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社説:サイバー攻撃 国内外で連携し闘おう

 日本の防衛産業を担う中核企業への相次ぐサイバー攻撃が明らかになった。三菱重工業では、潜水艦などの生産拠点と本社などのサーバーやパソコン83台がコンピューターウイルスに感染した。

 ウイルスは、外部からの操作でパソコンから情報を盗み出すことも可能だ。「標的型」の攻撃で、海外から行われた可能性が高いという。

 IHIや川崎重工業などもサイバー攻撃を受けた。防衛機密を狙ったスパイ行為ならば、国の治安や安全保障に重大な影響を与えかねない。

 警視庁は、不正アクセス禁止法違反や業務妨害などの疑いで捜査する方針だ。攻撃者の特定と事実関係の解明に全力を尽くしてもらいたい。

 ソニーやセガなどが海外の子会社でサイバー攻撃を受け、顧客情報の流出を招いたのは記憶に新しい。警察庁や経済産業省なども昨年来、標的型のサイバー攻撃にさらされた。被害企業だけの問題ではない。政府として真剣に対応すべきだ。

 08年、米国防総省の軍事機密を扱うネットワークがウイルスに感染したのをはじめ、各国の政府機関や企業が攻撃を受けている。

 今年5月の主要8カ国首脳会議(G8サミット)では、サイバーテロ防止の必要性について首脳レベルで初めて合意し、首脳宣言にも盛り込まれた。国際社会が連携する必要性を改めて痛感する。

 警察庁は、サイバー犯罪の技術情報共有を目的に、アジア大洋州地域の治安機関を結ぶネットワークシステムを整備・運用する。サイバー犯罪の捜査技術会議も毎年開いている。昨年は、米国国土安全保障省主催の大規模サイバー攻撃を想定した訓練にも参加した。実務者レベルでの一層の連携が欠かせない。

 法整備に関しては、ウイルス作成・配布罪を新設した改正刑法が6月に成立した。欧米の主要国が加盟するサイバー犯罪条約にも早期に加盟すべきだろう。

 サイバー攻撃に対し、一義的には各官庁や企業が防御対策を講じる責任があるのは言うまでもない。しかし、攻撃側とのいたちごっこが続き、手口も高度化する中で、積極的な官民協力が欠かせない。

 そのためにもまず、被害情報を共有することが大切だ。特に今回のような防衛など国家機密に関しては、政府は速やかに情報を収集して対応すべきだ。

 警察庁は8月、国家機密の流出を防ぐため、民間企業約4000社と情報共有のネットワークを始めた。総務省や経産省も交えた官民ボードも6月から活動を始めた。しっかり取り組んでほしい。

 高度な能力を持つ専門家の育成にも力を入れてもらいたい。

毎日新聞 2011年9月26日 2時30分

 

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