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[28394] 【連載中】ロックマンX 憑依物 未来異伝追加 【でござる】
Name: socom2◆c4c431dd ID:a13ac3ff
Date: 2011/09/21 22:13
この物語は、ロックマンXのとあるキャラに憑依した主人公による物語です。

チラ裏のネタの墓場に埋葬されていたのですが、完結を機に墓を暴きました。

キャラ崩壊、捏造、ヤンデレ、なんでもござれ。

地雷に注意して、ご覧ください。

では、ロックマンX 憑依物、お楽しみください~

あ、ちなみにあとがきはチラ裏時代のままです。

直すのがメンド・・・んん!あの皆さんと駆け抜けたチラ裏時代を忘れえぬためにあえて残しました。

違和感を感じたらごめんね!



[28394] 【一発ネタ】憑依1【のはずだった】
Name: socom2◆c4c431dd ID:a13ac3ff
Date: 2011/06/17 00:39
「うぉ~懐かしい~!」

今は俺は、パソコンであるゲームのプレイ動画を見ている。
そのゲームとは『ロックマンX3』。
我が青春のバイブル。
一番やりこんだロックマンシリーズだ。

「ゴールドチップとか最初に気づいたの誰だよ。」

懐かしいなぁチートチップ。

「うぉぉぉぉビームサーベル強すぎんだろ!」

いつもゼロには犠牲なってもらった。
犠牲になったのだ・・・ゼロェ・・・

結局ぶっとうしで最後まで見てしまった暇人な俺。























///////////////////////////////////////


「起きよ。」

・・・うるせぇなぁ。

「起きるのじゃ。」

・・・うるせぇって、こちとら深夜3時寝なんだ。

「起きるのじゃ。」

・・・もうちょっと寝かせろって。





「起きんかぁ!」

「うぉ!?」

「ようやっと起きたか。」

怒鳴り声に目覚めれば、目の前には爺さんがいた。
アゴヒゲが素敵なお爺さんだこと。

「な、なんだぁ?」

「ふむ。周りの状況を理解しようとするか。中々の成熟度じゃの。」

周りを見渡せば、機械、機械、機械。
見たこともない機械に囲まれた、広い部屋。
俺はその中心の台座のようなところに寝ていた。

「何処だここ!?」

自分の寝ていた部屋とはまるで違う。
俺の部屋は8畳一間のボロアパートのはずだ。

「うむ。ここはワシの研究所じゃ。」

「あん?研究所?なんで俺はそんなところにいるんだ?」

「もちろん、ここで生まれたからじゃよ。」

「はっはっは。爺さん、そのギャグ最高だぜ。」

「うむ?・・・ちと、プログラムをいじりすぎたかの?」

「ところでさ、爺さんだれ?」

「むぅ・・・ワシのこともわからんか。柔軟性を重視しすぎて基礎知識が足りとらんか。」

「あん?」

「なんでもない。ワシは、おぬしの生みの親じゃ。」

「はっはっは。そのギャグ最高だぜ。で、誰?」

「だから、生みの親じゃて。」

「もうジョークはいいって。」

「だから、生みの親じゃ。」

「おいおい、天丼もそこまでいくとつらいぜ?」

「だから!生みの親で!機械工学博士のドップラーじゃ!」

「はっはっは機械工学博士とかその年になって厨二・・・ドップラー!?」

「うむ。ドップラーじゃ。」

ちょ、おま、ドップラーって。
どこかで聞いたことあるんですけどー!
よくみれば、肩になにか刺さってるし!
これは確定ですか!?

「HEY!爺さん!俺って誰だYO!」

「むぅ・・人格プログラムミスったかのぉ・・・おぬしはワシの最新作、レプリロイド『マック』じゃ。」

「マックぅぅぅぅぅ!?」

マック!よりにもよってマック!
エックスとかゼロとか贅沢は言わない。
せめてVAVAでよかった!
いやステージボスでよかったのに!
まさかのマーーーーーック!
OPで一瞬にして消えていったマックじゃないか!
行方不明になっていたマックじゃないか!

俺にどうしろって言うんだぁーーーー!


「おぬしは今日からイレギュラーハンターとして働くのじゃ。」

「なんですと?」












時代は初代Xだった。
まだシグマ反乱前。
ドップラーこと爺さんもまだ普通の科学者爺だった。
このころからマックっていたのか。
ちなみに、X3のステージボス、ドップラー軍団は一体もいません。
つまり、この時代の最新作ってことはX3では骨董品ってことですねわかります。

とりあえず、俺がマックであることは否定できない事実だ。
未来に待つ死亡フラグ回避のためには・・・




「おーい!マック!次の任務だよ!」

「おう!すぐにいくぜエックス!」

主人公と仲良くなることだ。

仲良くなればきっと見逃してもらえるはず。

おなじB級ハンターとしてゼロ先輩の下で切磋琢磨する日々だぜ!

エックスはまぶしい笑顔で迎えてくれるのに、ゼロ先輩は冷たい瞳でなじってきます。
もうちょっと優しくしてくれても良いじゃない。

まぁ、でもそこそこに仲良くなれたぞ。
これで未来は安泰だ!





と、思ったら、第一次シグマ反乱に巻き込まれたでござる。

なぜにWHY?

よくよく考えたら当然だった。
エックスと仲いいからシグマ討伐に誘われちゃったYO!

第一次シグマ反乱とかマックな俺には無理ゲーすぎる!

俺、B級ハンター。
相手、特Aだらけ。

OH MY GOD。

スペックが違いすぎるからぁぁぁぁ!?





と、思ったら、意外と戦えた。
エックスが7体倒してる間に1体、倒せたよ!
ごめんねペンギンさん!

よくよく考えたら、マックって結構高スペックだよね。
だってエックスを一撃で動けなくするんだぜ?
油断していたとはいえ、あのエックスは2回もシグマを倒したエックスだ。
つまり歴戦の戦士。漫画版まじカッケェ。つまりはそういうこと。

そのエックスを一撃で沈めるマックもすごいってことだ!
まぁ、実はエックスと共闘しただけなんだが!
ごめんねペンギンさん!君だけ2対1だったね!

で、今はそのペンギン戦が終わったところ。

「ぐっ・・・!」

「マック!?」

「すまねぇエックス・・・ドジふんじまったぜ・・・」

「まさか怪我を!?」

「あぁ・・・さすが、腐っても特A級だな・・・俺の右手のマグナムが凍りついてらぁ・・・」

「そんな!?」

「わりぃな・・・俺はちょいと休んでいくぜ・・・」

「マック・・・!」

「へへっ・・・なんて顔してやがる・・・こんなもん・・・すぐに治らぁ・・・」

「君は・・・」

「先に行ってな、エックス・・・すぐに追いつくからYO・・・」

「・・・わかった・・・」

「あぁそれと・・・俺の分も残しとけYO・・・?」

「ふふっ、それは約束できないよ。」

「はっ・・・言う、じゃ、ねぇか・・・」

「マック!」

「少し・・・眠く、なってきた、な・・・なに、してやがる・・・さっさと行け・・・」

「あぁ・・・待ってる、必ず、来てくれると、信じているから!」

「あぁ・・・当然だ・・・相棒・・・」

(ピュンッ!)



嘘ですが。
別に凍っていません。
だって前衛をエックスにまかせて、後ろでマックバスターをちょこちょこばら撒いてただけだから。

こうでもしないと、シグマのところまで連れて行かれそうだから。
すまんエックス!友情よりも命が大切なんだ!

グッドラック!





















///////////////////////////////////////

「この程度かぁぁぁぁぁエェェェェェックスゥゥゥゥゥゥ!!」

「VAVAぁぁぁぁぁ!」

「これでテメェはお終いだぁぁぁぁぁぁ!」

「うわぁぁぁぁぁぁ!?」

「スクラップになりなぁ!」








はい、その無防備な背中にマックバスター。

「ぐぁ!?・・・誰だ!?」

「遅れたやって来た正義の味方だこの野郎。」

「マック!?」

「おーうエックス。生きてるなぁ?」

「テメェ・・・B級風情が俺に不意打ちだとぉ?」

「B級風情に後ろ取られちゃって残念な特A級さん何か?」

「テメェぇぇぇぇぇぇぇ!」

「逃げるんだマック!」

「答えはノーだエックス!」

「死ねぇぇぇB級ぅぅぅぅぅ!」

「お前、俺とキャラ被りすぎなんだよ!色とか!ここで退場しろYO!」
















はい。終わり。マックバスターなめんなよ。
エックス倒せるんだからな。マジで。

「・・・たくっ・・・なにやってんだか・・・」

「マック・・・」

「・・・一人で・・・トンズラこく気だったんだがなぁ・・・」

いや、ホント。なんで俺ここにいるんだろう。

「もういい!喋るな!」

「・・・あーあ・・・相棒がショボイと・・・苦労・・・するぜ・・・」

カッコよく登場して、爽快にVAVA倒したら、ゼロのフラグまで奪ってしまった。
つまり上半身だけの俺。
下半身はお星様になりまスター。

「・・・エックスよぉ・・・勝て・・・YO・・・」

「あぁ!あぁ!勝つ、絶対に勝つから!だから!」

「・・・男の・・・涙は・・・みせる・・・もんじゃ、ねぇ・・・ZE・・・」

「マックぅぅぅぅぅぅぅ!」

「・・・ゼロ先輩・・・あと頼んま・・・ピーーーーーーー」

――ブツン。


































///////////////////////////////////////


――ブゥン。

「目覚めよ。我が兵士よ。」

「グッドモーニング。親父殿。」

目が覚めたら爺さんがいた。

「お前に使命を与える。」

「あいあい。了解でござるよ。」

あらまぁ、喋り方が随分とまぁカッコよくなったじゃない爺さん。

「イレギュラーハンターエックスを捕獲せよ。」

「――了解。」

これはもうX3ぽいね。

2の間ずっと眠ってたのか俺。
爺さん、完全にウイルスにやられちゃってるぽいし。
こっちに命令したらずっとなにか作ってるし。
シグマの体かな?

まぁこうなったら、やることは一つだね。


レッツ逃亡。
行方不明のマックにならねば。X3が終わるまで。

うん。だってマックのイベントなくてもストーリに変化なさそうだしいいんじゃね?
エックスへの義理も前回果たせたと思うし。

俺は名実ともに行方不明になる!

ギュイーン!ガガガガッ!って感じで何かしてる爺さんを最後に見る。


――HEY!爺さん!新しい武器頂戴YO!

――馬鹿モン!おぬしはそれが一番バランスがいいんじゃ!

――でもでもーバスターだけじゃ、こう、ほら、地味じゃん?

――馬鹿モーーン!バスターいいじゃないバスター!撃って良し溜めてよし連射よしじゃぞ!?

――マックバスター溜めれるのか。

――え?言ってなかったかの?




走馬灯のように爺さんとの日々が流れる。



――HEY!爺さん!肩たたきしてやんYO!

――それは嬉しいの。それじゃ頼むわい。

――任せろ!・・・トントントンバギン!・・・あっ。

――ぬあぁぁぁぁぁぁ!

――すまねぇ爺さん!なんか肩に刺さってるの割っちまったZE!

――それわしのエネルギータンクゥゥゥゥゥ・・・

――爺さん?・・・爺、さん?・・・爺さぁぁぁぁぁん!





いつか過した日々は間違いなく宝物だった。
が、俺の爺さんはもういないのだ。

グッバイ爺さん。

グッドラック。
























///////////////////////////////////////


「ぐ・・・よくやった・・・エックス君・・・」

「喋れるのか!?ドップラー!」

「ワタシは・・・シグマに洗脳されていた・・・」

「なんだって!?」

「やつは・・・悪性プログラムだ・・・わたしは・・・やつの体を作ってしまった・・・」

「それはどこに!?」

「それは・・・」

『そこまでだ。ドップラー博士。』

「シグマ!?」

「・・・まさか・・・ここまで来るとは・・・」

『ご苦労だった。ここで眠りに付くがいい。』

「シグマぁぁぁぁぁ!!」

「・・・いかん・・・逃げろ・・・エックス君・・・!」

『エックス共々、引導を渡してやろう。』

「ぐっ・・・さっきのダメージがまだ・・・」

「・・・すまんな、マック・・・」

『塵となれ!』

「くそぉぉぉぉ!」

「・・・おぬしの新装備・・・渡せぬままじゃった・・・」















はい、その無防備な背中にフルチャージバスター。


『ぐうあぁっ!?』

「えっ?」

「・・・!?」

ゆっくりと歩く。カシンカシンてなる足音に惚れそうだ。

『何者だ!?』

「き、君は!?」

「・・・おぉ・・・おおぉ・・・!」

泣くなよ爺さん見っともないぜ。





















「HEY!そんな枯れた爺さんでも俺の親父なんだYO!そこまでにしてもらおうかケツ・A・GO!」


「君は行方不明になっていたマックじゃないか!?」





投げっぱなしジャーマン。
時々こういうのを適当に書きたくなるのです。
これぞネタの墓場。続かない。
※ちょこっと加筆



[28394] 【病み】憑依2【注意】
Name: socom2◆c4c431dd ID:a13ac3ff
Date: 2011/06/17 00:39
『イレギュラー』


人のために働き、人のために活動し、人のために生きる『レプリロイド』が、
人に仇なす存在になったとき、『イレギュラー』と呼ばれる。

レプリロイドを傷つけ、人を傷つけ、暴虐の限りを尽くす危険な存在。

もちろん、そんな危険な彼らを、僕達レプリロイドは許さない。




『イレギュラーハンター』


レプリロイドのために、人のために、人を守るため、イレギュラーを狩る戦闘型レプリロイド。

圧倒的な戦力を持って、イレギュラーを喰らい尽くす人類の守人。

そして、僕もまた、その狩人の一人として、今日も戦う。








僕の名はエックス。

イレギュラーハンター、エックスだ。





・・・ずっと、ずっと戦ってきた。

イレギュラー達と、人に仇なす存在と・・・かつての仲間と。

共に戦った同じ部隊の仲間とも、信頼していた隊長とも戦ってきた。

僕は、いわゆる落ちこぼれで、人を裏切った仲間、いや元仲間は凄腕ばかりだった。

勝てるはずがない。

だけど、戦って、戦って、戦い抜いて、彼らを破壊した。

人を守るために。

人類のために。

それを一人でやったなんて絶対に言えない。

僕は、僕の親友のおかげで今、こうして立っていられるのだ。


一人は『ゼロ』。

特A級の凄腕の彼は、いつも先頭に立って僕を導いてくれた。


そして、もう一人。

いつも僕が戦えるようにサポートしてくれた彼。

そして、僕が、一人で戦えるように、『心』を教えてくれた彼。







――『マック』。



僕の2人目の親友。

そして、掛け替えのない『相棒』だ。







彼との出会いは、仲間達の反乱の前に遡る・・・


























「そこまでだ!その人を放して投降しろ、イレギュラー!」

「た、助けてくれぇ!」

「グルルルル!」

目の前にイレギュラーと、人質の市民。
落ち着け、エックス。
まずは、情報を整理しろ。
イレギュラーの情報から隙を見つけるんだ。


――ブゥン・・・ピッ・・・ピピッ・・・


目標は、二足歩行人型レプリロイドの獅子モデル。
元々は自然公園の環境維持用のレプリロイド。
ただし、放し飼いにされた貴重な動物を密猟者から守るために武装を持っている。
メイン武装は両腕のカギ爪。
サブ武装は尾のショートバスターか。
カタログスペックはスピードタイプ。
かく乱が戦術か?
いや、元々は広い公園を行き来するためのスピード。
獲物に追従するため、だね。

現在の状況は尾を人間の胴に巻きつけ、僕の前に盾としておいている。
人質は幸い目立った外傷はないが・・・この状況だと、下手な動きはできないじゃないか・・・!

最優先は人命だ、どうにかして隙を・・・


「その人を放し投降するんだ!その後、更正プログラムを受ければ、君は元に戻れるんだ!」

「ぐ、ぐぐぐぐぐ・・・ガアァァァァァ!!!」

「ひ、ひぃぃぃ!?」

意思疎通ができないのか!?
どうするエックス!
考えろ、考えるんだ。

ダッシュで、尾の内側に潜り込む?
・・・無理だ、僕よりもイレギュラーのほうが素早い。

三角蹴りで頭上の死角を狙うか?
・・・無理だ、時間がかかりすぎる。

バスターで、人質を捕らえる尾を狙い打つ。
・・・これが、最善か。


「警告する!その人を放せ!僕達ハンターはこの場で君を処断する権限を持つんだ!投降してくれ!」

「GAAAAAAAA!」

だめか・・・

なら!

「・・・」

左腕のバスターを構え、ロックオン。

「・・・・・・」

尾を、尾だけを撃つんだ。

「・・・はぁ・・・はぁ・・・」

手が震える。

もし、もしこのバスターが、人質を撃ったら・・・

「・・・ぅ・・・」

どうなる。どうなる?どうなる!?

「・・・うぅ・・・!」

クソっ!狙いが、狙いが定まらない!





「ARARARARARARA!」

「しまっ!?」

イレギュラーが人質ごとこちらに突っ込んできた!?






「はぁっ!」

「GAAAAAAA!」

「っ!?」

後ろからの光弾がイレギュラーの動きをとめた!
これなら・・・!

「今だ、エックス!」

「喰らえぇぇぇぇ!!」

バスターでイレギュラーを撃ち貫く!
























【第17部隊イレギュラーハンター本部】



「報告は以上です。」

「ご苦労だった、ゼロ。」

ゼロがシグマ隊長へ報告をする。
僕はその後ろで、『処分』を待っている。

「さて、エックスよ。」

「・・・はい。」

シグマ隊長が僕の前まで歩いてきて、こちらを見下ろす。

「私の言いたいことがわかるか?」

「・・・はい。」

「何故、イレギュラーの頭を撃たなかった?」

「・・・」

僕は、イレギュラーを撃った。
イレギュラーの足を。
エネルギータンクのある心臓部ではなく、メインメモリがある頭でもなく。
ただ、機動力を奪うために足を撃った。

「状況を記録しているタイムレコードから確認したが、ゼロの援護射撃の後は絶好の機会だったはずだ。」

たしかに、そうだ。
確実にイレギュラーを破壊できるタイミングだった。
でも・・・

「僕は・・・僕は彼に更正プログラムを受けてもらいたくて・・・そうすれば、元のレプリロイドに・・・」

「そのために人間の命を危険にさらしたのか?」

「っ!?」

そうだ、足を撃ったあと、イレギュラーは地面に倒れ伏した。
そして、人質の人間にその爪を突き立てようとしたのだ。

「エックス、我々はなんだ?」

シグマ隊長の声が静かに響く。
僕は、僕達は・・・

「イレギュラー、ハンターです。」

「そう、我々はハンターだ。人を守るための存在だ。その我々が人を危険にさらしてどうする?」

「それは・・・」

その通りだ。
僕は、人を、守るべき人を、僕の我侭のために危険にさらしたのだ・・・!

「申し訳、ありません。」

「謝ってすむ問題ではない。エックスよ、お前はお前の生きる意味を否定するのか?」

「っ!」

「我々ハンターは人を守るために存在する。それを迷うことは、自身の存在を否定することと同じだ。」

「・・・は、い。」

「・・・処分を下す。」

・・・そうだ、僕はハンター。
その役目も果たせないのなら、存在価値なんて・・・







「待ってください。」

「む?」

ゼロ?

