを主人公としたものを書いてみようと思います。
せっかくの二次創作なので出来るだけ原作のキャラや土地を出していきたいですが、世界は救いませんし、原作にも影響を与えない程度のこっそりとしか関わりません。
それでもよろしればどうか皆さんのお時間をいただきたく存じます。


以下諸注意

・原作開始の3年前からスタートします。原作にかかわるのは当分先になりそうです。
・現代日本からの転生はありません。登場人物はすべてハンタ世界に生きる人々です。
・作中の文明レベルがよく分からないので、基本的には現代を基準に書いています。
・人物、地域ともにかなりの部分がオリジナルになってしまいます。
・原作を読んでいなくても楽しめるように書くつもりではありますが、説明不足なこともあるかもしれません。





[29891] 1話
Name: おんどり◆0d01a232 ID:f5dba046
Date: 2011/09/24 20:58
瞼に光を感じ、意識が上昇してくる。愛用のふとんから感じる無限の愛を振り切って体を起こす。
深呼吸を一つ、二つ。最後に限界まで息を吐いた後、すっと吸い込んで意識は完全にクリアになった。
骨よし、筋よし、目、耳よし。オーラの流れも滞りない。今日の体調は七五点といったところか。ここしばらく調子がいい。高い金を払ってマッサージをわざわざ受けたかいがあるというものだ。
悪友の引きこもりからの、押しの強い勧めだったから試してみたが、流石は一流のハンターであり、有能な施術師でもある人物の仕事ということか。

「まあ、効果が素晴らしい分だけ金もたっぷりとられてしまったけどな……」

資産に余裕はあるが、だからと言って散財ばかりしているわけにもいくまい。
今日から確か弟子をとることになっていたはずだ。他人の教育なんて面倒だが、しっかり育てていると定期的に報告するだけで長期にわたって収入が確保できる。
是非とも自立心が強くて長生きする奴にあたりたいものだ。
まずは適当に朝の諸々をおえて出勤するとしよう。


ハンター協会―――民間団体でありながら中小の国家を軽く凌駕する影響力をもつ破格の組織―――その本部が今日の俺の出勤先だ。
組織の規模が異常なら、そこに集う人もひと癖もふた癖もあるやつばかりなのだが、その本部ビルは驚くほどにまともな外観をしている。まるでオフィスビルだ。しいて特徴をあげればハンター協会のマークが大きく掲げられていることくらいだろうか。
入り口を抜けると、エントランスホールは雑多な人間で溢れていて、やはりまともなのは外観だけだ、と再認識する。どこの世界に堂々と槍をもった人間がいるオフィスビルがあるというのか。受付にライセンスを提示してさっさと目的を告げる。あまりここには居たくない。

「アレックス=シューミーだ。呼び出しを受けて出頭した」
「はい。ライセンスの確認が取れました。4階の第八多目的室に向かってください。こちらは、鍵と資料になります」


受付を過ぎて、エントランスホールの最奥にある、ライセンスか協会員証の必要な改札を通り抜けると、ぐっと人が減る。
金額の交渉をしている依頼者もいなければ、割のいい仕事にありつけないかとうろついているアマチュアハンターも入ってこれないからだ。とは言え、奇人変人の割合はもしかしたらあがっているかもしれない。
いつものように正面の通路を右に曲がって喫煙室脇の自販機でコーヒーを買い、指示された部屋に向かう。目的の部屋に入るとまだ誰もいなかった。机と椅子にホワイトボード、それと申し訳程度に観葉植物の置いてある殺風景な部屋だ。
こんな場所ではすることもないので手元の資料に目を落とす。どうやら相手が呼び出された時間はあと30分ほど先のことのようだ。
俺は昼までという以上の指示を覚えていなかったので適当に来たのだが早すぎたみたいだ。別に問題はない。コーヒーをすすりつつ資料をパラパラとめくることにする。いつものことながら、流石はグルメハンターこだわりの品らしく自販機のものとは思えないほど実にうまい。

「名前はカロリナ=シードランド、年は17、女性。つい先日、第284期ハンター試験を合格したばかりの新人ハンター。てっとり早くハンターという職業を金にするために協専ハンターになることを志望する、ねぇ」

