[八重山教科書問題]議論尽くして打開策を

2011年9月23日 09時30分このエントリーを含むはてなブックマークLivedoorクリップに投稿deliciousに投稿Yahoo!ブックマークに登録
(28時間40分前に更新)

 八重山地区の中学校公民教科書の採択をめぐる問題は、教科書の需要冊数を報告する期限の16日から一週間、決着に向かう兆しが見えない。

 教科書を選ぶ八重山採択地区協議会による今年6月の規約変更に始まり、協議会の選定・答申の評価や採択一本化に向けた全教育委員協議の有効性、その協議の是非を問う文書の有効性をめぐって3市町が対立、批判の応酬に終始している。

 県教育委員会と手を携え、3市町にアドバイスしてきたはずの文部科学省も、問題解決の土壇場で一連の手続きに異議を唱え、一地区同一教科書を定めた法律を盾に3市町へ採択の一本化を迫る。もはや解決の糸口が見えない袋小路に入ったのか。

 教科書採択をめぐる混乱で直接影響を受けるのは、来年八重山地区で中学3年に上がる現2年生(約600人)だ。一度採択すると4年間は同じ教科書を使うため、現在の小学5年生まで使う。

 「公民」の授業では、日本国憲法の学習を中心に民主主義の本質や人権、平等、国民経済の仕組み、社会福祉、貿易と国際協力、平和と国際社会などを学ぶ。

 いわば現代社会の仕組みや規範など総合的な社会認識を深め、青少年が近い将来、社会人として踏み出す一歩を後押しする教科だ。それは八重山の発展に向けた人づくりで、ひいては沖縄、日本、世界に羽ばたく次代の主役を形成する。この間の対立は、子どもらや地域の将来といった事の本質を置き去りにした議論になってはいないだろうか。

 協議会が選定、答申した「育鵬社」版は、そもそも専門知識のある調査員(現場教師)が推薦していない教科書である。責任と権限を強化したという協議会メンバーの一部が、選定作業の中で教科書を読んでいない事実も判明している。

 この点をとっても、協議会の選定、答申と3市町村の採択の関係がうんぬん言われることに疑問が残る。この教科書選定が無責任だとの批判は根強く、関係当事者は誰のための、何のための教科書選定なのかをいま一度踏まえ、全ての選定、採択過程を洗い直し、結論を導くべきだ。

 その際、大人の都合で議論するのではなく、少なくとも八重山の次代を担う高校生など若い世代にも議論を広げ、多くの意見を聴く努力を求めたい。すでに国への報告期限は過ぎているが、慌てる必要はない。拙速な議論で禍根を残さないよう議論を尽くしてほしい。

 文科省にも猛省を求めたい。政治家に弱い官僚の類いか、助言を受けた県教委や3市町村のはしごを外すような対応は無責任だ。地方教育行政法と教科書無償措置法の矛盾点を放置し、3市町へ圧力をかけるのは筋違いだ。

 森裕子文科副大臣は需要冊数の報告期限前日、「(今は)ロスタイムで(16日は)試合終わりますって笛を吹く」と語ったが、笛の後はサッカーと違い教科書問題にルールはない。矛盾を解かず「国として判断」(中川正春文科相)とはこれもお門違いだ。

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