「エックスの判断はあの場では最良でした。」

「ふむ?」

「イレギュラーはエックスへ人質ごと突撃しました。慣性の働くあの状態でのヘッドショットは至難の技です。
 ・・・特A級でもないかぎりは、ね。」

「たしかに・・・だが。」

「それに、心臓部、エネルギータンクへの攻撃は危険すぎます。
 あの距離でタンクを破壊しては、爆発に人質が巻き込まれていたでしょう。」

「・・・ふむ。一理ある、か。」

「ですので、あの場ではイレギュラーの最大の特徴であるスピードを殺すことが最良かと。」

「・・・よかろう。エックスの持てる技量の中では最良の動きだったわけだな?」

「えぇ。」

「・・・処分は無しだ。だが、エックスよ人質を危険にさらしたのは事実。
 お前には半年の訓練を命ずる。その間、任務へは就かさない。よいな?」

「はい。」

「良し、行け。」

「「はっ!」」

「次はない。・・・励めよ。」



シグマ隊長の言葉を背に司令室を出た。














「ほらっ。」

「あ、ありがとう。」

ゼロが放ったE缶を受け取る。
そして二人並んで、通路のベンチに座った。

「・・・ごめん、ありがとう。」

「何がだ?」

「・・・庇ってくれて。」

「何が?俺は思ったことを言っただけだぜ?」

「それでも、ありがとう。」

「気にすんな。友達だろ。」

ゼロは、いつも僕を庇ってくれる。
そして、友達と言ってくれる。
僕は、そんな彼になにか返せているのだろうか。
このままじゃ、友と呼んでくれる彼の顔に泥を塗ってしまわないだろうか。

「じゃ、俺は次の任務があるから行くぜ。」

「あ、うん。ありがとうゼロ。」

ひらひらと手を振りながら去るゼロ。
その後ろ姿を、見えなくなるまで見送った。









「・・・はぁ。」

自然とため息がでてしまった。
僕は、僕は何をしているのだろう?
人を危険にさらしてまで意地を張る場面じゃなかっただろ・・・



(・・・聞いたか?・・・)

(・・・あぁ、またエックスがやらかしたらしいな・・・)



・・・遠くから声が聞こえる。



(・・・あいつ、またイレギュラー撃たなかったってよ・・・)

(・・・マジかよ・・・あいつ本当にハンターか?・・・)



・・・いつものことだ。



(・・・まったく、本当に役立たずだぜ・・・)

(・・・だな。なんであんなのが精鋭揃いの17部隊にいるんだ?・・・)



・・・本当のことだろうエックス。



(・・・だからあいつ、万年B級なんだよ・・・)

(・・・ハハッ!まったくだ!・・・)



・・・っ!



――その場から逃げ出して、言葉から逃げ出して、現実からも逃げ出した。















「・・・僕は・・・」

辿り着いたのは、トレーニングルーム。

誰もいないガランとした広い部屋。

「・・・僕は・・・」

何がしたいのだろう。

どうしたいのだろう。

わからない。

・・・わからない。












「・・・僕は・・・!」

「HEY!そこにいるのは誰だYO!」

「っ!?」



底抜けに明るい声。

突如かかった声に振り向くと、紫のボディに、顔を覆うバイザーをつけたレプリロイドがいた。


「おぉ?お前、もしかしてエックス?」

「そ、そうだけど君は?」



見たことのないレプリロイドだ。
誰なのだろうか。


「俺の名前は『マック』!今日からこの部隊に配属されたB級ハンターだ!ヨロシク!」

にこやかに握手を求められて、つい応じてしまった。

「ハッハー!ヨロシクなエックス!」

「あ、えと、よ、よろしく?」

激しく上下へ握手した手を振るマック。
あまりに明るい様子に、先ほどまでの暗い気持ちが吹き飛んでしまった。









――この日、僕は2人目の親友ができた。























二人で訓練をつんだ。

「HELP!助けてエックスーーーー!」

「ちょ、マック!メットールに囲まれた状態でこっちにこないでーーー!」



二人で色んなことを語り合った。

「で、俺は言ったやったのよ。『来たぜ、ヌルリとな・・・』ってな!ヒューッ!」

「どういう状況なのそれ!?」



二人で馬鹿にされたこともあったけど、笑い飛ばしてやった。

「なにがB級ダメダメコンビだYO!・・・本当のことですね。」

「冷静にへこまないでよマック!」



彼はいつも明るくて、

「HEY!エックス気にすんなYO!あんなやつらすぐにケチョンケチョンにできるさ!・・・いや、マジで。」

おっちょこちょいなところもあるけど、

「・・・財布落とした・・・エックス様!お金貸してください!」

その明るさに、優しさに、僕は励まされて、

「行こうぜ、エックス。」

君となら、もっと先へ『進める』。
そんな気がしたんだ。














トレーニングルームの一角。
今日もマックと訓練をつんでいる。

「・・・はぁ・・・」

「HEY!どったのよエックス?」

メットールのヘルメットにバスターを撃って、反射弾に当たってコンガリしたマックがコッチに来た。

「あ、マック・・・いや、なんでもないよ。」

「それはあれか?聞くな!絶対に聞くなよ!という振りだな。OK、お兄さんに話してみな?」

「誰がお兄さんだよ。・・・ねぇ、ちょっと聞いていい?」

「おう。何でも聞いてくれ。俺は巨乳派だ。」

「聞いてないから!・・・そろそろ任務を与えられるよね。」

「だな!遂に来たか・・・マック伝説の開幕が・・・!」

「一瞬で閉幕だね。・・・君は、怖くないのか?」

「意外と辛らつですね親友。何が?」

「・・・戦うことが。」

「はぁ?」

マックは心底信じられないといった顔でコッチを見る。
そんなに驚くことなのだろうか。

「僕は、僕は・・・怖い。」

「あー、OK。じっくりと話合おうか。・・・で、なにがあった。」

「・・・それは・・・」

マックと出会う前の事件、僕が迷ったことを、撃つ事を恐れたこと話した。





「・・・僕は!怖くて!・・・人を撃つかもしれないことが、レプリロイドを破壊することが!」

「・・・」

マックは、静かに僕の話を聴いてくれた。
彼は、どう思ったのだろうか。
呆れたのだろうか。

こうやって『迷い』続ける僕を・・・



「あーなるほど。だいたいわかった。」

「え?」

その声はまったくいつもと変わらなくて。
逆に、僕のほうが驚いてしまった。

「なぁ、エックス。お前さバスター撃つ時、どうやって撃ってる?」

「どうって・・・相手をロックして、タイミングを計って・・・」

「NO!それじゃダメ!ダーメダメ!」

「ダメって・・・じゃあ、どうやって撃てばいいんだよ!」

少し、彼の言動が許せなかった。
僕は、本気で悩んでたのに、彼はいつもと変わらなくて。
だから少し、激しい言い方になってしまった。
これじゃ、やつあたりだ・・・







「いいか、エックス。」

でも、マックはまったく気にしていないようで、僕に語りかける。

「サ・・・んんっ・・・バスターはな、『心』で撃つものなんだよ。」

「え?」

「サイ・・・ごほごほっ・・・バスターは『心』で引き金を引くのさ。」

「心・・・何を言ってるのさ、僕達はレプリロイドだよ?」

そうだ、僕達は機械。1と0で構成された思考。
心なんてものが、あるわけがない。

「おいおい、じゃ聞くがよ。俺が死にそうになったら、お前どう思う?」

「死ぬなんて冗談でも言わないでくれ!」

死ぬ!?マックが!?・・・冗談じゃない!

「おぉう・・・ちょっとビックリした。・・・今のは、あー、怒りだよな。」

「・・・」

「で、その怒りは俺を心配してくれたからだろ?」

「・・・!」

「もちろん、俺だってお前が死ぬなんてなったら、そりゃー悲しむぜ。」

「マック・・・」

「これは、『心』なんじゃないか?」

「これが、心?」

そう、なのだろうか。
わからない。

「おう、赤の他人のためにそこまで真剣になれるんだ。立派な『心』だぜ親友。」

「これが、心。」

「で、だ。サイコ・・・あー、バスターを撃つときに心を込めるんだよ。」

「意味が、わからないよ。」

君は、何が言いたいんだ、マック。
でも、彼が言う言葉は、とても、僕の『何か』に響く。
メモリに?思考回路に?

・・・心に、だろうか。

「さっきの話からだと、そうだな。人質を助けたいって思い。レプリロイドを助けたいって思い。そういったのを込めるのさ。」

「・・・」

「そうすりゃ、迷うことなんてない。なんたって、やりたいことがサイコガ・・・ゲフゲフ・・・バスターに詰まってるんだからな。」

「思い・・・やりたいこと・・・」

「おう。ま、騙されたと思ってやってみ?」

「・・・うん。君は騙すのがうまいから騙されてみるよ。」

「なにその人物評価!いいから信じろYO!『心』込めればサイコガンは曲がる弾丸だって撃てるんだZE!?」

「それは無理。」

というか、サイコガンってなんだよ。
まったく、君はいつも適当なんだから。

「・・・思い、か・・・僕にできるかな?」

「またウジウジと・・・よし、魔法の言葉を教えてやろう。」

「魔法の言葉?」

マックは僕の胸をコツンとかるく叩き、その手の親指を立てる。







「グッドラック。幸運を君に。今日がダメでも、明日はいいことがあるってな。」







「・・・ありがとう、マック。」

「どういたしましてー。E缶1個で手を打とう!」

「有料!?」

「ハッハー!地獄の沙汰も金次第!」

「君にはE缶7個の貸しがあったね。」

「もうちょっと待ってくださいお代官!」

まったく・・・君はいつもテキトーなんだから。






――ありがとう。




























「いったぞエックス!」

「まかせてくれゼロ!」

イレギュラーをロックオン・・・!

そして・・・







「思いをバスターにのせて狙い撃つ!」









――手は、震えなかった。





























「シグマ隊長が、反乱を起こした!?」

「・・・事実だ。」

イレギュラーハンター本部で、ゼロがシグマ隊長が裏切ったと言う。
とても、信じられない。

「・・・ほとんどのハンターがシグマに付いて行った。」

「そんな!?」

「あいつらは、優秀なレプリロイドが劣等な人間の下にいることが嫌だとさ。」

「・・・それが、反乱の理由・・・」

何故、そんなことを。
たしかに僕らは人のために生きているが、それは決して下にいるわけではない。
人間だって、僕らの存在がなくてはならないと知っている。
レプリロイドだって、人がいなければ生まれなかった。
互いが互いを支えているのに。

それに、信じられない。

「あの、シグマ隊長がそんなことを言うなんて・・・」

「どうやらマジのようだぜ?」

「「マック!」」

「YO!お集まりのようだな?」

「何処に行ってたんだ、このクソ忙しいときに。あぁん?」

「ちょ、ゼロ先輩。もうちょい優しくしてくれてもいいじゃないかYO!」

「あ?お前は何となく、俺を捨て駒にしそうでムカツクんだよ。」

「しないから!しませんから!・・・3までは。」

「あ゙ぁん!?」

「ゴメンナサイ!・・・と、漫才はさておきこれを見てくれ。」

まったく、マックはこんなときでも変わらないな。
彼が持ってきたのはデータチップ。
そのデータを司令部のスクリーンへ投影する。


「「これは!?」」

映ったのは、シグマについていったハンター達の居場所。
彼らが占領している施設の情報と、進入経路だ。

「発電施設に、工場、エネルギー管理塔・・・見事にライフラインを押さえてるな。」

「うん・・・本当に、人間達を裏切ったのか・・・」

「ちょいやばいぜ?特に電気ってのが奪われたのが一番いてぇ。」

マックの言う通りだ。
この社会において、電気がなければ生活すらも危うい。

「で、どうするよゼロ先輩。」

「・・・もちろん奪還する。」

「作戦は?」

「少数精鋭。占領してる元ハンターを直接叩く。そうすりゃあとは烏合の衆だ。」

「了解!じゃ、俺は情報収集にいってくるYO!」

マックはそう言うと、一目散に部屋を出て行こうとして、

「待ちやがれ、マック。」

ゼロに首を押さえられた。

「ゼロ?」

「げふっ!先輩!いきなり掴まないでYO!」

「お前とエックスは突入班だ。」

「ちょ!?」

「え?」

突入班?
僕が?

「少数精鋭って言っただろう。」

「僕が?」

「無理無理無理無理!」

マックの言う通りだ。
僕達はB級。
特A級に適うわけが・・・

「残ったハンターで俺を除けば、間違いなくお前らがトップガンだよ。」

「え?」

「ハハッ。ワロス。」

あ、殴られた。

「・・・俺は、唯一残った特Aだからな。人間側の司令部からここの指揮を執れと連絡があった。」

「なるほど。」

「俺は表立ってシグマ軍と対立する。」

「・・・陽動?」

「正解だエックス。やつらの目をこっちに釘付けにする。お前らは、後ろから奴等を食いちぎれ。得意だろマック?」

「ハハッ。ワロ・・・」

あ、蹴られた。

「エックス。自信を持て。今のお前なら、特Aとだって対等にやれる。」

「・・・やれるかな。」

「あぁ。俺が保証する。お前は、強くなったよ・・・」

「ゼロ・・・」

そう、かな。
少し、自信がない。
でも、迷ってはいられない。
今も脅威はそこにあるのだ。
人を守るためには行かなくてはならない。
そして、シグマ隊長達も助けたい。
彼らだって、今まで人とうまくやれたんだ。
きっと、説得できる!

「行こうマック!僕らの思いを彼らに伝えるんだ!」

「グッドラック・・・」

「ありがとう!さぁ行こう!」

「ちょ、頑張ってねーって意味だから!引っ張るなYO!」

やれる。『僕達』ならきっとやれる。





――そうだろ?マック。





















「GAAAAAA!?」

「もうやめてくれ!スパークマンドリラー!」

「黙れ!B級が俺に指図するってか!?」

「何故だ!もう、もう動けないだろ!?何故そこまで戦う!」

「俺は我慢がならねぇんだよ!あんな愚図共にこき使われるのがなぁ!」

「違う!人は、人はそんなことは!」

「うるせぇぇぇぇぇぇぇ!」

「うぅ・・・ああぁぁぁぁぁぁぁ!」














「エックス。」

「マック・・・ダメだった。僕の思いは、彼には届かなかったよ。」

「・・・」

「やっぱり、僕には無理なのかな・・・」

「行くぞ、まだイレギュラーがいる。」

「・・・僕は・・・」

「なぁ、エックス。前さ、迷うことなんてないって言ったよな。」

「・・・うん。」

「やっぱりさ、お前、迷ったほうがいいわ。」

「はは・・・なんだよ、それ。」

「今はまだ答えが出ないんだろ?あいつらを倒すことが正しいのかってな。」

「・・・」

「俺からすれば、まぁ、人間に敵対するのはそれだけでアウトなんだが、あいつらの言い分にも一理ある。」

「・・・」

「実際、酷い人間だってわんさかいるしな。お前もそれを知っているから迷ってる。」

「・・・うん。」

「きっと、それはとても大事なことなんだよ。あー、なんつーか、うまく言えないけど。」
「・・・うん。」

「多分、その迷いもお前の思いなわけで。で、迷って迷って迷い抜いた先に答えがあるんじゃね?」

「・・・適当だな。」

「やーだって、俺、お前じゃないし。俺的には爺さんがあぶねーってだけであいつらと戦えるからな。」

「・・・」

「その迷いはお前だけのもんだ。んで、きっといつかでる答えもお前だけのもんだ。」

「・・・いつになるかな、答えがでるの。」

「さぁ?ま、答えが出るまでは付き合ってやるよ。」

「え?」











――相棒だからな。






























雪が降り注ぐ山。
ここは気象を操る天候操作施設がある国有地。

そして、シグマを除く、裏切った元ハンターの最後の一人、アイシーペンギーコがいる場所だ。

「ほれ、これ使っとけエックス。」

「これは?」

マックに渡されたものは、金属の缶。

「潤滑兼凍結保護油。この寒さはそれを想定してボディを作られてないときついぜ?間接が凍って脆く成っちまう。」

「なるほど、ありがとう。」

「よーく塗っとけよ?それ貴重なんだからなー。物資を根こそぎシグマ軍にやられたせいでほとんどなかったんだZE?」

「あぁ・・・君の分は?」

「俺はもう塗った。関節がギシギシ言ってたからYO!」

「そっか・・・これで良し!さぁ行こう!」

「OK、OK。終わりも近い。気張っていくZE!」















「クアァァァァァ!」

「クッ・・・」

アイシーペンギーコが爆発の中に消えていく。
彼も、説得できなかった。

僕は、このまま戦っていいのだろうか・・・


「ぐっ・・・!」

ドスンと重いものが倒れる音。

「マック!?」

マックが雪に埋もれるように倒れていた。

「すまねぇエックス・・・ドジふんじまったぜ・・・」

「まさか怪我を!?」

「あぁ・・・さすが、腐っても特A級だな・・・俺の右手のマグナムが凍りついてらぁ・・・」

「そんな!?」

違う!彼は、一度もペンギーコの攻撃に当たっていなかった・・・!

「わりぃな・・・俺はちょいと休んでいくぜ・・・」

「マック・・・!」

彼の体を注意深く見ると、関節が凍りついて・・・!

「へへっ・・・なんて顔してやがる・・・こんなもん・・・すぐに治らぁ・・・」

間接が脆くなっている!?
潤滑油を塗ってなかったのか!?

ま、まさか・・・僕に渡した油が、最後の物資だったんだ!

「君は・・・」

それを悟られないために・・・

「先に行ってな、エックス・・・すぐに追いつくからYO・・・」

「・・・わかった・・・」

マック、君は、僕のために・・・

「あぁそれと・・・俺の分も残しとけYO・・・?」

「ふふっ、それは約束できないよ。」

「はっ・・・言う、じゃ、ねぇか・・・」

「マック!」

「少し・・・眠く、なってきた、な・・・なに、してやがる・・・さっさと行け・・・」
「あぁ・・・待ってる、必ず、来てくれると、信じているから!」

「あぁ・・・当然だ・・・相棒・・・」

マック、待っている。君は必ず来ると。
だから、先に行く。
今はまだ、戦うことの迷いが晴れないけど、君の信頼に、君が僕に託した思いに答えるために。








――また後で、相棒。




























荒れた工場をひた走る。
ここが、シグマの居城。

防備も設備も一級品だ。
ここまでの備えがあるなんて、長い間準備していたのか?


「っ!」

ダッシュで壁に飛び込み壁を蹴ってその反動で飛び上がる!
今いた場所に無数の光弾が着弾し、激しい音を上げた。

「来たか、エックス。」

「VAVA!」

黒いライドアーマーに乗った紫のレプリロイド、VAVA。
シグマの反乱前から行方がわからなくなっていたけど、彼もシグマ軍だったのか・・・

「まさか、君も反乱軍だったなんて・・・」

「へっ・・・そんなことはどうでもいい。俺はお前を待ってたんだよ。エックス。」

「僕を?」

どういうことだ?
僕は、正直VAVAとは接点はない。そんなに話したこともないんだが。

「ああ。お前と言う最強の存在をな。」

「何を!?」

最強?僕が?そんな馬鹿な。

「・・・おもしろい話をしてやろう。最強のレプリロイド。伝説と呼ばれた最初のレプリロイドの話をな・・・」

「・・・?」

最初のレプリロイド?

「そいつは、最初に作られたそうだ。そして、最初にして最高の機能を持って生まれた。」

最高の機能・・・すさまじいスペックということか?

「『成長』する機能だ。」

成長?

「戦えば戦うほどに、時間が立てば立つほどに、経験をつめばその分強くなる。」

「それが、どうした?経験をつめば、誰だって強く・・・」

「馬鹿かお前は!?俺達はレプリロイドだぞ!?俺達のベースはカタログスペックなんだよ!」

「・・・っ!」

「たしかに経験をつめば多少は戦えるようになるさ。だがそれは『うまく』なるんだ。『強く』じゃない。」

「・・・」

「簡単に言えば、効率よく戦えるだけ。元々もっていたスペックを十分に活かせるようになるだけだ。」

「・・・なら、最初のレプリロイドは・・・」

「そうだ!『うまく』なるだけじゃねぇ!実際に『強く』なるんだよ!最初のスペック以上の力を身につけるのさ!しかも!際限なくな!」

「・・・無限に強くなる?」

「そう、そうの通りだ!」

「馬鹿な・・・そんなやつがいるわけ・・・」

「いるんだよ!実際にな!そして、そいつは伝説になった!」

「・・・」

「その伝説の名はこう呼ばれる・・・」

「・・・?」

「伝説のレプリロイド。レプリロイドの始原。『ロックマン』と。」

「~~~~っ!?」


なんだ、今のは?

