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[18495] 【ネタ】気がついたらイノベイド【ガンダム00二次・オリ主・TSあり・原作知識あり】【第2部スタート】
Name: 闇月夜の宴◆5546face ID:ffdd0e05
Date: 2011/09/24 01:01
現実逃避気味に思いついたネタを……

注意

00の二次創作です。

主人公はイノベ側で、原作知識ありです。

TSしている人もいます。

基本的にネタなので、続くかどうか分かりません。

主人公の口調が勢いで書いているので作者にもよくわかりません。

それでもいいという方はこのままお楽しみください。




※2011/9/24 お知らせ

どうも皆さんこんにちは、闇月夜の宴です。
更新停止の報を載せてから約半年、いろいろありましたね。
色々思うところがあったので、この作品の更新を再開したいと思います。

都合上、2ndシーズンと劇場版の話が入り交じったオリジナル展開となりますが、それでもいいよとおっしゃられる方は御付き合い下さい。

それでは『気がついたらイノベイド』をどうぞお楽しみください。

これからも、よろしくお願い致します。



[18495] 気がついたらイノベイド・設定という名のネタ帳?
Name: 闇月夜の宴◆5546face ID:ffdd0e05
Date: 2010/06/11 20:45
登場人物紹介(比較的重要な人物+ヒロイン候補のみ)


ヴァニタス・ヴィオレント

本作品の主人公。トラックに轢かれそうになった子供をかばって事故に遭うというベタな展開によって00世界に転生す

る。

自分がイノベイドとして転生した事を受け入れ、知りあってしまったメンバーが死ぬのをどうにかして回避しようと日

々努力している。

元となった塩基配列がグラーベと一緒で、見た目も全く同一である。差別化の為に髪型を某マクロスなFの主人公のよ

うにポニーテールにさせようと思っている。

マイスターWとして活動していた時は雰囲気に流されたのか非情な選択を選ぼうとしていたが現在激しく後悔中。

フラグを乱立しており、現在ヒロイン候補多数。そして本人は気付いてないが、リボンズの気まぐれによって人間、イ

ノベイド(性別あり)問わず子作り可能。


リボンズ・アルマーク

皆さんご存知“自称”イノベイター。本作品では某ガンダム兄弟スレの影響を受けてお茶目な部分が多々ある。

ヴァニタスの事は打算も込みで計画に組み込んでいるが、自分が変わりつつある事に気付いてない。

TS化して友情が愛情に変わるイベントを読者から希望されているが……?


沙慈・クロスロード

本作品ではもう1人の主人公として輝けるのか絶賛不明な民間人。1stシーズンでは目立った動きはないが……今後にご

期待下さい。


ルイス・ハレヴィ

ヴァニタスの活躍によって平和な日々を手に入れられるかと思われたが、もう一人の転生者によって原作同様の展開を

歩む事になってしまった薄幸の少女。

とりあえず左腕の義手化イベントはなくなったが彼女の進む先に幸せはあるのか。頑張れ沙慈。


もう一人の転生者改めリュミナス

初登場後読者から最低だの独善だの『痛い』だの言われまくっており、むしろ作者もそれを想定してキャラ作りを行っ

ている子。まさに『世界の悪意』を受け止める存在。

登場機体はまさにチートで、今後もチート化する恐れあり。ついでにラスボス確定。

モチーフは某SRWなZのラスボスだったりする。感想でtakoさんが話題に出した時には内心ビクビクしていた。


王留美

本作品の悪役ポジに立つ彼女。2ndシーズンではきっと大暴れしてくれるだろう。



絹江・クロスロード

ヒロイン候補その1。本編での扱いがあまりに不憫な為今後の展開では優遇されそうな人。

当初の構想では死亡ルートかつイノベイドの技術を用いたクローンが登場し、ヴァニタスと沙慈を悩ませる予定だった

が、作品の空気がダークシリアスになりそうだったので変更。

ちなみに『あたしの歌を聞けぇぇぇぇぇっっっっっ!!』と叫ぶ…………かもしれない(エ?


刹那・F・セイエイ

ヒロイン候補2。本名ソラ・イブラヒム。TS発覚時の読者の反応により本作品が続けられる要因となった本作品の象徴

にしてある意味女神。

日本に潜伏時はヴァンの部屋に居候しており、作品中では描かれてないがルイスとの友情フラグやヴァニタスからプレ

ゼントされたアクセサリーを大事に持っているという重要なイベントを消化している(番外編で執筆予定)。

本人はまだ気付いてないがフラグは誰よりも進行中。マリナ・イスマイールとの関係は姉妹といった感じで進んでいる

はず。


リヴァイヴ・リバイバル

最初の構想では主人公のよき友人的な立場だったはずなのだが、そのあまりのツンデレっぷりに読者にTSを希望され、

いざTSするとデレデレになってしまったヒロイン候補その3。

なんだかんだ言って主人公には甘い。同じ塩基配列を持つアニューと出会ったらどうなるのか……


ヒリング・ケア

貧乳。そしてリボンズの遊び道具となりつつあるヒロイン候補その4。まずメイド服に疑問を持てと言いたい

。以上。

ネーナ・トリニティ

第10話でフラグの立ったヒロイン候補その5。妹キャラで刹那(♀)とかぶるが、こちらは勝気系元気っ子……さぁ、ど

うなる事やら?


ティエリア・アーデ

せっかくTSしたというのに、あまりTS化を強調した描写がされてない子。まぁ、これからロックオンをめぐってフェル

トとバトる事になるのだろうが……


フォン・スパーク

外伝作品00Fの主人公にして作者のお気に入りなキャラ。

作者のお気に入り補正によりヴァニタスを差し置いてスペックが向上しており、パイロットの腕は人類最強かもしれな

い。

その特徴的な笑い声はどうやって発音するのか未だ明かされていない。あげゃげゃげゃげゃげゃ。


トリニティ

第9話で生存確定。今後はヴァンの元で活動する予定。ネーナは別項になりました。




作品オリジナルの機体


Iガンダムβ

シミュレーション上で登場した、Iガンダムに追加武装を施した機体。

戦闘力は高いものの、過剰に装備された武装に加え擬似太陽炉一基ではまかなえないほど粒子を消費する為開発は進ん

でいない。

こいつが実戦に出るとすれば、ツインドライブは必須だろう。


セファーラジエル改

アザディスタンでのミッション時にヴァニタスとリヴァイヴが搭乗した機体。

厳密に言えば改良されたのはGNセファーの方で、セファー側のコクピットがラジエルの胸部に合体する(シルエットと

してはガンダムDXとGファルコンの合体形態をイメージ)。

GNプロトビットの制御をセファー側で行う事ができるので戦略の幅は広がるが、そもそもイノベイド達はMSの操作とビ

ット系の装備を同時に扱えるのであまり意味はない。

ラジエル側にも秘密があるようだが……?


スローネヴァラヌスカスタム

ヴァニタスがマイスターWとしてトリニティと行動を共にした時に使用した機体。

基本的な武装はスローネヴァラヌスと同様だが、スローネと同様に太陽炉の始動機が装備されている。

ヴェーダには『GNW-004 ガンダムスローネフィーア』として登録されている。


スローネフィーア・サーシェスカスタム

トリニティが死亡フラグを乗り越えた為、サーシェスに乗ってもらった機体。見た目は、スローネヴァラヌス+スロー

ネツヴァイのニコイチ。
第9話ではトゥルブレンツユニットを装備していた。



プロトガルムガンダム

ガルムガンダムのプロトタイプで、カラーリングはOガンダムと同じパターンになっている。スペックは第3世代ガンダ

ムの130%といったレベルだが、この作品では初めてトランザムを実装した機体となる。
しかし、このトランザムは限界時間が5秒な上、機体にも大きな負荷がかかり擬似太陽炉だけでなくGNコンデンサーな

ども使い物にならなくなるという欠陥品である為、ビリーの手柄はなくならないはず。



謎のガンダム

第6話で初登場した黒いガンダム。

外見はエクシアに酷似しているが、青紫色の粒子を撒き散らす純正の太陽炉と本来の時間軸ではまだ使用できないはず

のトランザムを使用しているなど謎が多い。

実は第6話では高機動戦用ユニットを装備しており、シルエット的にはむしろアヴァランチエクシアだったりする。




[18495] 気がついたらイノベイド第1話【まえがきと分割】
Name: 闇月夜の宴◆5546face ID:ffdd0e05
Date: 2010/05/03 09:15










…………俺はどうやら死んでしまったらしい。



唐突に何を言いだすのかと思ってしまったあなたは悪くない。俺だっていきなりそんな事を言われたら頭がおかしいんじゃないかと思うだろう。


けれど、頭から血を流しつつ倒れている自分を空から眺めているこの状況では、自分が死ぬという事を否が応にも自覚させられてしまう。



さて、状況を簡単に説明しよう。


俺が死んだ理由は、居眠り運転をしていたトラックに引かれそうになった子供をかばって自分が引かれるという、なんともテンプレ乙といったベタな展開によるものである。



……まぁ、子供は助かっているのがせめてもの救いだ。


なんだか空に引っ張られているような感覚を意識しつつ、今までの人生を振り返る。


高校生活はオタクな趣味を持つ友達や真面目なクラスメイトのおかげで地味だが楽しいものだった。

家族も普通で、だがそれが一番大事だったのだと改めて気づく。父さん、母さん、そして姉ちゃんに妹よ……死んでしまって申し訳ない。だが、なるべく早く立ち直って欲しいと思う。




……あ、そういえば00の劇場版が見れないのか……それはちょっと勿体無いな。







あまりアニメに詳しくなかった俺が唯一見続けていたアニメが、ガンダムシリーズだった。


最新作である00は、劇場版に続くという今時の展開のおかげでグダグダになった感が否めないストーリーはまだしも、MSのデザインには純粋に惚れ込み、久しぶりにガンプラを買った程だ。

ついでに、模型誌で展開している外伝もあらかた目を通していた。





……そんな事を考えていると、目の前が光に包まれていく……死後の世界ってあるんだな。



………でも、死にたくないなぁ………

































その願い、叶えてあげるよ。











………………………へ?












++++++++








気がつけば俺は、カプセルの中にいた。




……なんだこれ。俺、死んだはずじゃなかったのか?




訳がわからずに戸惑っていると、カプセルが開き外に出れるようになる。


カプセルから出て周囲を見回すと同じようなカプセルがずらりと並べられており、その中には同じように人が入っている。中には、同じような顔をした人もいた。




そんな時、カプセルの表面に映った自分の顔を見る。


一見すると女性にも見えそうな顔と透き通るような黒い髪。


けれど、その顔には……どことなく見覚えがあった。







“目が覚めたようだね、ヴァニタス・ヴィオレント”





…………すると、頭の中に声が響く。その声は、死ぬ間際に聞いたのと同じ声………というか、アムロ。


…………………ヴァニタス・ヴィオレント?



“君の名前だよ。おっと、自己紹介がまだだったね。僕の名前はリボンズ・アルマーク……君の生みの親であり、人類を超越する存在……イノベイターさ”















……マジかよ。トラックに引かれて転生だなんてテンプレにも程があるだろ!?










++++++++


結局、あの後俺は何事もなく過ごしている。なんでこんな状況になったのかは分からないが、せっかく人生をやり直せる上にアニメの世界にいるんだ。楽しまないと損だよな。


そんなこんなで2年の月日が流れ……






















『ほらほら、ボォっとしてるとやられちゃうよっ!!』







……くそっ、あの貧乳調子こいてんじゃねぇぞ?そんな風に自信過剰だからやられるんだよ。






『誰が貧乳だゴラァァァァァッッッッッ!?!?』




……あ?なんで考えが読まれた?



『……君の思考、脳量子波でダダ漏れなんだが。いい加減、その癖を直して欲しいよ。』

「いつも済まないなリヴァイヴ。」

『あたしに言う事はないのかっ!?』

「大丈夫だヒリング。日本には、『貧乳はステータスだ、稀少価値だ』という言葉があるそうだ。むしろ、誇ってもいいくらいだぞ?」

『……………ぶっ殺すっ!!』




あ、キレたか。





現在俺が何をしているのかというと、イノベイド用の機体を作るための実戦テストを行っている。

俺の乗る機体はブラックプルトーネ。相手は、ヒリングが乗るプロトGNソードを装備したブラックアストレアと、リヴァイヴが乗るブラックサダルスード。



なぜか2対1で戦う事になっており、俺はヒリングの猛攻を避けつつリヴァイヴに攻撃をしかけていた。


……けどなぁヒリング。そんなに嫌ならリボンズに言ってちゃんと性別『女』にしてさらに胸も増量してもらえよ。戦闘用イノベイドだからって、思考が女なんだからそうした方がいいと思うぞ?




“残念だけど、それは僕が却下する。君にからかわれているヒリングを見るのは楽しいし、なにより可愛いからね。”



……リボンズさんや。アンタは自分の面白さのために半身を犠牲にするのかよ。いい性格してるなおい。



“そんなに褒めないでくれ。さすがの僕でも照れてしまうよ。”



褒めてねぇよっ!?



『くそっ、くそっ!!なんで当たらないのさっ!?』



ヒリングの焦る声が聞こえてくるが、俺からしたら当たる訳がないと言いたい。

GNソード系の武器は当たれば強力だがその大きさゆえに取り回しが難しく、俺の言葉で怒り狂ったヒリングは自分では気づいてないのかもしれないが攻撃が単調になっている。



「はい、これで終わり。」

『なぁっ!?』



隙をついてブラックアストレアのコクピットにビームライフルをつきつけると、ブラックアストレアの動きが止まる。どうやら撃墜判定が出たようだな。

まったく……いい加減学習しろよ。何の為に俺が脳量子波をわざと漏らしていると思っているんだ?



“……それに僕を巻き込むのはどうかと思うんだけど?”



甘いなリヴァイヴ。お前はヒリングと行動を共にする機会が多いんだからそこら辺しっかりしないといけないんだぜ?



“……君に負けた後のヒリングをフォローするのが大変なんだよ。まったく、ブリングとグラーベは手伝ってくれないし、ヒクサーは煽るし……”






…………あ、リヴァイヴって苦労人なのな。







++++++++






「……さっきはなかなか楽しませてもらったよ。」




シミュレーションが終わると、俺はリボンズに呼び出された。椅子に座るリボンズは、口元に笑みを浮かべっぱなしだ。


ちなみに、リボンズがなぜここにいるのかというと、あの金ピカ大使の方にはスペアボディに人格を入れて送りつけたらしい。そんなにあの大使が嫌かアンタは。



「……けどなリボンズ、ヒリングのアレはどうにかした方がいいと思うぞ?いや、戦闘用イノベイド全般に言える事だな……人間より優れているという自信が油断と慢心を生んでいる。」

「それは否定しないよ。だから、君に任せているんだ……『原作知識』を持つ君にね?」




…………いや、俺をあてにされても困るんだが。



リボンズには俺が転生者って事はバレてしまっている。まぁ、いろいろやらかしたからなぁ……脳量子波、恐るべしという所だな。




「……だが、ここから先は俺にも想像がつかないぞ?まだイオリアの計画が動いてもいないのに、変化が多すぎる。」

「そこは僕も懸念しているさ。だからこそ、イノベイター用の機体の開発を急がせているんだ。」



……今は西暦2305年。「00本編」開始まではまだ2年もある。刹那・F・セイエイはリボンズの手によってエクシアのマイスターとなる事が決定して、物語の準備は整っている。

けど、既に変化は起きている。


1stシーズンでは武装がなかったはずのトレミーがより戦艦として適した武装を追加されており、GNアームズも既にデュナメス用とエクシア用の開発が終わっている。


フェレシュテの方は変化が見られないものの……あそこにはマイスターハナヨがいる。意図的に情報を遮断する事も可能なハズだ。



「さすがに怪しい存在は見受けられないが……確実に、俺以外の原作知識持ちは存在している。」

「それを探すのは僕の役目だ。君は、君の役目を果たすんだ……イノベイターとしてのね。」



そして、椅子から立ち上がったリボンズが窓の外を眺める。俺も、リボンズの隣に立つと窓の外に視線を向ける。



そこには、アルヴァアロンと共に並んで、胸部だけがクレーンで釣り上げられているIガンダムが存在していた。



それは、Iガンダムをベースに開発されている俺専用のガンダム。そして、未だ開発が始まっていないリボーンズガンダムをより進化させる為のプロトタイプ。





俺の役目……それは、リボンズの計画を成功させる事だ。

本当なら、原作通りに進めるべきなのだろう…………だが、俺はここでイノベイドとして生まれ変わり、皆を仲間と思っている。

たとえ計画が失敗すると分かっていても……俺には、ここで出来た仲間を見捨てる事はできない。

リボンズが俺を駒として使うのならよろこんで使われてやる。これはもう『空想』じゃなくて『現実』だ……俺は、俺のやりたいようにやる。





「……そういえば、やってほしい事があるんだ。君に、日本に行ってほしい。」

「日本に?またどうしてだ?」

「君の『原作知識』では、刹那・F・セイエイは日本を拠点にしていたんだろう?なぜか、彼女がより社会に溶け込めるように保護者代わりの存在を配置してほしいとヴェーダに進言があったらしい……実働部隊と接触できるチャンスだ、君に頼みたいんだよ。」

「別に構わないが…………って待て。『彼女』?」

「どうかしたかい?コードネーム刹那・F・セイエイ。本名ソラ・イブラヒム……れっきとした少女だよ。」










……なん……だと……?















つづく?




[18495] 気がついたらイノベイド第2話【続いてしまった】
Name: 闇月夜の宴◆5546face ID:ffdd0e05
Date: 2010/05/01 15:21


予想以上に好評だったので続けてみました。けど、皆さんのご期待に添えられるかどうか……とりあえず、お楽しみください。











































……リボンズに頼まれて日本に来て1年半。元日本人(現イノベイド)という事もあってか、気候にはすぐに馴染めた。

時折仕事と称してCBのエージェント紛いの事や地上でのイノベイター用ガンダムの調整など、やるべき事は沢山ある。

だが、問題は……
























「それで、味の方は大丈夫?」

「……あぁ、いつものようにおいしいよ。」

「そう……ヴァンがおいしいって言ってくれてよかった。」

「姉さん、少し落ち着いたら?ヴァニタスさん困ってるよ。」

「姉に口答えするとはいい度胸ね沙慈……だいたい、私はあの留学生との付き合いなんて認めませんからねっ!!」

「な、なんでルイスの話が出てくるんだよっ!?」

「あ~ら、いつの間に名前で呼ぶ関係に?ついこの間まで、『ハレヴィさん』って呼んでたのにねぇ……」

「そ、それはルイスが名前で呼べって言うからで……」

「……落ち着いてくれ二人とも。」













……そう、なぜかクロスロード家と関わりを持ってしまったのだ。


きっかけは、ガラの悪いチンピラにまとわりつかれていた絹江を俺が助けた事……これまたテンプレな展開。

それだけで済めばよかったのだが、本編でも分かるように刹那が住む部屋の隣がクロスロード家だ。

そして、そこに住む俺も必然的にクロスロード家と関わりを持ってしまう訳で……今に至ってしまうのだった。

しかも、明らかに絹江がこちらに好意を持っている事が分かっているだけに(沙慈は兄のように慕ってくるし)……なんとも対応がしづらい。






この2人との関係がかつての家族を思い起こさせ懐かしいのと同時に、これから先の事を知っている俺にとっては辛い時期でもある。





……CBが活動すれば、絹江はきっとジャーナリストとしてガンダムを追うだろう。

そして……アリー・アル・サーシェスに殺されてしまう。

















その時が来た時……俺は、俺としていられるんだろうか?












++++++++










シミュレーションユニットの中に、自分の吐く息の音が響く。モニターに映るのは敵の機体。数は100。

相手はエース級のパイロットが乗った設定のフラッグが50、ヘリオンが20、ティエレンが30。



まともに戦えば、第3世代のガンダムだって無傷じゃ済まない……けれど、こんぐらいしなくちゃこの機体のテストにはならない。






「Iガンダムβ、ヴァニタス・ヴィオレント……目標を殲滅するっ!!」








機体を急加速させ、GNビームマシンガンから弾丸を撒き散らす。動きの遅かったティエレンの何体かは被弾して爆発するが、全方位から弾丸の嵐が降り注ぐ。



「いけ、フィンファング!!」



即座に背部ユニットからファングを発射し、GNフィールドを展開して攻撃に耐える。8基のフィンファングから放たれたビームは、イナクトを貫いていく。

すると、こちらに接近してくる機体が10……いずれ、オーバーフラッグ隊に任命されたパイロットのデータが反映された機体だ。

GNフィールドを解除すると、フィンファングを射出した背部ユニットが肩部にせり出し、砲身がその姿を現す。




「GNランチャー……発射っ!!」



砲身から圧縮されたGN粒子が解き放たれ、フラッグ達を飲み込んでいく……それでもなお、突撃してくるのが1体。

そのフラッグは戦闘機形態からMSに一瞬で変形すると、左腕にプラズマブレイドを構え切りかかってくる……これは、グラハム・エーカーのデータかっ!!



