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末期がんに侵されている俳優・入川保則(71)が22日、都内で最後の主演映画「ビターコーヒーライフ」(公開時期未定)のクランクアップ会見を行い、8月いっぱいと宣告されていた余命について「検診で“年越しますよ”と言われた」と明かした。主治医も驚くほどに進行が遅れており、現在は飲酒できるほど体調は安定。医学の常識を超えた入川は、「こうなったら映画の切符を自分で売りますんで、香典代わりに買って下さい」と最期まで俳優人生を全うする構えをみせていた。
「主治医の先生から『こんなに進行の遅いがんは見たことない』と言われました。年は越えそうだということです」‐。「遺作」という最後の主演作品で、自身の現状と重ね合わさる、余命いくばくもない喫茶店のマスター役を演じ終えた入川の身には、医師も驚く変化が起こっていた。
今年3月にがんを告白した時点で、「余命は、8月いっぱいの半年間」と宣告された。一切の延命治療を拒否しているにもかかわらず、病状は酒を飲めるほどに安定し、余命半年間を宣告した医師も新年を迎えられると口にした。
がん告白以降、映画主演、ドラマのゲスト出演、歌手デビュー、執筆と、芸歴55年の中で最も仕事をこなしたことが、気力の充実につながった。医師は「データ的には死んでてもおかしくないんです。やっぱり免疫力が上がったんでしょうね」と医学の領域を超えた生に目を丸くし、入川は「ちゃらんぽらんに生きてるとがんもどうしていいか困るみたいですね」と目を細めた。
命に感謝する一方、身の回りの整理を終えていただけに問題も浮上した。夏前に冬服を処分したばかりか、住んでいるアパートが11月で建て替えすることになり、転居しなくてはならなくなった。「11月にはもう逝ってると思ってたので…。先生に頼み込んで12月からは入院させてもらいます」と、苦笑いを浮かべるしかなかった。
死後に出版予定の著書「自主葬のすすめ」も書き上げ、今後は「映画の切符を売りますよ」と遺作のために力を注ぐ構え。会見の最後にも「私が生きていても、生きていなくても映画をご覧下さい」ときっちりとPRしていた。
(デイリースポーツ提供)
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