『ロックマン』と聞いた瞬間に、メモリがスパークしたようだ。
懐かしい・・・?
今、僕は確かに懐かしいと感じた。


「そして、今、俺の前に伝説がいる・・・なぁ?『ロックマンX』!」

「なにを!?」

僕が、『ロックマン』だって?
ありえない。
僕は確かに強くなったけど。
無限に強くなれるはずがない。

「最初はマックがそうかと思った。奴の成長速度も異常だったからな。」

「・・・」

そうだ、『ロックマン』にはマックが相応しい。彼がいたから僕も強くなれたんだ。

「だが、それは奴のカタログスペックを盗み出した結果、違うとわかった。」

「・・・?」

「奴のスペックは、今代最強といわれるシグマと同等だったんだよ!」

「な!?」

マックがそんなに高いスペックを持っていたなんて・・・

「さすがは稀代の天才の最新作ってところだな・・・
 まぁ、やつは製造されてからそう日がたっちゃいない。
 あいつの成長速度は自身のスペックに慣れてきたからってところだな。」

マック、君は一体・・・


「そして、マックに隠れちゃいたが、異常なやつがいる・・・お前だよエックス!」

「!?」

「お前は出自不明だ。カタログスペックがない。だから俺はお前のメンテナンスデータを盗んだ。」

「・・・それで?」

「半年でお前のスペック自体が18%も向上してたんだよ!」

「・・・!」

「ありえねぇ!ハンター本部の連中はまったく気にも留めてなかった、B級が自分を改造したんだろうってな!馬鹿共だ!俺は知っている!お前はトレーニングルームで訓練しかしてないってことをな!」

「だから、なんだ!?」

「だから、お前が『ロックマン』なんだよエックス!戦うだけで強くなる存在なんだ!」
僕が、伝説?
まさか、ありえない。

「・・・それで、VAVA。お前は何故僕を待っていた?」

「決まっている!伝説を俺の手で砕くためだ!だから・・・死ねよやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「っ!?」


VAVAが来る!




















「この程度かぁぁぁぁぁエェェェェェックスゥゥゥゥゥゥ!!」

「VAVAぁぁぁぁぁ!」

クソッ!?
なんだあのライドアーマーは!?
バスターがことごとく弾かれる!
出力が足りないのか!?

「これでテメェはお終いだぁぁぁぁぁぁ!」

「うわぁぁぁぁぁぁ!?」

「スクラップになりなぁ!」

ライドアーマーの巨大な拳が目の前に・・・!








ズドンと、重い爆発音が響いた。

「ぐぁ!?・・・誰だ!?」

「遅れたやって来た正義の味方だこの野郎。」

「マック!?」

VAVAの後ろ、工場のパイプの上に、マックがいた。
来てくれた・・・彼は来てくれたのだ・・・!

「おーうエックス。生きてるなぁ?」

「テメェ・・・B級風情が俺に不意打ちだとぉ?」

「B級風情に後ろ取られちゃって残念な特A級さん何か?」

「テメェぇぇぇぇぇぇぇ!」

「逃げるんだマック!」

駄目だ!VAVAのライドアーマーは堅牢すぎる!
君のバスターでも貫けるか・・・

「答えはノーだエックス!」

「死ねぇぇぇB級ぅぅぅぅぅ!」

「お前、俺とキャラ被りすぎなんだよ!色とか!ここで退場しろYO!」

マック!駄目だ!逃げてくれ!

















心配は杞憂だった。
マックはVAVAを倒したのだ。
・・・下半身と、右手のバスターを犠牲にして。

マックはわざとライドアーマーの手に捕まり、そして、下半身を握り潰されながらもゼロ距離でフルチャージバスターを放ったのだ。
さらにバスターの出力を上げるためオーバーロードさせたせいか、右腕の肘から下が吹き飛んだ。
その威力は絶大で、VAVAもろともライドアーマーは光の中に消し飛んだ。

そして、僕は、何も、できなかった。
ダメージを受けた体は、無様にも床に横たわることしかできなかった。

結果、相棒が、死に瀕している・・・

僕は、僕は、何を、しているんだ!

「・・・たくっ・・・なにやってんだか・・・」

「マック・・・」

早く、早く治療しなければ・・・

「・・・一人で・・・トンズラこく気だったんだがなぁ・・・」

また、そんな軽口を・・・こんなときでも君は変わらないな。
でも、今はそんなことを聞いている暇はない。

「もういい!喋るな!」

「・・・あーあ・・・相棒がショボイと・・・苦労・・・するぜ・・・」

マックの反応が、遅く、小さくなっていく。
駄目だ、だめだよマック・・・!

「・・・エックスよぉ・・・勝て・・・YO・・・」

「あぁ!あぁ!勝つ、絶対に勝つから!だから!」

僕を、僕を!

「・・・男の・・・涙は・・・みせる・・・もんじゃ、ねぇ・・・ZE・・・」

「マックぅぅぅぅぅぅぅ!」

置いていかないでくれ!

「・・・ゼロ先輩・・・あと頼んま<ズドン!>ピーーーーーー・・・ブツン・・・」







・・・え?



マックの、右半身が、消し、とん、だ?











「クソッ・・・B級が・・・よくも俺のライドアーマーをふっ飛ばしてくれたな・・・」

なんで?

マックの右側はどこにいった?


「あれのチェーンに幾らかかったと思ってやがる、クソがっ!」


マック。

マック。

どこに、どこにいったんだ。


「まぁ、いい。吹っ飛ばして少しは気が晴れた。」


どうして?なんで?誰がやった?


「さぁ!続きをやろうぜロックマン!」






あぁ、そうか。




あいつがやったのか。





















――殺ス。

【 UL■IMAT■ MO■E START 】











「なんだ!?エックスのボディが変化しやがった!?」


僕は、オレは、


「は、はは、ははははは!あれがロックマン!自身の体すら進化させ成長するレプリロイドか!」


生まれて初めて、


「いいぜ!こいよ伝説!俺が粉々に砕いてやる!」

「黙れよ。」

「っ!?」

「お前には一瞬すらやらない。」





















「死ね。」


殺意をバスターに乗せて狙い穿つ。

























終わったよマック。

「・・・ス!」

オレさ、仇とったよ。

「・・・ス!」

あのVAVAに勝ったんだよ?

「・・・クス!」

だから、だからさ。

「・・・ックス!」

褒めてくれよ。いつもみたいに。スゲーってさ。

「エックス!おい、エックス!」










「ゼロ・・・マックが、マックがいないんだ。」

「・・・!」

「ねぇ、マックは、マックはどこ?」

「エックス、マックは・・・」

「約束したんだ、この戦いが終わったら、パーティーを開こうって。」

「・・・」

「ねぇ。マック。約束したじゃないか。E缶おごってくれるって。」

「エックス!」

「なんだよゼロ。マックを探してるんだ。邪魔しないで・・・」

「マックは!そこにいる!」

「っ!?」

「お前の目の前に、いるんだ・・・」

「・・・」

「エック・・・」

「あ、」















あああああああぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁ!





















「・・・エックス。俺はシグマの元へ向かう。お前はマックを連れて・・・」

「駄目だ。オレが行く。」

「しかし!」

「頼むよ。マックに託されたんだ。」

「!」

「マックさ、いつも言ってた。このままだと爺さんの生活もままならない。だから戦うんだって。」

「・・・」

「オレは、マックのおかげで生きてるんだ。だから、マックの変わりにヤルんだ。」

「・・・そうか、わかった。」

「ゼロ、マックを頼むよ。」

「あぁ・・・俺はマックをその爺さんのところへ連れて行く。もしかしたら、修復が可能かも・・・」

「うん、お願い。この戦いが終わったらさ、本部皆でパーティーやろうよ。」

「あぁ、マックにはE缶17本おごったからな。そろそろ返してもらわないと。」

「はは・・・マック、ゼロにもお金借りてたんだ。」

「じゃ、後でな、エックス。」

「うん、また後で。」

















工場の奥へとひたすら進む。

オレがヤラなきゃ。

マックができなくなった代わりに、オレがヤルんだ。

シグマをヤル。

そうシグマ。

シグマ。

シグマ。シグマ。

シグマ。シグマ。シグマ。

シグマ。シグマ。シグマ。シグマ。

全部、全部あいつのせいだ。

下らない妄想に取り付かれたハゲがこんなことを起こすから。

そうだ、あいつをヤレば全部終わるんだ。

そうすればマックは帰ってくる。

は、はは。

は、はは・・・はは・・・ハハハハハハハハハハハハハハ!

なんだ!簡単じゃないか!

マック!すぐに、すぐに終わらせるよ!

うん、簡単だ!アイツさえヤレば全部帰ってくる!

穏やかな日常も、何もかも!

さぁ、行こう。

ヤルことは決まった。

迷いはない。

答えは得た。











「来たか、エックス。」


シグマを殺る。































そして、二度に渡るシグマの反乱は終わった。

オレはいつのまにか、英雄と呼ばれるようになっていた。

でも、オレの隣に相棒はいない。

ゼロが、マックを彼のお爺さんに渡したとき、修復可能だと言われたそうだ。

でも、その数ヵ月後、その人は行方不明になり、マックもまた、行方不明になった。





――そして、ドップラー軍団の侵略が始まる。

ドップラー、稀代の天才と呼ばれた博士。

何故、彼が人類に対し、戦争を始めたのかわからない。

でも、彼がこの街を攻撃するというのなら、オレは戦うだけだ。

マックが必死で守ろうとしたこの街を守るために。

マックのお爺さんを守るために。

オレが代わりにヤラなくちゃ。

お爺さんは行方不明だけど、きっとこの街のどこかにいる。

だって、マックはすぐに帰ってこれる場所にいるんだから。

うん、戦おう。そうすれば、マックはきっと帰ってくる。

よーし頑張ろう。

グッドラック!











「ぐ・・・よくやった・・・エックス君・・・」

「喋れるのか!?ドップラー!」

強くてしぶとい!

「ワタシは・・・シグマに洗脳されていた・・・」

「なんだって!?」

シグマ!?

「やつは・・・悪性プログラムだ・・・わたしは・・・やつの体を作ってしまった・・・」


「それはどこに!?」

「それは・・・」

『そこまでだ。ドップラー博士。』

「シグマ!?」

また、またお前か。
またお前が、マックが守ろうとした街を攻撃したのか。

「・・・まさか・・・ここまで来るとは・・・」

『ご苦労だった。ここで眠りに付くがいい。』

「シグマぁぁぁぁぁ!!」

お前だけはオレが、ヤル!

「・・・いかん・・・逃げろ・・・エックス君・・・!」

『エックス共々、引導を渡してやろう。』

「ぐっ・・・さっきのダメージがまだ・・・」

クソッ!思うように動かない!

「・・・すまんな、マック・・・」

『塵となれ!』

「くそぉぉぉぉ!」

「・・・おぬしの新装備・・・渡せぬままじゃった・・・」






煌く閃光。

走る爆発。

『ぐうあぁっ!?』

「えっ?」

「・・・!?」

シグマの後ろ、通路の奥の闇から誰かが来る。


『何者だ!?』

「き、君は!?」

「・・・おぉ・・・おおぉ・・・!」

紫のボディ。顔を隠すバイザー。

あぁ・・・あぁ!

見間違えるはずがない!

帰ってきた、彼が帰ってきたんだ!




「HEY!そんな枯れた爺さんでも俺の親父なんだYO!そこまでにしてもらおうかケツ・A・GO!」


「君は行方不明になっていたマックじゃないか!?」






――お帰り、僕の相棒。








~あとがき~
まさかのヤンデレ。
どうしてこうなった。

はいエックス視点お待ちです。
お待ちいただいた展開とは違うかも?
申し訳ない。

しかし、男のヤンデレとか書き終わって後悔した。

でもしょうがないのです。
X3は野郎しかいないので。
私はX1とX3しかやったことないので、女の子がでるX4以降はノータッチ。
ゴメンネマック!ヒロインはいません!

なんどエックスを女性化して、ロックマンエックスじゃなくてロールチャンエックスにしてやろうと思ったことか。

――マック、ねぇマック。私、やったよ。だから、褒めてよ。いつもみたいに、頭を撫でてよ。

こんな感じ。
書きませんが。

これでロックマン憑依は完結です。多分。
あと書こうと思うと、ドップラーとマックの捏造ほのぼの生活くらいしかないので。

ではでは、お読みいただきありがとうございました!



[28394] 【捏造の】憑依3【嵐】
Name: socom2◆c4c431dd ID:a13ac3ff
Date: 2011/06/17 00:40
『今日も八面六臂の活躍だったんだZE!』

「ほう、そうかそうか。」

スクリーンの向こう側で、はしゃぐ『息子』と会話を楽しむ。

『イレギュラーがよ、誰だテメェって言ってきたからこう答えてやったんだ。』

「ふむ?」

毎日の楽しみ。
こうして日々の出来事をワシに報告する息子の顔を見ることが最近最も楽しいことだ。

『季節はずれのサンタクロースさ!ってYO!』

「ヒューッ!最高じゃマック!」

マック。ワシの息子。自慢の息子。
生まれたばかりの頃よりも遥かに語録が増え、そのAIが成長していることが伺える。

『・・・お~い、マック~そろそろ任務だよー・・・』

『OK!ちょっと待ってなエックス!・・・ワリィ爺さん。仕事だ。』

「うむうむ。頑張るのじゃよ。」

『おう!行ってくるZE!』

「うむ。マック。」

『うん?』

「グッドラック!」

『ヒューッ!サンキュー!じゃ、行ってくるぜ!』

――ブツン。

スクリーンがブラックアウトし、明るい声も聞こえなくなった。

「・・・ふぅ。」

椅子に深く腰掛けると、ギシリと音を立てる。

「マック・・・」

息子の名を呼べば、眠気が襲ってきた。
最近、どうも眠る周期が短くなってきたようだ。
それも仕方がない。
この身はおよそ130年を越えて生きてきた。
体中を機械化し、サイボーグとなっても、有機部分、特に脳の劣化が激しい。
電脳をサブとしてつけても、やはりいつまでも生きるというのは難しいのだ。

「マック・・・マック・・・マッ・・・」

襲い掛かってくる眠気に抗えず、椅子に座ったままゆっくりと夢の世界へ赴く。

「・・・ク・・・ックス・・・」

今日も夢を見るのだろう。
息子の夢を。
始まりの夢を。






「・・・マックス・・・」











//////////////////







「博士!ドップラー博士!おめでとうございます!」

「ああ、ありがとう。ありがとう。」

激しいカメラフラッシュの光の中、様々な人々から賛美の声が私にかかる。

「この度の国際科学賞の受賞を受け、お気持ちはいかがでしょう!?」

「あぁ、私の研究の成果を、正しく評価していただけたようで、嬉しいよ。」

私の研究、ロボット・・・レプリロイドと呼ばれる独立思考型AIを持つ人型ロボットに関する新理論が世界で評価されたのだ。

「この研究は人類にとってどのような意味を持つのでしょう!?」

「さて、それを知るには未来へ行かなければならんな。」

素晴らしい素晴らしいと、なにもわかってない者たちが声を上げて私を褒める。
悪くない気分だ。

「だが、一つ言えることは、この研究によって、人類の歴史はまた一つ輝ける未来を手にするだろうということだ。」

「「「「「おぉーーーー!」」」」」

ふ、悪くない。歴史に名を残す。これぞ、科学者の生きる意味といえるだろう。










//////////////////


「ふぅ・・・」

ソファーへ腰を沈めるように座る。
眩しいフラッシュから解放され、ようやく落ちるつける我が家へと帰ってきた。

「・・・ただいま。」

小さく、『壇上』の妻へと声を掛ける。
妻は、15年前、交通事故で失った。
残されたのは3歳の息子と、研究ばかりで家に寄らない駄目親父。
それからは苦労の連続だった。
息子のこと、研究のこと。
息子には随分と苦労をかけた。
そういえば、最後に話したのはいつだったか・・・



「ただいまーっ!」

「・・・む。」

息子が帰ってきたようだ・・・夜12時半に。

「・・・マックス。」

「YO!帰ってたのか親父!」

茶色だった髪を赤く染め、耳に鼻にピアスをつけ、ボロボロの皮製品を見に纏った息子。・・・どこで教育を間違ったか。
いや、教育しなかった自身のせいか・・・

「マックス!こんな夜中までどこに行っていた!」

「あぁ、はいはい、ゴメンナサーイ。」

「マックス!」

この馬鹿息子はもう高校も卒業だというのにロクに勉強もせず、バンド活動ばかりしているらしい。

らしい、というのは、直接聞いた訳ではないからだ。
人を雇って息子の様子を見に行かせた結果知った。

「マックス!お前は18にもなってふらふらと!」

「あぁーゴメンゴメンー。」

「真面目に聞かんか!」

「OH!YES!」

「マックス!」

「はいはい。こんな夜中に近所迷惑だZE?」

「お前という奴は!もう学生を卒業するというのにバンドなんぞをいまだに続けておって!」

「・・・なんだと?」

「そんなものを続けてなんになる!もう少し未来に役立つ・・・」

「ふざけんな!」

「!?」

「バンドは、歌は俺の夢だ!それをなんぞとはどういう意味だ!」

「夢だと!?そんな成功もしない夢をみて、お前はどうやって生活していくつもりだ!?」


「成功もしない夢!?それをアンタが言うのか!?」

「何!?」

「グッドラック!今が悪くてもきっと明日は良くなるってアンタ言ったじゃないか!?」
「っ!?」

「今は評価されなくても挑戦し続ければ絶対にうまくいくって言ったじゃないか!?」

「それは・・・」

「ふざけんなクソ親父!」

「待たんかマックス!」

バタンと音を立てて閉まった玄関。
いなくなった息子と静まり返った我が家。
これが、私の家族の距離、か。

久しぶりに会ったというのに、何をやっているのだ私は・・・







自室へ戻り、就寝の準備をする。
明日になれば、息子も帰ってくるだろう。
落ち着いて、話そう。
私も大人気なかった。

「・・・ん?」

机の上に見慣れぬ箱。

「これは?」

綺麗に包装された箱だ。
私のものではない。

「・・・開けてみるか?」

ここは私の自室だ。
これがなんなのか確かめてもいいだろう。

色鮮やかな包装を解き、箱を開けると・・・

「・・・ネクタイ?」

出てきたのは、鮮やかな青いネクタイ。
そして、カード。

「・・・こ、れは・・・」

思わず声が震えてしまう。
カードは、このネクタイは・・・マックスからのプレゼントだった。





『YO!駄目親父!アンタいっつも白衣にワイシャツってダッセー格好だからYO!
 このネクタイでもつけてオシャレしろYO!
 一応俺のバイト代で買ったんだ、大事にしろYO!

 あと、うんたら賞おめでとー。すげーよアンタ。』





「・・・おぉ・・・おおぉ・・・!」


ボロボロと、涙が落ちる。
息子は、傍にいた。
傍にいたのだ。

遠いと思っていたのは私だけだった・・・

明日、話そう。
息子と、話そう。
今までのことも、これからのことも。









//////////////////




朝が来て、昼になった。
いまだにマックスは帰ってこない。

昨日、きつく言いすぎたか。
やれやれ、マックスもまだ子供ということか。
・・・私も、子供だな・・・

早く帰って来い。マックス。






昼を過ぎ、夜がきた。
さすがに遅くないだろうか。
・・・どこへ行ったのだマックス。
自分の息子の連絡先も知らないとは・・・私は、なにをやっているのだ。


<TRRRRR!TRRRRR!>

「む?」

電話か。・・・マックスか?
いや、わざわざ電話をしてくるだろうか?


「・・・はい、ドップラーだ。」

『博士!ドップラー博士!』

「・・・なんだね、大きな声を出して。」

TV電話のスクリーンに映ったのは助手の青年の姿。
彼の姿にガックリとしたのは秘密だ。

『博士!息子さんが!マックス君が!』

「なに?マックスがどうした!?」

なんだ!マックスがなんだ!?
どうして君がマックスを知っている!?