指導員制度の適応を希望したため、それに俺が選ばれたようだ。どんな基準で選ばれたんだか。
念も知らない新米ハンターで、そっちの指導もしなきゃならんらしい。なんとも面倒くさいことだ。だが、だからこその高い報酬ともいえる。
協会はハンターの育成になかなか高い意欲をもっている。特に協専ハンターになりそうだとなれば丁寧に育てるために金も払うということだ。
それでも、実際に選ばれたハンターが熱心に指導するかどうかはまた別の問題ではある。俺は熱心に後進を指導するような人間だと評価されているということか。
だらだら資料をまくっていると、ノックの音が聞こえた。

「カロリナ=シードランドです。入ってもよろしいでしょうか?」
「許可する。入ってこい」

まだ10分以上も指定の時間まではある。どうやら早く来たみたいだ。この時間に来るってことは、少なくとも真面目そうではあるな。指導は楽なものになるかもしれない。
緊張した面持ちで、そろそろと部屋へ入ってきたのは、少し癖のある明るいセミロングの髪を後ろでひとくくりにした、大きな目が特徴的な女だった。
思ったことが顔に出易いのか、普段は明るい印象を与えそうなその顔は、わかりやすく眉が下がっており、申し訳なさそうな雰囲気が醸し出されている。

「申し訳ありません!受付の方にもう結構前からお待たせしてしまってるって聞いて。わたし、時間を間違えましたでしょうか?」
「いや、お前は遅刻してない。単に俺が早く来ただけだ」

カロリナはあからさまにほっとした様子を見せながらも、すみません、ともう一度謝ってきてから近寄ってきた。

「まあ、座れ。これから協専ハンターと指導員について説明と契約を行う。契約書にはよく考えてサインしろよ?」

自分の座っている椅子の対面の席をおざなりに示しす。俺が師匠についたときはどうだったかな……
カロリナが、失礼します、といって座るのを待って説明を始める。

「まずは、自己紹介でもするとしようか。俺はアレックス=シューミー。協専ハンターだ。今日、もし契約したならお前の指導員になる。そっちは?」
「カロリナ=シードランドです!このたび、第284期ハンター試験を合格してハンターになりました。今日からよろしくお願いします!」
「はい、よろしく。だがその挨拶はちょっとばかりまだ気が早いな。まずはこれからについて説明するとしよう」

受付で受け取っていた資料のうち、カロリアの分の資料と契約書を渡しながら概要をまとめて話す。


曰く、協専ハンターの仕事とは、協会が国や企業から受けた依頼の達成が主であり、各人の能力にあった依頼が複数振り分けられその中から希望のものを選ぶ。

曰く、協専ハンターの契約を結んだものは規定の期間内に協会からの依頼を一定数以上受けなければならない。また、協会から直接指名された依頼については最優先で受けなければならない。

曰く、協専ハンターは依頼の達成、失敗にかかわらず難度に応じた報酬を得ることができる。失敗が続いた場合は受けられる依頼の難度は低いものとなる。

曰く、協専ハンターは望むのならば協会から様々な支援を受けることができる。貸住居や訓練施設の無料開放、金銭の貸出や情報開示の優遇、指導員制度などはそのひとつである。

曰く、協専ハンターは指導員を望んだ場合、協会から指導員を派遣され、師事することができる。原則として3年間は協会から指導員に対し報酬が支払われ、指導員は被指導者に対し教育の義務を負う。



「要はハンター協会に飼われるなら優遇してやるよって話だな」
「……ちょっと率直すぎません?確かに分かりやすくはありますけど」
「気にするな。分かりやすいならいいだろう。ああ、別に協会からの依頼は協専ハンターにならなくても受けられるぞ。あと指導員の変更は、はっきりとした理由があれば可能だ」
「なるほど。あのー、考えを整理したいので、少し時間をくれませんか?」
「いいだろう。よく考えることだ」

俺の一言で表した説明に困った様な顔をして笑ったカロリナは、手元の契約書に目を通しながら考え始めた。やはり真面目なのだろう。汚い話に軽い忌避感を持っているらしい。
ただ待つのもつまらないので、改めてカロリナを観察してみることにする。160センチ後半くらいだろうか。すらりと長い手足のせいか、実際よりも背が高く見えているかもしれない。
服装は袖をロールアップしたジャケットにインナー、ホットパンツ、編み上げブーツと、ごく普通に街中で買い物でもしていそうなものだ。別に特別動きにくそうでもないのでハンターの格好として相応しいかは気にしない。
ハンターをやってる連中には、どうしてそんな格好をしているのかまるで理解できないやつらなんていくらでもいる。普通の恰好、大いに結構だ。
なにせ、これからしばらく共に行動することになるかもしれないのだから。人の背丈ほどもあるキセルを担いだグラサン男とか、常に何かのお面をかぶった奇人よりはましだろう。
益体無いことをつらつらと考えていると、あちらも考えがまとまったのか勢いよく契約書に名前を書いて印を押すと、顔をあげて手渡してくる。

