きょうのコラム「時鐘」 2011年9月24日

 和服は世界の常識に反すると服飾家はいう。女性の服は腰を細く見せるために努力する。その一番大事な腰の部分に分厚く太い帯を巻いてしまうからだ

娘さんが気絶しそうになるほど強く胴を締め付けるアメリカ映画の1シーンがある。日本の和服も、帯で締め付けられるのは相当の苦労で、花嫁さんはごちそうも食べられないと聞く。美しくなるための女性の苦労は世界共通のようだが、中身はまるで逆なのだ

洋装は細いところをさらに細くする。日本の着物は、細くなるところを太くする。不思議なのは、それが美しく見えることである。なぜだろうか。日本舞踊を見ていれば分かりやすい。これも「金沢おどり」の楽しみ方のひとつだろう

初心者には初心者の目のつけどころがある。今回は和服の帯に絞って鑑賞するのも悪くなかろう。女性の立ち居振る舞いが象徴された舞姿が優美に見えるのも、帯の横線と体の縦線がバランスよく揺れるからではないかと勝手ながら推測する

一人一人の縦横の優美な体の線が集団となって揺れる。日本の「伝統」という名の指揮者もたいしたものだ。