『・・・車に撥ねられて、病院から研究所へ連絡が・・・』

「・・・な・・・に?」








//////////////////


「・・・お・・・おぉ・・・おぉぉぉぉぉ・・・」

目の前に息子。
物言わぬ息子。

「・・・マックス・・・マックス・・・」

何度呼んでも返事はなく。
何度見ても動かない。

「・・・何故・・・何故だ・・・」

世を恨んでも意味はなく。
神を恨もうと神はいない。

「・・・何故・・・私は・・・マックス・・・」

マックスは車に撥ねられ、即死した。
息子の荷物から、唯一連絡先がわかったのが、私の名刺。
そこから研究所に連絡が行ったらしい。

「・・・お・・・おぉ・・・マックス・・・マックス・・・」

私はどうすればいい。
息子を失い、どう生きればいい。
もはや、我が家に私を待つ人間はいない。

どこへ行けばいいのだ。
どこへ帰ればいいのだ。
マックス。
マックス。
教えておくれ。















『おとーさん、ろぼっと作ってるの?』

『おお。そうだ。見に来るか?』

『うん!見たい見たい!』

『そうかそうか。それじゃあ、次の休日にな!』

『うん!』














・・・そうだ。
まだ、まだ残っている。










――マックスを造ろう。









//////////////////


「マックス、マックス。待っていろ。今、父さんが生き返らせてやる。」


「そうだ、すぐに、すぐに。」


「お前には最高の体を用意してやろう。最高で最強で唯一で誰よりもどれよりも、至高の体だ。」



「ハハハハハハ!マックス!父さんが父さんが!お前に世界でNo.1の肉体をあげるからなぁぁぁぁ!」



「ハハハハハ!はーっはっははは!」














「できた・・・できたぞぉ・・・クク・・・ハハッ・・・さぁ、次はマックスだ・・・」

「マックス・・・マックス・・・起きておくれ・・・父さんに・・・笑顔を見せておくれ・・・」


『オハヨウゴザイマス。ドクタードップラー。』


「違う!違う違う違う!お前ではない!お前ではないぃぃぃ!」









「・・・マックス・・・No.138・・・さぁ、起きるのだ。」


『オハヨー。トウサ・・・』


「違う!マックスじゃない!お前がマックスのはずがない!」









「・・・何故だ・・・声も・・・顔も・・・思考ルーチンも・・・飛躍的論理の発想も・・・メモリも・・・再現した・・・再現した・・・」



「・・・No.155・・・失敗・・・No.167・・・失敗・・・」


「・・・時間が・・・足りない・・・圧倒的に・・・足りない・・・」


「・・・睡眠など・・・不要だ・・・ならば・・・!」


「・・・有機脳をメインに・・・サブに電脳を構築・・・クク・・・完璧だ・・・!」


「・・・後は、手術のみ・・・誰か、腕の立つやつに頼むか・・・」


「・・・機械工学に優れ、医術にも秀でてなければ・・・」


「・・・あぁ・・・いたな・・・奴に、頼むか・・・」














「・・・久しぶりだな、ライト博士・・・」

「ドップラー博士!?行方不明になっていたドップラー博士ではないですか!?」









//////////////////



「お久しぶりですな、10年もの間、何処へいたのです?」

10年・・・そうか、もう10年か。
マックスがいなくなって・・・
だが、私の10年などどうでもいい。早く、早くサイボークにならなくては。

「・・・そんなことは、どうでもいい・・・君に、頼みたいことが・・・」

「いらっしゃいませ!こんにちわ!」

横合いから誰だ?
お前なんぞに構っている時間はないのだ。

「おぉ、ロック。この方にお茶を用意しておくれ。」

振り向けば、子供。
ロックと呼ばれた、青い・・・こ、ども?

「はい、ライト博士!えーと・・・」

「・・・ドップラーだ・・・」

待て、待て待て待て。
目の前の存在はなんだ。
このコロコロと表情を変える存在はなんだ?

「はい、こんにちわ、ドップラーさん!お砂糖はいくつ必要ですか!」

「・・・」

受け答えが早すぎる。
パターンわけにしては細かすぎる。
反射的すらあるこの切り返し。

「あ、あの?」

「どうかしたのかね?ドップラー博士?」

私の様子を観察し、戸惑っている?
なんと・・・

「・・・素晴らしい・・・」

「ほぇ?」

「うむ?」

「素晴らしいぞライト博士!」

「おおぅ。そ、そうか、ありがとう。」

「彼はどのようなプログラムなのだ!?どのような思考ルーチンなのだ!?どのような!?どのようなぁ!?」

知りたい!
あたかも感情があるように話す、目の前のレプリロイドの構造が!
その構造さえ知れば、マックスが、私のマックスが笑いかけてくれる!

「お、落ち着きたまえ。・・・そうだな、貴方の意見もぜひ聞きたい。研究所で話そうか。」


「おお!そうか!ありがたい!」

待っていておくれ、マックス。もうすぐお前を生き返らせることが・・・










//////////////////


「・・・感情回路?」

「うむ。私が10年掛けて構築した回路でな。」

「・・・ほう・・・なるほど・・・」

「そこは、特殊でな・・・ここが・・・」

「ほう!?さすがレプリロイドの生みの親・・・このようなことができるとは・・・」

「はっはっは。貴方のおかげですぞ。10年前、貴方の発表した新理論から生まれた技術ですぞ。」


「そうか・・・そうか・・・私の研究も・・・捨てたものではないな・・・」

「なんとなんと、このライト、ドップラー博士のあの理論のおかげでロックを、息子を生むことができたのです。」


「む、すこ?」

「ええ。恥ずかしながら、独り身の私からすると、この子が可愛くてなぁ・・・のぉロック?」


「わぁ!やめてくださいよ!博士ー!頭ぐりぐりしないでー!」

「はっはっは。」

「ライト、ライト博士。研究者仲間として、息子を持つ父として、君に頼みたいことが・・・」


「ふむ?なんですかな?」










「私を・・・サイボーグ化してくれ・・・」

「何を!?」

「マックスを!息子を生き返らせるためなのだ!」









//////////////////


「レプリロイドでご子息を再現するですと!?」

「・・・そうだ。」

そうだ、それしかない。
マックスを蘇らせるにはそれしかない。

「何を馬鹿な!」

「馬鹿だと!?」

「ご子息を再現などできるはずがない!」

「できる!」

私はマックスの全てを再現するのだ!
君の回路と私の技術が合わされば可能なはずだ!

「例え感情回路を入れても、ご子息の記憶を再現しても、それは、貴方のご子息ではない!」


「なんだと!?」

「なぜならば!貴方と時を同じくしたご子息は亡くなったからだ!」

「だから生き返らせると・・・!」

「死者は蘇らない!例え全てを再現してそこにいるのは、よく似たレプリロイドでしかないですぞ!」


「・・・っ!」

なんだと・・・!?
記憶も、思考も、姿かたちもあわせれば・・・!

「ならば貴方はご子息の全てを知っていると!?」

「何!?」

「全てを再現すると言うのならば、ご子息の生きた経験、環境、感情、思考、全てを知らなければならない!」


「当然だ!私は父だぞ!」

「ならばこの場でご子息のことを語ってみろ!」

「マックスは・・・!・・・う・・・うぅ!」

わ、私は・・・
私は、マックスのことを・・・
し、知らない・・・
あの子が何を経験したのか、何を思って生きていたのか・・・何を思って死んだのか!

「わ、私は・・・むす、息子が・・・一人、一人になってしまう・・・」

「ドップラー博士、貴方もわかっているはずだ・・・もう、ご子息は帰ってこないのだと・・・」


「わ、私は・・・私はぁぁぁぁ・・・あ・・・うぅ・・・」

マックス、マックス。
すまない。すまない。
父さんは、父さんは駄目な・・・お前に何も、やれない。

「あの、大丈夫ですか?」

「・・・く・・・うぅ・・・」

「あ、あの・・・」

「ロック、今は一人にしてあげなさい・・・」

「あ、はい・・・」

私の息子はもういないのに、目の前のレプリロイドが、本当に子供のように純真で・・・その優しさが、







・・・辛かった・・・







//////////////////


「昨夜は、迷惑をかけた・・・」

「いえ・・・大丈夫・・・」

「言わないでくれ・・・頼むから。」

「んん!・・・昨日は、貴方の意見が聞けてためになりましたぞ。感謝します。」

「・・・ああ。私も素晴らしいものを見せてもらったよ。」

「そうですか。少しでも貴方のためになれたのなら、良かったですな。」

「ふ、君はお人よしと呼ばれるだろ?」

「わぁ!すごい!よくわかりましたね!」

「こ、これロック!」

「ふふ、はははは・・・久しぶりに笑わせてもらった。・・・さらばだライト博士。もう会うことはないだろう。」


「お元気で、ドップラー博士。・・・早まるでないですぞ。」

「ふ・・・そんなことをすれば、マックスに駄目親父と呼ばれるので・・・今は、あの子との思い出と共に、余生を過すよ・・・幸い、金持ちでね。」


「ははは!そうですか、では、また機会があればどこかで。」

「そうか、そうだな。さよならよりは縁起がいい。またどこかで・・・グッドラック。」
「さようなら!またね!ドップラーさん!」

「あぁ、さようなら、ロック君。ライト博士と幸せにな・・・」

















//////////////////



・・・何をして過すか。

やることが、本当にないな。

「ゴホッゴホツ!」

やれやれ・・・10年の不精は、体を蝕んでいるか・・・
ま、いいさ。
マックスに会えるまでの時間が短くなったと思えば。

マックス、父さん、何すればいいかな?


・・・やれやれ。
駄目親父と呼ばれた気がする。

そうだな、サイボーグ技術を医療用として世に出してみるか。
さすがに電脳等は出せないが、腕や足のサイボーグ化は役に立つだろう。

見ていてくれ、マックス。
私がそっちで自慢できるような誇れることをして見せるから。










//////////////////



・・・もう20年。
あの子が逝ってから20年、か。
私も、年老いたな。
いつのまにか、天才だのなんだの言われるようになったが、私は息子が誇れるような人間になれただろうか。



<TRRRRR!TRRRRR!>


やれやれ、誰だ?
直接研究所に連絡をよこせるような奴がいたか?



『・・・お久しぶりですな、ドップラー博士。』

「ライト博士?」













「急にお呼びだてして申し訳ないの。」

「構わんよ。久しぶりに友誼を確かめるのも悪くない・・・しかし、老けたなぁ・・・」
「ははは!お互い様ですぞ。白い髪がすっかり板について。」

「ライト博士の豊かな白あごひげには負けるとも・・・ところで、ロック君は?」

あの元気なレプリロイドがいない。
どうしたのだろうか?

「あの子は・・・逝きました・・・」

「そうか・・・ご冥福を・・・」

「・・・ありがとうございます。」

レプリロイドとて、永遠ではない。
しかし、そうか、あの元気な子が逝ったか・・・

「それで・・・ドップラー博士に見せたいものがありましての。」

「ほう・・・なにかな?」

「こっちです。」







ライト博士に連れて来れれた先に、一つのカプセルがあった。
その中にいたのは・・・

「ロック君?」

「いえ、違いますぞ。この子は、私の最後の息子。『エックス』、『ロックマンX』です。」


「ほう、エックス君か。」

「これを見てもらえますかな?」

ライト博士は私にスクリーンに投影した何かを見せる。
これは、カタログスペック?

「ふむ、戦闘用・・・アンチイレギュラーですかな?」

イレギュラー。
昨今、謎の暴走をし、人々を傷つけるレプリロイドが発生するという事件がある。
暴走したレプリロイドをイレギュラーと呼び、そのイレギュラーを倒すために戦力を与えたレプリロイドのことをアンチイレギュラーと呼ぶ。

「うむ、素晴らしいバランスだ・・・む・・・なんだこれは!?」

カタログスペックを読み進めていくと、恐ろしいことが書いてあった。

「悩み、迷うことを枢軸においた思考ルーチンに、感情回路だと!?なにを考えている!?」


馬鹿な、迷うだと?
そんなことを中心に思考するレプリロイドなど、イレギュラーといっしょだ!

「そう、それこそがエックスの最大の特徴。」

「しかも・・・成長する機能・・・!?なんだこれは!?」

「エックスとは、未知。無限の可能性を持たせたのです。」

「馬鹿な・・・迷い・・・成長する!?」

素晴らしい、いや恐ろしい機能だ・・・なぜならば・・・

「もし、もしエックス君が、ロボット三原則に疑問を持ち、迷ったらどうするのだ!?」

ロボット三原則。
人に従い、人に逆らわず、傷つけないという、レプリロイドに焼き付ける最も基本的な部分。
ここが狂っているものをイレギュラーと呼ぶ。
つまり・・・

「成長しつづける・・・最強のイレギュラーを作るつもりか!?」

「違う!違うのです・・・」

ライト博士は、私の言葉を強く否定し、こちらを睨む。

「エックスには、人になって欲しいのです。」

「人、だと?」

「迷い、悩み、成長する。私は、それこそが人だと思っている。そして、それが行き着く先、その果てを目指す・・・それが無限の可能性、エックス・・・」

「・・・君の言いたいことはわかる、だが、この世界で自立して学習させるには危険が多いぞ。」


そうだ、このままではエックス君は十中八九イレギュラーになる。

「その通りですな・・・だから貴方にお願いがある。」

「なに?」

「エックスを引き取ってもらいたい。」

「なんだと?」

「私は・・・もう長くない。」

「っ!?」

「このままではエックスに十分な経験を積ませる前に、私は死ぬでしょう・・・」

「・・・それで?」

「レプリロイドに対し、優しさをもって接してくれる、貴方になら、私の息子を託せる・・・だから・・・」


「ふざけるな!」

「っ!?」

「ライト博士!貴方はこの子を息子と呼んだ!ならば責任を果たせ!」

「責任・・・!?」

なんて無責任なやつだ。
まだ、息子がいる、お前には息子が目の前にいるのだろう!
仮に死に行くというのならば、その最後の一瞬まで傍にいてやる・・・それが親の務めだ!

「いつか終わる最後のときまで・・・親でいろ!トーマス・ライト!」

「・・・!」

「それを・・・かつて貴方に思い出させてもらった・・・だから、貴方が息子を諦めるのは許せない!」

「私は・・・ワシは・・・」

「それに・・・我々科学者は、最後まで自分で証明したがるものだ。そうだろ?ん?」


「そうか・・・そうだな・・・せめて、最後まで一緒に、それが親としての、科学者としての責任か・・・」


「目は覚めたかね?」

「ああ・・・あぁ・・・すまんかった。」

「謝罪はいらん。礼もいらん。かつての借りを今返した。そうだろ?友よ。」

「おお・・・おぉ・・・そうか・・・そうだな、だが、礼は言わせてくれ、友よ。」

ふん、ようやく、自分を取り戻したか。
死の恐怖に弱気になっていたようだな。

「好きにすればいい・・・私はもう帰ろう、せめて最後まで、エックス君と幸せにな・・・グッドラック。」


「あぁ・・・貴方にも幸運があらんことを。」












//////////////////


・・・作ったものの責任か・・・


「どの口が、いうのだか・・・」

研究室には、自動サイボーグ化ユニットとレプリロイドの体と・・・AIチップ。

「まったく、無責任なのは自分だな・・・」

よくも、ライト博士に言えたものだ。

「・・・ぅ・・・」

だめだ、久しぶりに遠出したせいか、すごく疲れていて眠気が襲ってくる。

「・・・」

近くの椅子に座り、ゆっくりと夢の世界へと沈む・・・




















『ねぇねぇ!お父さん!』

『なんだマックス?』

『つよーーーーーい、ロボット作ってよ!』

『強いロボット?』

『うん!それでね!それでね!悪いやつをやっつけるの!』

『ふむふむ。』

『お父さんのロボットが皆を守るヒーローになるんだよ!』

『そうか、英雄<ヒーロー>か、それはかっこいいな。』

『でしょでしょ!だからね・・・』




















・・・懐かしい夢をみた。
幼いマックスとのある日の夢を。

「・・・やって、みるか・・・」

どうせやることもなく、日々を死ぬまでただ過すだけだったのだ、悪くない。

それに、作った責任もある。

レプリロイドの体とAIチップ・・・かつてマックスのために、いや私の自己満足ために作って放置された物。

ライト博士風に言うのならば、彼らもまた私の息子ではないか?

ならば、責任を取ろう。
科学者として、父として。

そして・・・マックスとの約束。最強のヒーローを誕生させる。
そうすれば、あの子もきっと喜んでくれる。
なんせ、弟が英雄なのだから。

「・・・これもまた、自己満足・・・だが・・・約束を果たす、か・・・悪くないな。」

ならば、さっそく始めよう。

「まずは・・・自身のサイボーク化からだな。」

私はやるならばトコトンやる。
なんせ、息子が生まれるのだ。
誕生する息子がいるのに、父がすぐ死ぬなどという不幸はさせない。
やるならば、徹底的に。
生まれてくる息子に幸せを与えるために。

なんせ私は・・・








「凝性なのでね・・・さぁ・・・やるか!グッドラック!」

































『起きよ。』

『・・・』

『起きるのじゃ。』

『・・・』

『起きるのじゃ。』

『・・・』

『起きんかぁ!』

『うぉ!?』

『ようやっと起きたか。』

『な、なんだぁ?』

『ふむ。周りの状況を理解しようとするか。中々の成熟度じゃの。』

『何処だここ!?』

『うむ。ここはワシの研究所じゃ。』

『あん?研究所?なんで俺はそんなところにいるんだ?』

『もちろん、ここで生まれたからじゃよ。』

『はっはっは。爺さん、そのギャグ最高だぜ。』

『うむ?・・・ちと、プログラムをいじりすぎたかの?』

『ところでさ、爺さんだれ?』

『むぅ・・・ワシのこともわからんか。柔軟性を重視しすぎて基礎知識が足りとらんか。』

『あん?』

『なんでもない。ワシは、おぬしの生みの親じゃ。』

『はっはっは。そのギャグ最高だぜ。で、誰?』

『だから、生みの親じゃて。』

『もうジョークはいいって。』

『だから、生みの親じゃ。』

『おいおい、天丼もそこまでいくとつらいぜ?』

『だから!生みの親で!機械工学博士のドップラーじゃ!』

『はっはっは機械工学博士とかその年になって厨二・・・ドップラー!?』

『うむ。ドップラーじゃ。』

『HEY!爺さん!俺って誰だYO!』

『むぅ・・人格プログラムミスったかのぉ・・・おぬしはワシの最新作、レプリロイド『マック』じゃ。』

『マックぅぅぅぅぅ!?』








――おはよう、マック。これからのお前の人生に幸多からんことを。グッドラック。








//////////////////




「ん・・・おぉ~・・・むぅ・・・」

懐かしい夢をみたのぉ・・・
いかんいかん。
まーた研究所で眠ってしもうた。
マックにまた怒られてしまうわい。


しかし、マックは大丈夫かのぉ・・・

なんでもイレギュラーハンター反乱軍の本拠地に行くとか言っておったし・・・
心配じゃのぉ・・・



「・・・博士!ドップラー博士!いらっしゃいますか!?」

「はいはい・・・おるぞー。」

やれやれ・・・こんな夜更けに誰じゃて・・・
扉を開けてやれば、入ってきたのは、真紅のレプリロイドと・・・











「マック!?」

ボロボロの息子。








//////////////////



「・・・全く、どうやればここまで壊れるのじゃ・・・ブツブツ・・・」

『・・・YO・・・』

「起きたかマック。」

『・・・お・・・爺さんがいる・・・天国・・・』

「ワシャまだ現役じゃ!」

『・・・ジョーク・・・だ・・・ZE・・・』

「まだ眠っておれ、修復完了まではまだ時間がかかる。」

『・・・おー・・・おや・・・すみ・・・』

「うむ。すぐに元気にしてやるわい。待っておれ。」


うむ。仮起動してみたが、メインメモリとAIは無事じゃな。
診断通りじゃ。
しかし、体は全とっかえじゃな・・・ボロボロすぎて作ったほうがはやい。
なんせ上半身だけでしかも、右半身がない。
メインメモリとAIを覆う部分を最も強固にしといて良かったわい。
さすがメットール印じゃの。

さぁて・・・体を換えるなら、いろいろといじってみるかのぉ。
マックも新しい装備が欲しいって言ってたしの。



――今はお休み、ヒーロー。よく頑張ったな息子よ。








//////////////////


「よしよし。もう少しで修復完了じゃ。」

『・・・』

「ほっほっほ。マックよ、新装備を見たらビックリするぞい。」

『・・・』

「さて・・・最後の一頑張り・・・っ!?」

『・・・え・・・』

「・・・なんじゃ!?」

『・・・がえ・・・』

「・・・ぐっ!ネットワークを介して・・・ワシの電脳に干渉を・・・!?」

『・・・たがえ・・・』

「・・・い、いかん・・・電脳が・・・有機脳に脳内麻薬を発生させるように・・・命令を・・・」

『・・・従え・・・』

「意識が・・・消える・・・」

『・・・我は・・・』

「マック・・・いかん・・・このままではマックのAIも・・・」

『・・・我が名は・・・』

「せめて・・・お前だけでも・・・隔離して・・・」

『我が名はシグマ!我に従え!』






「マック!逃げろ!逃げて・・・生き延びるのじゃぁぁぁぁぁ!」









――ブツン。






//////////////////


――ブゥン。


「ぐ・・・よくやった・・・エックス君・・・」

「喋れるのか!?ドップラー!」

くっ・・・ようやく、ウイルスが消えおったか。
おぼろげじゃが、今までのことを覚えておる。

「ワタシは・・・シグマに洗脳されていた・・・」

「なんだって!?」

シグマに操られていたことも、エックス君と戦ったことも憶えておる。

「やつは・・・悪性プログラムだ・・・わたしは・・・やつの体を作ってしまった・・・」

それにしても、エックス、エックス君か・・・また助けられたな・・・ライト。

「それはどこに!?」

「それは・・・」

『そこまでだ。ドップラー博士。』

「シグマ!?」

「・・・まさか・・・ここまで来るとは・・・」

『ご苦労だった。ここで眠りに付くがいい。』

「シグマぁぁぁぁぁ!!」

「・・・いかん・・・逃げろ・・・エックス君・・・!」

ダメじゃ・・・今の君はダメージを負いすぎている!