「だが……甘いんだよっ!!」


左腕のGNソードを展開すると、フラッグの胴体めがけて刃を突き立てる。しかし、プラズマブレイドによって若干アンテナが切り落とされてしまった……これが実戦なら問題だな。



目の前でフラッグが爆散するのを確認すると、残りの機体を一瞥する……さて、次はどうでるか……






++++++++






「……うわ、ヴァニタスの奴よくやるよね~」

「確かに……」




シミュレーションの結果を、僕とヒリングはモニターで眺めている。そこには、一騎当千の活躍を見せるガンダムの姿があった。

あの機体はたしか、リボンズが乗るガンダムのデータを収集する為に作られた機体で、過剰に武装を装備させられている……そのアンバランスな機体で、よくもまぁあそこまでできるものだ。





「……でも、リボンズはいったい何を考えているんだろうね?あんな機体、実際に作れる訳ないだろうに……」

「何しにきたのさリジェネ?アンタがここに来るなんて珍しいわね。」

「僕が興味を持っているのは彼の方さ。」



……リジェネの言いたい事もわかる。確かに、彼は僕達イノベイドの中でも異質だ。

同じ塩基配列パターンを持つグラーベ・ヴィオレントと同じように調整されたはずの彼、ヴァニタス・ヴィオレント。

その戦闘力は計り知れないものだが、彼がその異質さを見せるのは……あまりにも『人間らしい』思考をする為だ。


この前のシミュレーションでも、ヒリングはヴァニタスに翻弄されて撃墜となった。機体スペックやヒリングとヴァニタスの操縦の腕に特に差はない。

しかし、ヒリングだけではなくて僕やブリングも彼との戦いでは黒星が多い。彼と互角なのは、同じ塩基配列を持つグラーベぐらいだろう。

以前、ヴァニタスにどうして自分達が負けるのかを聞いたことがある。その時の彼の言葉は……『一旦自分がイノベイドって事を忘れろ。そうじゃなきゃ俺には勝てないぜ?』



その言葉がやけに胸に残り、以来彼を観察してきた。そんな僕だからこそ、彼の異質さが分かるのかもしれない。







彼はイノベイドでありながら、『人間』としての強さも持つ……それはもしかしたら、『イノベイター』と呼ぶに相応しい存在なのではないんだろうか?




「……まぁ、リボンズが聞いたら眉をひそめそうだけどね……」

「リヴァイヴ、なんか言った?」

「いや、なんでもないよ。」





この事は、胸の奥にしまっておこう。彼がイノベイターかどうかなんて……計画には関係のない事だ。





++++++++





……なんか、リヴァイヴの考えとかが頭に流れ込んでるんだけど……リボンズ、アンタの仕業か?


“おや?よく気がついたね。でもまぁ、ずいぶんと過大評価されているねぇ……”



それには激しく同意だ。


俺がヒリング達に勝てているのは、あいつらが潜在的に持っている人間に対しての優越感を逆手にとっているからだ。

そこら辺を克服されたら、多分負けるな。事実、グラーベ2世には通用しないし……まぁ、同じスペックでもソフトが違うから差が出てるってのもあるんだけど。よく互角に持ち込めるよな俺。



“しかし、そのあり方がリヴァイヴを惹きつけるんだろうね……イノベイドでありながらイノベイドでない君に”




……その言い方止めてくれない?俺にその気はないから。




“君は潜入任務もあるからアレだけど、リヴァイヴには性別はないよ?なんなら、リヴァイヴの性別を弄ることだって……”



アンタ、本当にラスボスかっ!?そんな事にテクノロジーを使うなよっ!?



……って、あ。




リボンズに気をとられていると、いつの間にか撃墜されてしまっていた。


スコアは84か……くそ、後もう少しだったのになぁ。






++++++++
















……そして、物語は動き出す。



















『……地球で生まれ育った、全ての人類に報告させていただきます。私達は、ソレスタルビーイング。機動兵器『ガンダム』を所有する、私設武装組織です……』





街頭テレビに映し出されるのは、CBの創設者「イオリア・シュヘンベルグ」の演説。


民衆は足を止め、その演説に戸惑いを見せている……いや、実感が湧いてないんだろうな。





「……ヴァン……」



すると、隣に居た絹江が不安そうに俺の手を握りしめてくる。ジャーナリストの勘が、何かを掴んだんだろう。





でも、俺には……笑顔を見せる事しかできなかった。







++++++++









……街頭テレビで流れた、『ソレスタルビーイング』を名乗る組織の宣言。


それを聞いたヴァンの表情は、今までに見たことのない表情で……ひどく私の心を不安にさせる。




「……ヴァン……」




私は彼の手をそっと握ると、彼は私に笑顔を見せてくれる……でも、それはいつもの笑顔じゃなくて……哀しさを押し殺したような笑顔。



どうしてそんな顔をするの?あなたは、何を隠して…いえ、知っているの?





「……それじゃ、そろそろ行こうか。」



そして、彼は私の手を握ったまま歩き出す。周りから見たら恋人同士に見えるのかもしれないけど……さっきの笑顔を見た私には、不安だけが残った。


















……ヴァン…………私では、あなたの力になる事はできないの?
















++++++++















「……君が刹那・F・セイエイだな?俺はヴァニタス・ヴィオレント、君のサポート役だ。」

「あぁ……よろしく頼む。」








…………イオリアによる宣言から数週間後、CBは積極的に活動を行っていた。

そして、俺が日本に住む事となった原因……刹那・F・セイエイ(♀)がついにやってきた。





パッと見た感じではさほど原作と印象は変わらないが、髪が若干女の子っぽくなったりしているのを見ると、やはりここがアニメの世界ではない事を思い知らされる。


けど、彼女を目の当たりにして気になるとこはそこじゃなかったりする。



「……さて、一つ質問だ。その荷物の少なさはなんだ?」

「問題ない。任務に必要な最低限の準備はできている。」




……いや、刹那さん?仮にも年頃の女の子がその荷物の少なさっておかしいでしょ。というか、会話も最低限ってダメでしょ。このガンダム大好きっ子めっ!!




「……マイスターとしての任務があるからとはいえ、君はしばらくこの地で暮らすんだぞ?当然、君の住まいとなる場所にも民間人が居る。せめて、最低限コミニュケーションはとれるようになってくれ。」

「……………………善処する。」













えぇい、プトレマイオスのクルーはどんな教育してやがるん……って、1stシーズンでそういった事に気を使っていた女性はクリスティナ・シエラぐらいか。スメラギさんは酒飲みって印象しかないし。








ただでさえこの年頃の女の子は扱いが難しいってのに……………前途多難すぎるぞこれ。





(つづく?)



[18495] 気がついたらイノベイド第3話【あげゃげゃげゃげゃ】
Name: 闇月夜の宴◆5546face ID:ffdd0e05
Date: 2010/05/21 22:00







「ただいま……ってあれ?やけに靴が多いわね……友達でも来ているのかしら……でも、いい匂い……今日はカレーなのね。」


……イオリア・シュヘンベルグによるあの衝撃的な宣言から数カ月が立ち、世界は大きく動き出した。

施設武装組織『ソレスタルビーイング』による武力介入は、彼らの宣言通りあらゆる垣根を超えて行われている。最も、行われているのは武力介入だけではなく、単純な人助けも行っているらしいんだけど。

ついこの間も、沙慈達が研修旅行で行った軌道エレベーターの居住区が事故で切り離された際にガンダム達が救助活動を行ったらしい。


「たっだいま~!!沙慈、今日はカレ……」




勢いよく部屋に入った私の思考は、目の前の光景で固まってしまう。




「あ、姉さんおかえり。」

「おっじゃましてま~すっ!!」

「すまんな絹江、邪魔しているぞ。」

「…………」



そこにいたのは、カレーの準備をしている沙慈とヴァン、そしてテーブルに座って笑顔を浮かべているルイスと、見知らぬ少女。




「……沙慈……?どういう事か説明してくれるかしら……?」

「え?……いや、見ての通り食事の準備。」

「そうじゃなくてっ!!ヴァンはまだいいとして、どうしてルイスと知らない女の子がいるのよっ!?」

「え~?そんな言い方ないじゃないですかお義姉様♪」

「あなたに義姉よばわりされる覚えはないっ!!」

「まぁまぁ……刹那については、俺から説明しよう。」




……そして、見知らぬ女の子…刹那さんについてヴァンが説明をしてくれる。

戦災孤児だった刹那さんをヴァンの友人が引き取ったらしいのだが、まだ世間を知らない刹那さんの見聞を広める為にヴァンを頼ったらしい。

友人の頼みを断る訳にもいかず、ヴァンは刹那さんをホームステイさせる事にしたんだとか。


「……だが、彼女は今までの環境のせいかひどく世間知らずでな……沙慈とルイス君の手を借りたという訳だ。」

「それで、今日は街を案内するのと一緒に色々買出しをしていたんだよ。」

「……そ、そうだったの……」



……な、なんだ……ちゃんと話を聞けば納得はいくわね……

カレーを食べながら、私は横目で刹那さんを見る。



「ねぇねぇ刹那、今度は2人でどこか買い物にいこっか?」

「……あ、あぁ……時間が作れたら……」

「それとぉっ!!女の子なんだからそういう言葉遣い禁止ぃっ!!刹那は可愛いんだから、もっと女の子らしくしないと駄目なのっ!!ね、沙慈♪」

「え、えぇっ!?急に言われても……」

「沙慈ったら、そこは賛成する所でしょっ!!」

「そ、そんなぁ……」



……まぁ、大丈夫か。


「刹那、もう少し噛んで食べろ。」

「……わかった。」



それに、ヴァンとの関係も兄妹って感じみたいだし……って、私はなんでこんな小さい子をライバル視しているのかしら……?







++++++++







「悪いなリヴァイヴ、俺のミッションに付き合ってもらって。」

『……か、勘違いしないでくれ。別に君の為ではないからな。』



……おい、反応がツンデレヒロインになってるぞ。俺にその気はないんだが?

ともかく、俺はラジエルに乗ってアザディスタンへと向かっていた。もちろん、ラジエルの頭部にはガンダムと分からぬようフェレシュテのようにセンサーマスクを装備させている。



アザディスタンへ向かう目的は2つ。俺が乗っているラジエルの稼動テストも兼ねてCBの活動を視察する事。(リボンズはあの金ピカ大使の所でこの映像を観るらしい……大丈夫か?)

そして、早い段階でのアリー・アル・サーシェスとの接触。目立った動きをしていない他の転生者が行動を起こす前に、サーシェスをこちら側に引き込んでしまおうという訳だ。


……あわよくば、絹江の命も助けられるからな。願ったり叶ったりだ。(絹江の端末にスパイウェアを仕込んでこちらに情報を流すようにしている……悪い気もするがな。)


ついでだが、リヴァイヴは改良されたGNセファーに乗っている。リヴァイヴに交渉面は任せるつもりなので、同行してくれると非常に助かるのである。





……ん?


『ヴァニタス、どうかしたかい?』

「……GN粒子が観測された。近くでガンダムが戦闘を行っているぞ。」

『……ヴェーダに確認した。フェレシュテがこの地域でミッションを行っているようだな。』


……とすると、奴か。


「リヴァイヴ、セファーラジエルにドッキングした後ステルスモードに移行……戦況を確認しに行くぞ。」

『……僕としては、このままアザディスタンに向かいたいんだが?』

「今活動を行っているフェレシュテのガンダムマイスターは人間の中でも『規格外』の奴だ。奴の戦闘パターンがとれれば、お前達の訓練にも役に立つ。」

『君がそこまで言うのなら興味が沸くな……いいだろう。GNセファー改、ドッキングモード』



リヴァイヴの言葉が響くとGNセファーが二つのユニットに分離し、後部ユニットが変形してラジエルの背中にドッキングする。

すると、バックパックとなった後部ユニットからラジエルの肩部をまたぐようにアームが展開されて胸部を覆うとそこにGNセファーの前部ユニットが合体する。


……よし、問題は特にないな。


改良されたセファーラジエルは、GNプロトビットの制御をセファー側のパイロットに任せる事ができる為より柔軟な戦闘を可能にしている。

まぁ、通常のGNセファーよりコストがかかる上にぶっちゃけイノベイドな奴らには意味のない機能なんだけどな……なぜそんな機能をつけたのかは今はまだ俺とリボンズしか知らなくていい事だ。



「……それじゃ、会いに行くとしますか。」



ラジエルの装甲表面にステルス迷彩を展開すると、俺は高度を落として雲に隠れるように地上にカメラを向ける。

しばらくカメラを動かしていると、GN粒子による電波状態の異常が確認されたのでそこに焦点を合わせた。





『……これが、人間の仕業……だと……?』



やっぱりリヴァイヴは驚くか。まぁ、俺も実際に見てびっくりしてるんだけどな。





映し出された映像は、人革連のものと思われるMSの残骸。そして、指揮車が今まさにビームに打ち抜かれる瞬間。

それを行っていたのは……血に濡れたかのように全身を紅く染めた、エクシアに似た機体。


ガンダムアストレアタイプF。フェレシュテが運用するガンダムの一つで、現在のマイスターはフォン・スパーク。

かつて独力でCBの痕跡を見つけ出し、最初のグラーベ・ヴィオレントと戦闘を行って生き残った00で最も恐るべき『人間』。

外伝で描かれていた奴は、もはや超人と呼ぶに相応しいだろう……いくら爆薬の量が必要最低限だったとはいえ、頚動脈を爆破されてMSを操縦するとか化物過ぎる。




そんな事を考えていると、アストレアFがこちらに向けてビームライフルを構えるのが視界に入る。


…………はあっ!?



『ヴァニタスッ!!』

「くっ!!」



間一髪でビームを回避し、そのまま雲の中に隠れる……なぁ、リヴァイヴ?ステルス迷彩はちゃんと機能していたよな?


『あぁ……それに、太陽光で地上に影ができないように気を付けた位置にいたんだ……間違いなく、あの機体のセンサーには僕達は発見できていないはずだ。』



つまり、奴は勘でこっちに攻撃したんだよな………フォン・スパーク、お前はどこの野生児だおい。






++++++++





「……ちっ、避けられたか。」

【センサーニ反応ナシ、センサーニ反応ナシ!!敵機確認デキズ、敵機確認デキズ!!】

「本当にそう思うかハナヨ?」

【センサーニ反応ナシ!!センサーニ反応ナシ!!帰還、帰還!!】

「……はっ、わぁったよ。」



オレ様はアストレアを動かすと、合流ポイントへ移動を開始する。どうやら、オレ様の戦いを見てた奴らはガンダムのセンサーすら誤魔化したようだからなぁ……これ以上追っても無駄だろう。


……あの違和感はよぉく知っている。あれは、オレ様がCBにスカウトされる前に見つけた違和感とまったく同種のものだ。

『まったく痕跡を残さない、完璧すぎるが故の違和感』……あんなのができるのは、あの黒髪のニイちゃんだけだと思ってたんだがな……




「まぁいいさ。オレ様が楽しめるんならな……あげゃげゃげゃげゃげゃげゃ!!」








++++++++




『……しかし、なかなか奇抜なミッションだね。』

「それには同感だな。まさか、非武装とは……」



俺達は今、上空でアザディスタン王宮の前に現れたエクシアを眺めていた。

原作でも印象的なシーンではあったが、こうして生で見るといろいろ凄まじいな。



サーシェスとの接触は成功し、奴に俺達への興味を持たせる事は成功した。これで、原作よりも早いタイミングで奴を引き入れる事は可能なはず……


とすると、残りはスローネか。ハレヴィ家への襲撃は止めたいんだけどなぁ……最悪、リボンズに介入してもらうか。

おそらく、他の転生者も介入はしてくると思うが……今まで目立った動きをしていないから不気味すぎるな。





だが、相手の行動から考えてCB側についているのは明確だ……ならば、2ndシーズンの事も見据えてこちらの戦力を削る事はやってくるはず。

ルイスが戦場にでなければ沙慈が戦場に出る理由もないしな……願わくば、あの3人には平和な日常を歩んでほしい。


そう思うのは……間違っているんだろうか?








(つづく?)



[18495] 気がついたらイノベイド第4話【刮目せよ?】
Name: 闇月夜の宴◆5546face ID:ffdd0e05
Date: 2010/05/04 20:01


……アザディスタンでのミッションから数日後、俺はイノベイター組が拠点にしているコロニーに訪れていた。

絹江達には長期の出張、刹那にはCBのメンバーと接触すると言っておいたが……まぁ、信じてくれるだろう。

しかし、なぜルイスの母親はクロスロード家にいるんだか……絹江は絹江で最近家に帰ってないみたいだしな。



「やぁ、よく来てくれたねヴァニタス。」

「それで、わざわざ俺を呼び出したのはどういう事だ?」

「もちろん、君にしかできないミッションを頼む為だよ……まずは、これを見てくれ。」



すると、リボンズの後ろにあったモニターに映像が映し出される。


「……これは……」


それは、格納庫のハンガーに固定された白銀のMS。

全体的なシルエットはジンクスに似ているが、パーツ単位で見てみればスローネ系列の機体という事が分かる。

なにより頭部デザインはゼータガンダムのようなフェイスに変更されており、より禍々しさを増している。



「GNX-509TC・スローネヴァラヌスカスタム……廃棄されるはずだったものに太陽炉始動装置を装備させた特別仕様の機体さ。」

「……あの金ピカ大使の所からかっぱらってきたのか。」

「有効利用と言ってくれ。アレハンドロ・コーナーは僕らの大事なスポンサーだからね……」

「……俺に頼みたいミッションってのは、トリニティを指揮する事か?その為に、奴らと同型の機体を用意した……そんな所か。」

「相変わらず、察しがいいね。もちろん、君が用済みという訳ではない……これは、君の働きに対するご褒美みたいなものさ。絹江・クロスロードとルイス・ハレヴィの幸せな未来……君の働きへの対価としては、むしろ少なすぎるくらいだ。」

「そりゃどうも……」



ハレヴィ家への襲撃は俺自身で止めろって事か。まぁ、別に構わないんだが。絹江の命が保証されているだけましだ。



「その機体の試運転も兼ねて、この合流ポイントへ向かってくれ。後は、君の活躍を期待するよ。」

「了解した。」



……うん、リボンズに原作知識を持たせるとどうなるかと冷や冷やしていたが、なかなか話の分かる上司じゃないか。



「…………そういえば、ヒリングとリヴァイヴが君に会いたがっていたから顔を見せてやってくれ。」

「……?あぁ、わかった。」



ヒリングはともかく、リヴァイヴはついこの間一緒に行動していたはずなんだが……はて?




++++++++








「……ふふふ……話の分かる上司か……当然だよヴァニタス。君は特別な駒だからね……」



ヴァニタスが部屋を出るのを見送ると、思わず僕はそう呟いてしまう。


彼の持つ『原作知識』や考え方は、本来は存在しないイレギュラーなものだ。

以前、彼の思考をデータ化してバックアップを作ろうとしたが……結果は失敗。生まれたのは、グラーベ・ヴィオレントと同じ思考パターンを持った存在だった。

つまり、彼は『規格外品』であり『欠陥品』なのだ……ゆえに、特異性しか持たない。

他のイノベイドとは違い、彼には代用が効かない。ならば、彼の扱いには細心の注意を払わなければならない。

幸い、彼は僕らにその知識を提供する事を自分から行ってくれたので大掛かりな精神操作を行う必要はなかった。

念には念を入れて多少僕に協力する義務感を植え付けはしたものの……正直、うまく機能しているとは思えない。なにせ、行動が変わらないのだから。


「さてと……」


思考を切り替えると、僕は通信回線を開いてある人物にコンタクトを取る。


『……よぅ、待ってたぜ?』

「はじめましてと言うべきかな?アリー・アル・サーシェス」

『んなこたぁどうでもいいんだよ……それで、アンタにつけば戦争を好きにやらせてくれるってのは本当か?』

「もちろんさ。ただし、守ってもらう事がいくつかあるんだけどね。そうすれば……いずれ、君にガンダムと戦う力を与えてあげるよ。」

『……そりゃあいいっ!!アンタ、最高だぜっ!!』



彼を引き入れるのも、計画の内だ。ヴァニタスという存在を僕の手から逃がさないためのね。





…………………そういえば、彼はあれを気に入ってくれるかな?




