「最高の天気で打ち上げられた」
機材の不備や台風の影響で1カ月近く打ち上げが延期されたH2Aロケット19号機。打ち上げ期限(26日)が3日後に迫る打ち上げは、失敗した6号機などを除き比較可能な中では最も「遅い」記録となったが、澄み切った秋の青空に吸い込まれるように上昇した19号機に、関係者は胸をなで下ろした。
当初の打ち上げ予定は8月28日だったが、直前に搭載機器の設計不良が判明。続いて台風15号が接近し、計3回の延期を余儀なくされた。仮に26日を超えると、地元漁協などとの再調整が迫られ、日程はさらにずれ込むことに。
遅れるたびにかさむコストも頭痛の種だった。燃料配管の直前トラブルがあったH2A1号機は、1日1000万円以上のコスト増に見舞われた。今回は人件費を除き維持管理費のみだが、450人以上の作業員の出勤を調整しコスト抑制に努めた。延期を含めた打ち上げ費用について打ち上げ担当の三菱重工業は「競争力確保の観点から公表しない」としている。
同社宇宙事業部の並河達夫グループ長は「台風の動きが遅く、今回は特別だった」と振り返った。延期中は、作業手順書の読み合わせや、不適合事案への対応訓練を繰り返し作業員の緊張感を保ったという。
今月7日の57歳の誕生日も我慢の中で迎えたが、打ち上げ当日は雲一つない秋晴れ。打ち上げ成功を確認し、同僚と固い握手を交わした。
今年度は初の海外受注を含むあと3機の打ち上げが予定されており「とにかく成功を増やすことが大事」。安堵(あんど)の表情を少し引き締めた。【村尾哲】
毎日新聞 2011年9月24日 地方版