『エックス共々、引導を渡してやろう。』

「ぐっ・・・さっきのダメージがまだ・・・」

「・・・すまんな、マック・・・」

マック・・・マック。
お前は逃げれたのか、お前がどうなったのか、全く記憶にないのじゃ・・・

『塵となれ!』

「くそぉぉぉぉ!」

「・・・おぬしの新装備・・・渡せぬままじゃった・・・」

じゃが、生きていてくれ。
お前だけが、ワシの生きる意味なのだから・・・













『ぐうあぁっ!?』

「えっ?」

「・・・!?」

い、今のバスター発射音は・・・!

『何者だ!?』

「き、君は!?」

「・・・おぉ・・・おおぉ・・・!」

見間違えるはずがない。
あれは、あの姿は・・・













「HEY!そんな枯れた爺さんでも俺の親父なんだYO!そこまでにしてもらおうかケツ・A・GO!」


「君は行方不明になっていたマックじゃないか!?」


ワシの息子<ヒーロー>なのだから!









~あとがき~
まさかのドップラーもヤンデレ。
どうしてこうなった。

マック魔改造に理由を持たせたかったのでバックボーンを書いてみました。
見事に全部捏造です。
そもそもドップラー人間じゃないし、レプリロイドだし。
まぁ、うん。いいじゃない、こういう世界ということで。
しかしマック視点以外は見事にドシリアス。
まぁ、エックスシリーズはシリアスな観点が多いのでこんな感じで許してね!
ちなみにマックの中の人は一応ドップラーと因縁があったりなかったりしますので、その辺も次回書きまする。
次回、シグマ戦を書いてエックス編は完結です。
次話投下は、ロックマン憑依シリーズをネタの墓場から独立してその他板へ移しますので、ご注意をば。


しかし、見事に感想がロールちゃん祭りですね。
そんなにヤンデレが好きか!?
私は大好きだ!

しかし、連載希望ですか・・・
元々ロールちゃんXは構想になくて、あとがきの一文から生まれた即興ですのでいきなり言われても難しいですねぇ・・・

「デュラハンちゃんのほのぼの純愛殺戮日記☆マックだ~い好き!」とか・・・
「復活の黒いゼロ!我はマックのメシアなり!」とか・・・
「誰得?俺得だよ!まさかのVAVAルート!」とか・・・
「いま再び乙女による三国志が蘇る。三つ巴のマックパーツ争奪戦!」とか・・・
「息子の嫁はワシが決める!おじいちゃん無双はじまるよー!」とか・・・
ぐらいしか思い浮かびませんね。
うん、残念。この程度のネタではとても表には出せませんね。残念だ。
ちなみに上から、
後日談、ゼロ視点プラス後日談、VAVA視点プラスIFルート、IF後日談、おじいちゃん無双、って感じです。

きっと、またあとがきに感想が付きそうですね。
あとがきに反応していただけるのも嬉しいのですが、
本編にも反応が欲しい微妙な作者心。

もしかしたら、本編の反応が多かったらモチベーション上がってロールちゃんシリーズになるかもね!
壁 |ω・`)チラ

べ、別に感想が欲しいわけじゃないんだからね!

・・・なに生意気言ってるんでしょうね、私。
ではでは、お読みいただきありがとうございました!
また次のお話で!

あ、ちなみにVAVAさんは初めから乙女ですので心配しないでください。
私、♂×♂とか♀×♀とか苦手なので。ギャグでしか使いません。



[28394] 【これにて】憑依4【完結】
Name: socom2◆c4c431dd ID:a13ac3ff
Date: 2011/06/17 06:32

「HEY!そんな枯れた爺さんでも俺の親父なんだYO!そこまでにしてもらおうかケツ・A・GO!」


「君は行方不明になっていたマックじゃないか!?」












マック・・・マックだ・・・!

間違いない、絶対に、絶対に!

「マック!」

「おーうエックス。生きてるなぁ?」

「それは・・・『僕』の台詞だよ!」

「ん?よくわからんが、おひさー。」

「うん、うん!」

こっちへ近づいてくるマック。
ホログラムじゃない、ノイズでもない、本物のマック、僕の、相棒。


「わりぃな、爺さん。待たせちまったか?」

「おぉ・・・おぉ・・・マック、よく、よく無事で・・・」

「泣くなYO!ますます枯れちまうZE?」

マックは優しくドップラーを気遣う。
そうか、マックのお爺さんとはドップラーのことだったのか・・・


「・・・マック、貴様か。」

「ヘロー、お久しぶりです隊長ー。」

マックはまるで気負うことなく、シグマへと返事を返す。
まったく、君はいつも変わらないな。

・・・そんな君が傍にいるのが嬉しいよ、マック。

「ふん。生みの親の危機に慌てて出てきたか?」

「出待ちとかどこの芸人だYO!これは、そう、あれだ、ヒーローは最後に来るもんなんだYO!」

「エックス!無事か!?」

「ゼロ!?」

「最後奪われたー!?」

ゼロが封鎖された扉を破って助けに来てくれた。
そして、マックは絶望したとばかりに跪く。
どうしたの?


「お前、マックか!?」

「YO!久しぶり先輩!」

あ、殴られた。

「お前、このクソ忙しい時になに行方不明とかなってんだ?あ゙ぁん?」

「ちょ、先輩、先輩!これラスト、ラストだから!ラスボス待ってるから!」

「あん?・・・シグマ!?」

「・・・ゼロ、貴様も来たか。」

「アンタが、黒幕か・・・!」

ゼロがシグマに対し臨戦態勢をとる。

僕も、戦わなくては・・・!

「マック、ゼロ、僕も<バチッ!>・・・ぐぅっ!?」

「エックス!?動くな!」

「エックス君!無理をするな!」

「・・・」

走る火花。
倒れかけた所をゼロが支えてくれ、ドップラーが声を掛けてくれる。

「くっ・・・うぅ・・・!」

「すまん、すまん!ワシの、ワシのせいで・・・」

「いや、全ては、やつの、シグマのせいです・・・!」

マックのお爺さんの凶行も全てはシグマが仕組んだ罠だった。
ならば、憎むべきは奴一人。
あのふざけたハゲ野郎だけだ。

「マック、ゼロ、僕も戦う・・・」

「よーし!んじゃ役割分担!エックスと爺さんは撤退!先輩はその援護兼護衛!俺、時間稼ぎ!」

「なっ!?」

「マック!?」

「何言ってやがる!?」

マック、何を、何を言ってるんだ!
シグマ相手に一人なんて無謀すぎる!

「僕も、僕もやれるよ!」

「本気で言ってんのか?足手まとい。」

「・・・っ!?」

「今のお前なんて指先一つでダウンだYO!」

「マック!お前!」

「やめろ、ゼロ・・・」

マックの言う通りだ・・・
傷ついたこの体では、盾ぐらいにしかならないだろう。

でも、盾でもなれるなら、僕は・・・!

「マック!僕は君達の盾・・・」

「だから!」

「っ!?」

「その体、直すくらいの時間は稼ぐさ・・・直ったらすぐに助けてくれYO?」

「・・・マック。」

「大丈夫、大丈夫さ。俺の爺さんなら、そんな傷、3秒で直すさ、な?」

「うむ・・・うむ!」

「ほら、見た目ショボイ爺さんだけど、マジ天才だから大丈夫だって。」

「誰がショボイじゃと!ワシはまだまだイケイケじゃ!」

「はは・・・」

マック、君は・・・本当にいつも変わらない・・・優しい奴だ・・・

「つーわけで、ゼロ先輩、二人をヨロシク!」

「・・・やれるのか?」

「楽勝だZE!むしろ・・・」

「「「・・・?」」」





「倒してしまってもかまわんのだろう?」






「っ!・・・そうだね!」

「はっ!言うじゃないか!」

「マック、おぬしならやれるぞ!」

「OK、んじゃ、また後でな。」

「うん、すぐに戻ってくるから!」

「ああ、俺の分も残しておけよ?」

「マック・・・グッドラック!」

「ヒューッ!サンキュー爺さん!・・・じゃ、な。」

「・・・うむ。」


マック、すぐに戻ってくる。必ずだ。
もう二度と君を失うもんか。
だから、だから・・・!















////////////////////////


爺さんとエックスとゼロが、ゼロの開けた穴から出て行く。
残ったのは、俺と・・・シグマのみ。

「YO!待たせたかい?」

「・・・ふん。少し、な。」

「いやー律儀だねー隊長。」

マジで。
いつ襲ってくるのかと内心ビクビクしてました。

「ふん。あの場で4対1を選ぶほど愚かではない。お前達は間違いなく世界最高峰の戦闘力を有しているからな。」

「おー、しかも謙虚だね。」

「私の次に、と注釈は付くが。」

「前言撤回。」

さすがラスボス。
余裕綽綽だね。


「それに・・・気づかないとでも思ったか?」

「ん?」

「貴様のわずかな震え・・・バスターのチャージに。」

「んん?」

「ふん・・・私が少しでも動こうならば、そのフルチャージを撃つつもりだったのだろう?なし崩しに4対1は選ばんよ。」

「・・・ハッハー!ばれちまったか!」

ばれてたようだな。
俺のわずかなバイブレーション。
心の震え。




チキンハートに。




溜めてないから!全然溜めてないから!
あんたにビビッてただけだからYO!

・・・ばれないようにチャージしとこ。
うぃーんうぃーん。
よしOK。

「だが、愚策だったな。」

「何が?」

「私に一人で挑もうなどと・・・それは勇気ではない、蛮勇だ。」

「4対1でフルボッコがお望みかい?」

「ふ・・・4対1で負けると、いつ言った?」

「っ!?」

「4人相手にするのは時間がかかって、面倒なだけだ!まずは貴様から血祭りにあげてやる!」

ケツアゴがくる!











「死ね!」


「ここが正念場ってか・・・さぁ・・・やるか!グッドラック!」









////////////////////////


正面から挑む馬鹿はいない!
まずは後ろに向かって全力前進!

「逃げるか?」

「ハッハー!寝言は寝て言えYO!」

逃げつつマックバスターを連射連射ー!
おらおらー!蜂の巣にしてやるぜヒャッハー!


<カキンカキン!>

「効かん!」

「マジで!?」

全部盾に防がれたー!

って、ここまでは折込済みだYO!
弾幕で相手を貼り付けて、距離を離す離す!


そしてここで必殺の!

「フルチャージバスタァァァァァ!」

その盾ごと吹っ飛ばしてやんYO!







<カィン>

あふん。






ダメだった。

てかなんだよあの軽い音!
効かないどころか愉快な音たてて煙を上げやがったYO!
頑張れ!もっと頑張れよマックバスター!
お前はできる子だろ!
もっと熱くなれYO!

「ふん!」

「火ぃぃぃ!?」

ぎゃぁぁぁぁぁ!
撃ってきたー!?
火炎弾が迫ってくるぅぅぅ!
その熱さはいらないYO!
ちょっ!あぶっ!回避回避ー!

落ち着け俺。
相手は火の玉だ。
つまり質量はない。
ならば、はじけるはずだ。
回転の動きをもって、吹き飛ばす!

無敵の・・・廻し受け!







「パリィ!」

<ジュッ!>







「燃えたぁぁぁぁ!」

むりぽ。
溶けてる!ちょっと溶けてるYO!
とりあえず、退避ー退避ー!

「おらぁぁぁぁ!」

弾幕弾幕!

「む。」

<カィンカィン>

よっし!盾構えさせて動きを止めたYO!

マックダーーーーッシュ!つまり相手との距離をとる。
べ、別に逃げてるわけじゃないんだからね!


「ふん・・・」

よし、シグマの射程から抜けたか!?
だけどそこはまだ俺の射程!

「喰らえ!」

遠くからーーーー撃つべし!撃つべし!

<カィンカィン>

「無駄なことを・・・」

まったく効かねー!
どうする!?どうする俺!

ヘルプ!助けて神様ー!


『ハヤクアキラメタマエ!』


レプリロイドの生みの親キター!
しかもロクでもねー!
後でエックスにチクってやるYO!


「・・・(ニジリニジリ)」

「ちょ!?」

ぎゃー!
盾構えてゆっくり近づくなYO!
それ反則だから、俺のシマじゃノーカンだから!

「燃え尽きろ!」

「おぉぉーーー!」

マックダッシュ!マックダーーッシュ!

ダッシュダーッシュダシュ!
ジャンプエーンドダッシュ!

<ジュッ!>

燃えたー!生死を駆け抜けたのに当たったYO!

<ドロ・・・>

溶けたー!



「ち・・・しぶといな・・・」

「ハッハー!大したことねぇな隊長!」


ぜはーぜはー!
休憩!ちょっと休憩しよう、な?
お前も疲れただろ?
うん、わかってるって。老骨に鞭打ったんだろ、な?

「はぁぁぁ!」

「ぎゃーーー!炎の弾幕ぅぅぅ!」

壁蹴り壁蹴り!俺は上空へ逃げるぞシグマー!

「ギギギギギ・・・はぁ!」

「うぉっ!?」

シグマさん力強すぎ。
ちょ、地面殴って揺らすとかドンダケー!
滑る!壁から滑って落ちちゃうーーー!

「そこだ!」

「ナントォーーーー!」

はいそこでエアダッシュ。
エアバックじゃないよダッシュだよ。
さすが爺さん!エアダッシュ機能も万全だぜ!

「ちっ・・・ちょこまかと・・・!」

「ハッハー!ヤフゥゥゥゥ!」

「貴様・・・!」

よーし、いい感じに焦ってきたな。
こちとら時間稼ぎだけでいいんだ。
エックス達が来たらお前なんかフルボッコなんだからね!

「また、逃げたか。」

よーし、十分に距離をとったぞ。
ここで、俺の隠し機能No.2!

「マックアーーーーイ!」

説明しよう!
マックアイとは光学、赤外線、紫外線、超音波、その他諸々、いろんなセンサーで相手を調べるのだ!
このマックアイの前にしたら、相手のスペックなどエロ本の袋閉じのようなもんだZE!





――ピピッ!



バイザーにシグマのスペックが浮き上がったきた・・・!

さぁ!見せておくれ解析結果を!





【名称:シグマ】


【武装】

【1.肩部火炎放射器】

【2.左腕タワーシールド】

【3.???】



【カタログスペック】

【力:つよい】

【スピード:はやい】

【装甲:かたい】

【反応:すごい】

【総評:やばい】






つかえねぇぇぇぇぇ!

武装、ハテナってなんだYO!
わかってるのしか表示されねーのかYO!
スペック適当すぎんだろぉぉぉぉ!




「遠距離では、届かんか・・・ならば・・・!」

「っ!?」

やべ!?

盾構えながら突っ込んできやがった!
マックダッシュ!

「ち・・・!」

OK!スピードは互角だ!
追いつけないようだな!

そこで壁蹴りでさらに距離を・・・!





「遅い。」

「な・・・!?」

俺の三回の壁蹴りを、一回で追い抜きやがった!?





――衝撃。










「が・・・がはっ!・・・く、くそ・・・!」

やべ、思いっきり殴られて落下した。
痛みはシャットアウトしてるから気にならないけど、視界がノイズだらけだ。

「ふん・・・マック、貴様が私に勝てない理由を教えてやろう。」

「・・・あ?」

ラッキー!
ここでラスボス特有のウンチクが始まったぜ!
その間にセルフチェックセルフチェック。あとリカバリーもかけとくYO!

「貴様のカタログスペックは世界でトップクラスと言っていい。さすがは天才ドップラーの作品といったところだな。」

「・・・はっ・・・当然、だ・・・俺は、爺さんの・・・息子、だからな・・・」

え?マジで?そんなにすごかったの俺。

「それ故に、貴様は全てにおいて私に劣る。」

「・・・なん、だと・・・?」

おいぃー!
上げて落とすとかマジ勘弁!

「なぜならば、このボディは・・・貴様をサンプルにして、ドップラーが作り直した最新作だからだ!」

「・・・そう、かい・・・」

知ってる。

「驚かんな。」

「・・・当然、だ・・・爺さんが、作ったんだ・・・最高に、決まってるだろ・・・」

「ふん・・・その思考は理解できんな。」

「・・・いい、さ・・・理解、してほしくも・・・ない・・・」

くっそ、やべぇな。
さっきの一撃でスピードが殺された。
もう逃げ回るのはきつい。

「そして、もう一つ、貴様には欠点がある。」

「・・・あ?」

「それは・・・経験だ!貴様は自分のスペックを満足に引き出せていない!さっきの壁蹴りがその証拠だ!」

「・・・だった、ら・・・テメェは、どう・・・なんだ・・・そのボディ、慣れてんのか・・・YO?・・・」

「ふん・・・なめるなよ小僧。」

わぉ。シグマ超こえー。
なんかドッドッドッド!って効果音が付きそうだ。

「私は、10年以上戦ってきた!ハンターとして、最前線で!貴様のような小僧とは格が違う!」

はいはい、さすが年長者。格が違うねー。

・・・だが、驕ったな。

盾がわずかに下がったぞ!



「その隙逃さねぇ!」

よし!ダッシでュ回り込んで、盾の内側に来た!
この距離でその火炎放射機は使えねぇだろ!?




















「獲った!」

「馬鹿め。ブラフだ。」




煌く閃光。




「ビームサーベッ・・・!?」

「死ね。」

死が、迫る。

・・・けど。











引けねぇ!!


「意地があんだよ!ヒーローだからなぁぁぁぁ!!」

「何!?」












――フルチャージバスタァァァァァァァ!!!







////////////////////////






マック、マック!

待っていてくれ、すぐに、すぐに行くから!


「急ぐぞエックス!」

「あぁ!」

最速で進む、進む、進む。

さすがは、ドップラー博士だ。
あのダメージがまるで感じられない。
完全に直っている。
これなら、戦える!




「あそこだ!」

「うん!」

あの角を曲がって、あの穴に飛び込めば・・・マック!










