台風15号の接近で名古屋市北部を流れる庄内川は同市守山区下志段味地区で20日午後0時50分に氾濫し、広範な浸水被害をもたらした。国土交通省中部地方整備局は、00年の東海豪雨でもあふれた同川で堤防改修工事などを実施中だが、同地区の工事完了は今年度末の予定だったため、今回の大雨には間に合わなかった。
「東海豪雨並みの大雨が降れば、こうなる可能性はあった」。中部地整庄内川河川事務所の谷田良三副所長はため息をつく。庄内川は約4時間半にわたって氾濫し段ボール製造販売会社や介護施設が浸水、高齢者らが一時建物内に取り残された。
庄内川の洪水対策は同省にとって、東海豪雨以降、喫緊の課題だった。東海豪雨で同川は同市中川区で氾濫したほか、下流にある支流の新川で堤防が決壊し同市西区、愛知県西枇杷島町(現清須市)に多大な被害をもたらした。
国交省は00年、庄内川など3河川の補修を河川激甚災害対策特別緊急事業(激特事業)に採択。5年間で約1000億円をかけ対策を実施した。その結果、被害がより大きく優先度の高かった新川の補修は完了したが、予算の関係で庄内川の堤防補修は4割程度しか進まなかった。
国交省はその後も危険度や流域の人口などを考慮し、順番に補修工事を実施してきた。だが、下志段味地区は昨年度、堤防のかさ上げ工事(高さ2メートル)に着手したばかりで、完了予定は今年度末だった。谷田副所長は「浸水被害の原因の一つは川の氾濫」と認め、「もし堤防ができていれば浸水被害を軽減できたと思う」と話す。
同事務所は21日、同地区で約180メートルにわたって高さ1メートルの土のうを積む応急措置をした。【三木幸治】
毎日新聞 2011年9月22日 2時13分(最終更新 9月22日 3時16分)