住民登録がありながら学校に通わずに1年以上居所が不明になっている小中学生が今年5月現在、少なくとも前年の約3・6倍の1183人に上っていることが4日、文部科学省の学校基本調査(速報値)で分かった。背景には、虐待やドメスティックバイオレンス(DV)から逃れるために保護者が子供を連れて行方を隠すことなどがあるとみられる。行政が所在を確認できない子供たちの存在が社会問題化したのを受け、文科省が各教育委員会に報告の徹底を求め、大幅増となった。
不明者数の内訳は、男子が602人、女子が581人。年代別では7~11歳(小学生)が851人、12~14歳(中学生)が332人。地域別では、愛知県の272人が最も多く、東京都(200人)、大阪府(153人)、神奈川県(142人)などの大都市部が続いた。前年の不明者数は326人で近年は300~400人台で推移していた。
小中学生が1年以上いなくなった場合、市区町村教委は、住民基本台帳に基づく学齢簿(義務教育対象の児童・生徒の名簿)とは別の書類に不明者として記載することになっている。だが、これを定めた旧文部省の通達が1957年と古く、学校基本調査の不明者数に反映されていないケースが多かった。
不明児童・生徒の背景には、近年増加している虐待やDV、貧困があるとみられる。大阪市のマンションで昨夏、当時3歳と1歳の姉弟が放置され餓死した事件をきっかけに、親が住民票を移さず各地を転々とする「消えた子」の存在がクローズアップされていた。
今回の調査は、岩手、宮城、福島の3県のデータが反映されていない。【木村健二】
毎日新聞 2011年8月5日 東京朝刊