「わたし、協専ハンターになります!ご指導、よろしくお願いします」
「そうか、わかった。――そうだな、これは純粋な好奇心なんだが、参考までに決めた理由を聞いてもいいか?」
「あー、えっと。その、わたし、お金をあんまりもってないんですよ。それで、そのうえ収入もちょっと……」

少し口ごもりながらも、しっかりと答えてくれるカロリナの話を聞きながら、手早く渡された契約書に不備が無いかを確認して、自分も必要箇所に署名と捺印を済ます。

「で、ですね。ハンターになれたはいいけれど、ちゃんとした訓練をした事がないんで、どんなハントするかも決めてなかったですし、それが一遍に手に入るならば、ということです」
「……なるほどな。答えてくれてありがとう。お礼に、さっそく真面目に指導するとしようかね。ちょっとそこへ立ってみてくれ」
「?――分かりました」


カロリナの様子に少し何かを隠すような気配を感じたが、まったくの嘘を言っているわけでもなさそうなのでひとまず好奇心を満足させておく。会ったばかりの人間に語れることばかりでもないだろう。
椅子から立ち上がり指定した場所に立つカロリナ。早速の指導ということだが、こんな場所でいったい何をするのか、と不思議に思ってそうな表情だ。

「なに、今からやるのは簡単なことだ。何が起こっているのか、お前はそれを見極めるだけでいい」

椅子に座ったまま、そう語る俺にますます訝しげな表情になるカロリア。ではいくぞ、そう呟いて俺は念を発動させる。
瞬間、カロリナは見事にすっ転んだ。

「きゃっ、なん、え、え、え?」

転んでも即座に体勢を立て直し、状況を把握しようとしたのは、流石にハンター試験を合格しただけのことはある。ただ当然の事ながら周囲には椅子に座った俺以外誰もいないし、糸などの仕掛けも見えない。
それなりに危機察知に自信があったのか余計に混乱してしまったようだ。だが、たったこれだけでは終わらせてはあまり意味がない。かがんで警戒体勢をとりながら周囲を探していたカロリナもう一度転ばす。
今度は一応可能性としては考えていたのか、先ほどよりもさらに速やかに体勢をととのえ、動揺も少しは抑え込んでいた。未知の攻撃を受けたというのに随分と順応が早い。どうやら優秀な弟子になりそうだ。
驚愕の眼差しでこちらを見やるカロリナに笑みをかえしながら、もう一度転ばしてやる。
その後、部屋の中を逃げ回るカロリナを何度か転がすと、今度は対処するよりも見極めることを優先したのか、カロリナは受け身もとらずなすがままにされたが、当然、非念能力者にはなにも見えない。
とうとう完全に諦めたのか、そのまま起き上がらないカロリナに声をかけてやる。


「どうだ?お前にはなにがわかった?」
「はぁ、ふう。えと、目に見えない何かで転ばされていたことと、どんなに頑張っても掴めなかったこと、ですね。糸にしては、部屋中走り周って一度も、ひっかからなかったし、正直お手上げです。落第、ですか?」
「いいや、いい線だ。」

二度目に転ばせた時にも思ったが、どうやらカロリナは未知なものを未知なものとして認めて、その上で対処を考えることができるようだ。実に柔軟で素晴らしい。ありえないことがありえない念能力者同士の戦いではその思考は大いに役立つだろう。
そんなこと考えつつ、今度は息を整えていたカロリナの全身を念で支え浮かび上がらせる。別にそこまで難しい事ではない。具現化系の系統別修行である、オーラに質量を持たせ、物質に作用させるという基本を応用しているだけだ。
具現化系は具現化する物を決めると案外あっさりと具現化してしまう能力者が多いが、その能力を使い続ける以外にも、きちんとこういった基礎能力の向上法は確立されている。
そうでなければ変化系や操作系の能力者が困ることであるし。先ほどまで散々カロリナを転ばせたのもこの技術によってだ。
もはや言葉もないカロリナの様子を見て満足に頷く。

