みなさま、はじめまして。この河北新報の新しいオピニオンサイト「オピのおび」に執筆者の一人として参加させていただくことになりました、社会保険労務士の門田陽子です。
この仕事を始め、今秋でちょうど10年。「雇用管理」という小窓からみえる「震災後の宮城・東北」を、あくまでも私の視点で、肩肘張らずに見えたまま、感じたままに発信していきたいと思います。よろしくおねがいします。
震災後今日まで、事業主の皆様と「事業継続・雇用維持」という大きな大きな課題に取り組んできました。お陰様で私の事務所は被害が少なかったため、震災翌日から多方面からの相談をお受けしています。
今までを少し大きな単位で振り返ってみると、第1期は震災直後から4月上旬にかけてだったでしょうか。この時期、大きな被害を受けた事業主の方々は、解雇か、雇用維持か、大きく揺れ動きました。重く、難しい局面だけに、わたしも集められる情報をとにかく取りまとめ、10年の知見のすべてを投じて取り組みました。
次の第2期は4月から6月上旬でした。記録のない期間の給与計算、従業員のみなさんの協力による休業手当の支払い、雇用調整助成金の活用などに追われました。
この山を超えて続く第3期は、5月以降、今後の事業展開と雇用、もしくは一部は解雇無効の争いなどに発展しました。
そして今に至る第4期です。実はこの局面を、どう理解していいのか、わたしにとっても難解な現実が被災地には広がっています。
一言で言うとそれは、仕事を失った人がたくさんいて、働き口を探し求めている人もたくさんいるはずの被災地で、「求人を出しても応募がない」という、単純には理解しがたい現実です。
厚生労働省の発表などによると、震災翌日の3月12日から9月11日までの半年間に東北地方で離職した人は約16万人に上りました。これは昨年の1.8倍です。逆算すると、震災によって失業した人は約7万人超と推計されます。
大切な人を失ったり、住み慣れた家を奪われたり、すぐに仕事を見つけて働く心境にはなれないひともいるでしょう。ですから、単純に7万人超がすぐにでも働きたい人とはいえないかも知れませんが、それでもこれに近い数万人の人が、仕事に困っていることは想像できます。
しかしいま、多くの事業主の方々から異口同音に聞かれる嘆きは、こんな声です。
「それなりの高待遇で募集を出しても反応がない」
「職業安定所に通っている人は本当に働く気があるの?」
被災地の内外を問わず、きっと多くのみなさんが「えっ?」「本当?」と不思議に思うことでしょう。私自身もそうです。
被災地支援の一環として国は、従来の雇用保険の給付に加え、特例で給付期間を延長することで、被災者に手を差し伸べてきました。もともと60日間だった延長期間が、5月には120日に、さらに先日は被害が甚大だった地域に限り210日に再延長されました。
雇用保険は大切なセーフティーネットです。その重要性は、誰もが認めるところです。被災地でもいま、これによって救われている人がいることは否定しません。
しかしその影で、過剰な支援が人々の働く意欲さえ奪ってはいないかと危惧します。無理して働かなくても暮らしていける手厚い支援が、むしろ働かなくても生きていける世の中を作り出す方向に働いているなら、それは被災地の復興に逆行するように思えてなりません。
いま事業所から出されている求人の中には、震災により業務が増加したための増員もあります。つまり働く人が集まらなければ、被災地の復興さえ、滞りかねないのです。
津波被害が大きかった海沿いの事業所の方は、「仙台市内の求人に応募してしまったのかしら?」と悩んでいます。
この仕事を始め、今秋でちょうど10年。「雇用管理」という小窓からみえる「震災後の宮城・東北」を、あくまでも私の視点で、肩肘張らずに見えたまま、感じたままに発信していきたいと思います。よろしくおねがいします。
震災後今日まで、事業主の皆様と「事業継続・雇用維持」という大きな大きな課題に取り組んできました。お陰様で私の事務所は被害が少なかったため、震災翌日から多方面からの相談をお受けしています。
今までを少し大きな単位で振り返ってみると、第1期は震災直後から4月上旬にかけてだったでしょうか。この時期、大きな被害を受けた事業主の方々は、解雇か、雇用維持か、大きく揺れ動きました。重く、難しい局面だけに、わたしも集められる情報をとにかく取りまとめ、10年の知見のすべてを投じて取り組みました。
次の第2期は4月から6月上旬でした。記録のない期間の給与計算、従業員のみなさんの協力による休業手当の支払い、雇用調整助成金の活用などに追われました。
この山を超えて続く第3期は、5月以降、今後の事業展開と雇用、もしくは一部は解雇無効の争いなどに発展しました。
そして今に至る第4期です。実はこの局面を、どう理解していいのか、わたしにとっても難解な現実が被災地には広がっています。
一言で言うとそれは、仕事を失った人がたくさんいて、働き口を探し求めている人もたくさんいるはずの被災地で、「求人を出しても応募がない」という、単純には理解しがたい現実です。
厚生労働省の発表などによると、震災翌日の3月12日から9月11日までの半年間に東北地方で離職した人は約16万人に上りました。これは昨年の1.8倍です。逆算すると、震災によって失業した人は約7万人超と推計されます。
大切な人を失ったり、住み慣れた家を奪われたり、すぐに仕事を見つけて働く心境にはなれないひともいるでしょう。ですから、単純に7万人超がすぐにでも働きたい人とはいえないかも知れませんが、それでもこれに近い数万人の人が、仕事に困っていることは想像できます。
しかしいま、多くの事業主の方々から異口同音に聞かれる嘆きは、こんな声です。
「それなりの高待遇で募集を出しても反応がない」
「職業安定所に通っている人は本当に働く気があるの?」
被災地の内外を問わず、きっと多くのみなさんが「えっ?」「本当?」と不思議に思うことでしょう。私自身もそうです。
被災地支援の一環として国は、従来の雇用保険の給付に加え、特例で給付期間を延長することで、被災者に手を差し伸べてきました。もともと60日間だった延長期間が、5月には120日に、さらに先日は被害が甚大だった地域に限り210日に再延長されました。
雇用保険は大切なセーフティーネットです。その重要性は、誰もが認めるところです。被災地でもいま、これによって救われている人がいることは否定しません。
しかしその影で、過剰な支援が人々の働く意欲さえ奪ってはいないかと危惧します。無理して働かなくても暮らしていける手厚い支援が、むしろ働かなくても生きていける世の中を作り出す方向に働いているなら、それは被災地の復興に逆行するように思えてなりません。
いま事業所から出されている求人の中には、震災により業務が増加したための増員もあります。つまり働く人が集まらなければ、被災地の復興さえ、滞りかねないのです。
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