福島の事故を引き合いに身土不二を掲げる無神経
2011年09月24日21時23分
塩分過剰の正当化
若林さんはお塩の効用についても強調されています。しかし、日本ではお医者さんの指導で高血圧予防のためにお塩をできるだけ控えるように指導されています。お塩を取って大丈夫なのですか。塩分のバランスは非常に大切ではあるが、腑抜けと塩分の関係が全く理解出来ない。これがもし正しければ、1日の塩分摂取量が日本よりも少ない欧米諸国の人達は皆腑抜けだと謂う事になるのだが?・・・もしかしたらそれが謂いたいのかと勘ぐりたくなるほどだ。
<中略>
「塩梅(あんばい)という言葉があるでしょう。人の体を気遣うときに使いますね。お体の塩梅はどうですか、と。人間にとって塩気のバランスがとても大事なことを言っています。
最近、日本人で腑抜けの人が増えているでしょう。みんな塩気が足りないんですよ」
「昔の人は1日に30グラムほどお塩をとっていました。陰陽で言えば、塩気を持っている陽性の魚にも陽性であるお塩を振って、それを陽性の火で焼いて陽性の醤油をかけて食べていた。みんな陽性だから、それを食べている人は元気だったんですよ」魚介類の塩漬けや干物の摂取量が多くなると上部消化管がんのリスクを高めると謂う研究が複数存在*8します。冷蔵庫の無い時代の高塩分食のメリットは否定しないが、それをそのまま現代に持ち込むと謂うのは杜撰と謂わざるを得ない。
「貧乏人の子沢山という言葉もあるでしょう。たとえ貧乏でもみんな明るく元気で、今の男性のように精子が少ないなんていうことがなかったから元気な子供がいっぱい生まれた。人間の元気の源がお塩であることを再認識すべきだと思いますよ」
高血圧は塩分ではなく肉食に起因する高血圧の原因となると実は様々で、一つに原因を求める事自体がナンセンスである。塩分摂取量を減らしても血圧が下がらない人がいるのもまた事実であるが、日本人全体で見れば減塩による高血圧予防効果があるのもまた事実なのである。問題を一つに帰結させる事は問題解決にはなにも役に立たないと考える。肉を食べ過ぎるのは問題ではあるが、食べたい気持ちがあるのに全く食べない食生活もまた不自然であろう。塩分の造血作用と謂うのもまたオカシナ記述である。塩分過剰になれば、体内のナトリウム濃度を一定に保つ為、循環する血液量を増やすことで薄めようと体が反応するが、それを造血作用と謂うのなら全くのデタラメである。寧ろ、牛肉の赤みなどは血液の原材料として大事な栄養素を豊富に含み、特に吸収しやすい鉄分の補給源としては大変有用である。
『体温を上げる料理教室』(致知出版、若杉友子著) 「高血圧になるのは、お肉を食べ過ぎるからなのよ。お肉をいっぱい食べるとその副作用として甘いものが欲しくなる。これがいけないんですよ」
「お塩をたっぷり使った味噌や醤油、梅干には体温を上げ、新陳代謝を活発にする作用があります。また造血作用もあるから人間を元気にするんです。高血圧が塩分のせいというのは間違いなのよ」
因みに、食生活から高血圧の予防を考える場合には、ナトリウムだけでなくカリウムについても考えたいところである。カリウム摂取量を増やすことで降圧効果が期待できるからである。
美化された過去から学ぶものって何だろう
「例えばピーマンなんか1本の苗から300〜400個も採れるの。しかし、日本の在来種のピーマンの種から作った苗からはせいぜい数十個しか採れません。工業化された野菜を食べるのは体に良いわけがありません」若杉氏は大変質素に見える暮らしをしているのは事実なのだろう。しかし、どうしてそのような生活が出来るのであろうか?もし日本の農業の現場で昔ながらの在来種のみで生産をしていたら、果たしてどれぐらいの人を養う事が出来るのだろうか?そうして、若杉氏が謂うように地域のモノだけを食べて暮らす為に輸入をストップしたら一体どうなるのだろうか?貧しい人は必要な食物を確保出来なくなり、飢えて死んでしまうかも知れない。彼女の謂う工業化された野菜や体に合わない外国産農産品の御陰で多くの人が健康に暮らすことが出来ているのである。狭い農地から沢山の収穫が期待できる作物を造り出した多くの農業従事者・研究者の努力に対して非常に失礼な物言いであると思う。
京都の山の中で築160年の古民家に住み、一汁一菜にこだわり、日本原種の種から育てた野菜や穀物だけを育てて暮らしている。お風呂は昔ながらの五右衛門風呂だそうだ。私たちはいつの間にか、日本の知恵を忘れていることに気づかされた出会いだった。
このような主張を真に受け、日本の知恵であると結論づける記者の見識を疑いたい。
福島第一原子力発電所の事故で、日本の食料の健康と安全性が脅かされたが、それは逆に私たちが日本の良さを再認識する好機を与えてくれたと言えるのかもしれない。最後の段落で福島原子力発電所事故を引き合いに出しているが、これも問題点を認識していれば決して書かれる筈のないモノであると考える。発電所周辺の住民は現在、地元産の農作物を安心して食べる事が出来ない状態に置かれている。地元産野菜を食べたくても食べる事が出来ないような状況だ。現在の状況以上の事態が引きおこされていた場合を想像してみればどうだろう?日本の農作物を十分に供給できない場合に頼りになるのは外国からの輸入であるはずだ。
この状況で身土不二をあがめ奉るとはチャンチャラオカシイ!!この記事を読んでどらねこはとても情けない気分になった。本当に恥ずかしい・・・・
*1:食養と呼ばれる
*2:陰・陽の分類も桜沢が独自に決めたものであり、魚食も基本的に奨めていないなど、決して伝統の日本食とは謂えない
*3:しつこく突っ込むので、興味のある部分だけ読んで貰えればと思う。
*4:エネルギー摂取量のこと
*5:そのあたりの詳しい説明は過去記事に書いてありますので、興味のある方はどうぞ→http://d.hatena.ne.jp/doramao/20100511/1273576537→http://d.hatena.ne.jp/doramao/20100526/1274846466
*6:地産地消とは違うモノ
*7:実際マクロビオティックの陰陽の原理自体が呪術的なものと考えられる。そのあたりについては過去記事を参照→http://d.hatena.ne.jp/doramao/20100919/1284864498
*8:久山スタディなど。過去記事参照→http://d.hatena.ne.jp/doramao/20110708/1310112819
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