「え?」

「なっ・・・!?」

「来たか。」








飛び込んできた光景は、

ビームサーベルで腹を串刺しにされ、

壁に縫い付けられた、





相棒の姿。






「マックゥゥゥゥゥ!!!」

「クソっ!」











「ふん、以外と早かったな。」

「マック、マック!返事をしてくれ!」

「シグマ!マックを放しやがれ!」

ピクリとも動かない。
ダラリと下がった左腕。
右腕にあったバスターは肘から切り落とされている。
そして、両足は、まるでマグマに飛び込んだように溶けている。

「マック、お願いだ、声、声を!」

「そのサーベルをどけろと言っている!」

「ふん・・・」

「・・・・・・ス・・・・・・」

・・・っ!?
かすかに、かすかに声が聞こえた!?

「シグマ!」

「わめくなゼロ。特A級の品が下がるぞ。」

集中しろ。マックの、彼の無事を確かめるんだ!

「・・・!」

「・・・!」

今必要なのは、彼の声だけ。
それ以外を遮断する。
集中、集中しろ。



「・・・ックス・・・ゼ・・・」

聞こえた!
無事だ、彼はまだ生きている!

「・・・エックス・・・ゼロ・・・」

僕に、助けを求めている。
すぐに助けなければ!

今、行く!





「・・・爺さん、を・・・たの<ドスッ>」

「しぶとい奴だ。」



――ピーーーーーーーブツンッ・・・・・・・・・






あ・・・


頭、に、さー、べる・・・


仰向け、に、倒れ、て・・・


動かなく、なった・・・











「あああぁあぁっぁあぁぁぁぁ!!!」

「おまえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

「ようやく死んだか。まったく、そのしぶとさだけは褒めてやる。」

そこは、そこはぁぁぁぁぁ!?




「マックが、マックがぁぁぁぁ!!!」

「AIをやりやがったなシグマァァァァァ!!!」

「ふん・・・麗しい友情か?・・・理解できんな。」




「殺す、コロシテヤル!」

「バラバラにしてやる!」

「ふん、その程度の殺気で吼えるなよ坊や。」












「シネェェェェ!!」

「遅いぞエックス。」

バスターを避けてコッチへ来る!?


「俺を忘れるなよ!」

「当然だ。」

ゼロのサーベルをサーベルで受け止めたか・・・なら!

「その背中にぃぃぃぃぃ!」

「後ろなどない。」

肩のキャノン砲がこっちを!?

「くぅっ!?火炎弾!?」

「避けたか。」

「余所見とは余裕だなぁぁぁぁぁ!」

「余裕だからなゼロ。」

ゼロを蹴り飛ばした!?
やばいっ!?

「はぁっ!」

「バックダッシュで斬り返しを避けたか・・・ふん。」



はぁはぁ・・・クソ、こんな短い攻防でもう息が・・・

「ちっ・・・攻めきれないか・・・」

ゼロも、攻め迷っている。

「・・・どうした?その程度では私を傷つけることもできんぞ?」

「はっ!その割りには『左腕』がないじゃねぇか!?どこかに忘れたかシグマ!」

そうだ、ゼロの言う通り、シグマの左腕がない。
初めに見たとき、巨大な盾をつけていた左腕が。

「ふん・・・この程度、ハンデにもならん・・・いや、マックに感謝するんだな、少しでも貴様達の生きる時間を延ばしたのだから。」

マック!
そうだ、彼が、彼がやってくれたんだ!

マック、マック、マック!
彼が、彼が、彼が!
僕の相棒が、勝利への道を作ってくれた!





――なのに、もういない。




もういない、もうどこにもいない。
帰ってきてくれたのに、やっと会えたのに。

どうして、どうして、どうして?










「・・・腕一本、マック程度にはもったいなかったな。」










「シグマァァァァァァァ!!!」




【 ULTIMATE MODE 】





「ぬぅ!?」

「エックス!?」





【 IGNITION 】





「くるか!?『ロックマン』!」

「待て!エックス!」


















「シネエェェェェェェェェェ!!!」



【 NOVA STRIKE 】















「遅い。その感情が貴様の弱点だロックマン。」

「あっ・・・」

目の前に光る刃。

















「この距離、終わりだ。」

「エックスゥゥゥゥ!!!」


剣閃が、煌く。









////////////////////////


あーやべー。

なんつーの?臨死体験?

いや、つか、今まさにご臨終?

だって俺が『マック』を見下ろしてるし。

すげー。幽体離脱ってこういうことか。

しかし、なんで俺、戦ったんだっけ?

元々、死にたくなくて逃げ出したのに。

やだなーまた死ぬのかー。






待て。

待て待て。

待て待て待て待て。

『また』?

またって言ったか?

俺は、死んだのか?

死んだことがあるのか?

いや。

いやいや。

いやいやいやいや。

そもそも・・・『俺』って誰だ!?

思い出せ、思い出せ!

俺の、俺の名前は・・・!








づあっ!?

頭が、い、いてぇ・・・!

くそ、なんだいまの。

だぶった。

名前がダブった!?

俺は、俺は!


』だ!







「違う!俺はマックスじゃない!」『たくっしょうがねぇな、あのダメ親父。』

「俺は、画面の向こうでロックマンを見たはずだYO!」『ホントに俺がいないとダメダメだYO!』

「死にたくない、死にたくない!」『さーて、行くとするか!』






ぐぁっ!?

頭が、割れる・・・!

俺が、俺は、二人いる?

ずっと、死にたくなくて逃げていた、『俺』。

ずっと、親父を助けたかった、『マックス』。

せめぎあって、しのぎあって・・・


今の、今の俺は、誰だ?


あ・・・あぁ・・・!

消える・・・消えるぅぅぅぅ!!

俺は、俺は誰だ!?

い、嫌だ、消えたくない!

誰でもないまま消えたくない!

俺は、俺は!





オレハァァァァァァ!!!




















『マックー!次の任務だよー!』

『おーう!ちょっと待ってなエックス!』






『おいこら、マック。いつ借金は返済するんだ?ん?』

『ちょ!先輩!そのチョークスリーパー確実に折りにきてるYO!』






『マック・・・グッドラック!』

『サンキュー!爺さん!』








あ・・・あぁ・・・








『ねぇ、マック。』

『おい、マック。』

『のぉ、マック。』





あぁ、そうだ。





『『『マック』』』





俺は、『マック』だ。





だから・・・!




















「・・・も、う・・・ちょ、っと・・・がんば・・・るか・・・YO・・・」




















////////////////////////




「遅い。その感情が貴様の弱点だロックマン。」


「あ・・・」


目の前に光る刃。



一瞬後に、死。


オレは、僕は、死ぬのか。

マックの、相棒の仇も討てずに。

なにも為せないまま。

あぁ・・・でも、きっと。

彼に、会いにいける。



・・・マック。












「この距離、おわっっぐああぁぁぁ!?」



爆発!?


「シグマ!!」


ゼロが、シグマの腕を断ち切った!


なら!




「シグマァァァァァァァァ!!!」



【 NOVA STRIKE OVER BREAK 】



お前の存在を、消し飛ばす!




















「はぁ・・・はぁっ・・・!」


やった・・・!

シグマの体は、粉々に吹き飛んだ。

勝った、勝ったんだ!


「くっ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

「エックス・・・」

「ゼ、ゼロ・・・ありがとう、あの一瞬で、バスターを撃ってくれたんだろ?」

「・・・違う。」

「え?」

じゃ、じゃあ、一体、誰が?

「・・・エックス。」

ゼロが、指し示す場所へ振り返る。

そこにいたのは・・・




















仰向けに倒れたまま、『左腕』のバスターだけをこちらに向けた、マックが、いた。

















「マック・・・?」

生きて・・・?

「・・・いや、機能停止したままだ。奴は、意識のないまま、左腕だけが動いていた。」

「そ、んな・・・」

「あいつは、お前を助けたかったのさ・・・」

「マック・・・!」


マック、僕は、僕は・・・!

僕に、死ぬなって、そう言うのか?


「行こう、エックス。マックを連れて、帰るぞ。」

「あぁ・・・そう、そうだな。帰ろう。皆で、帰るんだ。」

マック、ありがとう・・・


















『許さん・・・!許さんぞ貴様らぁぁぁぁぁ!』


「「シグマ!?」」


『よくも!よくもぉぉぉぉぉ!!!』


「馬鹿な!粉微塵に吹き飛ばしたのに!?」

「どこにいる!シグマ!」


『踏み潰してやるぅぅぅぅぅぅぅ!』


「「っ!?」」



地鳴りが響く。

現れたのは、巨大な、機械、いやレプリロイド!?
なんてサイズだ!


「エックス!見ろ!上だ!」

「なっ!?」

巨大なレプリロイドの上部、頭の部分に・・・シグマのヘッドパーツ!?


『くくくく・・・ハァーハッハッハッハ!!!』


「シグマ!?」

「あの野郎・・・!」


『これが、私の切り札!究極のアーマーよ!』


サイズが違いすぎる・・・!
でも!

「もう一度、消し飛ばしてやる!」





【 ERROR! ERROR! 】





「ぐぁっ!?」

「エックス!?やめろ、体中がオーバーヒートしているぞ!?」

「ぐ・・・か、体が・・・うご、かない・・・!」

『カカカカカ!さすがにあれは、そう使えんようだなぁロックマァァァァン!』

「くそぉぉぉぉぉぉ!」

「ちぃぃぃっ!シグマァァ!」

『貴様らまとめて・・・死ねやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』


シグマの巨大アーマーがその、両腕を振り上げ・・・







シグマの頭を掴んだ。





「え?」

「なっ!?」



『なんだぁぁぁぁぁぁ!?』













////////////////////////








『ヘロー!ヤッホー!グッモーニン!皆のマックだよー!』


「「マック!?」」


『な、なんだこれは!?』

マック、マックの声が、アーマーから聞こえる!?


『あーあーテステス。んん!えーこのアーマーは俺ことマックが奪いましたYO!』

『な、なんだと!?』

「マック!生きていたのか!?」

「ふ・・・やってくれるじゃないかっ!」


『あ、ちなみにこれ録音なので、受け答えは無理だZE!いやーシグマと戦いながら録音とかすごくね?俺。』


「あ・・・そん、な・・・」

「・・・ちっ。」


『ば、ばかな、体が、体が動かん!』


『では、種明かし。このアーマーさー元々俺のプラスパーツなわけよ。つーわけで、命令権も制御権も俺が一番ってわけ!』

『な、なんだと!?』

『んで、なんとなく、シグマ、ここに逃げるかなーって思ったので、ネットワーク介して罠張りました!』

『ば、ばかな!?』

『これを聞いてるってことは、やったんだな、エックス、ゼロ。やっぱすげーよお前ら。』

「マック・・・」

「・・・」

『あとはまかせな。シグマウイルスがネットワークを介して逃げないように、成層圏で自爆すっから。』

『な、なんだとおおぉぉぉぉぉぉ!?』


「な!?」

「・・・マック・・・!」




『じゃそーゆーことでー。銀河鉄道マック!出発進行!』


『マックゥゥゥゥゥゥゥ!!!貴様ぁぁぁぁぁぁぁ!』





「マック!・・・グッドラック!」

「・・あばよ、後輩。」

『サンキュー!フレンズ!グッバイ!』



















『おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!』


『シグマ、お前にはグッドラック<幸運>もグッバイ<再会>もやらねぇ。一人孤独に逝きな。』










////////////////////////


巨大なアーマーは戦場だったドップラー秘密研究所の屋根を突き破り、飛んでいった。

そして、数秒後に、世界を照らす光。

最後まで、僕は、僕達は彼に守られたのだ。



「帰ろう、ゼロ。彼と一緒に。」

「ああ。まったく・・・最後まで世話を焼かせる後輩だ。」

「ふふ・・・本当に、マックは、いつだってマックだったね。」

「あぁ、帰ろう、帰してやろう。こいつの家に。」

「うん、ドップラー博士に伝えるんだ、僕達の親友の、英雄の最後を。」

それが、託された相棒にできること。

そうだろ?





――マック。






////////////////////////












「・・・そうか、マックは・・・」

「もうしわけ・・・」

「言わんでくれ・・・この子は、この子は英雄になれたじゃろうか?」

「はい、最高の、英雄<ヒーロー>です。」

「あぁ・・・こいつ以上の英雄はいないだろうぜ。」

「そうか・・・そうか・・・う・・・うぅ・・・」

「博士・・・」

「・・・」

「マック・・・マック・・・よぉ・・・よぉ頑張ったのぉ・・・」

「うぅ・・・マック・・・」

「・・・くっ・・・う・・・」














「さぁて、直すかの?」

「「は?」」

















「うむうむ。AIもメモリも無事。とりあえず、メットールに入れて、仮起動するかの。」

「・・・<ブゥン>YO!爺さんもっと早く起こしてくれYO!」

「うむうむ、問題なさそうじゃの!」

「は、え?ちょ、えぇ?」

「・・・おいこら、マック。どういうことだ。」

「ふっ!このドップラー!普通の人間と同じことはしない!頭にメモリ?頭にAI?ノン!普通じゃつまらない!マックVer2は逆に胸に入れたのじゃよ!」

「ヒューッ!さすが爺さん!カッコイイZE!」

「なんせ凝性じゃからのぉ!!」

「え?マック・・・え?生きてる?」

「イエース!グッバイ<またな>って言ったじゃねぇかYO!」




















「マックーーーーーー!!!」

「ちょ、来るな!ぎゃーーー!抱きつくなぁぁぁぁ!男に抱っこされても嬉しくねぇぇぇぇ!!」

「マック!マック!良かった!良かったよぉぉぉぉ!」

「痛い!お前のトゲトゲしたアーマーが痛い!お前イメチェン失敗してるYO!」


「ちっ・・・心配して損したぜ・・・」<ドスドス>

「ぎゃぁぁぁぁぁ!先輩!ゼロ先輩!ビームサーベル俺の体に突き立てないでぇぇぇ!」
「あん?今のお前はメットールで、この体は抜け殻だろ?」<ドスドス>

「いぃぃぃやあぁぁぁぁあ!ボディが、俺の紫のボディが穴だらけにーーー!」


「ほっほっほ。」

「止めてぇぇぇ!爺さん笑ってないで止めてYO!」

「ほっほっほ。ところでマック。晩御飯はまだかの?」

「爺さん働きすぎでボケたぁぁぁぁぁぁ!?









「マックー!」

「おい、マック!」

「うむうむ、マック。」



「だぁぁーーーーー同時に呼ぶな!俺は聖徳太子のような機能は持ってねぇYO!」

















「あるぞぃ?」

「「「マジで!?」」」























////////////////////////









「はぁはぁ・・・ここまで、くれば!」


「あーそこのイレギュラー止まりなさい。」


「だ、誰だ!」


「誰だって?ふ・・・季節はずれのサンタクロースさ!」


「なに馬鹿やってやがる。」


「あはは・・・」


「な、そ、そんな・・・蒼き英雄エックスと、赤い閃光のゼロ!?」


「ちょ、なにそのカッコイイ二つ名!?」


「そ、そして・・・!」


「お、さぁ、俺の二つ名も高らかに叫んでくれ!」


「だ、誰だ?」


「NO!なんでだYO!」


「ぷ・・・くくっ・・・」


「はははは!くっくく・・・!ハハハハハ!」


「ちょ!エックス!耐えられるほうが辛いYO!先輩笑いすぎ!」


「そんな・・・英雄二人に追われるなんて・・・」


「ちょ!お前もお前で諦めるの早すぎ!俺の名前を刻んでから諦めろYO!いいか、よく聞け!」






















――俺は『マック』!イレギュラーハンター、『マック』だ!









【 FIN 】
















~あとがき~

お読みいただき、ありがとうございます。
これにて、ロックマンX憑依は完結です。
ここまでこれたのは、皆様の温かいご感想のおかげです。
最初は本当に一発ネタだったのに、こんなことになるとは、私が一番ビックリしてる罠。ギャグで始まったのでギャグで閉めました。

結局、マックの中の人なんなのさー?って言われそうですね。
簡単に言うと、マックスです。
で、最初に動画を見てたのは、マックスの前世。
死んで、前世とマックスがごっちゃになった感じですね。

つまり、タイトルに偽りなし!幽霊によるガチ憑依だったんだよ!
ΩΩΩ<なんだってー!?

詳しいことは、後日、キャラ設定を出そうと思うので、そこをご覧いただければと。

では、またどこかで。

ありがとうございました。

グッドラック!



[28394] 【ここから】憑依 閑話【ゼロへ】
Name: socom2◆c4c431dd ID:a13ac3ff
Date: 2011/08/27 18:02
多くの照明に照らされた明るい部屋。
雑多な物に溢れた其処は、他に類を見ないほどに高価で貴重な機材が並ぶ研究所だ。

その研究所の中央に2人の人影。

1人は中央の台座に仰向けに横たわり、1人はその傍の椅子に座っている。
椅子に座る人影・・・ドップラーはモニターに映る映像を睨んでいた。

モニターに映る映像・・・それは、レプリフォース、レプリロイドのみで構成された軍隊、その最終兵器である宇宙基地が地球へと落ちる映像を映し出している。

「・・・落ちるのか。」

静かな声。

だが、その声に秘められた激情は表情に出る。

その感情は、憤怒。

この地球へと落ちる巨大な宇宙基地を憤怒と共に睨んでいる。
だが、モニターから目を離し、台座に眠る人物へ視線を移したとき、彼の表情から憤怒が消えた。


「・・・悔しいじゃろうなぁ・・・マック。」

声を掛けならが、台座で眠る人物、マックの頬をなでる。
先ほどまでの憤怒とは違い、優しさだけがその表情から伺える。

「意識があれば、お前はすぐにでもあの場所へ行くのじゃろうな・・・」

かつて、イレギュラー『シグマ』との戦いでマックのボディは致命的な損傷を負った。
そして、ドップラーの手でマックVer3への修復が行われていたが、此度の戦いには間に合わなかったのだ。

「・・・じゃが、それは許さん。お前のボディはまだ未完成。その状態で戦場へ行くことは許さん。」


確固たる意思。
揺るがぬ思いでドップラーは語る。

「・・・あれが落ちれば地球は、人類は、途方もない痛手を負うじゃろう・・・」

そして、再度モニターを睨む。
徐々に高度を下げる宇宙基地。
既に地球の引力に引かれ、落ちる速度が増している。

「・・・あれが落ちれば、この研究所とて無事ではすまんじゃろう。」

ドップラーはおもむろに立ち上がると、台座の傍のコントロールパネルを操作する。
すると、台座の脇からマックを囲むように半透明のガラスが展開される。
そして、完全に展開されたガラスが、マックを保護するカプセルとなった。

「・・・マック、お前を地下深くへ封印する。」

ピッピッピと、パネルを操作する音だけが部屋へ響く。

「このオートリペアマシンだけでは、お前を完成させるのにかなりの年月を要するじゃろう。」


操作が終わったのか、マックを乗せた台座・・・オートリペアマシンがゆっくりと床に向けて下がっていく。

「・・・お前が目覚めたとき、この世界は、どうなっておるのじゃろうなぁ・・・」

マックが床へ到達する、その瞬間、床に亀裂が入り、大きな穴が開いた。

「・・・じゃが、この世界は、お前の生きるこの世界だけは終わらせん・・・!」

ゆっくりと、穴の底へ、暗闇の中へマックは消える。

「ワシが・・・ワシが、必ず・・・お前の世界を守ってやる・・・!」

マックが完全に暗闇へと消えた瞬間、床の穴は塞がり、そこにはなにもない床だけが残った。



「・・・さて、行くとするかな。」

いつもの白衣と、『色あせた青いネクタイ』をその身に纏い、ドップラーは逝く。



















「さぁ・・・やるか!グッドラック!」

――戦場へと。































//////////////////////////////








目の前に、宇宙基地。

僕が操縦する小型飛空挺から、落ち行くレプリフォースの基地が見える。


「・・・クソッ!俺は、結局、助けることも、止めることもできないのか!?」

僕の後ろの座席で、ゼロが憤慨する。
その気持ちは、僕にもわかる。

結局、僕も多くの仲間を、命を失って、目の前の脅威を防ぐことができなかった。

「なにか、何か手はないのか・・・!?」

それでも、諦められない。
僕は、守らなくちゃいけないんだ。

あの星にいる多くの命を・・・!
そして、いまだ目覚めない僕の・・・相棒を!



