為替戦争:ドル不足の1週間、銀行が苦慮
23日午前、市中銀行の外貨調達チーム長(50)は出勤するや否や、銀行のドル調達状況をチェックし、渋い表情を浮かべた。今月に入り、ドル建て債券の発行ができないのに加え、今週には普段ドル資金を融通してくれる取引先からのドル調達も断たれ始めたからだ。思わず「得意先までこんな状況とは。金利をさらに上げようか。3カ月前まであふれていたドル資金がこれほど調達できなくなるとは」と愚痴をこぼした。
そうしていると、部下から「チーム長、金融委員会から電話です」との声が上がった。午前10時半までに金融街のソウル・汝矣島に来るようにということだった。時計をのぞくと午後9時45分。脳裏を「ドル枯渇」「リーマンショック」といった不吉な単語がよぎった。
金融委員会は同日午前、銀行の外国為替担当者を呼び、緊急状況点検会議を開いた。会議を招集した当局者は「金利や満期を問わず、最大限ドル資金を確保してほしい」と求めた。
■輸出入銀、ドル借り入れがゼロに
過去1週間にわたり、国際金融市場ではドル資金の調達が行き詰まっている。韓国輸出入銀行は先週まで毎週1億ドルずつ、投資家がドル資金を調達し、積み上げてきた。金融危機などの事態に備えた措置だった。
しかし、今週に入ると資金調達がストップした。取引のブローカーがあまりに高金利を要求し、受け入れ不能となったためだ。
市中銀行や企業は、ドル資金が不足すると、輸出入銀行や産業銀行などの政策金融機関から借り入れようとする。政策金融機関がドル資金を調達できなくなれば、後は韓国銀行(中央銀行)の外貨準備しかない。
ある市中銀行の副行長(副頭取)は現在の状況について「1週間しかもたない水筒を持ち、果てしない砂漠のど真ん中に立っている気持ちだ」と話した。銀行の実務担当者は「年末まで持ちこたえる余力はあるが、金融不安が来年まで続けば、特別な対策が必要だ」と語った。
■ドルが駄目なら円建て債券発行
企画財政部、金融委員会など関係官庁は、ドル資金不足が長期化することに備え、緊急対策を取った。韓国政府はまず、銀行と大企業がドルを調達できなければ、日本円やスイスフランなど国際的に決済が可能な他の通貨を調達するよう呼び掛けた。これを受け、鉄鋼大手ポスコは来週にも500億円前後の規模の円建て社債を発行する方向で検討している。
金融当局はまた、市中銀行に「ドル金庫」をしっかり守るよう念押ししている。欧州系銀行がドル資金不足を受け、韓国の銀行に調達を打診しているためだ。金融監督院は最近、欧州をはじめとする外資系銀行のソウル支店が銀行間取引でドルを長短期(1‐7日)で借り入れることを自粛するよう口頭で警告した。
キム・テグン記者