++++++++




「珍しいね、君がここにいるなんて」

「まぁな……」


ヒリングとリヴァイヴを探して歩いていると、俺はリジェネと遭遇した。

……そういや、コイツとはあまり話をしてなかったな……でも、今はヒリングとリヴァイヴを探すのが先だ。


「……リジェネ、ヒリングとリヴァイヴを見なかったか?」

「あの二人かい?……プ、クク……あぁ、あの二人ならラウンジにいたよ。まだ居るはずだから行ってみるといいよ。」


そう言うと、リジェネはくすくす笑いながらその場を後にする……ラウンジ?

ともかく、リジェネの言葉を信じた俺はラウンジへと足を運ぶ。





















「……あ~イライラするっ!!もう無理ぃぃぃぃぃっっっっっっ!!!!」

「ちょっと待てヒリングッ!?外に出たら……」



ちょうどラウンジの前に来ると、ドアが音を立てて開き……



「「あ。」」

「……お前らにそんな趣味があったとはな……」

















なぜか、メイド服を着けたヒリングとリヴァイヴが居た。





















「……ヴァ、ヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァニタスッ!?!?」

「ちょっ!?!?なんでアンタがここにいるのよっ!?あと、勘違いすんなっ!!これは、リボンズに言われて仕方なく……」

「皆まで言うな、俺は分かっているから……そうだよな、いくらイノベイドだからってヒリングは女の子だからな……たまにはイメチェンしたくなるよな。」

「全然わかってないでしょうがっ!?」


だがしかし……残念な事に、その胸を強調するような衣装の良さを活かしきれてないぞヒリング……貧乳のお前ではな。

リヴァイヴはというと、なぜか胸に詰め物までしてメイド服を着ている……リヴァイヴは元々細いからな、似合ってはいるんだが……


「ちょっとヴァニタスッ!!アンタ、今変な事考えたでしょっ!?」

「……しかし、リヴァイヴまでコスプレをするとはな……しかも、胸に詰め物まで入れて。」

「無視かっ!?って、ちょっと待……」


ヒリングがなんか言ってるが、俺はリヴァイヴの胸に手を当ててみる。





ぷに







……ぷに?




右手に伝わった感触がおかしくて、俺は確かめるように手を動かす。


ぷにぷに



無駄にこだわってるなこのパッド。そこまでして女装したかったの……



「………あ………あぅ……」



………リヴァイヴさん、どうして顔を赤らめているんでしょうか?え、訳がわからないんだが……?



「いい加減に手を離せこの馬鹿ぁぁぁぁっっっっ!!」

「ごふっ!?」


そして、ヒリングの空中回し膝蹴りがこめかみに直撃し、俺は吹き飛ばされてしまう。



「大丈夫リヴァイヴ!?……アンタ、なにしてんのよいきなりっ!?」

「あ……あぅ……あぅあぅ……」

「……い、いやちょっと待ってくれ……状況が分からん……」



ただでさえお前の一撃で頭がふらついているし、うまく考えがまとまらん……




“そういえば、言い忘れてた事があったよヴァニタス………………実は、ヒリングとリヴァイヴの性別を女性で固定したんだ。”






すると、リボンズが楽しそうな声でそんな事を知らせてくる…………リィィィィィィィィボォォォォォォォォォンンンンンンンンンズゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッッッッッッッッッッ!!!!!!
































「……という訳で、申し訳ありませんでした……」





とりあえず、俺はリヴァイヴが許してくれるまで土下座をし続けました。

うん、知らなかったとはいえこれはやってはいけない事だしなっ!!



「い、いやそこまで謝らなくていいぞ?伝えてなかったリボンズが悪い訳だし……それに、お前になら別に……

「も~、リヴァイヴは甘すぎるのよっ!!」





……うん、GJだヒリング。リヴァイヴが呟いた言葉は聞こえなかった事にしよう。





……ところでリボンズ、ヒリングはまぁいいとしてリヴァイヴの性別は戻すのか?



“何を言ってるんだい、戻す訳ないだろう?だって……その方が面白そうだからね。期待してるよ、ヴァニタス”



……テメェ、俺に何を期待してやがるっ!?



++++++++








……さて、リヴァイヴとのハプニングも一段落を終えて、俺は今スローネヴァラヌスカスタム(長いのでスローネVCと略する)にを駆ってトリニティとの合流ポイントへ移動していた。


合流ポイントにたどり着くと、そこにはスローネ三機とその母艦が停泊していた……ふむ、一応こちらを歓迎する気はあるようだな。

俺がスローネアインに回線を繋ぐと、画面にヨハン・トリニティの顔が映し出される。


「……君達がチーム・トリニティだな?私はマイスターW……君達の指揮をする為に、ラグナ・ハーヴェイによって派遣されたガンダムマイスターだ。」

『はじめましてマイスターW。こちらもあなたについては聞いています……しかし、そのマスクはいったい?』


画面上のヨハンが訝しげな表情を見せるのも無理はないだろう……今の俺はパイロット用のヘルメットではなく、顔を隠すようなタイプのヘルメット(例えるなら、戦隊ヒーローのようなマスク)を被っているからだ。

理由?そんなの顔をばらす訳にいかないからに決まってる。トリニティってたしかトレミーとも接触してたよな?刹那が居るってのに素顔を晒す訳にはいかないだろ。ちなみに、声もボイスチェンジャーで変換済みだ。



「……事故で再生医療が出来ないほどの傷を負ってしまってな。このマスクは視覚補助等の役割も兼ねている、気にしないでくれると助かるが……」


と言うことで、最もらしい嘘をついておく。まぁ、視覚補助ってのはある意味正しい。



『いえ、こちらこそ不躾な質問をしてしまい申し訳ありませんでした。』

『んな事はどうだっていいんだよっ!!』


すると、通信に割り込んでくる奴がいる……映ったのは、ミハエル・トリニティ。


『ミハエルッ!!』

『いいか、俺達はずっと3人一緒だったんだ……急に、アンタみたいな訳のわかんねぇ奴に割り込んで欲しくないんだよっ!!』

『ミハ兄ぃに私もさんせ~いっ♪』


……まぁ、だいたいわかってたけどな……


「……つまり?」

『察しが悪い奴だな……俺達の上につくってんなら、それ相応の力を見せろってんだよっ!!』



そして、スローネツヴァイはGNバスターソードを振りかぶるとこちらに突撃してくる。



「やれやれ……ずいぶんと血気盛んだな。」

『なっ!?』


俺はスローネVCを動かすと、GNバスターソードの一撃を躱しつつ右膝に固定されたGNビームサーベルを抜いてスローネツヴァイのコクピットに突きつける。もちろん、ビーム刃は展開していない。



「これで満足してくれたかな?まだ気が晴れぬようなら、今度はシミュレーションでお相手をしよう……くだらない事で双方のガンダムを消耗させても無駄だからな。」

『ちっ!!』

『ミハ兄ぃ、かっこわる~い。』

『ダセー、ダセー!!』

『お前達、いい加減にしろっ!!……すみませんマイスターW。後は、我々の母艦で話をしましょう。』




こうして、ファーストコンタクトが終わった訳だが……ヨハンはいいとして、ミハエルとネーナが問題かな?


せめて、命令だけは聞いてくれるといいなぁ……











(つづく?)



[18495] 気がついたらイノベイド第5話【後篇……のはずが中編に】
Name: 闇月夜の宴◆5546face ID:ffdd0e05
Date: 2010/05/21 22:00


「……くそっ!!なんなんだよあの強さはっ!?」

「なんで3対1なのに勝てないのぉぉぉっっっ!?」

「……さすがです、マイスターW」




……とりあえず、力関係を分からせるためにシミュレーションで相手をした訳だが……



トリニティの皆さん、格下キラーという事が分かりました。

……まぁ、俺の戦法にあまりにもはまってしまったってのもあるんだが。



「だいたいテメェ卑怯すぎるだろっ!?」

「ミハ兄ぃの言う通りだよっ!!なによあの戦い方はっ!!私、本当に怖かったんだからっ!!」



ちなみに俺のやった戦法とは、まずファングを持つツヴァイを遠距離から狙撃し、次にトップスピードでアインに接近しランチャーを撃たせる間もなくビームサーベルで串刺し、そして最後に基本武装しか持たないドライをじわじわとなぶり殺しにしただけだ。

……でもなぁ、こいつらに連携させると面倒だもん。迅速に各個撃破は基本だよなぁ……



「……戦場で自分の思い通りにならなければそうやって駄々をこねるのか?まるで子供だな。」

「「なっ!?」」

「それに、私なりの見解を言わせてもらおう……君達の連携は確かに素晴らしい。さすが兄妹なだけはある……だが、それだけだ。戦闘の要を連携に頼っている以上、君達は個々の戦力として見ればバランスが悪い……熟練のパイロットがガンダムと同等のスペックを誇る機体に乗れば、たやすく君達は撃墜されるだろうな。」

「……テメェ……言わせておけばぁっ!!」

「よせ、ミハイル!!……彼の言葉は事実だ。実際、私達は彼に完敗している。」


……ヨハンは本当に物分りがよくて助かるよ。


「……本来なら君達を鍛え直したい所だが、残念ながら君達のデビューまで僅かな時間しかない……せめて、私の命令には従ってもらおうか。」

「分かりましたマイスターW。あなたに我々の指揮権をお預けしましょう。」

「ヨハン兄ぃっ!?」

「マジかよっ!?」

「二人とも、いい加減にしろ……彼の言う事は正しい。それに……彼は、私達の事を高く評価している。」

「……ヨハン兄ぃ、お耳大丈夫?そんな事言ってないじゃない……」

【フザケンナバカヤロー、フザケンナバカヤロー】

「……いいか?彼が指摘しているのは私達に足りない要素だ。元々連携が取れている私達が個々の実力を高めれば……よりミッションを遂行しやすくなる。」



……うん、別にそこまでは言ってないんだけどな……いい意味に勘違いしてるよこの子。

ひょっとして、これ勘違いスパイラルの始まり?



「あえて私達をたたき潰す事で、彼はその事に気づかせてくれたんだ……私は、彼を信頼する。」

「……ヨハン兄ぃがそういうなら……」

「けっ!!俺は認めねぇからなっ!!」





………………すげぇやりにくいよこの現場。

あぁ、日本にいた頃が懐かしい…………









++++++++



「あたしの為に買ってっ!!」

「えっ、そんな…」

「買って、買ってっ!!あたしの為にっ!!」




「……何やってるのあの子たち……」


車の中で、頭を抑えた私は悪くないと思う。ふと窓の外を見てみれば、貴金属店のショーウィンドーで沙慈とルイスがなにやらじゃれついている。

……たしか、あそこに展示されてたのって12万くらいのペアリングよね……あの子、なまじブルジョワだから金銭感覚狂ってるんじゃないの?

まったく、私はヴァンとの関係が全然進んでないってのに……ヴァンは今長期の出張だし、刹那さんも保護者に会うからって留守にしてるし……




「のんきなもんですよね。今頃、1000機近いモビルスーツが大演習をやっているというのに……」

「あっちが異常なのよ。」


部下の言葉にため息をつきながら、私は沙慈達を眺める。

……そう、本当ならあの光景が普通なのだ。でも、ガンダムが現れてからはいつ沙慈達の身に不幸が降りかかるか……想像しただけで寒気がする。


この大規模演習も、あなたの計画に入っているのかしら?……イオリア・シュヘンベルグ……







++++++++









「どうだ!!アグリッサのプラズマフィールドの味はっ!?機体だけ残して消えちまいな、クルジスのガキがぁぁっっっ!!」

「あああああアアアアアァァぁぁぁァァぁぁァっっっっっっっっ!!!!」


電撃にさらされながら、私の脳裏に……今までの光景が思い浮かぶ。







……死ぬ……死ぬの?



この歪んだ世界の中で……何にも、なれぬまま……


失い続けたまま……朽ち果てるの……?




そして、思い浮かぶ……あの白いガンダム。




「ガンダム……」


……嫌だ……私はまだ、死にたくない……


「ガン……ダム……!!」


まだ、私には………やらなくちゃいけない事があるんだ……!!



















その時、空中から赤いビームが降り注ぐ。

そして、私の元に舞い降りてくる……赤い粒子を翼のように広げた、白銀の機体。







「……あぁっ、あれは……」



………来て………くれたの………?


「ガン……ダム……」


私は、瞳から涙を零しつつモニターに手を伸ばす…………どうして……私は泣くんだろう………?



「ガン……ダム……!!ガンダァァァァァムッッッッ!!」





++++++++




……やれやれ、まさか俺がこの場面に立ち会う事になるとはな……


「……エクシアのパイロット、無事か?」


俺はモニターを開くと、エクシアに通信を繋げる。サーシェスの方には暗号通信を送って撤退してもらった……まぁ、これでなんとかなるだろ。



『……お、お前は……?』


うん、仮面で顔を隠しているし声も変えているからばれてないな。よかったよかった。

けどさ刹那よ……もう少し女の子っぽい口調でいいんだぞ?

……おっと、危うく素がでる所だった……


「…………マイスターW。君と同じ、ガンダムマイスターだ。そして、この機体はガンダムスローネ……」

『……ガンダム……スローネ……』

「今頃、君の仲間達は私の仲間が救出に向かっている……何も、心配はいらない。」

『こちらヨハン、ミッションに成功した。』

『こちらミハエルッ!!キュリオスの救助に成功したぜっ!!』

『こちらネーナ、ミッションクリアッ!!』


……すると、タイミングのいい事にヨハン達から連絡が入ってくる。

さぁ……仕上げといくか。



「ネーナ・トリニティ、GN粒子を最大領域で散布しろ。現空域から離脱するぞ。」

『了解ねっ!!いくよ、ハロッ!!』

『シャアネーナ、シャアネーナ!!』

『GN粒子、最大散布っ!!いっけぇっ……ステルスフィールドッッ!!』



そして、空を赤い粒子が覆い尽くす……これで、ミッションは完了だ。



『こ、この光……』

「……エクシアのパイロット、君達も撤退するといい……追っ手は来ないからな。」

『ま、待てっ!!』

「いずれ……また会うだろう。」





そして、俺はエクシアを置いてその場を後にする。



………さぁ、やるだけやってみますか。



++++++++





「……とにかく、これだけは教えてくれない?あなた達は、あのガンダムで何をするのか……」

「もちろん、紛争根絶です。」

「本当に?」

「あなた達がそうであるように、私達もまたガンダムマイスターなのです。」



現在、ある一室でトレミー組と接触中です。けど、やっぱ相手側に不信感があるのが見て取れます。

……まぁ、一番怪しまれているのが俺なんだけどな。だってフルフェイスの仮面だし。一応、ヨハン達に告げたのと同じ理由でマスクを外すのを拒否ったけど。

とりあえず一番の驚きは、ティエリアが完璧に女だったって事だ。いや、顔は変わってなかったけど体つきが明らかに女性だったし……マスクがなかったらアホ面晒してたんだろうな。



「つまり、俺達と組むっての?」

「バーカ、そんな事すっかっ!!あんたらがヤワイ介入しかしねぇから、俺らにお鉢が回ってきたんじゃねぇかっ!!」


……この馬鹿ミハエル。何相手を怒らすような事を……


「……どういう意味かな?」

「言った通りの意味だ。あてになんねぇのよ。あぁ?不完全な改造人間君?」

「何ぃっ!?」

「おっ、やっかぁっ!?」

「………この馬鹿者がっ!!」



とりあえず、ミハエルの頭をぶん殴る。これ以上話をややこしくすんなっ!!



「いてぇっ!?……何しやがるテメェッ!!」

「それは私の台詞だこの馬鹿者。友好関係を築こうとしているのになぜ喧嘩腰になる必要がある……申し訳ない、部下の無礼を謝罪しよう。」

「私からも、弟の無礼を謝罪します……ですが、私達に命令を下した存在はあなた方の……」

「ヨハン、君もそこまでだ。自分達に自信があるのは構わんが、今まで作戦行動を行ってきた彼らに失礼だぞ。」

「……申し訳ありません。」


………ったく、こいつら爆弾をどんどん放り込んでやがる……原作に俺と同じような立場の奴がいたら、絶対胃が痛むんだろうな。



「……私達は、お払い箱?」


ほら、スメラギさんが若干怖いよ………


「そういう事ではない。君達は今まで通り作戦行動を続けてくれ……私達は独自の判断で作戦行動を行う。」

「……あなた達は、イオリア・シュヘンベルグの計画に必要な存在なのかしら?」

「どうだろうか?それは、我々のこれからの行動によって示されるだろうな……少なくとも、君達が今まで行わなかった事をやるつもりだ。ではヨハン、ミハエル、行くぞ。」



………部屋を後にすると、マスクの裏側に備えられたモニターに暗号文が届く……なるほど。


「ヨハン、ミハエル……新しいミッションが入った。」

「はっ、今度は暴れられるんだろうな?」

「やけに早いですね……それで、ミッションの内容は?」















「あぁ……フェレシュテと合流する事。詳しい内容はその道中で説明しよう。」


















(つづく?)



[18495] 気がついたらイノベイド第6話【ようやく後篇……そして急展開のラスト】
Name: 闇月夜の宴◆5546face ID:ffdd0e05
Date: 2010/05/05 16:29




『失礼する。ヴェーダからの指令が届いたと思う。あなた方が保管しているGN-000を引き渡してもらおう。もちろん、太陽炉も含めてだ。』

『そんなっ!?太陽炉を失ったら、俺達のガンダムはどうやって起動すればいいんだ!!』

『心配はいらない。フェレシュテは解散と決定している。』








……という訳で、原作通りの展開となりました。

ここでフォンのイベントを起こしておかなきゃフォンが自由に動けないからな……リボンズと相談した上で、あえてフォンは泳がす事にした。


フォンが後々に起こすテロがなければ、宇宙開発も進まないしアロウズも発足されない。

その為、フォンに関するイベントは極力原作通りに進ませる事にした……たとえ、グラーベとヒクサーを失う事になったとしてもな。




そんな事を考えていると、フォンがプルトーネに乗ってこちらへと向かってくる。

……さて、ここからは少し遊ばせてもらうか。



『フォン・スパーク、ヴェーダの命令を無視するつもりか?分かっているとは思うが命令違反の場合キミの首にセットされた爆弾が……』

『あげゃげゃげゃげゃ!!面白い!!ここでカンダムを失う訳にはいかないんだよっ!!』

「……ヨハン、ミハエル、ネーナ。命令があるまで動くな。奴の相手は、私に任せてもらおう。」

『しかしマイスターW!!彼は命令違反を……』

「彼を無力化すれば問題ないのだろう?それに、ようやく私も本気で戦えそうだからなっ!!」



ヨハンの制止を振り切り、俺はスローネVCを駆ってプルトーネと激突する。


『あげゃげゃげゃっ!!……アンタ、以前オレ様の戦いをのぞき見してた奴だなっ!!』

「……なぜそう思う?」

『オレ様の首輪を爆発させずに戦う事を選ぶなんて、オレ様に興味があるという事だろう?』

「……先程の質問を肯定しよう。確かに私はキミの戦いを見ていた……そして、全力のキミと戦ってみたかったのだよ!!」



余裕そうにフォンには告げているが、内心はいっぱいいっぱいだったりする。

……けっこう本気なのに互角にしか持ち込めないとはな……機体性能の差を考えると、パイロットとしてのフォン・スパークはCBのガンダムマイスターの中でトップじゃねぇの?

原作でミハエルが勝てたのは首輪を爆破したからだな。



だが……これでっ!!


