米 人工衛星が地球に落下

川田浩気記者

古くなった人工衛星が、日本時間の24日にも大気圏に突入する見通しだとNASA=アメリカ航空宇宙局が発表しました。
衛星の部品などが人に当たる確率は「3200分の1」。
果たしてどの程度危険なのか?そして今後、打ち上げられる人工衛星には、どのようなことが求められるのか?
国際部の川田浩気記者が解説します。

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これが落下が懸念されている人工衛星。
オゾン層や大気の構成要素などを観測するために20年前に打ち上げられた「UARS」と呼ばれる人工衛星です。
6.5トンと衛星としては中規模で、6年前に運用が停止されてから次第に高度を下げながら地球の周りを回っていました。
いつかは地球に落ちてくる状態だったと言えます。
NASAではアメリカの現地時間で23日午後、つまり日本時間で24日にも落下し、大気圏に突入する見通しだと発表しました。

衛星の落下はどの程度あるのか?

打ち上げられた人工衛星やロケットの部品などの落下は、実は年間およそ400件ほどあります。
大きさが小さいものであれば、そのほとんどすべてが大気圏に突入する際に摩擦で燃え尽きます。
しかし、規模の大きな衛星が落下した場合、大きな部品があったり、衛星の内部に燃えにくい素材が含まれていることがあり、一部の部品が地球上に落ちてくることもあります。
今回のように中規模以上の衛星が落下するのは年に1回ほどはあるということです。

人や物にあたる可能性は?

NASAは、今回の人工衛星では最大で26個の部品、重さにして合わせて500キロ分が燃え尽きずに地上に落下する可能性があるとしています。
「いつ?どこに?」。それについてNASAでは、現時点で正確に予測することは難しく、大気圏に突入する2時間前でも予測に相当な誤差が見込まれるとしています。
落下予測の地域は、現時点では北緯57度から南緯57度という相当に広い範囲でしか発表していません。
そのうえで、世界中の誰かに当たる確率は「3200分の1」になると試算しています。

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万一、当たった場合の責任は?

考えたくないことですが、万が一、当たった場合、誰が責任をとるのでしょう。
アメリカや日本は、「宇宙損害責任条約」を批准していて、万が一、落ちた衛星で人や物に被害が出た場合には、衛星の所有国が損害を補償することになっています。
NASAによりますと、これまで人工衛星の落下でけが人が出たり、建物などに大きな被害が出たりした例は無いということです。
今回の衛星の落下について、日本の文部科学省でも情報を集めていますが、人的な被害が出る可能性は極めて低いとみています。

人工衛星の今後は

今回の人工衛星のように、もはや有益な目的に使うことができないまま、地球軌道を周回する人工物は「スペースデブリ」、または「宇宙ゴミ」と呼ばれ、宇宙開発に伴ってその数は年々増え続け、対策が必要になっています。
地球の観測や惑星探査などを目的に、今後も多くの人工衛星が打ち上げられると見られますが、たとえ確率が極めて低いとしても、空から残骸が降ってくることに不安を感じる人はいると思います。

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JAXA=宇宙航空研究開発機構の三輪田真広報部報道グループ長は、「人工衛星が落下する際に大気圏で燃え尽きずに地球上に落下してくる部品が問題になるので、そうした燃え尽きない部品を極力減らすことが必要だ。さらに衛星を打ち上げたら、打ち上げっぱなしではなく、どの地点に落下させるかまで、計算しながら衛星をコントロールすることが求められる」と指摘します。

人類の宇宙開発が今後もさらに進んでいくなかで、「宇宙機」をただ打ち上げるのではなく、より慎重な設計や運用が求められる時代だと言えます。

(9月22日 20:35更新)

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