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【栃木】検証 児童6人死亡事故 9・28 初公判を前に(上) てんかんへの偏見
鹿沼市の国道で四月十八日朝、小学生六人が大型クレーン車にはねられ、死亡した事故で、自動車運転過失致死の罪に問われた元運転手柴田将人被告(26)の初公判が二十八日、宇都宮地裁で開かれる。県警と宇都宮地検は柴田被告が持病のてんかんで発作を起こしたことが事故原因と主張する。初公判を前に、この病気を取り巻く環境や運転免許制度など、それぞれの視点からあらためて検証する。 ◇ 「うちの子に病名を明かさないでほしい」。てんかんのある子どもたちを診察する独協医大(壬生町)の今高城治講師(41)=小児神経学=は四月の事故以降、付き添いの親からそう頼まれる機会が大幅に増えた。 「国内にてんかん患者は百万人いるといわれる。特別な疾患ではないのに、事故によって悪いイメージが広がってしまった」 子どもたちの反応も一変した。きちんと治療し、運転免許を取得しようと思っていた子どもが「自分も取って運転したら、あんなひどい事故を起こすのかな」と、不安を抱き始めたという。免許取得に対する懸念が、過剰に膨らむ。 日本てんかん協会県支部の鈴木勇二事務局長(69)は四月下旬、一本の電話を受けた。今回の事故を受け、職場に自らの持病を申告していた男性が突然、車を使う仕事から、別の部署への配置転換を告げられたという内容だった。「こんな理不尽なことがあっていいのか」。男性の母親から届いた悲痛な訴えに、鈴木事務局長の受話器を持つ手が震えた。このケース以外にも、解雇通告を受けたという看護師からの連絡が五月にあった。 職を失い、生活苦に陥る危機感から、周囲に持病を申告できない人たちがいる。柴田被告は、職場には発作で交通事故を起こした過去の経緯さえひた隠しにしていた。元勤務先の上司は「知らされていれば、クレーン車を運転する職には就かせなかった。違う仕事だってあった」と悔やむ。今高講師は「てんかんはいつ発作が起こるか分からず、患者一人で対処できる疾患ではない。周囲に隠すことは、知られることよりも有害」と警鐘を鳴らす。 今回の事故は、偏見により持病を打ち明けにくい実態を助長する危険性をはらむ。持病と適切に向き合って治療しながら、日常生活を送っている人たちが大半なだけに、鈴木事務局長は「いま一度、正しく理解してもらう契機にするしかない」と、偏見のない社会的な受け入れ基盤の重要性を訴える。 PR情報
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