「はああぁぁぁぁっっっっ!!」

『ちぃっ!?』


ビームサーベルを振り抜いてプルトーネの右腕を切り裂くと、さらに左腕のGNチェインガンで左足を打ち抜く。


「……これ以上は戦えまい?大人しく投降しろ……そうすれば、再びガンダムマイスターとして戦う機会を与えよう。」

『アンタらはなんとなく気にくわないからな……断らせてもらう。』

「そうか、残念だ。HARO、ヴェーダに報告しろ……フォン・スパークはヴェーダに反逆行為を行ったとな。」

『ワカッタゼ、ワカッタゼ』





ドン




















そして、モニターに映るフォンのヘルメットが内側から赤く染まる。







『フォン・スパーク、警部拘束具炸裂、炸裂。失血多量、失血多量……血圧急低下!!』

『……あ……げゃ……』

「さらばだフォン・スパーク……ミハエル、太陽炉を回収しろ。」

『けっ、わぁったよ。』

“さぁ、君はどうでるマイスター874?ヴェーダに従ってフォン・スパークを見殺しにするか?”



ついでに、脳量子波を通してマイスター874に発破をかけておく……この状況なら、動かざるをえないだろう?

そう確信していると、プルトーネからコアファイターが分離し本体が爆発した。



『……なっ!?』

『ミハ兄ぃっ!!』

「くっ……ヨハン、ネーナ、ドッキングしろ。どうやら奴は逃亡するようだ……回収できないならば、破壊するしかない。」

『了解しました。』



俺の命令にヨハンは頷くと、アインとドライがドッキングしGNメガランチャーから赤いGN粒子が解き放たれる。だが、コアファイターはそれを回避すると深淵の彼方へと消え去った。




…………計画通り。




『……申し訳ありません、破壊する事が出来ませんでした。』

「仕方あるまい、まさか首を爆破されても動けるとは思わなかった……私のミスだ。」

『Oガンダムはどうするの?』

「太陽炉のないガンダムなど持ち帰る意味などない……全機、母艦に帰還しろ。」



ヨハン達に指示を出すと、再びフェレシュテに回線を繋ぐ。


「……君達も状況は把握したな?おそらく、ヴェーダからフォン・スパークと太陽炉の捜索を命じられるはずだ……まぁ、フォン・スパークが戻るかどうか怪しいがな。」

『フォンは、きっと私達が見つけてみせます。』

「……朗報を期待しているぞ。」


そして、俺は通信を遮断すると母艦へと戻った。



……そういえば、戦闘中のヨハン達の行動は確認してないんだけど……やっぱ原作通りにフォンの素性を喋ったのか?

うぅむ、そこは確認してないとな。




さぁて……次は、ユニオン軍の基地襲撃ミッションだ。

恨みはないが……エイフマン教授、あなたには消えてもらおう。






++++++++






「シャル……」



通信が閉じられると、シェリリンが不安そうな表情をこちらに見せる。

……私が弱音を吐く訳にはいかない……今の私は、フェレシュテの指揮官なのだから。



「……彼らはプルトーネにガンダムマイスター874が乗っていた事を知らない……きっとフォンは874が助けてくれる、そうよねシェリリン。だとすれば、私達は彼女を信じて一刻も早く見つけ出すことよ。」

「……うんっ!!」




私から仲間を奪ったプルトーネ……あなたが今度は私の仲間を助けてくれるなんて……



でも、気になる事は他にもある。



「あの新たに現れたガンダムとマイスター達……おかしな所があるわ。」





++++++++



「あいつらが、ユニオン軍の基地を襲ったっ!?」



……ブリーフィングルームに、ロックオンの声が響く。告げられたのは、あのトリニティと呼ばれるガンダムを操る彼らの行動。

なぜ……ユニオンの基地を?


「目的は?」

「不明よ。ヴェーダにも情報はきていないみたいね……」

「……勝手な事を。」

「おーおー、俺らへの風当たりが強くなるような事してくれちゃってぇ……」








「……マイスターなの?」





私がふと呟いた言葉に、全員がこちらを向く。

その表情には、疑問が浮かんでいる。



「彼らは本当に……ガンダムマイスターなの?」



……私には、彼らの行動で世界が変わるとは……思えない。





++++++++




「ハ~イ沙慈、元気にしてる?」

『バイトの途中。シフト入れすぎてもうクタクタだよ……そっちは?』

「結構盛り上がってる。花嫁さんがすっごく美人でね!!料理もいい感じだし、それからっ!!……ってあれ?」



沙慈と話をしていると、突然画面が映らなくなった。



「沙慈?……さぁ~じ~?も~、どうなって……ん?」


訳が分からなくて思わず空を見上げると、青紫の綺麗な光がキラキラと輝いている。


「あの光はもしかして……」



そして、その光と共に降りてきたのは………ゴツゴツした鎧のようなものを纏った、黒い機体。



「ガンダム……すごい、初めて生で見たっ!!」


これは、沙慈に自慢しなくちゃねっ!!






「おい、あれ……」

「おっ?」

「モビルスーツ?」

「あれ、ガンダムじゃないのか?」

「ガンダム……」




どうやら、他の皆もガンダムに気がついたみたい。


そして、ガンダムはゆっくりとこちらに右腕を向けた。




…………えっ?




++++++++





『マイスターW、ラグナから次のミッションが入りました。』

「あぁ、こちらでも確認した……目標ポイントへ向かうぞ。」

『またかよっ!?』

『や~だ~、ここんとこ働き詰めじゃない!!』

『我慢しろ、戦争根絶を達成させる為だ。』

「だが、君達もそろそろ休息をとらねばならないな……次のミッションが終われば、私からヴェーダに進言してみよう。」


……うん、流石に俺も連続のミッションで疲れてきているからな……ここら辺で休みが欲しい所だ。



『ほんとにっ!?やった~!!……ん?』


喜んでいたネーナだったが、ふと何かに気がついたような顔をする……ちっ、ハレヴィ家の結婚式に気がついたか?



「……どうした、ネーナ。」

『あそこに結婚式場があるんだけどさ……その上空に、見たことないガンダムが居るんだけど。』

「…………………なんだとっ!?」






ネーナの言葉に慌ててカメラを向けると、そこには青紫の粒子を輝かせた……黒いガンダムが存在していた。

その大まかなシルエットから、エクシアに酷似している事が分かる。

そして、そのガンダムは……右手に持つライフルを結婚式場に向けていた。







…………まさかっ!?






そして、青紫の光が……結婚式場を貫いた。




『…………え?』

『おいおいおいおい……何やってんだよアイツッ!?』

『………馬鹿な………あの場所は、軍事とは何も関係の無い場所だぞっ!?』



ヨハン達の驚きをよそに、黒い機体はどこかへと去っていこうとする……逃がすかよっ!!



「……ヨハン。お前にこれからの指揮権を任せる。お前達は即刻この場所から離れて次のミッションへと向かえっ!!私は、あのアンノウンと接触するっ!!」

『マイスターW!?』





ヨハン達と別れると、俺は黒い機体が去っていった方向へと機体を加速させる。



……しばらく飛んでいると、海上で黒い機体に追いついた。



『へぇ、スローネヴァラヌスか……なかなかいい機体に乗ってるじゃない?』


すると、黒い機体から通信が繋がる……その声は合成音声だったが、喋り方からおそらく女だという事が分かる。



「……貴様、転生者だなっ!?」

『やっぱり、私の他にもいたのね……はじめましてというべきかしら?』

「御託はいいっ!!なぜ……なぜハレヴィ家を襲撃したっ!?」


ビームサーベルを抜き放つと、俺は黒いガンダムに斬りかかる。

黒いガンダムはというと、右手に構えたGNソードを展開してビームサーベルを受け止めた。


『あら?本編通りに進めただけじゃない……何をそんなに怒っているの?』

「……なんだと!?」



そんなばかな……なぜ、コイツが原作通りに展開を進めようとしているっ!?



「ならば、なぜCBの武装を強化したっ!?貴様は……原作をよりよい方向に変える為に動いているのではないのかっ!?」

『なるほど、それで勘違いしてたのね……別に?あの武装強化はなんとなくよ。』

「何っ!?」

『私は自分が楽しければそれでいいの…………いちいち原作の展開を変えるなんてめんどくさいじゃない?まぁ、展開がカオスになるのは歓迎だけどね♪』



……コイツ、自分の事しか考えてないのかっ!?



『だいたいさぁ、原作知識ってそのストーリーがそれに沿って進むからこそ有利なんでしょ?それをわざわざ捨てるなんて……馬鹿みたい。』

「貴様……」

『あぁ、反論しなくていいわよ?別にあなたの意見を聞く気もないし……さっさと私の前から消えて?』




……その時、黒いガンダムの装甲が赤く輝く。

そして、気がつけば……スローネVCの右腕が斬り飛ばされていた。


馬鹿な……これは……




「……トランザム……だと?」

『だぁいせいかぁ~いっ♪じゃ、さよなら……名前も知らない転生者さん?』


次々と襲いかかる赤い斬撃にスローネVCの体はどんどん切り刻まれていく。













そして、激しい衝撃と共に……俺の意識は、空に浮かぶガンダムを見ながら、闇の中に沈んでいった。





(つづく?)



[18495] 気がついたらイノベイド第7話【小さな変化】
Name: 闇月夜の宴◆5546face ID:ffdd0e05
Date: 2010/05/21 22:01








………………目が覚めると、目の前には天井が広がっていた。





……俺は……生きてるのか……?





「……知らない、天井だ。」

「知らないのも当然だ、ここは王留美が保有しているCB用の偽装施設だからな。」

「……ブリングか……?どうして、お前が……」

「……マスクとVCのおかげだ。それにはお前の位置を知らせる発信機と、お前の見た物を絶えずリボンズに送る機能がついている。奴は胸部にコクピットがあると思ったらしく攻撃が致命傷にならなかったのと、リボンズの行動が迅速だったからお前を助けられる事ができた。」

「……そうか……というか、いつも無口だったお前がやけに今日は喋るな……」

「……………………お前が無事だからかもな。」




……ブルータス、お前もか。




「……心配するな。俺の場合は、お前をよき仲間として認めているからだ……リヴァイヴやヒリングとは違う。」

「それはありがたいけど、なぜそこでリヴァイヴとヒリングの名前が出てくるっ!?」

「…………クク…………やはりお前は面白いな。イノベイターとして生まれてきて、笑ったのは初めてだ。」

「そりゃどうも」



…………仲間、か。

そうだよな…………俺達は、仲間なんだ。

くそ、フォンとの戦いでグラーベとヒクサーを犠牲にしてもいいなんて考えた自分に腹が立つな。

なんで犠牲にする事を第一に考えたんだ?逆だろ。どうやったら仲間を失わずにベントを進めるかを考えるべきだろ。








……あぁ、そうだ。ようやく俺の敵が目の前に現れたんだ……アイツの思い通りにさせてたまるかってんだよ。








++++++++





「……ねぇ、ヨハン兄ぃ、ミハ兄ぃ……あの人、戻ってこないね。」

「ネーナ、そんな事言うんじゃねぇよ……アイツが、やられる訳ないだろうがっ!!」

「ミハエルの言う通りだ……今はただ、マイスターWの生存を信じて、ミッションを行うだけだ。」




……だが、あれほど反発していたミハエルすらも心配しているとは……

マイスターW。あなたはやはり、私達に必要な存在です。




【ツウシンダゼ、ツウシンダゼ】


すると、HAROの声と共にモニターに映像が現れる。

そこに映っていたのは……




『三人とも、大丈夫か?』

「マイスターW!!」

「……うぅ……心配したんだからねっ!?」

「テメェ、ネーナを泣かせて覚悟はできてるんだろうなっ!?」

『済まない、心配をかけたようだな……だが、伝えなければならない事がある。』



……そして、マイスターWが語りだした事は……私達を、ひどく驚かせた。



「……アンノウンの行動が、我々の仕業になっているのですか!?」

『そうだ。そしておそらく、プトレマイオスのメンバーと衝突する事が予測される……彼らは民間人を犠牲にはしようとしていなかったからな……』

「ふざけやがってっ!!俺達だって、CBの理念に従って行動しているってのによぉっ!!」

「なんで私達がやってもいない事で責められなくちゃいけないのよっ!!」

「落ち着け二人とも………それで、他にもあるのですか?」

『あぁ。なんとか一命は取り留めたが、しばらく私はミッションに参加出来そうもない……これからのミッションは、君達三人で行うことになる。』

「……心配しないでくださいマイスターW。あなたの意志を継ぎ、我々もCBとして立派に使命を果たしてみせます。」

『その言い方だと、私がまるで死んでしまったような言い方だな……しかし、安心して任せられる。それとこれは忠告だ。アンノウンと遭遇してしたらすぐさま戦闘区域から離脱しろ。アレは君達が相手になるような存在ではない……必ず、生きて私の元に戻って来い。』




そして、マイスターWとの通信は途切れた。


………マイスターW、短い間でしたがあなたは良き指揮官でした……必ず、また会いましょう。





++++++++




“……本当に済まなかったね。まさか、こういった展開になるとは僕も思ってなかったよ。”


ブリングと共にアジトへと帰還する間、俺はリボンズと脳量子波で話をしていたが…………珍しいな、リボンズが素直に謝るとは。


“僕だって自分のミスは認めるさ……約束を違えてしまったからね、責任を感じているよ。”



いや……奴の性格を読み違えた俺にも責任はあるさ。だがリボンズ……まだ、ヴェーダは掌握できてないんだよな?



“あぁ。場所は君の知識から分かってはいるが、アレハンドロ・コーナーの裏切りに合わせてヴェーダを掌握するつもりだ。”



……とすると、やっぱり疑問が残るな。なぜ、奴の機体はトランザムを使えたんだ?

そもそも、あの青紫色のGN粒子もおかしいし……




“そういえば、ルイス・ハレヴィは一命を取り留めたようなんだけどね……左腕を失ったが、再生医療でなんとか元に戻せるそうだよ。”




……なんだって?

つまり……あの黒いガンダムは、オリジナルの太陽炉を搭載してたって事なのかっ!?



“僕達の技術でも、擬似太陽炉が生み出す粒子の毒性はまだ取り除けていない……奴が未来の技術を持っているのでなければ、そう考えるのが自然だね。”



……ますます分からなくなってきたぞ?どちらにしても、ありえない事だらけだ……けど、もう一つ布石を打っておく必要があるな。





……リボンズ、頼みがある。





++++++++




『……ねぇ、ヨハン兄ぃ。ここの人達って、兵器を作ってはいるけど……悪い人じゃないんだよね……』

「余計な事は考えるな、ネーナ。」

『そうだぜネーナ……俺達は、CBの理念に従って行動してるんだっ!!』





……私達は、アイリス社の兵器工場を襲撃していた。

だが、ネーナもミハエルも行動に戸惑いがでている……恐らく、あのスペインでのアンノウンの行動が影響しているのだろう。

特にネーナは、アンノウンの行動と今までの自分の行動を無意識の内に比べている……マイスターWと出会う前のネーナなら、あの結婚式を見て同じような行動を行ったはずだ。

それがネーナの動揺を誘い、その考えに変化を及ぼしている……皮肉としか言いようが無いな。







「……ん?」




その時、このポイントに接近してくる反応がある……それをカメラで捉えると、それは黒いフラッグだった。



「……やけに早いな。」

『やはり、新型かっ!!』


私がこちらへ射撃を行って来るフラッグへ攻撃を仕掛けると、フラッグは反転して攻撃を避けつつ変形し、プラズマソードを抜き放つ。


「やるなっ!!」

『どれほどの性能差であろうともっ!!』



私もビームサーベルを抜き、空中で切り結ぶ。



『今日の私は……阿修羅すら凌駕する存在だっ!!』

「何っ!?」


……押し負けたのは、こちら側。すかさずフラッグは二本目のプラズマソードを抜き放ち、スローネのビームサーベルをはじき飛ばす。


とっさにビームライフルで攻撃を仕掛けるが、フラッグは空中に放り投げられたビームサーベルを取るとこちらへ向かってきて……スローネの右手を斬り落とす。


「ばっ、ばかな……くっ、ミハエル!!ネーナ!!離脱するぞっ!!」

『『了解っ!!』』



既に目的は果たした……これ以上、ガンダムを損傷させる訳にはいかないっ!!




戦闘空域を離脱すると、私達は海上を飛んで基地へと急ぐ……どうやら、追っ手は来ないようだな。


『……まさか、あの野郎以外に兄貴を手こずらせる奴がいるなんてな……』

『油断大敵だね。』

「……肝に銘じるしかないな。」



……マイスターWと出会ってから、自分の未熟さを恥じるばかりだ。

だが……だからこそ経験になる。いつか、彼と再開した時に……より成長した私達を見せる為に。




「……ん?」



すると、警告音が鳴り響き……ピンク色のビームがこちらに襲いかかってくる。

『何っ!?』

『……この粒子ビームはっ!?』



散開して躱したのはいいが、スローネのカメラには敵の姿と……緑のGN粒子が映し出される。


……マイスターWの恐れていた事が、現実となってしまったか……


「……ガンダム……ガンダム、エクシアッ!!」

『エクシア、目標を補足。3機のガンダムスローネを紛争幇助対象と断定し、武力介入を開始する……エクシア、目標を駆逐するっ!!』



エクシアはネーナの機体を狙ってGNソードを振り下ろそうとするが、それをミハエルが受け止める。


『てめぇ、何しやがるっ!?』

『アタシら味方よっ!!』

『………違う。』



………エクシアのパイロットから響くのは、否定と怒りの声。



『お前達が……その機体が……ガンダムで、あるものかぁっ!!』

『ちょ、ちょっとどうするのヨハン兄ぃっ!?』

「聞こえるかエクシアのパイロット?なぜ、行動を邪魔するっ!!我々もまた、紛争根絶の為に……」

『違う、貴様はガンダムではないっ!!』



……くっ、これではアンノウンの思う壺ではないかっ!!


「ミハエル、応戦しろ。ただし、なるべくエクシアを傷つけるな。」

『ムチャクチャ言ってるけどよ……了解だぜ兄貴っ!!いけ、ファングッ!!』


こちらの攻撃でエクシアのシールドを破壊すると、ミハエルがファングを射出する。

エクシアはビームダガーとショートブレイドを投げて3基を落とし、残りをビームサーベルで撃墜する。


『まだあんだよぉっ!!』


だが、ミハエルはさらにファングを2基射出し、エクシアの死角から接近させる。


……だが、そのファングは一条のビームによって破壊された。


『何っ!?』

「……援軍だとっ!?」

『……ティエリア・アーデ?』

『ヴァーチェ、目標を破壊するっ!!』



……誰かこの戦いを止めてくれっ!!



++++++++



「……ガンダム同士の戦い……」

「思ったより早かったな。」


……アレハンドロが何かを考えているようだが、僕からしてみれば予想の範囲内だ。

しかし、ヴァニタスの持っていた原作知識とは違いスローネは積極的に攻撃を仕掛けてはいない。

……これも、ヴァニタスの影響か。だが、ここでガンダム達が消耗するのも困る……



しばらく様子を眺めているとヴァーチェが装甲をパージし、ナドレの姿を晒す。

ティエリア・アーデめ、トライアルシステムを使う気か……だが、そうはさせないよ?


「リボンズ、ヴェーダにアクセスするんだ。ここでガンダムを失うのは避けたい。」

「分かりました。」


僕はヴェーダへとアクセスすると、トライアルシステムを強制解除する……システムの権限なら僕の方が上だ……これくらい、造作も無い。

すると、デュナメスが合流して6機のガンダムがにらみ合いになる……どうやら、情報交換をしているようだ。

伝わったのは、アンノウンの情報か……奴の行動は予測できない、なんらかの対策はしてくるはずだ。



……こちらも、布石を打っておかないとね。これ以上は僕のプライドにも関わる。








絹江・クロスロード。君には表舞台から消えてもらおう……ヴァニタスをつなぎとめる為にもね。





++++++++



「……やっぱり、ラグナ・ハーヴェイよね?」

「そりゃあそうでしょう、リニアトレイン事業の総裁、国際経済団のトップなんですから。」


……調査の中で浮かんできた男、それがラグナ・ハーヴェイ。

予想以上に大物がかかったわね……しかも、彼が経営している会社の中にはヴァンが働いている会社もあったし……

………………まさか、ね?


