【コラム】「鉄腕」よ、安らかに眠れ(下)

 彼は自分の心がありのまま受け入れてもらえない現実に大変苦しんだ。そんな中、「野球の指導者にさえなれれば…」という言葉を常に繰り返した。しかし、野球の最高の指導者を目指した故・崔元監督の将来を邪魔したのは、何と野球界ではなく病魔だった。

 今年7月、慶南高校と群山商業高校が行った「レジェンド・マッチ」は、同氏がファンの前に立つ最後の舞台となってしまった。やつれた表情に、やせ細ってしまった体格からは、その昔「鉄腕」という名を欲しいままにした選手の面影は見られなかった。普段からの自尊心の強さを思えば、到底立つことのできない舞台だった。しかし、韓国野球委員会(KBO)で審判を務める弟、チェ・スウォンさんの話を聞いて、その理由が分かった。チェさんは「兄さんは最後にユニホームを着たがっているようだった」と話した。最後に母校のユニホームを着てマウンドに立ってみたいという情熱が、竹を割ったような故・崔元監督の自尊心を曲げたのだ。

 「崔東原」という名を全国に知らしめたのは、青竜旗高校野球選手権だった。今年の大会開幕直前の7月に電話した時も、故・崔元監督は「大丈夫だ」と言っていた。声に力がなかったものの、「体調が思わしくない」などとは決して言わなかった。同氏にとって病魔との闘いは三振ではなければ本塁打のようなものだったし、勝負は「ツー・スリー」のフルカウントで相変らず進行中だったのだ。

 記者は、同氏がまた野球場で大笑いする姿を見たかった。しかし、母が握らせてくれた野球ボールを手に、天国へと上っていってしまった。

 さようなら!  崔東原。さよなら!  私の幼い頃の英雄よ。この地で成し遂げることができなかった野球の夢を、天国でぜひとも成就されることを願っています。

姜鎬哲( カン・ホチョル)スポーツ部次長

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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