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医療ミス有無 第三者の目

2011年09月20日

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 病院で医療行為中に患者が死亡した場合、医療ミスかどうかの判断を裁判や警察などにゆだねず、第三者の評価委員会が医療行為の是非を検証する「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」が今月、県内でも始まった。まだ適用はないが、遺族は医療ミスの有無や死因を客観的に知ることができ、医療機関は再発防止策を取ることができると期待されている。
 2日夜、佐賀市新中町の県医師会。福岡県で事業の世話人を務める福岡東医療センター研究教育部長の居石(すえ・いし)克夫医師(66)が、医師や弁護士を前に講演した。「患者は『医療は完全なもので、予期せぬ結果は医療ミス』と思っている。患者の不信感を招くと、(医療者と)コミュニケーション不足になり、悪循環だ」。中立的な機関が介入する必要性を語った。
 事業は2005年、厚生労働省の補助事業として始まり、九州では07年に福岡県で導入された。今年8月末までに、全国の10地域で145件の症例を扱った。一般社団法人「日本医療安全調査機構」が担う。
 死亡事案が起きた場合、医療機関が機構に依頼して事業が始まる。中立性を保つため、解剖は患者が死亡した所とは別の病院で行う。県内では、死体の画像診断ができる佐賀大医学部付属病院(佐賀市)のAi(エー・アイ)センターを利用することもある。結果は報告書にまとめてホームページで公開し、再発防止につなげる。費用は全て機構が負担する。
 県内での司法解剖件数の増加も、事業が始まった背景の一つだ。医療ミスによる死亡で解剖が必要な場合、警察は司法解剖で捜査に当たる。県警によると、10年の司法解剖数は62体。年々増加傾向にあるが、県内にいる嘱託解剖医は1人だけ。事業で病理解剖をすることで、司法解剖医の負担を軽くする。
 時間を短縮する効果もある。医療過誤の訴訟は判決まで数年かかることが少なくないが、事業なら平均10カ月で報告書ができる。
 評価委のメンバーには医療者も含まれるが、これまでの報告書では「電子カルテの記載が簡潔すぎる。もう少し詳細に記載した方がよい」「手技(医療技術)の改善が望まれる」など、厳しい意見もあった。
 居石医師によると、約7割の遺族が報告書に納得するという。しかし一部には、報告書を不満として訴訟になったケースもある。佐賀大医学部病因病態科学講座の徳永蔵(おさむ)教授(64)は「司法解剖では詳細な結果は全て公表されないが、事業で結果を明らかにし、医療の透明化が進むことを期待したい」と話している。
 過去の報告書は、機構のHP(http://www.medsafe.jp/index.html)で公開中。問い合わせは、佐賀支部事務局がある県医師会(0952・33・1414)へ。(伊豆丸展代)

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