「この男ならモビルスーツを建造する財力もありますし、軌道エレベーターも自在に使えます……という事で、取材はここまでで止めときましょう。」

「どうして?」

「なに言ってんすかっ!?相手はウチの大株主ですよっ!?ちょっかい出したら潰されちゃいますよっ!!」

「だから裏で調べるんでしょ?」

「けど……」

「止めないわよ私。ようやく手がかりを見つけたんだもの……」

「先輩……」




……ようやく、真実にたどり着きそうなんだもの。

ここで逃げたら、ジャーナリストじゃないわ……そうよね、父さん?







(つづく?)



[18495] 気がついたらイノベイド第8話【豪華2本立て……すいません、溜め込んだだけでした】
Name: 闇月夜の宴◆5546face ID:ffdd0e05
Date: 2010/05/21 22:02






『3つの陣営が、国連管理下で軍事同盟を発表しました。これにより、史上最大規模の国連軍が誕生する事になります……』

「……どうやら、CBの筋書き通りに事は運んでいるようね。」



TVから流れるニュースを見て、シーリンが言葉を漏らす。


「ここ最近の過激な武力介入は、国連軍を統合させるための……」

「そう考えるのが妥当でしょうね。」




……世界を1つにまとめる……それがCBの目的……


でも、そのやり方はひどく乱暴なもの。




戦いで戦いを否定し、平和を勝ち取る……これが、あなたの求める世界だと言うの……刹那?














だとしたら……なんて、ひどく悲しいのかしら……









++++++++



「……ようやく計画の第1段階をクリアしたってところか……トリニティの行動が引き金になっているのが解せないがな。」



……矛盾しているのは分かっているが、あいつらのやり方は気に食わねぇ。

スペインの民間人襲撃はあいつらじゃないのかもしれないが……同じような事をあいつらはしてるんだ。


「……それにしては不可解だ。」

「何がだティエリア?」

「各国の軍事基地はトリニティによって甚大な被害を受けている。そんな状況で軍を統合させても、結果など出るはずがない……世界の反感を、失望を買うだけだ。」



……確かに、ティエリアの言う事も最もだ。

圧倒的な物量ならガンダムを消耗させる事はできるかもしれないが……トリニティの行動によってそれはできなくなっている。

じゃあ、いったい……



「……何か、裏がある……」

「あぁ。正直、僕は不安に思う……ヴェーダの情報に明示されていなかったトリニティと、そもそもデータ自体がないアンノウン、そしてヴェーダがデータの改竄を受けたという事実が……どうしようもなく、僕を不安にさせる。」

「僕…か。ティエリア、やっぱりその一人称は止めねぇか?なんか、どっかのアホがよりついてきそうだ。」

「人が真面目な話をしている時に茶化すなっ!!」


そして、ティエリアは顔を真っ赤にして怒り出す……だいたい、美人でスタイルもそこそこいいってのに性格がキツめだから近寄りがたい雰囲気を放ってるんだよな。

まぁ、そこがいいという奴がいるかもしれんが……フェルトが影響を受けないといいんだがな?


「……ん?」


すると、俺達の携帯に着信が入る。

これは……ミス・スメラギからか。


「スメラギ・李・ノリエガからの暗号通信……マイスターは機体と共にプトレマイオスへ帰還せよ。」

「オッケー、作戦会議だ。宇宙に戻るぞ。」




++++++++




「またJNNか?それに関しては一切答えるつもりはないと伝えてくれ。」

「かしこまりました。」



……目の前では、ラグナ・ハーヴェイがため息をついている。JNNの記者か……恐らく、大将から連絡のあったあの女だな。



「人気者は大変ですなぁ?」

「……茶化すな。それより、機体の搬送は順調に進んでいるようだな。」

「代金の分の仕事はさせていただきますよラグナ・ハーヴェイ総帥。」



……さぁて、いっちょやるとしますかね。



++++++++




「はぁ……取材は空振り、どうすれば……」


ため息をついていると、ラグナ・ハーヴェイの別荘から一台の車が出てくる。

さっき、総裁は面会中だって……あっ!!

私はとっさに駆け出すと、車の前に立ちはだかる。車が急ブレーキをかけたのを確認すると、私は運転席の方へと向かった。


「あの……」

「何か、御用かな?」


運転席から顔を見せたのは、赤髪でどこか鋭い目付きをした男性。

……なんか、ヤバイ匂いがするわね。でも、ここで逃げてたら真実には辿り着けない……



「私、JNNの特派員なんですが2、3お聞きしたい事があるんです。よろしいでしょうか?」

「JNNの記者さんねぇ……かまいませんが、私は少し急いでまして。車内で宜しければ……」

「あっ……いえ、それは……」

「やめておきますか?」


……この男、明らかに挑発しているわね……いいわ、乗ってやろうじゃない。


「……では、お言葉に甘えて。」



私は車に乗り込むと、男と名刺を交換する。私の名刺を眺めながら、男は笑みを浮かべていた。



「絹江・クロスロードさんですか……いいですね、あなたのような美人の記者がいて。やっぱり、恋人とかいるんですかね?」

「そんな……まだ、独り身です。」


……口調は軽いけど、男の目つきは相変わらず鋭いまま……どこまでが本心なのやら。


「……で、私に聞きたい事とは?」

「……間違っていたら謝りますが、ビアッジさんは先程、トレイン公社の総裁、ラグナ・ハーヴェイ氏と会われていませんでしたか?」

「えぇ、会いましたよ?」

「どのような話を……?」

「私は流通業を営んでいましてね……物資の流通確認のために、総裁に報告に来たんです。」

「わざわざ総裁に?」

「えぇ。総裁とは個人的に話したい事もありましたから……何か問題でも?」

「……いいえ……」


……嘘はついてないようね……どうやら、ハズレか……


「……差し障りがなければ、その物資が何か教えていただけないでしょうか?」

「フッ…………GNドライブ…………」

「GN……ドライブ?リニアトレイン関係の機材か何かですか?」

「いえ、MSを動かすエンジンです。」

「MSの……?」


確かに流通業者が扱ってもおかしくないけど、そんなエンジン聞いた事が……


「えぇ。最新鋭のMS…………ガンダムのね。」


……ガンダムのエンジン!?

いったい、何者なのこの男は……?


「それともう一つ、あなたにお教えしておきましょう。」

「……なにをですか?」

「……アンタ、知りすぎたんだよ。知ってるか?米軍基地が襲われた理由……あれは、アンタみたいにCBの秘密に迫った奴を殺すためだけの襲撃らしいぜ?」

「……なん……ですって……?」


……落ち着きなさい絹江、この男の言っている事が本当と決まった訳じゃ……


そんな事を考えていると男が突然急ブレーキをかけ、私は前につんのめる。


「な、なにを……」

「お迎えが来たようだぜ?」

「……ご苦労だったな、アリー・アル・サーシェス。」


男の言葉と同時に助手席のドアが開くと……耳に覚えのある声。




















「…………え?」

















そこに立っていたのは……右手に黒い長方形の物体を握りしめた……ヴァン。




























「……なんで……あなたがここに居るはずは……」

「…………絹江・クロスロード。悪いが眠っていてもらおう。」












ヴァンはその黒い物体を私の首元に押し付けると、バチンと弾ける音が聞こえる。

そして、私の意識は……闇に閉ざされた。




++++++++





「……わざわざ、アレハンドロ様が同行なさる必要はないと思いますが?」

「君が苦労して手に入れてくれた情報だ、この目で見させてもらうよ。それにこれは……コーナー一族の長きにわたる悲願なのだから。」

「アレハンドロ様……いえ、コーナー家は何世代も前から計画への介入を画策していたのですね?」



……まったく、実に愚かな事だ。どうやら、コーナー家は野心にあふれた小物ばかりのようだね。


「その通りだ。だが、ヴェーダがある限り私達にはどうする事もできなかった……そんな時、偶然にも私の前に天使が舞い降りた。君の事だよ、リボンズ・アルマーク。」

「拾ってくださった事へのご恩返しはさせていただきます。」


……まぁ、つかの間の夢は見させてあげようか。彼の家が持つ資産は必要だからね。


「しかし、よもや本体の場所を突き止めようとは……」

「時間がかかって申し訳ありませんでした。」

「フ……リボンズ、君はまさしく私のエンジェルだよ。」



……遠隔操作する形で助かったよ。事が終わったら、このサブボディは廃棄しなければね。



“こちらグラーベ、目標の確保に成功した。”








そうか……丁重に扱ってくれよ?彼女はヴァニタスの大事な存在だからね……

しかし、ヴァニタスを無事救助できてよかったよ。彼というイレギュラーがいなければ、アンノウンには対抗できない。あの思考は僕達には理解できないからね……

ヴァニタスのマスクには洗脳効果を強める装置を組み込んでいたけど、あれは失敗だったね。指揮官としての能力は増したがヴァニタスが持つ本来の良さを失ってしまった。



……そこまで考えて、僕は自分の考え方が変わっている事に驚く。

彼の事は、道具としか見ていなかったつもりなんだがね……いや、『人間』の事すら僕は見下していたはずだ。


それなのに今は……………………人間が持つ可能性に期待している?この僕が?


「……フ…………フフ……」

「……どうかしたかね、リボンズ?」

「申し訳ありませんアレハンドロ様。少し思い出し笑いをしていたもので……」



おっと、いけないいけない。ついつい声が漏れてしまった……

でも、こういうのも悪くない。形はどうあれ僕はイオリア・シュヘンベルグの計画を受け継ぐんだ……ならば、彼の意志を受け継いでみてもいいか。






……アンノウン、これ以上は貴様の思うとおりにはさせない。

最後に笑うのはこの僕……リボンズ・アルマークだ。







++++++++





「トリニティ、戦闘空域から離脱した模様!!」

「まさか、撤退?」

「何があった?」

「……人革連側が、太陽炉搭載型MSを投入したのよ」


スメラギ・李・ノリエガの言葉は、ブリッジに衝撃をもたらした。



「太陽炉……」

「そ、そんな……」

「やはり、ヴェーダから情報が……」

「これからは、ガンダム同士の戦いになるわ。」

「ガンダムと……」




…………違う、私達がガンダムだ。



私達は……負ける訳にはいかないんだ。





++++++++




「こんなにも世界が変わっていく……その向こうには、一体何があるのかしら?」

「さぁねぇ?でも……今よりもぉぉぉっっっと楽しくなると思うわよ?」






……私のつぶやきに、彼女は楽しそうにわらう。



「……でも、この世界はつまらないわ。」

「それは、あなたが傍観者の立場だからよ……でも、今はまだ辛抱よ?いずれあなたは……世界を変革する立場になる。その為の私で……アルマロスなんだから。」

「…………そうだったわね。」



……彼女とは、ずいぶん長い付き合いになる……初めて彼女の知識に触れた時は、全身を歓喜の感情が包み込んだほどだ。

彼女となら私は……この世界を、変えられる。



「……期待しているわよ、リュミナス?」

「もちろんよ留美……私とあなたは運命共同体なんだから。私が世界を混沌に包み、その世界にあなたが秩序をもたらして……そしてあなたは、この世界の支配者となる。」

「……ク……クク…………アハハハハハハハハハハッッッッ!!なんて、なんて素晴らしい響きなのかしらっ!!」




私の思うままに世界を変える……これなら、王家の立場など今は我慢して受け入れようっ!!

いずれ私は………………世界を支配するのだからっ!!










「「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッッッッッッ!!!!!!」」








そして、私と彼女のわらい声が静かな空間に響き渡り、私達の目が……金色に輝いた。











[18495] 気がついたらイノベイド第9話【新たな力、その名はガルム】
Name: 闇月夜の宴◆5546face ID:ffdd0e05
Date: 2010/06/11 20:47











「……さて、この後はどうするかなぁ……」


王留美が提供してくれた隠れ家を後にした俺とブリングだったが、正直この後の展開をどうするべきか迷っている。

CBはまぁ原作通りに進むから置いといて……トリニティの面々は、見捨てる事ができないんだよな。

サーシェスは既に味方だからトリニティを襲わないはずなんだが、あの転生者が面倒くさい。

かといって、トランザムを使う機体にどうやって対抗すればいいのか……



「……そういえばブリング、俺達はどこに向かっているんだ?」

「リボンズが所持している機密ドックだ。そこで、ヒクサーやアリー・アル・サーシェスと合流する事になっている。」





ヒクサーはいいとして……サーシェス?






++++++++









「……ドクター・モレノ、傷の再生までの時間は?」

「最低でも三週間は必要だ。分かっていると思うが、一度カプセルに入ったら治るまで出られんからな?」

「治療をお願いします。その間に私達は、ドックに戻ってガンダムの整備を……」






「おいおい、勝手に決めなさんな。」




……まったく、この状況で俺だけ寝ていられるかってんだよ。


「ロックオン……」

「敵さんがいつ来るかわかんねぇ。治療は無しだ。」

「しかし、その怪我では精密射撃は無理だよっ!!」

「俺とハロのコンビを甘くみるなよ?な、ハロ。」

【モチロン、モチロン!!】

「それにな……俺が寝てると、気にする奴がいる。いくら強がってても、あいつはもろいからな……」




ほんと……ここのクルーには厄介なお姫様の多い事で。






++++++++









……う……ここは……?


視界に入り込んでくる光に目を細めながら、私は身体を起こそうとする。

でも、金属音と共に身体が思うように動かない。視線を向けてみれば、手首と足首には拘束具がつけられており、首にも……







































「………………なんでペット用の首輪なのかしら。」


しかも、服装はなぜか露出度の高い黒を基調としたドレスに変わっている…………囚われのお姫様ってタイプじゃないんだけど私。というか、誰が着替えさせたのかしら?

なんとか身体を起こして部屋を見回してみると、あきらかに高価な美術品がたくさん飾られた部屋の中央に備え付けられたベッドに、私は眠っていたようだった。

…………うん、嫌な予感しかしないわ。







「目が覚めたようだね、絹江・クロスロード。」



すると、ハッチの開く音が聞こえて……紫髪の女性が部屋の中へと入ってくる。

その女性を見た瞬間……なぜか私は、こいつを『敵』だと感じた。



「えぇ、おかげさまで……それで?一ジャーナリストの私をこんな所へ、しかもこんな格好をさせてまで何をしようというのかしら。」

「…………先に謝っておく、その格好は君をここに連れてきた人物の悪ノリだ。」

「………………………は?」


いきなりそんな事を言われて、私の思考は固まってしまう。

…………私、ただの悪ノリでこんな格好させられたの?




「まったく、ヴァニタスの驚く顔がみたいからってここまでやる事ないだろうに…………間違いが起こったらどうするんだ。私の方がヴァニタスとはつきあいが長いのに……


冷静さを取り戻しつつ、私は女性の言葉から情報を拾い集める。

私をここに連れてきたのはやっぱり……ヴァン、なの?



「…………ヴァンも、あなた達とグルだったのね。」



どこか裏切られたような感覚を覚えながら、思わず言葉を漏らしてしまう。

あの時のヴァンは、私が見た事もないほど…………冷徹な瞳をしていた。

それが、普段のヴァンとあまりにも違いすぎて……………………ただただ、哀しさだけが胸を支配する。




「……ヴァン?ずいぶん気安く呼んでいるんだな…………いや、だからこそ人質としての価値があるのか?」



……………………人質、ですってっ!?



「ちょっと、どういう事よっ!?私が……人質っ!?」

「それは……」








「リヴァイヴ、そこからは僕が説明するよ」




……再びハッチの開く音が聞こえ、その声の主に私は視線を向ける。

現れたのは、どこか中性的な印象を受ける緑髪の少年。

でも、その金色に輝く瞳は……私をここに連れてきたヴァンと同じ、冷徹な光が輝いていた。





「はじめましてだね、絹江・クロスロード……僕の名前はリボンズ・アルマークだ。」










++++++++





「……あっ」


通路を歩いていると、目の前をロックオンが通り過ぎて行く。思わず後を追うと、ロックオンは展望室に入っていく。


そこには……ティエリアが居た。

私は身を隠しながら、二人の様子をじっと眺める事にした。









「……いつまでそうしているつもりだ?」


ロックオンはティエリアに語りかけるけど、ティエリアは返事をしない。


「……らしくねぇなぁ、いつものように不遜な感じでいろよ?」

「…………失った。」

「あぁ?」

「マイスターとしての資質を失ってしまった。ヴェーダとの直接リンクがなければ、僕はもう……」



……ヴェーダとの直接リンク?

じゃあ、新システムの転送時にエラーが出たのは、リンク中だったティエリア自身が障害となって……でも、そんな事が人間にできるの?



「僕は、マイスターに相応しくない。」

「……相応しくない、か。いいじゃねえか別に。」

「何?」


辛い表情を浮かべているティエリアに、ロックオンは軽い口調で言葉を返す。


「単にリンクができなくなっただけだ。俺達と同じになったと思えばいい。」

「ヴェーダは何者かに掌握されてしまった。ヴェーダがなければこの計画は……」

「できるだろ。戦争根絶の為に戦うんだ……ガンダムに乗ってな。」




……なんだろう、胸がズキズキする。



「だが!!計画実現の可能性が……」

「四の五の言わずにやりゃあいいんだよ。お手本になる奴がすぐ傍にいるじゃねぇか、自分の思った事をがむしゃらにやる馬鹿がな。」

「自分の……思った事……」

「じゃあな、部屋戻って休めよ。」

「……ロックオン!!」

「お?」

「…………済まなかった。」

「おいおい、気にすんなよ。ミス・スメラギも言ってただろ?失敗ぐらいするさぁ……『人間』なんだからな。」



そして、ロックオンは展望室から出て行く。












…………優しいんだ、誰にでも。












なんだか、胸の痛みがさっきよりひどくなる。




「……フェルト・グレイス?どうしてここに……」


すると、ティエリアが展望室から出てきて私を見つめる。そして、私の中で……何かが弾ける。



「………………ティエリア。私、負けないから。」

「は?」




呆気にとられるティエリアを尻目に、私はブリッジに戻る。




…………うん。ティエリアには、絶対負けない。






++++++++









「ハッ!!最高だなぁ、ガンダムって奴はぁっ!!」

「……そいつはよかったな。」

「なんでぇ、仮面の旦那はノリが悪いんじゃねぇか?」




…………つか、いちいち俺に絡まないでシミュレーションを続けてくれ。俺は自分ので精一杯なんだから。



秘密ドックについた俺とブリングを待っていたのは、スローネヴァラヌスの改修型に乗ってテストをしているサーシェスと、輸送船の準備をしているヒクサーだった。

ブリングはそのままヒクサーの手伝いを行い、俺はというと……リボンズから新たに渡された機体のチェックを行っていた。



しかし…………リボンズの奴、なかなか粋な事をしてくれるなぁ。



俺の新たな機体……『プロトガルムガンダム』と呼ぶべき機体には、様々な機能が追加されていた。

性能だけをみれば、第三世代のガンダムにも遅れをとる事はないだろう…………多分、フォンや初代グラーベが乗ってない限りは大体のパイロットに勝てる。




『なぁヴァ……違った、マイスターW。トリニティが国連軍と戦闘を行ったみたいだぜ?』



すると、ヒクサーから通信が入ってくる。

……という事は、そろそろトランザムイベントが発生するな。



「……ヒクサー、輸送艦は動かせるか?」

『ばっちりだ!!』

「ブリング、トリニティに通信を送ってくれ。」

『…………内容は?』







もちろん、合流ポイントの指示だ。あいつらを…………助けに行く。





++++++++







「うわぁぁぁぁっっっっ!!あたしのドライがぁぁぁぁぁっっっっ!!」


ネーナの悲鳴にも近い声が、周囲の森に響き渡る。

……我々は、滅びの運命を辿るしかないのか………


「どうすんだよ兄貴っ!?」

「王留美に宇宙に上がれる手配を頼んでいるが……」

「信用できるのかよあいつはっ!?」


……確かに、ミハエルの言う事にも一理ある。

先程連絡をした時の王留美の目つきは…………我々に微塵も期待をしていない目つきだった。



【アンゴウツウシンダゼ、アンゴウツウシンダゼ!!】

「え?いったい誰か…………ヨハン兄ぃっ!!ミハ兄ぃっ!!マイスターWからっ!!」

「「何っ!?」」



ハロから送られてきた通信に、私とミハエルはすぐさま飛びつく。

その通信に示されていたのは、ポイントと簡潔なメッセージ。


『このポイントで合流する。お前達を見捨てたりはしない。』



……マイスターW……あなたという人は……


「……ミハエル、ネーナ、機体に乗り込め。マイスターWを信じるぞ。」

「「了解っ!!」」



私達はそれぞれの機体に乗り込むと、合流ポイントへと急ぐ。














































『ダメダメ♪あんた達にはここで死んでもらわなきゃ困るのよ♪』








…………だが、私達の前に立ち塞がる敵が現れる。



それは、青紫の粒子を撒き散らす……エクシアに似た機体。

……マイスターWを倒した、アンノウン。なぜ、奴がここにっ!?