・・・だが、悩めど悩めど答えなど無く。

無常にも時だけが過ぎ行く。

すると、握っていた操縦桿の傍の、通信モニターへどこからか通信が入った。

その通信を開くと・・・




「「ジェネラル・・・!?」」

『<ザッ>・・・・聞こ<ザザッ>・・・る・・・<ザッ>ックス、ゼロ・・・!?』

モニターの先にはレプリフォースの総大将、金色の軍人、ジェネラルの姿が映った。



『<ブツッ>・・・チャンネルが繋がったようだな。』

「生きていたのか!?」

『フン・・・そう簡単に死ねんよ、ゼロ。』

「ジェネラル!早く脱出を!その基地は・・・」

『わかっている、そうわめくなエックス。』

ジェネラルの背後は落ち行く基地の内装。
つまり、まだ中にいる。
なぜ、落ち着いていられるんだ!

『この基地のコントロールは私が接続することで回復する。すぐに、停止させる。』

「本当か!?」

「良かった・・・これで地球は。」

良かった、手は、手はあったのだ。
これで地球にいる大勢の命も、僕の相棒も・・・助かる。


『お前たちは直ぐに離れろ。巻き込まれるぞ!』

「あぁ、わかった!」

「エックス、進路をあっちへ向けるんだ!」

「あぁ、了解だ、ゼロ!」

ゼロの指示に従い操縦桿を強く握ると・・・








『ククク・・・ハァーーーーハッハッハッハ!!』

「「シグマ!?」」

『ぬぅ!?』

悪夢が現れた。









「馬鹿な!?お前は俺とエックスで倒したはずだ!」

「なんでお前がいるんだ、シグマ!」

『おのれ・・・最後まで生へしがみ付くか・・・!』

クソッ!本当にしつこいハゲ野郎だ!

『く・・・くく・・・全ての行動は無駄だ。』

『なんだと!?』

『その基地の・・・動力は既に私が破壊した!もはや動くことすら叶わん!』

『なにぃ!?』

「なっ!?」

「そんな!?」

動力が、破壊された!?

それじゃ、コントロールが戻ったって、動かすためのエネルギーがないじゃないか!


「シグマ!テメェェェェ!」

「シグマァァァァァァ!」

『おのれ・・・おのれぇぇぇぇぇ!最後まで私を謀るかぁぁぁぁぁぁ!?』

憤怒、憎悪、怨嗟。
お前にはもう、この感情しか生まれない・・・!


『く・・・クク・・・あぁ、ちなみに・・・これは録音なのでな・・・何を言われても反応できんよ・・・誰かのようにな・・・クク・・・』


『ぬぅぅぅぅぅぅぅ!?』

「て、めぇ・・・!」

「シグ、マ・・・!」

『ハハハハハハ!おめでとう!諸君!君達は確かに私を倒したのだ!落ち行く悪夢と共に絶望しろ!ハァーッハッハッハ!』

<ブツンッ>












『おのれぇ・・・!』

「ヤ・・・ロォ・・・!」

ジェネラルもゼロも・・・もちろん僕も、怒りで頭がどうにかなりそうだ。

クソッ!
もう打つ手がないのか!?
あんな質量が地球に落ちたら・・・!





『動力がないのならば・・・!』

「手があるのか!?ジェネラル!」

『私の動力を基地へと直結させる!』

「なっ・・・!?」

「無茶だ!そんなことをしたら、貴方の動力がオーバーロードして融解するぞ!」

いや、融解するだけじゃない。
下手したら爆発・・・いや、消滅する!







『・・・軍人の誇りは地に堕ちた。』

「・・・!」

「ジェネ、ラル?」

先ほどまでとは違う。
ジェネラルの表情には憤怒ではなく・・・静かなる覚悟。



『我々レプリフォースは、守るべき人類を裏切った・・・己の道すらを裏切ったのだ。』

「でも!それは、シグマのせいだ!」

『例え、奴の姦計が原因あっても・・・我々はあまりに多くの罪を犯した。』

「・・・!」

確かに、そうだが・・・!
でも!

「やめろ、エックス。」

「・・・ゼロ?」

「それが、お前の決めた道なんだな?」

『ああ。これが、私の生きる道だ。』

「そうか・・・なら何も言わねぇよ。」

『感謝する、ゼロ。」

・・・もう、これしか手はないのか。
でも、僕は諦めたくない。
誰かが死ぬことでしか解決できないなんて・・・僕は、嫌だ!

「ジェネラル!まだだ!まだ他に手があるはずだ!」

『エックス。これはけじめだ。私の、軍人としての。』

「けじめ!?それがなんだ!生きることを諦めるな!」

僕は嫌だ!
誰かの犠牲の上で生きるなんて・・・嫌なんだ!


『・・・優しい戦士だな、お前は。』

「ジェネラル!」

『・・・だがな、例え堕ちようとも、私は軍人でありたい・・・あの星を守る軍人でありたいのだ!』

「待って!待ってくれ、ジェネラル!」

『さらばだ!戦士達よ!我が生き様を見届けよ!』



「ジェネラルゥゥゥ!!」

「エックス!ジェネラルは決めたんだ!」

「止めるな、ゼロ!」

「もうないんだ!俺達にできることは!」

「それでも僕は!」

「見届けろ!そして、語り継ぐんだよ!俺達が、アイツの生き様をだ!」





・・・それしかできないのか・・・!


・・・それしかできない・・・


・・・自分が・・・








――嫌だ。





















//////////////////////////////



『ぬぅぅぅぅぅぅぅ!止まれぇぇぇぇぇ!止まらぬかぁぁぁぁぁ!』

ジェネラルが苦しむその様を見ることしかできない。

これじゃ、あのときと、あのときと同じだ。




――マックが、VAVAと戦った時と。




あのとき、僕は何もできずにただ横たわるだけだった。

それが嫌で、もっと強くなりたいと願った。

そして、得たはずだ。強さを。

・・・だけど、僕はまた、見ることしか、できない。



『ぐぁっ!?・・・い、いかん!地球の重力に捕まったか!?』

「ちっ!?」

「そんなっ!?」

『せめて・・・誰もおらん場所へ・・・!』

このまま・・・このまま地球へ、町へ落ちるのを見るしかないのか!?

『・・・ぬぅ!いかん、動力だけでは、落下コースを変えられん!このままでは町に落ちるぞ!』

「・・・なっ!」

「そんな!?」

『誰かが、操舵室で落下コースを変えなければ!』


誰かが・・・!?

ならば、その役目は・・・


















「僕が・・・!」

『いや、その役目、ワシがやろう。』

「え?」

「あ、あんたは・・・!?」










『久しぶりじゃのぉ!エックス君、ゼロ君!』

「「ドップラー博士!?」」


















//////////////////////////////



「間に合ったようじゃのぉ!」

自家用宇宙船を引っ張りだしたかいがあったわい。


『ドップラー博士、何故ここに!?』

『危険です!離れてください!』

「それはできんぞ。」

ワシは、あれを、あの脅威から地球を・・・マックを守るために来たんじゃ。

『『博士!』』

「あー・・・ちと黙れ。この役目はワシにしかできんよ。」

『・・・っ!』

『どういう意味です!?』

やれやれ、頭にオイルが昇って周りが見えとらんの?

「あの基地は既に地球の引力に引かれておる。あの速度に合わせて侵入などできんぞぃ?」

『そ、れは・・・』

『なら、どうするんだ?』

うむ。ゼロ君はまだ冷静じゃの。

「こうするのじゃよ!」

さーて・・・ドップラー、一世一代の大仕事じゃ!

まずは、あの基地へのルートを確保。

ついで、この宇宙船とのネットワークを構築。

でもって、邪魔な防壁を・・・






ほいっ、第一関門突破。






『・・・ぬ!?外部からのプログラム侵入だと!?』

「かぁーかっかっか!この程度朝飯前じゃぁぁぁぁ!」

『基地のネットワーク防壁をこうもあっさりと!?』

「くっくっく!それそれ!次いくぞぃ!」

こうして、あーして、こうやって・・・





第二関門突破じゃぁぁぁぁぁ!





『おぉ!姿勢制御プログラムか!』

「よしよし、落下コースを変えるための準備が整ったわい。」

うむ、ここまでは順調じゃ。

じゃが・・・ここからが正念場じゃの。



『博士!ドップラー博士!』

「なんじゃ、エックス君。」

『博士の手腕はわかりました!でも、近すぎます!無線でできるならもっと離れて!』

まぁ、言わんとすることはわかるがの。

「無理じゃよ。これ以上離れると、ネットワークが途切れてしまうわい。」

『そんなっ!?』

「まぁ、見とれ。・・・あの町には、絶対に落とさせんよ。」

『博士・・・!』


さぁ・・・ここからじゃ!

その前に!


「おい!そこの金ぴか!」

『き、金ぴか!?私か!?』

「そうじゃこの金ぴかチョビ髭!」

『ぬぅ!?』

「もっと気張らんか!そんな推進力じゃ進路変更もできんわい!」

『既に全力全開だ!それと、チョビ髭ではない!カイゼル髭だ!』

「何がカイゼルじゃぁぁぁ!ワシの髭のキューティクルに比べたらそんなもんチョビで十分じゃぁぁぁ!」

『言わせておけば・・・この爺ぃぃぃぃぃぃ!』

「おーしおし。そこそこ頑張れるじゃないか。・・・でも限界かの?チョビじゃし。」

『カ・イ・ゼ・ルだぁぁぁぁぁぁぁぁ!』


うむ!推進力が上がったの!

これならば、落下コースを変更できる!











「・・・すまんの、カイゼル。お主の命、使わせてもらうぞ。」

『ふん・・・うまくやれよ・・・キューティクル・・・』










――ブツン・・・




・・・通信が途絶えた。

オーバーロード、じゃの。

すまん。ワシは、お前を犠牲にする。
犠牲にしてでも、守りたいものがある。







「一番被害の出ない場所を特定・・・空気摩擦による外部影響を算出・・・基地が最大限に燃える角度を割り出し・・・質量を限界まで削る・・・落下コース設定・・・ポイント・・・X・・・168・・・Y・・・005・・・固定・・・ちっ!よりにもよって今日は強風かいのぉ!・・・流された場合も加味して・・・!」






演算完了!

あとはプログラムを流すのみ!


そのために・・・




『博士!?それ以上近づいては!』

「このプログラムは重いんじゃぁ!少しでも回線の強度を高めるために近づく必要があるんじゃぁ!」



限界まで近づいて・・・送信!








「ヒューッ!キタキタキタァァァァァ!」


完了じゃ!

基地が動き出したわい!

って・・・


「うぉぉぉぉぉぉ!?」

『博士!?』


ぬぅ・・・基地が動いたときの空気の流れに巻き込まれたか。
ちょっと、高度が下がりすぎたのぉ・・・


『博士!離脱を!』

『・・・エックス。』

ゼロ君は気づいたか。

『博士!急いで!』

「無理じゃよ。」

『そんな!?』

「うーむ。ちょっと集中しすぎて宇宙船が飛べる高度を維持できんかったわい。」

『そ、んな・・・』



しかも、室温も気づけば60度じゃしな!
なんか熱いと思ったわい!



『今、助けにいきます!』

「来るな!」

『どうして!?』

「やれやれ、優しいのはいいんじゃがな、もうちょい冷静になったほうがいいぞい、エックス君。」

『何を!?』

『・・・もう、間に合わないんだよ、エックス。』

「うむ。もう減速もできん。この速度、お前たちの小型船じゃ追いつけんわ。」

『そ・・・んな・・・』

「かっかっか!つーわけじゃ!さっさと逃げなさい!」

『い、嫌です!』

「むぅ・・・君も大概、人の話を聞かんのぉ・・・」

『僕は、貴方を見捨てたくない!』

「・・・うーむ。ゼロ君、あとよろしく。」

『・・・了解。』

『ゼロ!?船のコントロールを奪ったのか!?待て、待ってくれ!』

「よーし、よし。君らは生き残ってくれよ。」

『博士!ドップラー博士!!』














「あぁ・・・最後に・・・マックを、息子を、頼む。・・・あの子が目覚めたときに、平和な世界を・・・見せてやってくれ・・・」




『博士ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』

『・・・あぁ、了解・・・した・・・』






























//////////////////////////////




「・・・遂に80度越えか・・・沸騰しちゃうのぉ・・・」




――あと数瞬でこの船も爆散するだろう。




「・・・クク・・・は・・・はは・・・悪くない。」




――思えば、長いこと生きたものだ。




「悪くない!悪くないのぉ!」




――思い返せば波乱万丈な人生だった。だが、悪くない。




「悪くない人生じゃったわい!」




――なんせ、私は・・・守れたのだ。




「楽しかった・・・楽しかったのぉ・・・!」




――あの日守れなかった息子を・・・今度こそ、守れたのだ。




「父さんの最後は、星屑と共にじゃ・・・ヒューッ!かっこいいじゃろ!」




――ダサイダサイと、長男に言われたが、私は、格好良くなれただろうか。




「これからのお前の未来に!幸運があらんことを!」




――あぁ・・・ようやく、逝ける。お前の元へ。


















「さらばじゃ!マック・・・グッドラック!」




――今逝くよ・・・マックス。































・・・たくっ・・・しょうがねぇな・・・ダメ親父・・・










――懐かしい声が・・・










・・・一緒に・・・逝こうZE・・・










――聞こえた気がした・・・




















//////////////////////////////








『ん・・・ここ、は?・・・白い、大地?・・・私は、空で・・・』

『YO!お疲れさん!』

『っ!?・・・お・・・ぉお・・・おぉぉぉ!?』






『泣くなYO!ますます枯れちまうぜ?・・・親父。』

『マックス!・・・おぉ・・・マックス・・・!』






『たくっ・・・せっかく迎えに来てやったのに、いきなり泣くとかメンドクセー。』

『スマン・・・スマン・・・おぉ・・・』

『あー、そーいや、うん、・・・よかったぜ?』

『う、む?』

『あー・・・だからさ、カッコよかったって。』

『・・・うむ。そうだろう、そうだろう!』

『メンドクセー、立ち直り方がメンドクセー。』






『おぉ!そうだ、聞いてくれ!お前に弟ができたのだ!』

『あぁ、知ってるぜ。マックだろ?』

『う、うむ。知っていたのか。』

『・・・そりゃあれの半分だったからなー。』

『うむ?』

『や、なんでもねーYO!』






『知っているのならば話は早い!どうだ、お前の弟は!』

『あー・・・いいんじゃねぇ?・・・ハズッ!自分のこととかハズッ!』

『そうだろう!そうだろう!なんせ、お前の弟は最高の英雄<ヒーロー>だからな!』

『あーそうですね・・・俺の弟で、アンタの息子なんだ・・・最高に決まってるだろ?』

『うむ!』






『んじゃ、行こうぜ?』

『ん?何処へだ?』

『さぁな?ただ、いつまでもここに居たって暇だからな。探検しようZE!』

『まったく・・・おまえはいつまでも子供だな。』

『ウルセー。内心ここを調べたくてウズウズしてるくせにYO!』

『当然だ!こんな不可思議な場所・・・科学者ならば解き明かしたい!』

『うわー、死んでも変わってねー・・・』

『当然だ!なんせ私は、凝性だからな!』

『はいはい、ソウデスネー。』





















『・・っと、逝く前に・・・』

『どうした?マックス。』

『いや、お別れでもしとこーかなーっと。』

『うん?』

『いや、いいさ・・・逝こうZE!親父!』

『あぁ・・・今度こそ、一緒に、な。』





















――じゃあな、マック・・・・・・グッドラック、俺。












【父と子 END】








~あとがき~

これにて、ドップラーとマックスの物語は終了でございます。


はい、捏造の大嵐でごめんなさい。
一応、ロックマンゼロを書くならX3とゼロの間は必要かなー?と思って捏造しました。
調べたところ、原作の歴史はロックマンゼロはX6の分岐らしいのですが、X6まで調べるのは面倒だったので、X4の基地を落下させてロックマンゼロへつなげました。
原作と拙作は以下のような違いと思ってください。
原作:X5(コロニー落下)⇒X6⇒ロックマンゼロ
拙作:X4(基地落下)⇒X6(書きません)⇒ロックマンゼロ(未来伝)


拙作X3ラストのエックス・ゼロ・マックの3人が揃っているのが今回の基地落下阻止成功した歴史で、失敗したら未来伝に行く、みたいな。

ちなみに、X3までしかやってないのですが、X4はプレイ動画でちょこちょこ調べました。
まぁ、さすがにゲームやってないので、X4はちょこっとしか書きません。
あくまでつなぎです。


あと、なんでX3までしかやってないのにアルティメットとか、幻夢零とか知ってんの?
と、疑問かもしれませんね。

このSSを連載するにあたり、昔のゲームの記憶だけじゃ心もとなかったのでWikiをみたのですが・・・
でるわでるわ、香ばしい設定の数々。
アルティメットエックスとか・・・ナイトメアゼロとか・・・使わざるを得ないだろ!厨二的に考えて!

と、いうことで設定だけピックアップ。
特に意味はありません・・・!


今回のお話にて半身を失った中の人は完全にマックになったという設定。
これにて、ロックマンX 憑依物シリーズ完結でございます。
未来伝は憑依した中の人ではなくマックの物語として進みます。

ではまた次のお話にて。
ありがとうございました!












































<ブゥン>


【シェルターへの移動完了】


【自動修復装置起動】


【レプリロイド『マック』固定】


【修復処理準備】


【録音音声・再生】


『・・・マック、お前が目覚めるまで、多大な時が必要になる・・・』


『・・・いつか、目覚めるその時まで、せめて楽しい夢を見ていておくれ・・・』


『・・・おやすみ、ワシの息子<ヒーロー>・・・』


【音声終了】


【メモリ接続】


【映像送信・再生開始】


【修復処理開始】


【修復処理中断】


【眼部より冷却水の漏れを確認】


【眼部洗浄開始】


【眼部洗浄完了】


【修復処理再開】


<ブツンッ>







――英雄は眠る。




――いつかまた、戦うその日まで。




――ただ、夢を、見る――




【NEXT STAGE 未来伝】



[28394] 【続き】ロックマンX IF 未来伝1【ます】
Name: socom2◆c4c431dd ID:a13ac3ff
Date: 2011/08/16 00:14
かつて世界は滅びた。

終末の大破壊と呼ばれる大災害に人は、資源を、場所を、命を多く失うことになる。

人類存亡の危機。

だが、人は、生き延びた。

蒼き英雄の導きにより。

そして人は今日も生きる、最後の楽園『ネオ・アルカディア』で。

最後にして最高の理想郷。

蒼き英雄が造り上げたそこは、まさしく人が生き延びる最後の希望となった。

だが、人にとっての希望が、あるものにとって絶望となる。

慢性的なエネルギー不足、また潜在的な暴走の恐怖から人のパートナーである『レプリロイド』の大粛清が始まったのだ。

互いに手を取り合っていた存在が片方を殺す。

しかも、その先導を切るのはレプリロイドである蒼き英雄だ。

全てのレプリロイドは恐怖した。

己の存在がなくなることを。

だが・・・人の希望が英雄であったように、レプリロイドの希望もまた英雄であったのだ。

――紅き英雄の復活。

滅び行くレプリロイドを救う為、優しき少女が英雄を蘇らせる。

そして、紅き英雄は少女の思いに答えた。

紅き英雄は、かつての友へ剣を向けたのだ。

次第に広がる戦いの火花。







そして・・・戦いに導かれるように・・・







――最後の英雄が蘇る。




















////////////////////////////




『余はアヌビステップ・ネクロマンセス三世。冥界の聖掃王である。』

『・・・』

・・・な。

『この砂漠にそなたの墓標を立てよう。』

『・・・』

・・・ぇな。

『古き英雄よ。今一度、眠りに付くがよい!』

『・・・来るか。』

・・・せぇな。

『さぁ!亡者どもよ!再び英雄を冥府へと導くのだ!』

『っ!・・・砂漠からレプリロイド・・・だと?』

・・・るせぇな。

『カッカッカ!そやつらはこの砂漠に眠る亡者どもよ!余の力で偽りの生を授けたのだ!』


『せぁ!』

・・・うるせぇって。

『ほう。さすがは英雄。一瞬で亡者の群れを屠るか。』

『・・・この程度で・・・!』

・・・さっきから人の上でごちゃごちゃと。

『だが、甘いぞ英雄。』

『・・・まだいるのか。』

・・・こちとら深夜4時寝よ?もうちょい寝かせろって。

『カッカッカ!この砂漠に無数に眠る亡者共全てを倒せるか、英雄よ!』

『・・・斬り捨てるのみ!』

『さぁ!現れよ!新たなる亡者共よ!』






「だからうるさいYO!」

うぉっまぶし!さっきまで暗かったのにいきなり明るくなったYO!