「これは、俺たちハンターなら誰もが持つことになる力だ。もちろんお前も例外では無い。名を念という」
「念……これを、わたしも?」

茫然としつつ何か呟いているカロリナをしっかりと床に下ろし、説明を続ける。

「まあ、ハンターを続けるには必須技能だな。まずはこれをお前に叩き込む。実を言うとこれが指導員の重要な仕事の一つなんだ」
「はい!あの、わたし、こんなとんでも能力、欠片でも自分に感じたことないんですけど……」

どこかの学生のように挙手をしたカロリナが自信なさそうに言い返してくる。

「大丈夫だ。問題ない。とりあえずハンター協会が保有する訓練場で一か月ほどサバイバルをしながらゆっくりと能力の基礎を教えたいんだが。いつなら予定を一か月空けられる?」
「ハンター試験の先には予定を入れていなかったので明日からでも大丈夫です。同期の合格者のみんなとはもう打ち上げもしましたし」
「なら、三日後にもう一度ここに来い。必要なものはこっちで用意するから、お前は英気を養っておくだけでいい。三日で家と往復するのが面倒なら本部内の宿泊施設が無料で使えるから、そこを利用するといいだろう」
「はい。わかりました。あとで使用許可を申請してみようと思います」


三日後と言った瞬間ほんの少し表情のかわったカロリナだったが、宿泊施設のことを話す時には既に痕跡は消えていた。ただの気のせいだったのかもしれない。
カロリナに渡していなかった書類の内、ある一枚の書類にサインしてカロリナに差し出す。

「これは、念修行に専念させるための協会からのおこずかい。といったとこだな。半年間の依頼免除と金一封だ。受付でこれも一緒に申請するといい」
「そんなことまで……本当に念って重要なんですねー。金額もいち、じゅう、ひゃく――あのぉ、これ絶対間違ってますよ?修行するだけで逆に一千万ジェニーなんて、そんな」
「いや、間違いじゃない。ま、それだけ協会が力を入れているってことだ」
「そんな!だって、一千万ジェニーっていったらチョコロボくんが、あの、あー、すっごいたくさん買えちゃえますよ!?」
「俺にはお前の中の通貨価値基準のほうがよっぽど理解できん」

予想外の臨時収入に驚いたのか錯乱気味に興奮しているカロリナにため息をつく。簡単な計算もできなくなるほどの金額でもあるまいに。ハンターなんだからこの程度で驚かないでほしい。
というか、先ほど念で初めて転ばした時よりもおどろいていないか?若干傷つくものがある。少し落ち着くのをみはからって声をかける。今日はもう終わらせてしまおう。

「これで説明、契約、及び今後の指示まで終わったわけだが、なんか質問はあるか?」

カロリナは真剣な顔で俯いた。今までのことを反すうしているのだろう。七面倒くさい文言がならんだ契約書。念という未知の能力との出会い。思い返すのに少しくらい時間がかかるのは仕方あるまい。待ってやるとしよう。
やがて、聞きたいことが決まったのか、カロリナは短く躊躇を見せた後、勢いよく顔を上げ



「この近くでチョコロボくんが売ってるところはどこですか?」

「知るか」



あー、もう面倒くさい。金一封でさっそく買いに行くつもりなのか?次はサバイバルに持ってきていいかとか聞くんじゃあないだろうな。優秀そうな弟子の姿は虚像でただのアホだったようだ。
本当に残念そうに顔を伏せるカロリナがうっとうしい。

「以上だな。じゃあ三日後に会おう」

さっさと席を立って出口へと向かう。もう昼飯の時間はとっくに来ているのだ。アホにかまっている時間はない。

「あの、今日はありがとうございました!改めて、これからよろしくお願いします、師匠!」

……まあ、礼儀を忘れない心はあるらしい。俺は下がりきっていたカロリナの評価を少しだけ上げなおした。






――――
早速の拡大解釈として、協専ハンターを協会の斡旋を専門に受けるハンターというものから、協会専任のハンターとしてハンター協会と契約した職業としております。もちろん協専ハンターとして契約せずとも依頼をうけることはできますが多くの優遇措置があるという設定で。
原作の人物らも5巻で説明されたでしょうが、明確な目的を持っていたり、そもそも興味を持ちそうな人がいません。しいて言えば金の面でレオリオですが、彼は医者になる夢があるので。


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.00402092933655