ちまたの旬な話題から、日本の未来像を問うテーマまで。


絵画を堪能しながら現実世界を眺めてみると

リベラル日誌
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本日は趣向を変えて、著名な絵画を使いながら話題となっているトピックに迫っていこうではないか。僕は小さい頃から絵画を鑑賞したり、自分でモノを描くことが好きだった。小中学生の時は、教科書の隅にパラパラ漫画を描いたり、教師の似顔絵を描いたりして、よく教師から小突かれたのを覚えている。そうしたいたずら心があることも変わっていないが、絵画を鑑賞する習慣も変わらず残っていて、1月に1度程度のペースで美術館に足を運ぶことにしている。とりわけ六本木にある国立新美術館には散歩がてらに立ち寄っては、画集やポストカードを購入し、帰りがけにカフェで眺める時間を楽しんでいる。

さて本題であるが、この添付作品はドガの「エトワール(踊りの花形)」である。ドガは「人は私のことを『踊りの画家』と呼ぶが私にとって踊り子は美しい衣装や動きを表現するための口実にすぎない」と画商に語ったと言われている。その言葉通り、この作品でも舞台の縁にあるフットライトを浴びたエトワール(踊りの花形)の気品あふれる優雅な動作の一瞬を見事なデッサン力で的確に捉えている。さらに衣装の描写も見事で、モノタイプとパステルを巧みに駆使して、フットライトに照らされた踊り子の衣装を、半透明の輝きと共に鮮やかに表現している。また彼は踊り子の美しさを表現するだけに留まらず、舞台裏で繰り広げられる人間模様までも冷徹に描き出しているのだ。

当時、バレリーナのパトロンになることは、上流階級の人間にとって一種のステータス・シンボルであった。当然踊り子の側にもパトロンを必要とする理由があったのだろう。パトロンの支援なしでは、公演が成り立たず踊りが踊れなかったのかもしれない。つまり、そこには純粋な愛だけではなく、憎悪も渦巻いていたに違いない。こうした悲喜劇を見逃すことなく捉えているのだ。本作品では、舞台のすそに立つ顔の見えない黒服の男がパトロン、あるいはパトロン志願者を意味している。ドガは表面上見えるバレエの美しさ(光)だけを表現することなく、現実の実態(影)を恐れることなく描いているのだ。

踊り子の世界に留まらず、人は光と影という相反するモノと共存している。先日、人気芸能人であった島田紳介氏が突然引退したことは記憶に新しいだろう。彼は多くの番組で司会者として活躍していた。豪邸に住むだけでなく、副業として行なっていた不動産事業も成功していたようで、多額の資産を保有している。また多くの女性芸能人との関係が噂され、人が羨むような輝かしい芸能生活を送っているかのように見えた。しかし、そうした光り輝く表舞台だけでなく、「反社会勢力との関係」という影の部分も持っていたのだった。好んで関係を持っていたのかもしれないし、関係を断ち切りたくでも断ち切れなかったのかもしれない。それは僕には知りえないし、また知りたいとも思わないが、彼は芸能界での成功という夢のような表舞台とその醜悪な現実という舞台裏が存在することを世の人々に改めて教えてくれた。

しかしながら光と影はあらゆる業界に存在するだろう。金融業界においても一時期「枕営業」なんて言葉がよく聞かれた時期があった。金融商品を多量に売りさばく、やり手セールスマンの社内での輝かしい実績という光の側面は、夜の営業という犠牲を伴ったものであるかもしれない。また企業内政治でも同じようなことは起きているに違いない。表面上は、ある派閥に属しているように見えても、裏で誰かを追い落とすことを画策しているなんてことは日常茶飯事として存在するに違いない。

ドガも、踊り子が厳しくもつらい稽古に励み、表舞台で輝くという光の側面だけに捉われることなく、舞台の表と裏で繰り広げられるドラマを、冷徹な観察眼で容赦なく描き出していると言えるだろう。多くの人が少なからず、光と影を抱えているはずであるが、人はある側面は見てみないフリをしているのかもしれない。絵画を鑑賞する事は、時として画家の鋭さによって、心がえぐられるような感覚に陥ることもあるだろう。また現実世界を容赦なく映し出しているように感じることもあるかもしれない。

1人1人の人間がそれぞれ違った人生を送るように、絵画1つ1つも様々なドラマを持っているいるのだ。何となく絵画を眺め、感慨にふけるのも1つの楽しみ方ではあるが、その絵画が描き出された背景や画家の心情を思い描きながら、また現実世界と対比させながら鑑賞するのも一興と言えるのではないだろうか。

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