放射線のレベルと危険度:安全安心科学アカデミー
注) 代表的な放射線の単位 |
量の指標の区分 | 計測単位 |
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人体にあたった影響量 | mSv(ミリシーベルト) 1mSv=1000μSv(マイクロシーベルト) |
物質から出る放射線の大きさ (放射能) | Bq(ベクレル) |
*シーベルトとベクレルの関係は、例えると部屋の電球の光の強さ(ワット数)がベクレル、部屋の明るさがシーベルトと考えると判りやすいでしょう。 |
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放射線の単位の量的感覚の難しさを通貨に例えて説明すると・・・ 辻本忠
海水中などの自然放射線以下の場所で生活したらどのようになるのだろうか。自然放射線を遮蔽した生物実験の場合に生物の増殖活性が低下すると言う報告がある。人類はこれまで生活してきた環境が一番よく、環境が変わることはよくない。そこで、自然放射線より低い場所で生活するようになれば、人体によくない影響を与えるかも知れない。そこで、0.1ミリシーベルト未満の線量を注目レベルとした。 自然界には,地球の外からふりそそいでくる宇宙線、大地からのガンマ線、大気中のラドン、食物に含まれている放射性物質からの放射線などの自然放射線がある。人類は類人猿からわかれた数百万年前よりこのような自然放射線の中で暮らしながら進化してきた。放射線の量(線量)は地域的にかなりの差がある。年間線量は世界の平均では2.4ミリシーベルト、わが国では1.5ミリシーベルト程度である。ブラジルのガラバリ海岸の1部で大地からのガンマ線だけで175ミリシーベルト、市街地でも8〜15ミリシーベルト、インドのケララ地域では平均3.8ミリシーベルトのところもある。また、1ミリシーベルト以下のところもある。最近の研究データによれば100ミリシーベル以下の線量で有れば健康に良いという研究報告もある。したがって0.1〜30ミリシーベルトの範囲は通常生活の範囲内であるので健康レベルとした。 科学技術が生活の中に溶け込むようになり、自然放射線以外に人工的な放射線も受けるようになった。その代表的なものは医療によるものである。胃のエックス線集団検診では0.6ミリシーベルト、胸のエックス線検診では0.05ミリシーベルト、エックス線CTによる検査では10ミリシーベルトの放射線を局部に受ける。これらの値は1回に受ける線量で、検診及び検査の回数を増せば線量は増える。このような医療による放射線は自然放射線に加算されて受ける事になる。1回に500ミリシーベルト以下の放射線を受けても、ほとんど臨床的症状は起こらない。しかし、自然放射線の最高値に近い30ミリシーベルトを超える場合には、リスクは高まるかもしれなが、30〜500ミリシーベルトの範囲を注意レベルとした。 500ミリシーベルト以上の線量では急性か慢性かによって異なるが、いろいろな種類の臨床的症状があらわれる。これは個人にとって受け入れる事が出来ない線量であるので、危険レベルとした。JCO事故で16,000〜20,.000ミリシーベルトを受けたO氏及び6,000〜10,000ミリシーベルトを受けたS氏は死亡したが,1,000〜4,500ミリシーベルトを受けたY氏は助かった。5,000ミリシーベルト以上の放射線を受けると死亡する危険が急増する。放射線はたくさん浴びると危険であるが、自然放射線の程度ならば心配はいらない。
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*放射線の安全量の具体量の提言として、安心科学アカデミー(現:安全安心科学アカデミー)から「放射線のレベルと危険度」として設立時の2003年に上記の内容で提言いたしました。 いっぽう、国際的にも著名な科学者団体・放射線専門研究組織からの放射線の安全量の提言は2004年、フランス科学アカデミーからの「年間200ミリシーベルト未満は実質的に無害」(実際的しきい値の存在)の提言。2005年アメリカ保健物理学会(放射線防護学の研究団体)より「年50ミリシーベルト未満は無害」の提言がなされております。 |