【コラム】「鉄腕」よ、安らかに眠れ(上)

 数日前に息を引き取ったハンファの崔東原(チェ・ドンウォン)元2軍監督は、記者にとっては幼い頃からのヒーローだった。模範生を思わせる金縁の眼鏡をかけ、巨漢の打者から三振を奪っていくたびに、小さな胸がワクワクした。左足を胸上部まで持ち上げる躍動的な投球フォームは、どんなに真似ようとしても真似ることができなかった。韓国プロ野球が発足するずっと前から、崔東原は幼い少年を野球の虜にしてしまった。記者が毎年、東大門野球場を一人で訪れ、ノートに投手と打者の対戦成績を記録するようになったのも、ちょうどその頃からだった。

 親しい交友関係にあった故・崔元監督が大腸ガンを患ったという知らせを聞いたのは、2007年のことだった。すぐに電話を掛け、様態をうかがったが、返ってきた返事は「大したことないのに、何を言うのか」という一言だった。大腸ガンの手術を受けたことを球団側に知らせたのは、それからしばらく経ってからのことだった。

 故・崔元監督はそれ位、自尊心が強かった。他人には決して弱い姿を見せようとはしなかった。自ら望んで使用した背番号11のように、ひたすら直線を突っ走るような人生だった。真っ直ぐな性格のためか、常に障害物とぶつかった。しかし、そんな時も後戻りはせず、常に真っ向勝負に挑んだ。それはグラウンドだけのことではなく、私生活でもそうだった。よって人一倍孤独も感じた。

 ハンファという球団で夢にまで見た指導者になった同氏は、知人らと同席した酒席で野球界に対する不満を打ち明けた。「私が母校や他の学校で子どもたちを指導すると、数日後には“崔東原が監督の席を狙っている”という噂が広まってしまうんです。私にはまったくそんなつもりはないんですけどね」

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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