ソフトバンク、NHK〜伝えられる情報に惑わされず、核心を見抜け
2011年09月23日00時00分
携帯電話大手
ソフトバンクモバイルが首位 23万9,000件
NHK
受信料を6%引き下げ 3ヵ年経営計画
通信各社が7日発表した8月の携帯電話の契約件数によると、新規契約から解約を差し引いた純増数はソフトバンク傘下のソフトバンクモバイルが 23万9,000件で、17カ月連続で首位を維持しました。
夏商戦で各社がスマートフォン(高機能携帯電話)の品ぞろえを拡充するなか、ソフトバンクは米アップルの「iPhone(アイフォン)4」が引き続きけん引し、競合他社に差を付けたとのことです。
携帯電話の契約件数は毎月発表されていて、ソフトバンクが17カ月連続で首位とのことですが、このニュースをそのまま表面的に理解すると 大きな勘違いを招いてしまうでしょう。
私はソフトバンクがボーダフォンを買収した際に、この事業はそれほど簡単なものではないと何度も発言していました。 おそらく、覚えている人もいると思います。
携帯電話契約者数の推移として、純増数の推移・累計契約者数の推移を見ると、私が言うところの「難しさ」を理解できるでしょう。
確かに純増数ではソフトバンクモバイルが首位ですが、実は累計契約者数ではNTTドコモやauに肉薄するという兆しは全く見えません。 むしろ2003年時のほうがauとの差は縮まっていたくらいです。
私はソフトバンクがボーダフォンを買収したとき、逆立ちしても累計契約者数でNTTドコモを抜くというのは難しいと言っていましたが、 今の結果を見てもまさに至難の業だといえるでしょう。
累計数字で大きく上を行くライバルをひっくり返すというのは、本当に難しいのです。これは携帯電話業界だけではなく、自動車業界などで 考えても全く同じことが言えます。
おそらく一般的なニュース報道の字面だけを見ていると、もう少しソフトバンクが伸びているのではないかと思っていた人もいるかもしれませんが、実はNTTドコモは堅調に数字を伸ばしていて、両者の差は縮まっていません。
幸いなことに収益面ではソフトバンクも伸びていますから、その点では評価できると思いますが、今後は累計契約者数を土台とする収益構造がより重要になってくると私は見ています。
携帯キャリア3社の加入者一人あたりの月間売上高を見ると、かつては一人あたり約8,000円だったものが、今では4,000円〜5,000円に下がってきています。この状況を考えると、累計契約者数の違いが収益の差としても 大きく影響してくることは間違いありません。
おそらくこの問題にソフトバンク自身も気づいているはずです。 加入者一人あたりの月間売上高が伸び、他社の価格水準に近づいてきています。ソフトバンクも当初は価格の安さを一番に訴求していましたが、ここに来て問題に気づき方針転換をしたのだと私は見ています。
NHKは2012年度からの3カ年経営計画に6%前後の受信料引き下げを盛り込む方針を固めました。東日本大震災などで受信料の免除世帯が 増えた影響もあり、08年に決めた「10%還元」をすべて値下げで実施するのは難しいと判断したとのことです。
地上デジタルテレビ放送(地デジ)になって、一番喜んでいるのはNHKだと私は思っています。B-CASのライセンス料金を支払わない人は、 テレビを見られなくするということが実施できたからです。
消費者の立場から言えば、地デジは完全にNHK救済策であり、「NHKに騙された」と言っても過言ではないと私は思います。
地デジは必要ないという議論もあったのに強引に押し進めました。実際、電波塔である東京スカイツリーはまだ完成していないのに、 地デジが映っているというのは、どういうことでしょうか?
私に言わせれば、「事実上必要ない」ということです。東武グループには申し訳ないですが、前々から言っているように 東京スカイツリーは観光名所と割り切って、電波塔として利用するべき ではありません。
私が認識している限りでは、東京スカイツリーを電波塔として利用すると、テレビが二重に見えたりする「ゴースト障害」が発生する可能性があります。
ゴースト障害に対処するのは非常に大変です。
結局、地デジはB-CASを導入することでNHKを救済するということであって、国民が騙されただけです。今後はNHKの料金集金係りの人も来なくなるでしょう。 これにより、NHKは10%以上の値下げをする力を蓄えていたということです。
こうした事実を知っているので、ほとんど経費もかけずに適当な番組を放送し続けているNHKのBS103chなどを見かけると、私はもっとまじめに番組 を作れと言いたくなります。
このような仕掛けに騙されないように、ニュースの表面だけを見るのではなく、もう1歩自分 で踏み込んで調べ、考える癖を付けてほしいと思います。
また携帯電話の月間契約件数のような「決まりきったように思える」指標にも注意が必要です。当たり前のように伝えられている情報・数値も、別の切り口で眺め、経年で俯瞰することで別の事実が見えてきます。
ぜひこうした思考法、考え方を身に付けてほしいと思います。
ソフトバンクモバイルが首位 23万9,000件
NHK
受信料を6%引き下げ 3ヵ年経営計画
ソフトバンクが伸びている、というのは本当か?
