非国民通信

未来なんてあるわけがない

隣人の生活程度は低くなっても電力消費を少なくすべきだ

2011-09-24 12:07:46 | 社会

本社世論調査:「生活程度下がっても電力消費減を」65%(毎日新聞)

 毎日新聞は9月、東日本大震災発生から半年を控え、全国世論調査を面接方式で行った。東京電力福島第1原発事故を受け、電力供給や消費のあり方を尋ねたところ、「生活程度は低くなっても電力消費を少なくすべきだ」が65%に上り、「生活程度を維持するために電力供給を増やすべきだ」の32%を上回った。今後の日本の原発については「危険性の高いものから運転を停止し、少しずつ数を減らす」が60%と最も多く、段階的な原発削減志向がうかがえる。
 
 「生活程度は低くなっても電力消費を少なくすべきだ」と回答した人を性別でみると、男性60%、女性70%。年代別では若年層の高さが目立ち、30代で71%、20代で67%と続いた。生活程度より電力消費の見直しを優先する人のうち、原発について「少しずつ数を減らす」と答えた人は66%を占めた。
 
 原発を今後どうすべきかとの設問では、「少しずつ数を減らす」(60%)に次いで、「数は増やさずに運転を続ける」(20%)、「できるだけ早くすべて停止する」(12%)、「今ある原発の運転と新設も進める」(6%)の順だった。福島第1原発事故は収束しておらず、「脱・原発依存」を目指す回答が7割に達している。

 さてブルジョワ新聞の調査によると、「生活程度は低くなっても電力消費を少なくすべきだ」と回答した人が65%に達したそうです。ちなみに回答者の内訳はと言いますと男性60%、女性70%と女性の方が多い、そして30代で71%、20代で67%と若年層の高さが目立ったとのこと。この傾向、どこかで見たような気がしますね。そうそう、小泉改革から政権交代前夜までの自民党支持率が、まさにこういう傾向でした。男性よりも女性、中年よりも若年層で自民党支持が厚かったわけですが、反原発色もまた同様のようです。


出典、ネットエイジアリサーチ - 国際平和に関する調査2011

 引用元記事にはグラフがなかったので(紙面には載っていたのでしょうか)、似たような項目のある調査からグラフを拝借してみました。それほど急ではないですが、原子力研究に対する態度もやはり若年層ほど否定的な方向へと傾きがちなようです。能力的に今の若者がダメになったと言うことはないにせよ、向いている方向は世代によって変わってきたところはあるのかも知れません。端的に言えば若い人ほど保守的で、進歩や発展というものを厭うのかな、と。

 好景気というものは基本的にどれもバブル的な要素があるもので、いずれ急落することもあるわけです。そして日本と他の国を隔てることになったのは、バブル景気であったかどうかではなく、バブル「後」の振る舞いだったように思います。一度は倒れても、また立ち上がって前へ進めばいいと考えるのか、それとも「あれはバブルだ!」と叫んで経済成長に背を向け、過去を否定するのか、取りあえず世界経済の孤児たる日本が選んだのは後者でした。

 例えば日本でも様々な公害問題が発生してきました。紆余曲折はありつつも公害を発生させない方向へ向けて努力してきたのも我々の過去ですが、今の日本で大規模な公害問題が起こったら、たぶん公害を発生させた原因企業を解体するとか、それと同種の産業を「人間と共存しない(キリッ」などと言って全否定するとか、改善や進歩ではなく謂わば「懲罰」や「討伐」へと力点が置かれるような気がしてなりません。少なくとも原子力利用に関しては、そういう方向性で突っ走っていますよね。これが日本の現代的な考え方であり、若い人ほどその傾向が強いと思えるのです。

 たぶん2ヶ月くらいは前のニュースであったと思います、もうとっくに掲載期限も切れてweb上からでは詳細を確認できないのですが、「節電しているかどうか」を問う年齢別のアンケート結果が報道されていました。それによると、年齢が高いほど実際の節電には協力的であったそうです。暑さを感じにくい高齢者が節電に走ると熱中症のリスクが飛躍的に高まるので危険な兆候だなと当時は思ったものですが、しかるに今回の世論調査と並べて考えるとどうでしょう。若い人ほど「生活程度は低くなっても電力消費を少なくすべきだ」と考え、年齢が上の人ほど自ら節電に励む、何とも奇妙な話です。まぁ、それもこれも若者優遇社会の一幕としてみれば自然なことなのでしょうか。

あの大災害は自然が私たちの暮らし方の根本に反省を迫っているのであり、ひいては私たちの文明のあり方にも再考を求めている

――毎日新聞社説

日本人のアイデンティティーは我欲。この津波をうまく利用して我欲を1回洗い落とす必要がある。やっぱり天罰だと思う

――東京都知事

今回の大震災と大津波、それに伴う原発事故は、低エネルギー社会への転換を促す天からの啓示だったのかも

――石原慎太郎に反対しているつもりのブロガー

 三者とも災害にかこつけて自説の押し売りを計るクズであることは言うまでもありませんが、もう一つ共通しているのは他人の欲望なり豊かさなりへの否定です。三者とも、他人が贅沢な暮らしをすることへの強い否定の意識に満ちあふれています。要するに、もっと清く貧しく生きよと説いているわけです。そして、こうした感覚が三者に限らず広く浸透している結果として、とりわけ若い人にほど浸透している結果として「生活程度は低くなっても電力消費を少なくすべきだ」との回答が多数を占めるに至ったような気がします。隣人の生活程度が低くなることをむしろ歓迎し、他人に慎ましい生活を「させたくて」仕方がない人たちがいるということです。

