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'11/9/21

「情報保全は企業任せ」 防衛省、対策でジレンマも

 最新型戦車や護衛艦、戦闘機を生産、改修する防衛産業の主力企業が標的となったサイバー攻撃。「防衛省に強制力はなく、メーカー側に情報保全をしっかりやってもらうしかない」。防衛省は情報流出の恐れがでていることに危機感を募らせる一方、民間企業に対応を委ねざるを得ないジレンマを抱えている。

 「8月中旬ごろにサイバー攻撃を受け、調査している」。防衛産業最大手、「三菱重工業」の担当者ら約10人が防衛省を訪れて報告したのは、19日夕。防衛省職員が報道でサイバー攻撃を知り、問い合わせるまで、同社から何の連絡もなかった。

 防衛省によると、情報保全が必要な防衛装備品を調達する際には、契約条項に「情報漏えいやその恐れがある場合には、防衛省に速やかに報告する」との内容が含まれている。

 しかし、三菱重工からの報告は約1カ月後。IHIからも報告はなく、防衛省幹部は「こちらができることは何もない。企業には速やかに伝えてもらうしかないのが実情だ」と企業側の対応に不信感を募らせている。

 サイバー攻撃能力を高めているとされる中国軍を意識して、自衛隊自体は近年、サイバー対処能力を強化している。2008年に「自衛隊指揮通信システム隊」を設け、今年3月には統合幕僚監部にサイバー企画調整官を設置し、サイバー攻撃への防護を担当。12年度にはシステム隊の下に「サイバー空間防衛隊」の新設を予定している。

 一方、重要な防衛情報を含んだ装備品を生産する企業をサイバー攻撃から防護することは自衛隊の任務外。別の防衛省幹部は「情報保全をより徹底するための方策を検討しなければならない。メーカー側が防護を怠れば、ペナルティーを科すことも必要になる」と強調しているが、具体策は見えていない。




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