通信各社が7日発表した8月の携帯電話の契約件数によると、新規契約から解約を差し引いた純増数はソフトバンク傘下のソフトバンクモバイルが 23万9,000件で、17カ月連続で首位を維持しました。
夏商戦で各社がスマートフォン(高機能携帯電話)の品ぞろえを拡充するなか、ソフトバンクは米アップルの「iPhone(アイフォン)4」が引き続きけん引し、競合他社に差を付けたとのことです。
携帯電話の契約件数は毎月発表されていて、ソフトバンクが17カ月連続で首位とのことですが、このニュースをそのまま表面的に理解すると 大きな勘違いを招いてしまうでしょう。
私はソフトバンクがボーダフォンを買収した際に、この事業はそれほど簡単なものではないと何度も発言していました。 おそらく、覚えている人もいると思います。
携帯電話契約者数の推移として、純増数の推移・累計契約者数の推移を見ると、私が言うところの「難しさ」を理解できるでしょう。
確かに純増数ではソフトバンクモバイルが首位ですが、実は累計契約者数ではNTTドコモやauに肉薄するという兆しは全く見えません。 むしろ2003年時のほうがauとの差は縮まっていたくらいです。
私はソフトバンクがボーダフォンを買収したとき、逆立ちしても累計契約者数でNTTドコモを抜くというのは難しいと言っていましたが、 今の結果を見てもまさに至難の業だといえるでしょう。
累計数字で大きく上を行くライバルをひっくり返すというのは、本当に難しいのです。これは携帯電話業界だけではなく、自動車業界などで 考えても全く同じことが言えます。
おそらく一般的なニュース報道の字面だけを見ていると、もう少しソフトバンクが伸びているのではないかと思っていた人もいるかもしれませんが、実はNTTドコモは堅調に数字を伸ばしていて、両者の差は縮まっていません。
幸いなことに収益面ではソフトバンクも伸びていますから、その点では評価できると思いますが、今後は累計契約者数を土台とする収益構造がより重要になってくると私は見ています。
携帯キャリア3社の加入者一人あたりの月間売上高を見ると、かつては一人あたり約8,000円だったものが、今では4,000円〜5,000円に下がってきています。この状況を考えると、累計契約者数の違いが収益の差としても 大きく影響してくることは間違いありません。
おそらくこの問題にソフトバンク自身も気づいているはずです。 加入者一人あたりの月間売上高が伸び、他社の価格水準に近づいてきています。ソフトバンクも当初は価格の安さを一番に訴求していましたが、ここに来て問題に気づき方針転換をしたのだと私は見ています。
地デジはNHK救済策に過ぎなかった
NHKは2012年度からの3カ年経営計画に6%前後の受信料引き下げを盛り込む方針を固めました。東日本大震災などで受信料の免除世帯が 増えた影響もあり、08年に決めた「10%還元」をすべて値下げで実施するのは難しいと判断したとのことです。
地上デジタルテレビ放送(地デジ)になって、一番喜んでいるのはNHKだと私は思っています。B-CASのライセンス料金を支払わない人は、 テレビを見られなくするということが実施できたからです。
消費者の立場から言えば、地デジは完全にNHK救済策であり、「NHKに騙された」と言っても過言ではないと私は思います。
地デジは必要ないという議論もあったのに強引に押し進めました。実際、電波塔である東京スカイツリーはまだ完成していないのに、 地デジが映っているというのは、どういうことでしょうか?
私に言わせれば、「事実上必要ない」ということです。東武グループには申し訳ないですが、前々から言っているように 東京スカイツリーは観光名所と割り切って、電波塔として利用するべき ではありません。
私が認識している限りでは、東京スカイツリーを電波塔として利用すると、テレビが二重に見えたりする「ゴースト障害」が発生する可能性があります。
ゴースト障害に対処するのは非常に大変です。
結局、地デジはB-CASを導入することでNHKを救済するということであって、国民が騙されただけです。今後はNHKの料金集金係りの人も来なくなるでしょう。 これにより、NHKは10%以上の値下げをする力を蓄えていたということです。
こうした事実を知っているので、ほとんど経費もかけずに適当な番組を放送し続けているNHKのBS103chなどを見かけると、私はもっとまじめに番組 を作れと言いたくなります。
このような仕掛けに騙されないように、ニュースの表面だけを見るのではなく、もう1歩自分 で踏み込んで調べ、考える癖を付けてほしいと思います。
また携帯電話の月間契約件数のような「決まりきったように思える」指標にも注意が必要です。当たり前のように伝えられている情報・数値も、別の切り口で眺め、経年で俯瞰することで別の事実が見えてきます。
ぜひこうした思考法、考え方を身に付けてほしいと思います。
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