『言ったでしょう?あんた達は邪魔なのよ……だから、死んで頂戴?』

「ちぃっ!!」



そして、アンノウンはこちらにビームを放ってくる。

くっ、こちらの粒子残量は心残り少ない……このままでは、全滅してしまう。

…………なら。



『……兄貴っ!!』


すると、ミハエルから通信が繋がる。その瞳には……強い決意が浮かんでいた。

…………やはり、私達は兄弟だな……考える事が同じとは。



「……ハロッ!!ドライを自動操縦モードにしてマイスターWとの合流ポイントへ向かえっ!!これは最優先命令だっ!!」

『ヨハン兄ぃっ!?』

『ネーナ……お前だけは、絶対に逃がしてやるからよっ!!ハロ、いけぇっっ!!』

『ワカッタゼ、ワカッタゼ!!』

『ミハ兄ぃまでっ!?嫌だ……嫌だよ二人ともっ!!私を一人にしないでっ!!』

「……ネーナ……私達は、いつだってお前と一緒だ。」

『だから、俺達の分まで生きろよっ!!』

『いやあああああぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっ!!!!』

『はっは~ん、お涙頂戴の兄妹愛ってやつ?だけどさ、そうは問屋がおろさないってねっ!!』

『させるかよっ!!いけよファングッ!!』


加速して戦闘空域を離脱しようとするドライにアンノウンが攻撃を仕掛けようとするが、ミハエルがファングで妨害を行う。



『うざいっ!!』

「私を忘れてもらっては困るなっ!!」


アンノウンは左腕のバルカンでファングを撃墜していくが、そこに私がランチャーを放つ。

だが、その一撃はアンノウンの右腕に装備されたGNソードによって斬り裂かれた。


『あんた馬鹿ぁ?粒子残量が少ない状態でそんな攻撃を放った所で、容易く防げるに決まってるでしょうがっ!!』

「確かにそうだな……だがっ!!」

『これならどうだっ!!』



私の攻撃を目眩ましにして背後に回ったミハエルが、GNバスターソードをアンノウンの頭上へ振り下ろす。

この一撃は……避け切れまいっ!!




『だ~か~ら~ぁ~……無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァァァァッッッッ!!!!』



…………その考えは、もろくも崩れ去った。

アンノウンは驚異的な反応でミハエルの方向を振り向き、GNソードの刃から伸びたビーム刃でバスターソードごとツヴァイの右腕を切り裂く。



『なにっ!?』

「ミハエルッ!!」

『まずは……一人目ぇぇぇぇっっっっ!!』























『ところがぎっちょんっ!!』

『なっ!?』











……その時、アンノウンを吹き飛ばす影が現れる。

その姿はまるで、戦闘機のような…………いや、違うっ!!


「トゥルブレンツユニットだとっ!?」



その機体は、藍色のカラーリングに染められたスローネフィーアが変形したものだった。

だが……スローネフィーアは、マイスターWとアンノウンの戦闘で破壊されたはずでは……?






『……まったく、生きて戻って来いという命令を無視するとは……ネーナが泣いていたぞ?』






…………すると、通信が私とミハエルに繋がる。そこから聞こえる声は…………この状況で、なによりも信じられる存在の声。



『サーシェス、君は彼らを頼む。』

『わかったぜ、仮面の旦那。』


MS形態に変形したスローネフィーアの横に並ぶのは、流線形の装甲を持ちつつも、ガンダムと分かる灰色の機体。





…………来てくれたんですね、マイスターW。







++++++++






…………合流ポイントに向かっている途中でアンノウンの反応を確認したので向かってみれば、進路上から高速でこちらに向かってくるドライを発見した。

ネーナから話を聞けば、なかなかに面倒な事になっていたので、サーシェス用にカスタムされたスローネフィーアにトゥルブレンツユニットを搭載し、その上に乗る形で急いでやってきたという訳だ。



しっかし……こうも早くリベンジができるとはなっ!!





『……あら、せっかく見逃してあげたのにまた私の前に立ち塞がるの?』

「あいにくだが、私の部下を見捨てる訳にもいかないのでな……早急に、立ち去ってもらおうっ!!」

『あんたにできるのならねっ!!』




……その言葉と共に、アンノウンの機体が赤く染まって姿が見えなくなる……さっそくのトランザムかよっ!!



『マイスターW!?』

『ちっ、ガンダムにはこんな機能もあるのかよっ!?』

『まずは厄介なあんたからよっ!!』




かく乱を続けるアンノウンは、俺に狙いを絞って攻撃を仕掛けてくる……だが、これは好都合ってもんだ。

せっかくの『切り札』だ。使いどころを誤れば……こっちが負ける。






『ほらほらほらほらぁぁっっ!!手も足もでないみたいねぇっ!?』




……ガルムガンダムのスペックが高いとはいえ、トランザムを発動している奴の攻撃をなんとか紙一重で躱しているってのがやっとの状況だが……そう考えていると、左腕を持ってかれた。



『……ふん、イノベイター専用機でもその程度なのね。もう飽きたわ……バイバ~イ♪』



そして、奴はGNソードを掲げてまっすぐこちらへと突進してくる。

















……このタイミングを、待っていたっ!!


「トランザムッ!!」







俺の叫びと共にモニターに【TRANS-AM SYSTEM】の文字が浮かび上がり、ガルムガンダムの装甲を赤く染め上げる。



……リボンズがアンノウンを解析して作り上げた、擬似トランザムシステム。

まだデータが十分じゃない為に5秒しか持たず、擬似太陽炉はおしゃかになってしまうという代物だが……この状況なら、こっちのもんだっ!!



『なっ!?』

「おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっっっっっっっっ!!!!」



右腕のGNクローからビーム刃を展開してアンノウンに接近し、カウンターの要領でアンノウンの腕を切り飛ばす。



ガルムガンダムの中に集められたデータでは、アンノウンの機体はアヴァランチエクシアと同様の高機動型。

つまり、トランザム中であろうと機体制御と加速にGN粒子を大量に消費するという事が分かっている。

だからこそ、アンノウンの武器は比較的GN粒子を消費しないGNソードとなっている訳だ。


さらに、アンノウンはGNドライブを最大限に活用する為にアストレア等と同様のスリースラスター型ユニットを搭載していた。

それゆえに、直線的な動きはこちらより速いのだが…………動きが直線的なら、それさえ見切ればどうにかなる。




『……なんで……なんで私の動きが見きれたっ!?』

「そんな事、教える訳がないだろう?」

“助かったぜブリング”

“まさか、お前に手伝ってほしいといわれるとはな……いい経験になった。”




種明かしをしよう。

俺のやった事は実に簡単。ブリングに海中に潜んでもらい、アンノウンの動きを分析してもらっていたのだ。

これは、ブリングが俺を救助する為にサダルスードを持ち出していなければできなかった事だ。

まぁ、相手の動きがサダルスードのセンサーに捕えきれない可能性はあったが……海中から行う事で戦闘領域全体を範囲内に収める事ができ、かろうじて反応を追えたのが幸いだな。




「さぁ、これで終わ……!?」


俺はコクピットめがけてGNクローを振り下ろそうとするが、突然システムがダウンしガルムガンダムが動きを止める。

……おいおい、マジかよっ!?予定より早く粒子を使い切ったってのかっ!?



『……この借りは必ず返すわ。覚えておきなさい!!』



チャンスと見たのか、アンノウンは踵を返して戦闘領域を後にする…………それはいいんだが、粒子を使い切ったって事は…………


俺の懸念は現実となり、一瞬身体が浮いたかと思うと落下する感覚を味わう。そりゃ、GN粒子がなければ飛べませんよね……ぎゃああああぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!?!?





『……まったく、何をやってんだよてめぇっ!!』



そんなガルムガンダムを支えてくれたのは、スローネツヴァイ……だった。



『マイスターW、助けてくださって感謝します。』

「ふっ……たんに私のわがままだよ。」

“……雑談の途中悪いが、こちらに接近する機影が存在する。リボンズによると、どうやらエクシアがこちらに向かっているらしい。”



……おい、一難去ってまた一難かよっ!?






「……サーシェス、こちらにガンダムエクシアが接近しているらしい。殿を頼めるか?」

『任されたぜ仮面の旦那!!こちとら暴れたりねぇんだ……おい、そこの黒いの。このユニットを装備しな!!』

『助かる……それではマイスターW、行きましょう。』




そして、サーシェスと別れた俺達は戦闘領域から離脱し、俺達は輸送船へと向かう。




















帰還した俺達を見て、ネーナが泣きながらヨハンとミハエルに抱きつくのを見て…………初めて俺は、この世界を変える事が出来たのを実感した。











(つづく?)




[18495] 気がついたらイノベイド第10話【butterfly effect】
Name: 闇月夜の宴◆5546face ID:ffdd0e05
Date: 2010/06/11 20:46








アリー・アル・サーシェスの乗るスローネと戦闘中、突然エクシアの動きが変わる。その動きは、コクピットからでも分かるほど……圧倒的に速くなった。

これなら、いけるっ!!



「はあああああぁぁぁぁっっっっ!!」



正面からアリー・アル・サーシェスに突撃すると、スローネが吹き飛ばされて地面に叩きつけられる。周囲に放出されているGN粒子の密度が変化しているのか、こちらにダメージは一切ない。

……でも、エクシアに一体何が起こったというの……?




『……GNドライブを有する者達よ……』

「イオリア・シュヘンベルグ!?」


すると、モニターにイオリア・シュヘンベルグの姿が映し出される。


『君達が、私の意志を継ぐ者かは分からない……だが、私は最後の希望を……GNドライブの全能力を君達に託したいと思う。』



……戦闘中にも関わらず、私はイオリア・シュヘンベルグの言葉に耳を傾ける。

気がつけば、私はパイロットスーツの上から胸元を……日本に潜伏していた時に、ヴァニタス・ヴィオレントからもらったアクセサリーに手を伸ばしていた。



『君達が真の平和を勝ち取る為……戦争根絶の為に戦い続ける事を祈る。』



その言葉は、必ずしも私達に向けられた訳ではない……けれど、私達はこのメッセージを……イオリア・シュヘンベルグの想いを受け取った。



『CBの為ではなく……君達の意志で、ガンダムと共に……』



なら、私達は……自分達の意志で……戦い抜くっ!!



「……ガン……ダム!!」


背後から襲いかかってくるスローネの攻撃を避け、私はエクシアを動かす。


エクシアは両手に持ったビームサーベルを振るい、スローネへと攻撃を仕掛ける。

アリー・アル・サーシェスの腕がよかったからなのか、本体にダメージを与える事はできなかったが……撤退させる事はできた。


その様子を眺めていると……ふいに、コクピットのモニターに浮かんだ文字を眺める。



【TRANS-AM SYSTEM】



トラン……ザム……システム……?


そうか……これが、トランザム……


私達がイオリア・シュヘンベルグから託された……ガンダムの、新たな力。






++++++++





「ガルムガンダムの整備を行ったけどさ……太陽炉は完全に使用不能。各部に搭載されたGNコンデンサーも圧縮粒子の解放で破損している。一度オーバーホールしなければ使い物にはならないよ?」

「……そうか。」


輸送艦に戻った俺達は、ヒクサーからガルムガンダムについての報告を聞いていた。

……改めて考えると、ビリー・カタギリはハンパないな。ほぼ独力でトランザムシステムを開発できるんだもんな……人の底力は恐ろしいもんだ。


だが、考える事は他にもある。アンノウンはどうやってヨハン達の居場所を特定した?

それに、改めて考えると奴の言葉に疑念が残る……『見逃してあげたのに』……つまり、俺が生きていた事を知っていたのか?



「……ブリング、私が生存している事を知っているのは……」

「私達を除けば、後は王留美くらいだろうな……なにせ、彼女に場所を提供してもらった訳だからな。」

「あ、お前らが帰ってくる前にネーナちゃんに話を聞いたんだけど、ヴァニちゃんが連絡を入れる前は王留美を頼ろうとしていたみたいだぜ?」



……うん、怪しさ抜群だな。少なくとも、王留美がアンノウンと何らかのつながりを持っている事は確かだな……




“……という訳だ、リボンズ。”


俺は脳量子波を通じて、リボンズに確認を取る。いやぁ、なぜかリボンズは俺とのリンクを絶えず確保してあるからこういう時には連絡をとりやすい。

……おかげでプライバシーも何もあったもんじゃないけどなっ!!



“……分かった。王留美についてはこちらで手を回しておくよ。”


……ん?いつもの不遜な雰囲気はどうした?あれか、金ピカ大使にうんざりしてきたとか?


“それはとうの昔に感じているよ。僕が気になっているのは、アンノウンがなぜヴェーダを確保しなかったのかだ。ヴェーダが重要なのはあちらだって同じはずだ……なのに、アンノウンはトリニティを優先した。”


……確かに、言われてみるとそうだな。

俺というイレギュラーでリボンズが原作通りに動かない可能性があるってのに、ヴェーダを放置するってのはおかしい。



“考えられるのは二つ。アンノウンがヴェーダを必要としていないのか、もしくは……”

“既にヴェーダに匹敵するコンピュータを持っているかのどちらかだな。”



……けれど、流石に後者はないだろ。原作でもヴェーダの位置は結構動かせるみたいだったけど、同スペックのコンピュータなんてそう簡単には作れないぜ?


“……まぁ、この事については後で考えよう。アリー・アル・サーシェスは別口で国連軍と合流する。君達もまた宇宙へと上がってくれ。”

“了解だ。”



「……リボンズからの連絡だ。私達はこのまま宇宙へと上がるぞ。」

「アイアイサ~♪……ところでヴァニちゃん、いつまでその仮面被ってるんだよ。もうマイスターWとしての仕事は終わりだろ?」


……そういや、マスクをかぶりっぱなしだったな。元々は刹那達と接触する危険性を考えて被っていたものだから、もうこのマスクも用はないな。


「……確かに、ヒクサーの言う通りだな。もう、コイツは必要ない。」


俺はマスクに手をかけると、ゆっくりとそれを外す。











「マイスターW、我々にお話があるとの事ですが……!?」

「いったい、何のよ……はぁっ!?」

「ヨハン兄ぃ、ミハ兄ぃもどうしたって……………………………………」






すると、タイミングを見計らったかのように、ミーティングルームにヨハン達が入ってくる。

……おかしい、俺はこいつらを呼んだ覚えはないんだが?





「あ、ヨハンちゃん達を呼んだの俺。ドッキリだ~いせ~いこ~う!!」


いつの間に連絡してたんだこいつ?ブリングも呆れ返ってるし。


……まぁ、いい加減素の俺でこいつらとは向き合いたかったしな……ちょうどいいか。





「……あの……ひょっとして、マイスターW……なのですか?」

「お前、顔を怪我していたんじゃなかったのかよ……」

「……プトレマイオスのマイスターの中に知り合いがいてな、彼らと接触する危険を考えて被っていたんだ。騙していた事については謝る………改めて名乗ろう。俺はヴァニタス・ヴィオレントだ……これからもよろしく頼むぞ?」



マスクを小脇に抱えて、俺は右腕をヨハン達に差し出す。ヨハンはようやく状況を飲み込むと、俺が差し出した手を握り返す。


「……たとえどんな姿をしていようと、私達があなたの部下で……命の恩人なのは事実です。こちらこそ、改めてよろしくお願いします。」

「確かに、変なマスクをかぶっているよりはそっちの方がマシだしな……けどよ、いずれアンタを超えてやるからなっ!!」



……ミハエルもまた、俺の手を握り返す……というか、やけに強く掴んでくる。だが……まだまだ甘いな。



「……い、いででででででっっ!?」

「そんなんじゃあ俺を抜くのはまだまだ先みたいだなぁ?」

「テメェ、そっちが素かよっ!?というか、さっさと離せ!?」


とりあえず、ミハエルの手をおもいっきり握りしめてやると、ミハエルはいとも簡単に音を上げた。

う~ん、こいつはからかいがいがありそうだな。


「ところで……さっきからネーナが黙りこくっているんだが、どこか調子でも悪いのか?」

「ふ、ふぇっ!?」


ミハエルの手を離すと、俺はネーナの方に視線を向ける。顔もなんだか赤いし……兄貴達が助かった事で、緊張の糸でも切れたか?



「……な、なんでもないからっ!!じ、じゃあヨハン兄ぃ、ミハ兄ぃ!!私、先に部屋に戻ってるねっ!!」

「おい、ネーナ!!」

「ちょっとまてよ!?」






…………うん?マイスターWの時は態度が普通だったのになぁ…………俺、何かしたっけ?








「……ヒクサー、ヴァニタスは……またなのか?」

「兄弟の命を助けてもらった恩人が実はイケメンでしたってパターンか……惚れない要素はないと思うけど、リヴァイヴとヒリングが知ったらどうなる事やら……」

「……しかも、ヴァニタスが日本に居た時の知り合いもアジトにいたはずだぞ……?」







++++++++






キュピーンッ!!


「「「!?」」」





……何かしら今の感覚は……なんかこう、新たな敵が現れたような……




「……ヒリング、君も感じたのか?」

「……なんか、とても胸がざわつくんだけど……」



みれば、最近私の世話をしてくれるリヴァイヴとヒリング(なぜか、2人ともメイド服だけど)も同じような感じらしい。


…………あのリボンズって人から説明を受けた後、私は一種の監禁生活をおくる羽目になった。

まぁ、監禁とはいってもある程度の自由は貰えている(なぜか、首輪はヴァンが戻ってくるまではつけろって言われたし、渡される服装も露出度の高いドレスが多い)んだけど……気になるのは、沙慈の事。

ルイスの事もあるし……あの子、大丈夫かしら?




……それはともかく。




「「「ヴァン(ヴァニタス)…………えっ!?」」」







不意に気になった人の名前を漏らすと、なぜか3人とも同じタイミングで同じ人物の名前を出した。


……本当に、いったいなんなのかしら?




++++++++









……唐突だが、バタフライ効果という物をご存知だろうか?


俺も詳しい事は覚えてないが……蝶の羽ばたきが、どこか離れた場所で竜巻が起きる……つまり、ほんの少しの小さな事が、やがて無視できないほどの大きな変化へと繋がるみたいな事を難しい理論で述べたものだったはずだ。









アジトに戻った後、なぜかメイド服を着て出迎えてくれたリヴァイヴやヒリングを見て驚き、なぜか露出度の高いドレスと首輪を着けた絹江が抱きついてきて女性陣からの視線が怖かったりした後……部屋で休んでいた俺に、リボンズからの通信が入ってきた。




「……リボンズ、それは……本当なのか?」

『あぁ。確認もとった……』


それを聞いて……思わず、バタフライ効果の事が頭に浮かんだんだ。














『アリー・アル・サーシェスは……ロックオン・ストラトスに討たれ、死亡したよ。』










(つづく?)




[18495] 気がついたらイノベイド第11話【1st season終了】
Name: 闇月夜の宴◆5546face ID:ffdd0e05
Date: 2010/07/24 09:48







「……太陽炉搭載機とはいえ、やっぱりジンクス程度じゃラメエルの相手にはならないか……ちょっとは期待したんだけどなぁ?」

『……ば、化物め……貴様は、貴様はいったいなんなんだっ!?』

「私?そうねぇ……通りすがりの堕天使よ。それじゃ、こんないい女の手で逝けるんだから感謝してね~♪」

『……すま……ワー……隊長、後は……』



相手のパイロットが何かつぶやいていたけど、私は気にせずにジンクスの胸部をビームライフルで撃ちぬく。周囲にGN粒子を撒き散らしながら、そのジンクスは派手に爆発して炎に包まれる。


……フフッ♪綺麗なものねGN粒子の光は……あぁぁぁぁぁ、サァァァイィコォォォォッッッッ!!にカ・イ・カ・ン♪おっと、いけないいけない。こんな所でチンタラしてたら、メインイベントを見逃しちゃうわね♪

芯から疼く体をなんとか抑えながら、私はラメエルのメインカメラをある方向に向け……その宙域で戦っている、スローネとデュナメスに焦点をあわせる。





優勢なのはデュナメス。スローネが解き放つファングの群れを、自分の周囲を守るように展開したシールドビットで遮りながら果敢にスローネへと向かっていく。どうやら、私からのプレゼントは気に入ってくれたみたいね……最終的にはボロボロになってもらわないと困るんだけど、サーシェスには死んでもらわないと……


だって私、アイツ嫌いだもん。


悪役としては突き抜けてるのかもしれないけど、いずれ世界を支配する身としてはいつ牙を向くか分からない狂犬なんて害悪にしかならない訳だし、邪魔よ邪魔……けど、さすがに戦闘能力は高いわね。あのスローネのスペックはツヴァイとほとんど変わりないのに、強化デュナメスと互角……いや、ロックオンが右目を負傷した事がバレたのか、徐々にデュナメスが押されている。そりゃ、シールドビットをファングと相殺されてたらいずれそうなるわよねぇ?あれかしら、復讐以外にもサーシェスを倒す理由があるから原作以上に血がのぼっているのかしら?



