韓国で独裁政権下の1970年代、スパイの罪で収監された在日韓国人2人に対する再審の判決で、ソウル高裁は23日、いずれも無罪を言い渡した。当時の起訴内容について高裁は「拷問下での供述をもとにしたものであり、事実とは認められない」と結論づけた。
2人は埼玉県秩父市の金整司さん(56)と東京都港区の柳成三さん(57)。それぞれソウル大などで学んでいた77年、軍保安司令部に連行され、水や電気の拷問を受けた。裁判で無実を訴えたが、「国家機密を探った」などとして有罪判決を受け、刑の執行停止となる79年まで収監された。
70〜80年代、政治犯として収監された在日韓国人が再審無罪となったのはこれで5人になる。元政治犯らでつくる団体の理事長も務める金さんは「被害者は160人以上いるはずだが、心や体に傷を負い、連絡がとれない人も多い。ぜひ続いて再審請求をしてほしい」と話した。(ソウル=中野晃)
政府の司法制度改革審議会の意見書が出されてから10年。裁判員制度などが定着してきた一方、「身近で頼りがいのある司法」の実現は道半ばだ。