きょうの社説 2011年9月24日

◎高岡の旧町名復活 金沢も推進体制の再構築を
 金沢市をモデルに、高岡商工会議所が旧町名復活へ動き出し、高岡市も市議会9月定例 会で支援する姿勢を明確にした。金沢市に続き、歴史まちづくり法に基づく「歴史都市」に認定された高岡市としても取り組む価値は十分にある。

 金沢市では1999年の主計町を皮切りに、11の旧町名がよみがえった。歴史を大切 にする街としての象徴的な運動と位置づけられてきたが、2009年の下新町、上堤町の後は具体化していない。

 全国に先駆けた運動が同じ加賀藩文化圏から新たに始まったのは望ましいことだが、肝 心の金沢で止まっていては波及効果も半減しかねない。高岡の動きは金沢でも取り組みを前進させる好機である。新たな壁に直面しているなら推進体制を再構築し、助成措置をさらに見直す積極さがほしい。

 高岡市には町人の職種を示す「桶屋町」「油町」、さらには「母衣町」「橋番町」など 町の成り立ちにかかわる旧町名が多い。高岡商工会議所が由来調査に乗り出し、「高岡ウオーク」などでも旧町名を学ぶ動きが活発化している。

 高岡市は09年の開町400年を機に、加賀藩の遺産に磨きをかける事業を加速させた 。高岡城跡の国史跡指定や歴史的町並みの重要伝統的建造物群保存地区選定など多くの目標を抱えているが、無形の文化遺産である旧町名を復活させる熱意が、有形遺産保存の力につながるのは金沢の事例をみれば明らかである。

 高岡商工会議所はすでに金沢市から聞き取りを進めている。金沢には住民の合意形成を 地道に進めてきたノウハウがあり、一部の反対で多数意思が生かされなかった苦い経験もある。それらを率直に伝え、可能な限りの支援をしたい。

 金沢市では昨秋、復活町会による初の意見交換会があった。高岡でも町会が具体的に動 けば、両市の関係者が意見を交わす場を設定するのも有効な支援策になる。

 昨年の意見交換会では、金沢市内で新たに復活を目指す住民の取り組みも報告されてい る。旧町名に価値を見いだす人たちがいて、復活の可能性を探っているなら、それを手厚く支援するのが行政の務めである。

◎民主党税調の論議 単なる「ガス抜き」なのか
 民主党税制調査会総会で、東日本大震災の復興財源を賄う臨時増税に反対する意見が相 次いだのは当然だ。増税は選挙に不利という議員心理もあろうが、それ以上に、なぜこの時期に増税なのか、党税調の方針に納得できない議員が多いからだろう。

 藤井裕久党税制調査会長は週明けの総会で幹部が作成した案を提示するという。党内意 見を集約するなら、増税批判が強いことを明記し、増税に頼らぬ道を再検討してほしい。反対意見を聞き置くだけで、くすぶる増税反対論の単なる「ガス抜き」に終わらせるようなことがあれば、党内融和にひびが入るのは避けられない。

 野田政権が復興増税に積極的なのは、各種世論調査で東日本大震災の復興のための増税 について、国民の半数以上がやむなしと考えているからだといわれる。だが、多くの国民は増税によって景気が悪化し、肝心の税収が減るようなケースは想定していないはずだ。景気の悪化を織り込んだ上で増税を強行するなら、野田内閣の高支持率も早々にピークを打つことになるのではないか。

 政府税調の案は、政府が保有する日本たばこ(JT)株の売却や公務員人件費の削減、 特別会計剰余金の活用などで5兆円を捻出し、残る11・2兆円を臨時増税で賄うというものだ。取りあえず復興債を発行して、その償還財源として、期間を限定した増税が検討されているが、そもそも被災地の復旧・復興に使う予算を5―10年の短期間で賄う理由が分からない。被災地のために身を削るのはやむを得ないと思う国民の心情を逆手に取り、できるうちに増税をしておくという考え方は国民政党ではなく、財務官僚の発想だ。

 藤井会長は増税などの国民負担を求める前に、国会議員の定数削減と公務員人件費の削 減が必要との認識を示した。藤井会長は「仮に増税があった時は、国会議員の首切りとワンパッケージだ」と強調したが、定数削減は増税とは関係なく進めるべきもので、増税の理解を得るための「引き出物」ではない。歳出削減の一つとして着実に取り組んでほしい。