「と、いう訳で……ほんの少しだけ、お手伝いしてあげるとしましょうか♪留美、ちょっと手伝って。」

『……仕方ないわね。私ではラメエルをうまく動かせないのだから、迅速に行動をお願いするわ。』

「はいは~いっと♪」


私は意識を集中させると、スローネにアクセスしスローネの動きを一瞬だけ止める。案の定、その隙が故意に生み出されたものと知らないデュナメスはビームサーベルを構え、スローネの胸部を見事に貫いた。




「どっっっか~ん♪」




後は、スローネの擬似太陽炉を暴走させて爆発を引き起こすだけ。爆発に巻き込まれたデュナメスは炎に飲み込まれたけど……かろうじて、本当にかろうじて生き残っていた。



これで、ロックオンは生き延びた。けれど、毒性を持ったGN粒子を大量に……それこそ、2ndシーズンのラッセなんて目じゃないほど浴びたから、今後戦闘に出る事はない。



まぁ、殺しちゃうと後々トレミーの面子が覚醒しちゃうからね……あの転生者が原作改変を目論んでるなら、こっちだってその気でいくわ。あぁ、思い出しただけでもムカつく。アイツのせいでしばらくラムエルが使い物にならないじゃない。いくら量産体制に入っているとはいえデータ取りがまだなのに……アルマロスはトレミー組にツインドライブのデータが蓄積されないと完成しないし、しばらくはこの機体で頑張らないとね。



おっと、色々考えこんでたらエクシアが来ちゃった……そろそろ退散しないとね。





「……フフフ、CBがどう動くのか楽しみだわ♪」

『まぁ、彼らには頑張ってもらわないといけないわね……いずれ私達が支配する世界の為に。』

「そうね……」





 そして『私達』はステルスモードに移行して宙域から離脱する。さぁって、後は色々下準備をしなきゃね……








++++++++








リボンズがサルベージした戦闘記録には、強化武装を施されたデュナメスとスローネの戦闘が映し出される。ファングとシールドビットがぶつかり合い、スローネはデュナメスの右側に回りこむようにして戦っていた。だが、突如スローネが動かなくなった隙をついてデュナメスがビームサーベルをこちらへと突き刺す瞬間で、戦闘記録は終了していた。




『以上が、スローネフィーアに残っていた戦闘記録を可能な限り復元したものだよ。』

「くそっ!!こちらの読みが甘かったって事か。」

『しかし、これで奴の行動に説明がつく……状況は最悪だけどね。』





確かに、リボンズの言う通りだ。サーシェスという貴重な戦力を失っただけではなく、俺達の状況はさらに悪化するものとなっている。


……エクシアがトランザムを発動させた戦闘の後、サーシェスが乗るスローネは武装の補充と共に整備を受けており、その段階では機体に異常はなんら見受けられなかった事を俺も確認している。だから、外部からハッキングでもされない限りスローネが不具合を起こすはずがない。けど、それも本来ならばありえない。CBのガンダムは俺達が使用する機体も含めて、ヴェーダからのサポートを受けれるようになっているのだから機体がハッキングされるという事はヴェーダを経由するしか方法がない。




『だが、起きるはずのない事態が起きてしまった。つまり、敵はヴェーダへ自由にハッキングする事が可能という事だ。』

「リボンズ、そっちでは何かつかめなかったのか?」

『……ガンダム等に対する不審な点は注意すれば見つかるかも知れないけど、それ以外は難しいね。僕達の計画が進めばヴェーダは地球連邦の中核を担う事になる。それほどの膨大な情報の中から不審な点を見出すのは僕一人では不可能だ。』


だよなぁ……CBはヴェーダに依存している部分が多い。イオリアは様々な保険を仕掛けていたようだが、肝心のメンバーがヴェーダに依存していたらいざという時に対応が遅れてしまう。その実例が俺達の行動に対するトレミーのメンバーであり、今の俺達であったりする。



しかし、ヴェーダの動向を監視する為だけの人材を配置する訳にもいかない。



原作後半でイノベイドを量産できたのは、単純な命令を実行するだけの生体コンピュータみたいなものだったからだし、各地に散らばっている情報収集用のイノベイドを覚醒させるのも時間がかかる。となると、俺達が今動かせる人員はごく限られたものになる……いくらトリニティが増えたからといって、転生者の動向に目を光らせていたら身動きがとれない。軍事面はなんとかなるにしても、株価とかに手を出されたら俺達じゃ対応し切れないぞ?


こういう時、外部からヴェーダの動向を分析できる人やコンピュータがあったら……って待てよ?





















あげゃげゃげゃげゃげゃ!!






















……あいつなら、出来るんじゃね?








++++++++





刹那、なんでエクシアに実体剣が装備されているか分かるか?


……GNフィールドに対抗する為だ。計画の中には、対ガンダム戦も入っているのさ。


もしもの時は、お前が切り札になる……本当なら、お前みたいな女の子じゃなくて俺達がやるべきだと思うんだが、エクシアのマイスターはお前だ。


任せたぜ、刹那。







……脳裏には、以前ロックオンから聞かされた言葉が浮かんだ。そのロックオンは今、トレミーで治療を受けている。



「わかっているロックオン……私は、戦うことしかできない破壊者だ。でも、そんな私に……温かさをくれた人達がいる。」



ルイス、沙慈、絹江、マリナ……そして、ヴァニタス。その笑顔が、脳裏に浮かんでは消える。



「戦うことしかできないけど……私達の戦いは、誰かの涙を生むものかもしれないけど……」



次に浮かぶのはロックオンやアレルヤ、ティエリアにフェルト等……大切な、仲間達の顔。



「それでも、守りたい存在がいる……だから、私は戦う!!争いを生むものを倒す為に、この歪みを破壊するっ!!」



叫びと共に私はエクシアを加速させ、目の前にいる金色のMS――アレハンドロ・コーナーが乗る機体のGNフィールドを破り、左腕に、GNショートブレイドを突き立てる。



『き、貴様ぁっ!!』

「武力による戦争根絶……それこそが、CB!!」



金色のMSは右腕のビームサーベルを振るおうとするが、エクシアの左腰に携えられたGNロングブレイドを抜き放つと、その右腕にロングブレイドを突き刺す。それと同時に、金色の機体を包んでいたGNフィールドが……完全に消失した。



『フィールドがっ!?』

「ガンダムがそれを成す……私と、共に!!」


ビームサーベルとビームダガーを胸部に突き立てると、私はエクシアを急上昇させて右腕のGNソードを展開する。


「そう!!私が……」

『ばかな……この私が、貴様ごときにぃぃぃぃっっっっ!!!!』













「私達が、ガンダムだっ!!」











振り下ろされたその刃は……金色のMSを斬り裂く。そして、エクシアのトランザムが終了すると共に……金色のMSが、大爆発を起こした。







「はぁっ、はぁっ……はぁっ……はぁっ……」



みんなは……みんなは無事なの……?


そんな事を考えていると、警告音が鳴り響きこちらへ急接近してくる赤い光が見える。



「……まだ……いるの……?」


まだ、粒子のチャージが完了していない……この状態で、どこまで戦えるか……いや、そんな事を考えていても仕方ないか。


そして、敵機体が視認できる距離まで近づいてくる。その赤い光を撒き散らす機体は……フラッグ!?まさか、擬似太陽炉をむりやり搭載したのっ!?



そのフラッグは左腕の武器を構えると、こちらへ向かって突撃してくる。


ビームサーベル……なんて無茶をっ!!


その赤い刃をGNソードで受け止めると、敵機体から通信が入った。


そこに映っていたのは……アザディスタンでのミッション時に出会った、ユニオンの兵士だった。


「貴様はっ!!」

『なんと、あの時の少女かっ!?やはり、私と君は運命の赤い糸で結ばれていたようだ……そう、戦う運命にあったっ!!』


そんな事を叫びながら、フラッグはエクシアの左腕を切り飛ばす……なんだコイツ?これが、ルイスの言っていた『変態』なのかっ!?


『ようやく理解した……君の圧倒的な性能に、私は心奪われた。この気持ち……






まさしく愛だっ!!』

「愛っ!?」





……駄目だ、気をしっかり持たないと。コイツのペースに巻き込まれていたら……絶対にやられるっ!!




『だが、愛を超越すればそれは憎しみとなる……行き過ぎた信仰が、内紛を誘発するようにっ!!』

「……なぜ……なぜそれが分かっていながら戦うっ!?」


幾多もの斬撃がぶつかり合い、GNソードがフラッグの右足を斬り裂く。それでもなお、フラッグは止まらない。


『軍人に戦う意味を問うとはナンセンスだな!!』

「違うっ!!軍人なら、その戦いは『国家』を……『国民』を守る為のはずだっ!!だが、貴様からは戦いへの狂気しか感じられないっ!!貴様は……歪んでいるっ!!」

『確かに、それは認めよう……だが、そうしたのは君だっ!!』


フラッグのビームサーベルがエクシアの頭部右半分をえぐり、右腕のボディーブローがコックピットを揺らす。


『ガンダムという存在だっ!!』


さらにエクシアは蹴り飛ばされるが、私はGNソードを畳むとフラッグに向かってビームを放つ。だが、そのビームは常人では耐え切る事のできない機動で躱された。


『だから私は君を倒す……世界などどうでもいい。己の意志でっ!!』

「貴様だって、世界の一部だろうにっ!!」

『ならばそれは、世界の声だっ!!』

「違う……貴様は自分のエゴを押し通しているだけだっ!!」



コイツの歪みを創りだしたのがガンダムなら、私自身の手でそれを破壊する!!だからお願いエクシア……力を貸してっ!!



私の思いに答えるかのようにエクシアの太陽炉が唸りをあげ、GNソードを粒子が包みこみ……それは、輝く刃となる。



「……あなたのその歪み、この私が断ち切るっ!!」

『よく言ったガンダム!!』

「『うおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっっっっっっ!!』」







そして、2機は一気に接近し……お互いの刃が、その胸部に突き刺さった。


『……ハワード……ダリル……敵は……』


爆発によって、その声は最後まで私の耳に入ること無く掻き消える……いや、聞かなくてよかった。私達の行動で誰かを失った存在……その権化が、奴だったのかもしれない。



「……ありがとう、エクシア……最後まで、私に付き合ってくれて……」



ゆっくりエクシアのモニターをなでると、まるで眠るようにコックピットの光が落ちていく。視界には、球体となって浮かぶ血。座席にゆっくりと身を沈めながら、私は瞳を閉じた。



……マリナは、あのメールをよんでくれるかな……フェルトが今の私を見たら、やっぱり泣くんだろうな……

沙慈とルイスは、どうしているんだろうか……絹江が行方不明になったって聞いたけど……










そして……ヴァニタス。




……会いたい……どうしようもなく、あなたに会いたいよ……





































『あげゃげゃげゃげゃげゃげゃげゃげゃ!!こんな所で死ぬにはまだ早いぜ、エクシアのマイスター?』







































……その時、まるで音が爆発したかのような笑い声が響く。






「……ガ……ガンダム……?」





薄れ行く意識の中で目を開く私の前に……エクシアに似た、赤いガンダムが居た。











++++++++




「……ようやく、一区切りがついたな。」

「そうだね。けれど、問題はいろいろある。行方不明になったプトレマイオスのメンバーに、ただのテロリストとなったカタロン、未だ姿の見えない転生者等……もう、君の知る“原作”からは大きく道がずれた。」




口調こそ呆れたような口調だが、リボンズの口には笑みが浮かんでいる……その笑みが何を意味しているのかは、俺には分からない。





「けれど、人類の未来はもうすぐ始まろうとしている……僕達はイオリアの計画を継ぐものとして、その使命を果たさなければならない……君には期待しているよ、ヴァニタス?」

「……分かっているさ。」


……あぁ、痛いほど分かっている。ここまで来たんだ……今更引く訳にはいかない。



守りたい世界を、守りたい人を守る為に……俺は、戦う。




++++++++


「ご足労だったなお嬢様……って、1人か?」

「紅龍なら所要で外していますわ……それで、状況はいかがですか?」

「1機目はロールアウトした。今は実戦に向けてのテストに出払っている。」

「他の機体は?」

「予定通り、順次ロールアウトする予定だ。だが、やはりパイロットが足りん。フェルトも頑張ってるんだが、それでもな……せめて刹那さえいてくれば……」

「そうですか、こちらでも可能な限り手を尽くします。ところで、よかったら第1世代の機体を見せてくださらない?」

「ん?了解。」


イワン・ヴァスティがモニターを操作すると、隔壁が上昇して中から灰色と白の装甲を持つ機体が姿を現す。


「これがOガンダム……初めて太陽炉を積んで稼働した機体……」

「太陽炉は取り外して、既に機体に装着してある。だが、こいつを使ってもマッチしなかった……エクシアの太陽炉でも、うまくいくかどうか……」


そう言いながら、イワン・ヴァスティは別の隔壁を眺める。そこに眠っているのは、これからのCBにおいて根幹となる機体……



記された文字は、『GN00 00GUNDAM』




「世界を変える機体……ダブルオーガンダム……」




そして、私達の計画を実現するのに必要な機体……


“ツインドライブの実戦データがまだないから、アルマロスの完成にはコイツが完成してもらわないと困るのよねぇ。はぁ……早く完成して欲しいわほんと”


……すると、私のからため息と共に声が聞こえる。


焦る必要は無いわリュミナス。私達の野望はまだ始まったばかりなのだから……念入りに準備をしないと。


“それもそうか。でも、大変なのよねぇ……あのクソ野郎のせいでアロウズが大きく変化しちゃってるし、こっちの思い通りにはいかないかもよ?”


あら、ゲームはそれなりの難易度がなければ面白くないと言ったのはあなたよ?それに楽しみじゃない……圧倒的な力でねじ伏せて、相手の絶望した顔を見るというのも。


“……私が言うのもなんだけど、アンタもずいぶん変わったわよねぇ……実のお兄様にあんな事をするし。”


アレはあなたも楽しんでいたじゃない……私だけのせいにしないでほしいわ?まぁ、今は話を止めておきましょう。変な目で見られるのはゴメンだわ。



“はいはい……”



リュミナスが眠ったのを確認すると、私は再びダブルオーガンダムが眠る隔壁を眺める。






……楽しみだわ……この機体が、私の遊技盤でどんな駒となるのか……フフフ♪





++++++++







ルイス、久しぶりにメールを出します。


君から返事が来なくなって、もう2年が立ちました。でも、どうしても伝えたい事があったから……


僕、今年から宇宙で働く事になったんだ。


悲しい事がたくさんあったけど……でも、小さな夢を1つだけ叶えたよ。


だから、もう1つの夢を叶えさせて欲しい……




待ってるよルイス。宇宙で、待ってるから。


















―1st season END―




To Be Continued...






[18495] 気がついたらイノベイド閑話【1st~2nd】
Name: 闇月夜の宴◆5546face ID:ffdd0e05
Date: 2010/08/24 08:51








「あ、マリナ様だ!!」

「ほんとだっ!!マリナ様~♪」

「みんな、元気にしていたかしら?」

『うんっ!!』

「大丈夫マリナ様?なんだか疲れてるみたい……」

「大丈夫よ、みんなに会えたら疲れなんか吹き飛ぶから。それじゃあ、今日は何をして遊びましょうか?」











「……今更かもしれませんが、やはりマリナ様が保育士まがいの事を行うのはまずいのでは……?」

「名目上は孤児院の視察という事になっていますし、マリナ様のストレスを発散するいい機会にもなるので問題はありません。それに……」

「それに?」

「……あぁ、気にしないでください。」





子供達と触れ合うマリナを見て、皇女ではなく普通の人生を送った方がよかったのではないかと考えてしまっただなんて、口が裂けても言えるはずがない。今のマリナは、アザディスタンが……いえ、世界が平和になる為にはどうすればいいのかを自分なりに考えて行動している。孤児院の援助だってその一環だ。眉を顰める連中もいるが、ただ喚くばかりで何も行動しない輩よりは偽善だろうと行動する方がマシに決まっている。






――CBが表舞台から姿を消して、もう3年になる。1年ほど前に発生した未曾有のエネルギーテロにより太陽光が遮断され、地上は大混乱に陥った。

そんな時に活躍したのが、今まで太陽光エネルギーの恩恵を受けれずにいた中東諸国だった。マリナの働きかけによって団結した諸国は枯渇しかかっていた化石燃料をなんとかひねり出す事ができ、それを惜しみもなく各国へ提供した。これによって、デブリ処理の為宇宙へと労働者を送れるほどの余力が生まれた各国によって宇宙開発が推し進められ、地球連邦ではテロ対策や国家間を超えた災害救助のための独立治安維持部隊『アロウズ』が結成される事となった。


もちろん、アザディスタンにも影響はあった。マリナの行動は世界各国で高く評価され、連邦による中東への支援が開始される事となる。また、神が味方しているかのように新たな化石燃料の採掘場が発見され、僅かながらも輸出する事が可能となった。そして、アザディスタンは少しずつ……本当に少しずつだが、復興への道を歩み始めた。



……まぁ、嬉しい事だけではないのだが。

同じ頃にマスード氏が病気により亡くなってしまい、暴走した保守派はアザディスタンを離れ反連邦組織『カタロン』へと参入する事になってしまった。本人達は『第二のCB』になるべく活動しているようだが……私からすれば、CBよりもたちが悪いただのテロリストに過ぎない。そんな輩に……ようやく平和の道を歩もうとしている今のアザディスタンを壊させる訳にはいかない。




「~~♪~~♪~~♪~~」




気がつくと、柔らかな旋律が耳に入ってくる。どうやら、マリナが自作した歌を子供達と一緒に歌っているようだ。






……そういえば、少しだけ頭が痛くなる事があったわ。





以前孤児院への視察を行っている際に、たまたま日本の映像作品(いわゆる『ジャパニメーション』という奴で、アザディスタンにもわずかにではあるが知られている事は聞いていた)を鑑賞する事になった。子供向けにしてはよく出来たものだと思い、同時に世界的な大混乱の最中だというのにサブカルチャー文化にまで力を入れる日本の将来を心配したのだが……マリナの感想には驚かされた。






『……シーリン、日本は素晴らしい国ね。』







そのアニメの何処にそう言える部分があったのかと問い詰めたかったが、そんな事をせずともマリナの方から勝手に喋ってくれた。そして、その理由があまりにもズレていて……より頭痛がひどくなった。あろうことか、マリナはアニメの内容に感銘を受けたのだ。



その作品は侵略してくる異星人とロボットで戦うというものだったのだが、なぜか少女が歌を唄う事によって異星人達が戦意を無くしていき、最終的には和解するのだ。私はまぁ、夢がある展開でいいではないかと思っていたのが……この馬鹿皇女は歌で人々は分かり合えると解釈したらしい。現に、その作品を見てからは公務の合間をぬって子供達と唄う為の歌詞を書いていたりする。まぁ、今は孤児院で披露しているくらいなので見逃してはいるが……さすがに国家を挙げて全世界へ発信しようとするのは止めようと心に固く誓った。













































……それから数年後、まさかマリナの考えが現実になるとは思いもしなかったのだが。









++++++++






『……それじゃあフェルト、準備はいいな?』

「はい……フェルト・レゾナンス、ガンダムアストレア……ミッションを開始します。」



訓練用のターゲットを確認すると、私はアストレアを駆って一つ一つ正確にターゲットを撃ち落としていく。


 
【ターゲット接近、ターゲット接近!!】

「はああああぁぁぁぁっっっっ!!」



今度は目の前に現れたターゲットに向かってプロトGNソードを振り下ろすと、ターゲットは一瞬にして爆散した。




――まだだ。まだ、こんなものじゃ足りない。

刹那の傍に居る為にも、ロックオンの代わりに戦う為にも……私は、強くならなきゃいけない。

だからパパ、ママ……力を貸して。






++++++++







「……おいおい、これじゃあ俺の立場ってもんがないんじゃねぇか?」

「まぁ、お前さんが驚くのも無理はない……わしだって、フェルトがあそこまでやるとは思わなかったんだ。」



――フェルトの訓練の様子を眺めながら、俺は思わずそう呟いてしまう。どうやら、おやっさんも同じ意見のようだ。

いくらハロのサポートがあるとはいえ、第2世代のガンダム……アストレアの動きは、エクシアと比べてもなんら遜色のないほどだった。



「……フェレシュテが保管していたアストレアは中身がほぼ第3世代と同等の代物になっとるとはいえ……元々マイスターとしての適性がなかったフェルトがあそこまで出来るのはおかしい。ロックオン、お前さん何か知らんか?」

「さぁね……俺よりはティエリアの方が知っている気がするぜ?なにせ、ここ最近はあの2人が一緒にいる所をよく見るからな。」



ほんと、一時期は険悪なムードが漂ってたってのに女ってのは分からないねぇ?最近はまるで姉妹のように会話してやがるし……まぁ、俺としては問題ないんだが。



「……強い意志と努力で腕をカバーしとるという訳か。これなら、お前さんの抜けた穴を埋められるかもしれんな。」

「よしてくれおやっさん。俺だってまだ戦え……」

「馬鹿な事を言うな、お前さんとラッセが戦場に出るなどモレノが許さんぞ。いや、モレノだけじゃない……わしら全員が許さん。」



その言葉に、俺は口を閉じるしかない……あの戦い以後、俺とラッセは擬似太陽炉のGN粒子を浴びたせいで人体に支障が来ている。なんとか日常生活を送れるほどには回復したが、長時間の戦闘になど耐えられない。つまり、俺はガンダムマイスターとしてはもう……戦えなくなってしまった。


だからこそ、この状況がもどかしい。守らなくちゃいけない人達が戦場に出るのを、ただ眺めているしかできない自分が……憎くてしょうがない。



「……それに、フェルトを止める資格などわしらにはないさ。どんな崇高な目的があろうとも、わしらは子供を戦場に送り出している……それは、変えられる事のない事実だ。」

「おやっさん……」

「今更フェルトを特別視する事はできん……あの子は自分の意志でガンダムに乗る事を決めてしまった。ならば、せめて……あの子が笑顔で帰ってこられる場所を、お前さんが作ってくれ。」














「イアンの言う通りだロックオン。」

「……ティエリアか。」




すると、入り口のドアが開いてティエリアが中へと入ってくる……盗み聞きとは趣味が悪いな?



