台北で開かれている国際新聞編集者協会(IPI、本部・ウィーン)第60回総会で25日、東日本大震災の被災地、宮城県石巻市の地域夕刊紙「石巻日日(ひび)新聞」が特別賞を贈られた。震災による停電、輪転機の浸水といった緊急事態の中、手書きの壁新聞で被災者に情報を提供し続けた努力を「真の新聞記者」と評価した。
表彰式に駆け付けた同紙常務の武内宏之・報道部長(54)は「東北の小さな新聞社の壁新聞が世界に認められるなんて驚きだが、光栄だ。地元の期待も改めて感じている」と述べた。
同紙は震災で通常の新聞発行ができなくなっても「ペンと紙があれば何とかなる」と壁新聞を作って避難所など6カ所に張り出した。輪転機が1週間後に復旧するまで、壁新聞を6日間続けて発行。この活動は米紙でも取り上げられ、米ワシントンの報道博物館「ニュージアム」に壁新聞の現物が展示された。
IPIは、情報から断絶された被災者に、同紙が震災状況を伝えたことで「安心感を与えた」と称賛した。
同紙は現在、部数が半減し、経営は厳しいが、武内部長は「発行し続けることで復興に役立てると信じている」と語った。
同紙は1912年創刊で、来年100周年を迎える。発行地域は宮城県の石巻市、東松島市、女川町で、震災前のページ数は8ページ、発行部数は1万4000部。【台北・大谷麻由美】
毎日新聞 2011年9月25日 22時00分(最終更新 9月25日 22時28分)