 

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5 コメント

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Unknown (ヘタレ一代)
2011-09-24 17:08:25
生まれた時から電化製品に囲まれていた若年層の節電願望が高いというのが気になりますね。なんとなく管理人さんのエントリー

「マッチョな人」

と同じような事が起きているからという気がします。不況の為、自分達がこの社会で生き残るためにあの「空気を読む」という悪習に若年層が染まろうと特に努力してきているからでしょうか。そうして皆で競って「不幸上等、差別は正義」という事を互いに強要しているのだとしたら、この国の将来には明るいものが見えないことになってしまいますね。
Unknown (毛)
2011-09-24 17:40:05
何と言いますか、この2つの選択肢自体が脱原発派の中にムードとしてある科学技術に対する強烈な不信感を共有していることを半ば前提にされているように思います。たとえば次のような主張の人はいったいどちらに当たるのでしょう。

「現状では新規の原発建設も困難であり、同時に新エネルギーによる発電も一朝一夕には上手く行かない。そこで政府は生活水準を維持しつつ電力消費の増加を抑えるために、企業や一般家庭に対して最新型のエアコンやLED型電球をはじめとした製品への買い替えに対して大胆な補助金を出すことで買い替えを促すべきである。これは同時に震災によって生じている消費控えを解消する需要喚起のための方策にもなりうる。また原発については、既存の原発について新たな安全基準を定め、その基準に沿ってできるだけ早く運転再開を進めるべきである。また新エネルギーの開発に対しても予算対策を講じ、その発展の度合いと既存の原発の使用年数の双方を見極めたうえで、電力問題を生じさせないことを前提に順次置き換えていくべきであると考える。」

私の考えがこれに非常に近いのですが、この視点は科学技術の発展に対する信頼感と、同時にその発展は決して簡単なものではない、という考えに立脚しています。平たく言ってしまえば、「すぐには抜本的な解決はできないが、時間をかけることで必ずできる」というものです。しかし毎日新聞の世論調査の2つの選択肢にはその視点が全くないですよね。言ってみれば「(技術が今のまま発展しないと考えて)縮小していく」か、「(技術が今のまま発展しないと考えて)拡大させていくか」という選択肢であり、最初から今の状況からの技術の発展というものを暗黙のうちに否定してしまっています。そしてそれは狙ってそういう選択肢にしたというより、設問を作った人をはじめ社内の人間の価値観が実際にそうなっているからなのでしょう。

昨今の脱原発派に対する違和感はヘイトスピーチやそのカルト化に対しても強く持っていますが、同時に科学・科学技術に関する話であるにもかかわらず、その視点が著しく欠けたままに話が進んでいる点にも抱いています。これからの科学技術政策をどのようにすべきかという話なのに、科学技術に関する視点を欠いたまま決められていけば、それがいい結果を招くとは到底思えません。

>小泉改革から政権交代前夜までの自民党支持率が、まさにこういう傾向でした。男性よりも女性、
>中年よりも若年層で自民党支持が厚かったわけですが、反原発色もまた同様のようです。

当時この層を「B層」と言って笑っていた人達が、今はこの層と手を携えてますよね(苦笑)
最近じゃネトウヨとも共同戦線を張っているぐらいですから、それぐらい朝飯前なのでしょうが。
Unknown (リンデ)
2011-09-24 20:10:21
仮に清く貧しく生きていく必要に迫られたとしても、時間をかけてゆっくりと慣らしていかないといけないでしょうね。
ここ二、三十年のコンピュータの進化速度並のスピードでやってしまっては、どこかで必ず無理が生じてくると思います。
ですが、今回の記事の「生活程度は低くなっても電力消費を少なくすべきだ」と言っている人々は、どれも早急に結果を求めるばかりで後先を考えていないように見えてしまいます。
Unknown (yasu)
2011-09-24 20:21:46
twitterー脱原発を唱ってる人が「人権侵害救済法案」やら「自民党の某議員に対する民主党支持の朝鮮人が非難している」などという割らせててくれる内容のツイートをしていたのが驚きでした。

管理人さんもツイッターで・・・まぁ、聞き入れない人たちに対していくら説得しても無駄でしょうし、こんなツイートがある時点で無駄だとは思いますがw
Unknown (非国民通信管理人)
2011-09-24 23:44:44
>ヘタレ一代さん

 若い世代ほど、同調圧力に弱いところはありそうですね。周りが反原発なら自分も反原発、周りが節制している中で、その輪を見出す奴はダメだみたいに…… 一見すると自分が生き延びるためにもがいているようでいて、お互いの首を絞め合っているわけです。

>毛さん

 進歩することで解決する(解決に近づく)という考え方が、受け入れられにくくなっているところがありそうですね。それは文明論的な傲慢さだと思いますが、科学技術の進歩を信じない=自分たちの世代が進歩の頂点に立っていると考えているのでしょう。そうして二元論的な選択を迫るわけで、何とも不毛な問いと言えます。

>リンデさん

 現代の生活程度(=エネルギー消費)があるおかげで、生きながらえている人だっているはずですからね。そこから懐古趣味で「生活程度を低く」していけば、当然ながら犠牲になる人だって出るわけですが、その辺が無視されがちなのが原発事故後なのでしょう。

>yasuさん

 反原発運動は左派/左翼のものと思い込みたがっている人もいるわけですが、良くも悪くも左右教頭になっているのが実態なんですよね。反原発なら何でもアリなのかと考えて欲しいところであります。

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