「聞こえてしまったものは仕方が無いだろう?……それに、フェルトを甘く見るな。彼女は君が思っているほど弱くはない。」

「んだと?」

「もう、守られるだけの少女ではないという事さ。今の彼女はそう……心強い強敵(とも)だ。」









……おいおい、マジでティエリアとフェルトの間に何があった?なんか、誇らしげに笑みを浮かべているんだが……





「……お前さん、罪づくりな男だな。」

「おやっさん、何言ってんだあんた?」




++++++++












「リヴァイヴ、最近の調子はどう?」

「……絹江か。いや、全然駄目だ。ヴァニタスの奴、こちらのアプローチにまったく気づかない。」

「そうよねぇ……他のヒリングはどう?」

「……もうさ、既成事実を作った方が早いんじゃないかって思うのよ。流石に3人がかりで押し倒したらヴァニタスでもなんとか出来るって。」

「ネーナちゃんの方はどうするのよ?」

「とりあえず、声はかけてみる。」

「それじゃ……今夜にでも決行しますか。」

「「了解。」」








++++++++



ゾクッ!!



……な、なんだ?今、寒気が……



「どうかしたかね?」

「い、いえ……なんでもありませんカタギリ司令。」

「そうか。では、報告を続けてくれ。」

「かしこまりました。」


……さて、俺が現在どうなっているのかを教えよう。とりあえず、アロウズは予定通り設立する事が可能となった。まぁ、フォン・スパークなら俺達に感づいて行動を起こすとは思っていたが……事件の規模が原作よりもでかくなったのは予想外だった。

そのおかげという言い方も変なのかもしれないが、アロウズはそのあり方を大きく変化させ……原作通りである対テロリスト用の機動部隊の他に、国家間の枠組みを超えた特別救助部隊が生まれた。


で、俺はホーマー・カタギリ総司令の副官兼アロウズの監視役として派遣される事になった。まぁ、それは問題ないんだが……なぜライセンサーが俺直属という扱いになるのかが分からない。しかも、ビリー・カタギリも既に所属しているしメメントモリは開発されてないし(こいつは元々止める予定だったので問題はないのだが)……完全に俺の知るアロウズとは違うよなぁ。

唯一の救いは、ミスター・ブシドーが相変わらず存在しているという事だった……なぜアイツが居る事に安堵感を覚えなくちゃいけないんだ俺はっ!?



「それと、実験的に投入した新型オートマトンについてですが……作戦行動にはなんら問題ない事が判明しました。」

「……ふむ。君の進言によって造られた、『敵勢力の殲滅』ではなく『敵勢力の完全無力化』を目的としたものだったな?」

「はい。使用される特殊弾丸にコストが掛かりますが、現場の方からはかなり評価が高いようです。」

「そうか……ならば技術部に通達を送り、新型オートマトンの量産化を急がせろ。テロリストに人権等を与えるつもりはないが、兵士達に潰れてもらっても困るのでな……」

「了解しました。」







……さぁて、CBが活動を再開するまであと1年弱。出来る限りの事はやっておきますか。






(つづく?)




[18495] 【おまけ】予告編
Name: 闇月夜の宴◆5546face ID:ffdd0e05
Date: 2010/09/07 22:28













「ガンダムアルマロス……いえ、違いましたわ。この『ソレスタルガンダム』こそが、変革された世界を支配する神となるのです。」










西暦2312年――未だ、人類は一つになりきれずにいた――





「これは……ガンダムッ!?」




――変革の力と出会った青年――




「ルイス・ハレヴィ……なぜお前が戦場に居るっ!?」

「刹那が……CBに?」



――戦場で再会する者達――




「あげゃげゃげゃげゃ!!ようやく面白くなってきたな……いいぜ、俺を楽しませろよっ!!」

「生き恥を晒し、仇敵の手を借りたかいがあったと言うものだ……待ちわびたぞ、少女よっ!!」




――最凶最悪の切り札――



「僕はレイヴ・レチタティーヴォ――『新たなる監視者』となる者です。」

「これが……CBの生み出された真の理由だと言うのかっ!?」




――世界の真実とは――




「――初めてだよこんな気持ちは。僕に、『友』と呼べる存在が出来るなんてね――」

「ヴァン……無事に帰ってきてね?」



――すべては――




「目覚めて、ダブルオー。ここには……0ガンダムと、エクシアと……私が居るっ!!」

「馬鹿な……トランザムバーストだとっ!?」




――対話に繋がる――







「ヴァニタス・ヴィオレント――Iガンダムχ(カイ)、出るぞっ!!」





―Re;Start―

































――そう、僕は……君達が『ガンダム』と呼ぶモノだよ――







Coming Soon...



[18495] 【超展開】気がついたらイノベイド2ndシーズン00話【ワロタ】
Name: 闇月夜の宴◆5546face ID:fcd0de35
Date: 2011/02/20 23:13










――世界は、いつだって残酷だ。





「アニューさん、大丈夫ですかっ!?」

「な、なんとか……でも、どうしてカタロンがこの区域にっ!?」






――僕から姉さんを……ルイスを奪ってもまだ、足りないというのか?




『これは地球連邦に対する宣戦布告だっ!!我々はこの蜂起をきっかけに、世界をあるべき姿へと戻すっ!!それが……我々の大義だっ!!』

「……ふざけるな、こんな事……認められるかっ!!」



――どうして、僕には力がない?



『――やれやれ、大層な事を言うじゃねぇか……俺は、お前らみたいな奴等が……死ぬほど嫌いなんだよぉぉっっ!!』







――力が……欲しい。こんな理不尽な事に立ち向かえる力が……大切な物を守り抜ける力がっ!!

























「あげゃげゃげゃげゃげゃ!!テメェ、世界を変える気があるか?だったらくれてやるよ……世界を変革させる力をなぁっ!!」


















――そして僕は…………ガンダムと出会った。















++++++++









~目覚める天使~






















この世界は既に俺の知る“物語”の道を外れている。

原作通りにフォン・スパークがエネルギーテロを引き起こしたものの、ヒクサーとグラーベはなんとか生還する事ができた。

また、計画の障害になり得る可能性を持つビサイド・ペインについてはヴェーダを駆使してその所在を突き止め、オリジナル・ヒクサー(こちらのヒクサーと区別を付ける為に、こう呼称する事になった)をそれとなく誘導し抹殺してもらった。あちらはオリジナル・グラーベの仇を取れたし、こちらとしてはもう一体Ⅰガンダムを入手できた為にそいつを改良してリボーンズガンダムの建造に取り掛かれたのでばんばんざいだ。

00Iの物語については俺が途中までしか把握できてないのでどう転ぶかは分からないが、リジェネに全てを任せる事にした。なぜかは分からないが、リボンズが計画を徐々にイオリアの計画に沿うように修正を行っているので、こちらではそれほどリジェネとリボンズの腹の探り合いは起きてない(と思いたい)。



アロウズは独立治安維持部隊という名称こそ残ってはいるが、その実態は国の垣根を超えたレスキュー部隊と、原作よりは凶悪さが薄れた対テロ用部隊に分かれている。

一方、原作ではアロウズの非道な振る舞いに立ち上がったカタロンは、もう一人の転生者の手によって太陽炉搭載型MSのデータがばらまかれ、国際的なテロ組織となっている。










そして……CB。


本来アロウズの監視下にある高重力工業区画のあるコロニーに現れるはずだったエクシアは、アザディスタンに侵攻しようとしていたカタロンのMSの前に(しかも、原作通りのリペアではなくビームコーティングを施したマントとアストレアの予備パーツを用いて改修された状態で)現れた。

さらに、まるでそこに現れるのを分かっていたかのようにヴァーチェに似たガンダム――セラヴィーと、白いアストレアが増援として駆けつけた。

結果としてアロウズはCBと協力する形でカタロンを退けたが、CBはアロウズと積極的に戦闘を行う事はせずにエクシアを回収して離脱していった。



アロウズも迅速な行動を行い、CBが合流しようとしている地点を叩こうとしたのだが……









――新たな物語が、動き出してしまった。












モニターに映し出されているのは、宇宙(そら)一面に広がる緑色の粒子。

その中心に居るのは……背後に青白い『∞』の円を携えた、青い装甲を紅く染めるガンダム。




ダブルオーガンダム。



イオリア・シュヘンベルグの計画の根幹を成すCBの機体で……『ガンダムを超えたガンダム』となるべき存在。

そして、人類に変革をもたらす機体。



“……これが、ダブルオーガンダム……なんという力だ……”


脳量子波を通して、リボンズの声が響いてくる。その声色には、歓喜の色が浮かんでいた。

だが……俺には、その輝きは不吉にしか見えない。リボンズは俺の知識という形でしか“原作”を知らないのだから、俺の驚きを共有できないのだろう。





なぜなら目の前で起きているそれは、俺の想定を遥かに超えている事態だったのだから。





「……単独で、トランザムバーストだと?」


あれは、純粋種のイノベイターが搭乗する事で初めて発現するシステムのはず……刹那が、もうイノベイターとして覚醒したというのか?


いや、そんな事はありえないはず……











『ありえない事はありえない』














……ふと、何かの漫画で読んだ言葉が脳裏をよぎる。


同時になぜか俺は……いいようもしれない悪寒を感じていた。








++++++++
















……リュミナス、これはどういう事かしら?


“それはこっちが聞きたいんだけど?オーライザーも無しにツインドライブが安定するとか……想定外にもほどがあるっての。”


……『敵』が関与している可能性は?


“それもありえない。アイツはイノベイド側についているから、トレミーのメンバーに接触はしないはずよ。いや、できないと言った方が正しいかしら……”


……まぁ、アルマロスの完成により良いデータが手に入ると考えればこちらにとって損はないわね。


“そりゃそうだけど……状況は楽観視できなくなってきたかもね。”


そのようね。こちらも手を考えないと……










++++++++




「済まないねヴァニタス。手を尽くしてみたけれど、沙慈・クロスロードは以前として行方不明のままだ」

『少しでも目に届く範囲に入ればと思ってやった事が裏目にでてしまうとはな……くそっ!!』

「少しは冷静になってくれないか?少なくとも、沙慈・クロスロードは死んでいない事は確かだ。」

『……どういう事だ?』




珍しく怒りの感情を爆発させているヴァニタスをなだめながら、僕はヴァニタスのモニターに調査結果の報告書を送りつける。ヴァニタスがそれに目を通すと、先程の意気消沈した表情を一変させて詳しい内容を読み始めた。


……まぁ、怒りを見せるのも無理はない。絹江・クロスロードが生存している事を公にできない上に、防げるはずだったハレヴィ家の悲劇を防げなかった事から、ヴァニタスは沙慈・クロスロードには必要以上に接している。それはまるで、実の兄弟のように。


事実、沙慈・クロスロードが配属された宇宙開発ステーションは僕達の手によって設立されたものだ(と言っても、必要だったから用意したのであって断じて沙慈・クロスロードの為だけに設立したのではないよ?それに、あくまで場所を提供したのであってそこに務める事を選んだのは彼自身の決断だし、そこに務められるだけの実力を持っていた事も確かだ)。さらに、万が一の事を考えて未覚醒状態のイノベイド……アニュー・リターナーも配属させた。


しかし、政府関係の開発ステーションだった事が災いしたのか……カタロンの襲撃を受ける事になってしまった。そして、沙慈・クロスロードはアニュー・リターナーと共に行方不明になっている。



「さて、一通り読み終えたようだけど改めて開設しようか。今回の開発ステーション襲撃の事後処理にアロウズが出撃したのはもちろん知っているだろう?そして、ライセンサー権限で同行したリヴァイヴからの報告だが、被害こそ甚大なものの、奇跡的に死者は出ていない。まぁ、重傷者は出ているけどね。」

『……だが、沙慈とアニューだけが行方不明になった。』

「それだけなら、宇宙空間に投げ出された可能性も考えられる。そこで、破壊されたカタロンのMSに残されていた戦闘記録から抜粋した映像だ。」


そう言いながら映像を再生させると、映し出されるのは……カタロンのMSによって破壊される開発ステーション。



『おい、やりすぎだぞっ!!これでは、民間人にも犠牲者が……』

「あぁっ!?地球連邦に従ってる奴等なんぞ死んでも関係ないだろうがっ!!あいつらは、俺達が苦しんでる中のんきに笑って過ごしてたんだぞっ!?そんな奴等に、現実を教えて何が悪いっ!!」

















『あげゃげゃげゃげゃげゃ!!だったら、テメェがここで死ぬのも現実だよなぁっ!?』






 ――その音声が響くと同時に、赤い影が映り込んで映像が途切れる。これだけで、僕とヴァニタスには共通認識が生まれた。



「捕縛された構成員の証言では、赤と青の『ガンダム』が突然現れてカタロンのMS達を無力化したらしい……さて、この情報から君はどういった見解を導くかな?」

『……沙慈とアニューを、フォン・スパークが連れ去ったというのか?』

「その可能性が一番高いね。少なくとも、沙慈・クロスロードとアニュー・リターナーの死体は見つかっていない。開発ステーションから半径10km内を捜索したが、生体反応すらもね……」

『……だが、奴が沙慈を連れ去る理由がないぞ?』

「それはフォン・スパークにしか分からないさ……ともかく、2人の捜索は僕が引き受ける。君は安心して、アロウズの方に全力を注いでくれ。」

『……分かった。頼むぞリボンズ。』



そう言い残すと、ヴァニタスは笑みを浮かべながら通信を閉じた。まったく、そういった面は彼女達に見せてくれないと困るんだけどね?ただでさえリヴァイヴ達からは睨まれているというのに……


































……でもまぁ、こういうのも悪くない。













++++++++


~Unknown Encounter~




「はじめましてリジェネ・リジェッタ。僕はレイヴ・レチタティーヴォ――『新たなる監視者』となる者です。」

「御託はいいからさっさと用件を済ませてくれないかな?僕は『監視者』とかそういう物には興味ないんだ……もっとも、『監視者』に与えられる力は別だけどね?」



目の前に立つリボンズに似た青年にそう軽口を叩きながら、僕は冷静に状況を分析する……CBが表舞台から消え去った後にリボンズとヴァニタスから告げられた『事実』とは違う事態になっているけど、これはチャンスだ……イオリア・シュヘンベルグの計画を、僕の手で遂行する為のね?






















「……やはり、『異邦人』からの知識をお持ちでしたか。それならば、話は早いですね……」




――すると、彼は『理解できない言葉』を口ずさみながら静かに指を鳴らす。すると、彼の背後にあったモニターに映像が映し出される。





「……なん……だって……?」











――モニターに映し出されていたのは、赤と白のカラーリングに包まれた……僕達がまったく知らないMSだった。

頭部の意匠からガンダムタイプだという事は分かるものの……まるで鳥のようなフォルムを持つそれは、どこか華麗さを感じさせ……それでいて、『異質』な印象を受ける。



これは……なんなんだっ!?



「――型式番号GGF-001『フェニックスガンダム』、それがこの機体の名です。イオリア・シュヘンベルグの計画の根幹を成す、『来たるべき対話』……その先にある、『もう一つの未来』を掴みとる為の『架け橋』となるべき機体。」

「もう一つの……未来?」








いったい……何が起きようとしているんだっ!?






(つづく?)



[18495] 気がついたらイノベイド オールガンダム対ソレスタルビーイング プロローグ
Name: 闇月夜の宴◆5546face ID:fcd0de35
Date: 2011/09/23 23:55





――それは、一方的な“虐殺”だった。
 
 
 
 
 
 
 閃光が、宇宙(そら)と惑星(ほし)を埋め尽くし、焼き尽くす。
 
 
 響き渡るのは、悲鳴のような声。それは痛みによる苦しみか、はたまた同胞を失った悲しみか。
 
 

 
 
 
 
 
 
 
ヤメテ、イタイ、ヤメテ、イタイ

オネガイ、ハナシヲキイテ。オネガイ、ハナシヲキイテ。


 声にならない“声”が、叫ばれ続ける。目の前に立つ存在と、解り合おうとするために。
 
 ――しかし、無常にも閃光は放たれ続ける。
 
 
 蝶の羽が、不死鳥の煌きが、繰り出された拳が、光り輝く翼や剣が、“声”を蹂躙してゆく。
 
 “彼ら”は“声”に耳を傾けない。なぜならば、“彼ら”は人形でしかないのだから。
 
 
 そして、“声”がひとつ、またひとつと消えていく。
 
 
 
タスケテ、ダレカタスケテ


 そんな中、1つの“声”が宇宙(そら)にうずまく光の中に消えていく。目指す先に、自らを救ってくれる存在を探して。
 
 “彼ら”は穴の中に消えた“声”を追いかけようとするが、残された“声”が必死にそれを食い止める。
 
 たとえ生まれ育った惑星(ほし)が滅びようと、最後の希望だけは護るために。
 
 
 
タスケテ、ダレカタスケテ


 最後の“声”は、必死に叫び続ける。この“声”が、誰かに届くようにと。
 
 
 
 
 
 
 
 
 惑星(ほし)と“声”を焼き尽くし終わった“彼ら”もまた、最後の“声”を追って光の中へと飛び込んでいく。
 
 
 ただ1つだけ己に刻まれた、使命を果たすために。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 “彼ら”の名はGUNDAM。閉ざされた箱庭の守護者。
 
 “彼ら”は戦う。ゆりかごの中で眠る人類(ひと)を護るために。
 
 ――人類(ひと)が、幼年期を自らの手で終わらせる日が来るまで。
 


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