「せぁ!」

って!?目の前にビームサーベルゥゥゥゥゥ!?

「ノォォォォォ!?マックダーーーーッシュ!」

「・・・避けられたっ!?」

「む?」

ゼハーゼハー。
神回避。今のは神回避だった。

ってか。

「酷い!なんでいきなり斬りかかってくるんだYO!ゼロ先輩!」

「・・・おまえは・・・?」

「亡者に意識があるだと?・・・ぬぅこれは、いったい・・・」

「つかここどこだYO!?」

よくよく落ち着いてみれば、周りは砂漠。

あるぇ?俺、爺さんの研究所で寝てたはずなんだけど。

「まぁ、よい。英雄もろとも、もう一度冥府へ送り返してくれるわ!」

「っ!どけ!」

「ちょっ、先輩、どったの?」

って、ギャーーーー!?
ミイラ!?ミイラっていたのかYO!?
包帯グルグルのレプリロイドがくるぅぅぅぅ!


















ゼハーゼハー、あっぶねぇ。
危うくミイラにされるところだったYO・・・
とりあえず弾幕で穴だらけにしてやったけど・・・こいつ誰だろ?

「・・・おまえは。」

「あ、先輩。」

こっちに来るゼロ先輩。

・・・ゼロだよな?

なんかショタになってね?
いや、前からこんなだっけ?

うーん・・・よく思い出せん。
なんか、こう頭に霞かかってるような感じ。

まぁ、いいや。

そんなことより・・・




「ここどこだYO!」

「・・・」




















////////////////////////////




大災害よりも昔から語られる英雄伝説。

人々を守るため、人の盾となって戦い続けた蒼き英雄、エックス。

人々を守るため、人の剣となって戦い続けた紅き英雄、ゼロ。

そして、二人の英雄の傍らに立ち、共に戦い続けた英雄、マック。

古き英雄達が時を越え、今再び集う。

だが・・・英雄達はかつてを取り戻せない。













――失われた友の記憶。


『・・・おまえは、誰だ。俺を、知っているのか?』

『・・・なん、の、冗談だYO・・・先輩。』

共に戦った記憶も、

『・・・』

『まじ、で?忘れた・・・の?』

共に笑い合った記憶も、

『・・・俺は、お前のことを、知らない。』

『・・・っ!』

なにもかもを失った。

だが、










『マジで!?あんなにE缶おごってやったのにYO!』

『おごったのは俺だ!』

『リバーブロォォォ!?ぐはっ!・・・なんで・・・そこだけ憶えて・・・ガクッ。』

『・・・なんとなく、こいつがわかってきた。』

例え無くしても、もう一度作ればいい。

紫の英雄はそう言って笑う。














しかし、紫の英雄もまた、失った。

――己の生きる意味を。


『××××年!?マジで!?少なくともウン百年たってるじゃねぇか!?』

『・・・』

『あぁ・・・クソ・・・爺さんは、どうなったんだ・・・』

『・・・』

『やっぱり・・・もう、いないよな・・・』

『・・・』

『俺は、どうすれば・・・』

『おい。』

『・・・なんだよ。』

『行くところがないなら、付いて来い。』

『・・・あ?』

『・・・別に、嫌ならば来なくていい。』

『・・・』

『だが、ここで埋もれるつもりがないのならば、来い。』

『・・・なんだ、やっぱり先輩じゃん。』

『・・・何?』

『いや、なんでもないYO!そうだな、終わったことは仕方なし!明日について本気出して考えてみるZE!』

『・・・さっさと行くぞ。』

『おー!あの砂漠の向こうには、何があっるのかなー!』





再び、歩き出す。

何度、絶望にまみれようと。

何度、傷つき倒れようと。

己が足で、己が意思で歩く。

それが、英雄と呼ばれる所以。


そして、出会う。










――この時代に生きる人とレプリロイドに。



『おかえりなさいゼロ!』

『・・・あぁ。』

『怪我はない?』

『・・・問題ない。』

『そっか、良かった。』

『シエル、お前に報告が・・・』

『ハッハー!こんにちわ、お嬢さん!』

『え、あ、こんにちわ?』

『こんな荒れた場所でお嬢さんみたいなカワE子に会えるなんて超ラッキーだYO!』

『え、え?えっと、あの?』

『俺の名はマック!イレギュラーハンター、マックだ!ヨロシクな!』

『よ、よろしく?』

『お嬢さんの名前も教えてYO!』

『落ち着け。』

『あいた!?ちょ、先輩!いきなり殴らないで!』

『・・・あっ!?マックって、まさか・・・!?』

『ん?俺のこと知ってんの?ついに可憐なお嬢さんにも知られるほどになったのか・・・やったねマック!』





『まさか・・・伝説の・・・!?』













英雄は伝説と呼ばれた。

生きる理由を亡くし、戦う意味も失った英雄。

だが、人とレプリロイドは求める。

救いを・・・希望を。










――戦うためには理由が要る。


『お願い、レプリロイド達を助けるために・・・!』

『あー・・・なるほどねぇ・・・』

『お願い、マック・・・!』

『まぁ、この時代がなんで荒れてるのかはわかった。』

『勝手なことだと思う・・・でも、それでも、レプリロイドを助けるために・・・!』

『・・・ま、この現状を作ってるのがアイツなら、会いに行くのはありか。』

『・・・え?』

『それに・・・お嬢さんの涙を止めるためにってのも悪くないな。』

『あ・・・』

『つーわけで、しばらくやっかいになるZE!』

『・・・ありがとう・・・!』












戦場へ舞い戻る。

かつての友と、遠き時代の果てでかつてのように舞う。

生きる理由は喪った、戦う意味も失った。

それでも、新しい友のために・・・












――再び、銃を構える。


『・・・はぁ!』

『よっと、弾幕弾幕ー!』

『いったぞ!』

『はい、いらっしゃい!そっちヨロシクー!』

『あぁ!』

『ヒャッハー!俺達相手にその数は無謀無謀ー!』

『・・・真面目にやれ。』

『ヒャッハー!ヤフゥゥゥゥゥ!』

『・・・ふんっ。』

『痛い!』

『・・・まったく・・・お前は変わらない・・・っ!?』

『いっつー・・・ゼロ先輩、もうちょい優しくしてくれてもいいじゃないかYO』

『・・・俺は・・・』

『先輩?おーい、ゼロー?どったのYO?』

『いや、なんでもない・・・いくぞ・・・【マック】!』

『おー!気張っていくZE!』










快進撃。

滅びを控えたレジスタンスが、圧倒的戦力を持つ『ネオ・アルカディア』へ幾度も勝利を奪う。

だが、多くの勝利は新たな脅威を生み出すのみ。









――新たなる、敵。







――紅蓮の豪腕 。

『お前らが、ゼロとマックか。』

『・・・敵か。』

『おーまた暑苦しそうなやつが来たなー。』

『ハハッ・・・いい、いいぜぇ・・・』

『・・・?』

『お?』

『伝説二人と戦えるなんて・・・』

『・・・なんだこいつは?』

『うーん、なんだろうね。』

『燃えてきやがったぁぁぁぁぁぁぁぁ<ズドン>ぎゃぁぁぁぁぁぁ!?』

『あ、ごめん。無防備だったからつい。』

『・・・行くぞ。』

『おー!あばYO!』

『・・・まち、やが・・・れ・・・ガクッ・・・』





――漆黒の幻影。

『見つけたでござるよ。』

『敵か・・・!』

『おぉ!?』

『ここがそなた等の終焉でござる。ニンニン。』

『・・・やってみせろ・・・!』

『おぉぉぉぉ!?』

『ニン!?』

『マック?』

『忍者!生忍者!初めてみたYO!』

『な、なんでござるか!?』

『・・・』

『サイン!サインくれYO!』

『し、仕方ないでござるな・・・』

『・・・おい。』

『はい、この色紙に書いてくれ!』

『うむ、承知し<ドガンッ!>ぬぉ!?』

『なっ!?』

『ハッハッハー!引っかかったな!これぞ忍法色紙爆弾だYO!』

『ふ、不覚・・・ガク・・・』

『・・・これで、いいのか・・・?』

『忍法の勝利!』





――蒼海の海神。

『へぇ・・・アンタがマック?エックス様のパートナーか。』

『キターーーーー(゜∀゜)-------!』

『きゃっ!?な、なによ!?』

『苦節、ウン十年のハンター生活。俺はずっと1人だった。ゼロ先輩はいつのまにか茶髪大和撫子といい関係。エックスは姉御マーメイドとイチャラブ。なのに俺は1人だった・・・!せめて出会いをと、俺専属のオペレーターを雇ってみればやってきたのは金ぴかのおっさん・・・!なにがレプリフォースがなくなったから再就職にきただYO!お主のサポートはワシが完璧に行おうって、オッサンのサポなんかいらねぇから!来るなご立派チョビ髭!帰れよ将軍!・・・そんな生活がずっと続いてきたが・・・遂に来た!女性型レプリロイドとの出会い!運命の出会い!』

『な、なに、こいつ・・・?』

『運命・・・!ディスティニー!俺は君に出会うために生まれてきたんだ・・・!』

『これが、エックス様のパートナー・・・!?』

『ちょっと胸部装甲が寂しいが・・・大丈夫!長い独身生活が全てを受け入れる器を手に入れたから!』

『ひっ!?』

『さぁ!まずはお友達から!交換日記から始めようYO!』

『きゃあぁぁぁぁぁぁ!?こっちにこないでーーーーー!』

『待ってYO!レヴィアた~~~~~~ん!』

『嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁ!って、なんで私の名前知ってるのよぉぉぉぉ!』

『マックアイには全て筒抜けだZE!君のスリーサイズは上から・・・』

『もう嫌ぁぁぁぁぁ!助けてぇぇぇぇ!エックスさまぁぁぁぁぁ!』

『あ、待って!待ってYO!・・・おぉう・・・行っちゃったYO・・・』

『・・・なんだこの茶番は。』

『カムバーーーーック!レヴィアた~~~~~~ん!』





――翠緑の斬撃。

『見つけたぞゼロ。』

『・・・またか。』

『・・・レヴィアたんじゃないのか。』

『そして、マック様。』

『お前がいいらしいぞマック。』

『ちょ、先輩押し付ける気満々!?』

『エックス様が貴方に会いたいと希望されています。』

『・・・良かったなマック。』

『ちょ、はや!?一瞬で遠くにいかないでYO!』

『私に付いてきてもらいます!』

『・・・あとはまかせた。』

『先輩ー!?・・・マジで帰りやがった。』

『さぁ!共に!』

『悪いけどNO!』

『・・・っ・・・エックス様の希望には沿えないと・・・?』

『おー。会いにいくなら自分の足でいくさ。』

『ならば!その両足を切り落としてでも連れて行く!』

『え?あれ?自分で会いに行くって意味なんだけど。』

『覚悟!』

『こいつ人の話聞かねぇぇぇぇぇぇ!?』












幾たびの戦場を越え、尚英雄達は勝利を掴む。

だが、勝利は続かない。




『・・・ゼロ、マック。』

『どうした、シエル。』

『ん?』

『ここが、ベースがネオ・アルカディアにばれたの・・・!』

『なに?』

『ちょ、それやばいYO!』

『あと数時間で、ここに軍が来るわ・・・』

『・・・』

『ちょ、どうすんの!?ライフカード、ライフカードはどこだ!?』

『・・・俺が、行く。』

『え?』









そして紅き英雄は決断する。

決着をつけると。

だが、決断は関係をも切る。









――訪れる別離。


『俺が、ネオ・アルカディアへ行く。』

『そんな!?危険よ!』

『他に手はない。』

『ゼロ・・・』

『大丈夫だ。俺は、必ず戻る。』

『うん・・・約束だから。』

『あぁ。』

『あー空気読まずに悪いんだけどさー。』

『マック?どうしたの。』

『なんだ?』

『そのネオ・アルカディアってさ、人間が住んでるんだっけ?』

『えぇ。今、人間は全てネオ・アルカディアにいると思っていいわ。』

『ん、そっか。』

『どうしたの、マック?』

『・・・』

『なら、俺はここでお別れだ。』

『え!?』

『・・・っ!』

『俺は、さ。ハンター、イレギュラーハンターなんだ。』

『・・・うん。』

『・・・』

『イレギュラーハンターは人を守るために戦うんだ。だから、人の住む場所を攻めるなんて・・・俺には、できない。』

『あ・・・』

『そう、か。』

『今までは、さ・・・結局のところ、レプリロイド同士の戦いだった。けどな・・・さすがに住居に攻めるのは・・・やっぱ無理だわ。』

『・・・』

『・・・』

『悪いな、ゼロ、シエル。だから、俺は行けない。そして、そんな俺がここにいるのもおかしいだろ。だから、お別れだ。』


『そんな!?例え、そうでもマックは仲間よ!ここにいて・・・!』

『やめろ、シエル。』

『あ、ゼロ・・・』

『それが、お前の決めた道か、マック。』

『あぁ、これが俺の生きる道だ、ゼロ。』

『そうか。なら、何も言わない。』

『ん、サンキュ、先輩。』

『マック・・・ゼロ・・・』






物語の終わりは、仲間の別離で始まる。

そして、別れは仲間ではなく敵となる。






――立場の違い。

『・・・戦場で会ったときは、本気で、殺す。』

『・・・ああ、戦場で会うときは敵同士だ。』

『・・・止めてみせろ、ハンター。』

『・・・俺はちょい強いぜ?イレギュラー。』

『待って!?どうして二人が戦うの!?』

『・・・シエル、俺がこれから攻めるのは、ネオ・アルカディアだ。』

『・・・そして、ネオ・アルカディアは人が住む。俺は、人を守るために戦うハンターだ。』


『あ・・・そ、んな・・・』

『つーことで、お別れ!ここも結構楽しかったZE!』





紫の英雄は去る。

かつて自分の生きた道を裏切れなかったから。

そして、紅き英雄は行く。

今、自分が背負うものを守るために。










『・・・あばよ、後輩。』

『グッバイ、フレンド。・・・グッドラック。』







分かれた道は、もう交わらない・・・





























////////////////////////////







「ハハハハハハ!なんだ、英雄も大したことないじゃないか!」

「・・・くっ。」

「さすがに、紅き英雄も連戦に次ぐ連戦はきついみたいだね。」

「・・・」

「無謀、と言うんだよ、ゼロ。君の行いは、ね。」

「・・・」

「せめて、マックと二人なら僕に勝てたかもね。いや、それは無理か!マックは君とは袂を別れたのだから!」


「・・・何故、お前がそれを知っている?」

「ふふふ・・・簡単な話だよ。君達の隠れ家を盗聴していたのさ。場所がわかれば容易だよ?」


「・・・チッ。」

「そしてマックが行方不明になったこともね・・・」

「・・・」

「マック・・・あぁマック・・・!やっぱり、君はマックだった!」

「・・・?」

「そうさ!マックは、僕の、『エックス』のパートナーなんだ!」

「・・・」

「あぁ・・・すぐに、君を迎えに行くよ、マック。ゼロを倒したら、すぐに。」

「・・・」

「そうさ、そうしたら守るんだ。二人で。ずっとずっとこの世界を、人間達を二人で守るんだ・・・!」


「・・・やはり、違うな。」

「・・・何?」

「お前は、『エックス』ではない。」

「・・・なん、だと?」

「俺の知るあいつは優しい奴だ。いつも迷って、悩んで・・・きっと今、あいつがいたらまた悩むさ。俺とマックが喧嘩したってな。」


「・・・っ。」

「お前は『エックス』じゃない。その顔でその声で・・・囀るな。」

「黙れ!黙れ黙れ黙れぇぇぇぇぇぇ!」

「・・・」

「僕は、お前を殺す!そして、英雄に、『エックス』様になるんだ!・・・だから!」

「・・・くっ!」

「シネェェェェェェェェェェ!」










はい、その無防備な背中にフルチャージバスター。

「ぐあぁぁぁぁぁぁっ!?」

「・・・っ!?」

たくっ・・・なにやってんだか・・・

「誰だ!?この僕に、『エックス』に不意打ちなんて!?」

「・・・誰、だ?」

たしかに俺はイレギュラーハンターだ、けどさ。

「出て来い!」

「・・・」

俺は、ハンターである前に、俺なんだ。

「・・・あ・・・?」

「・・・お、おまえは・・・!?」

そうだ、俺は、俺だ。

「な、なんで?どうして、君が・・・?」

「なぜ、ここに!?」






だから・・・!














「君は行方不明になっていたマックじゃないか!?」

「・・・マック!?」





















「HEY!ゼロ先輩!E缶の借りを返しに来たZE!」






――ダチを見捨てることなんて、できるわけねぇだろ!!
































////////////////////////////





「っていう夢を見たんだ。」

「おいこら、マック。なんで俺がお前なんかに助けてもらわなきゃいけないんだ、ん?」

「パロスペシャル!?ちょ、先輩!俺の間接はそっちには曲がらないYO!」

「・・・なんで、僕が悪役なのさ・・・」

「ちょっエックス!?そのハイライトの消えた目で俺を見つめるなYO!」












「おい、マック。」

「ひどいよ・・・マック。」



「夢!夢だから!本気にするなYO!」















【ありえた未来 END】






























~あとがき~
マック本編の女運のなさは異常。

はい、ロックマンゼロ編スタートです。
本編でゼロ視点がなかったのはこのためです。


ウソです。
スタートしません。

ロックマンXは1と3しかやったことない私ですが、ロックマンゼロは1~4全部やりました。
アドバンス時代に。

とはいえ、X3と違い、ロックマンゼロはしっかりとしたストーリーに濃い内容なので、さすがにウン年前のおぼろげな記憶では書けないと思います。

と、いうことで、うろ覚えロックマンゼロで嘘予告とかやってみた。
嘘予告なのでダイジェスト的な感じをだしてみたんですが、どうでしょうか?
もうちょい地の文書けばよかったかなー?

え?異伝ゼロ編はどうしたって?

何度も何度も書き直して・・・鬱ENDばかりに辿り着くんだ・・・なぜだ。

もうちょっと、もうちょっとで幸せになるから!
もうちょっと待ってください!

と、鬱鬱したことばっか書いてたので息抜きにさっと書いてみた。
思いつき1時間で書いたので、色々荒いです。マックの喋り方とか。
折を見て修正しなきゃなぁ・・・


ではでは、次こそ異伝ゼロを更新しますよ!

お読みいただきありがとうございました!






































――ひぃ、ふぅ、みぃ・・・とりあえずいっぱい。

――数えても無駄だ。

――ですよねー。俺達二人に戦力出しすぎだろ!

――・・・行くぞ。

――ちょっ!待ってYO!

――・・・後ろは任せたぞ、マック・・・!

――たくっ・・・しょうがねぇな・・・!







――俺は、こんなところで死ねない!約束を守るために!

――さぁ・・・やるか!グッドラック!










「「ぉぉぉぉおぉおおおおおおおお!!!」」




――――――――剣閃と銃光と英雄達の雄たけびが、荒野を彩る――――――――






【英雄達 END】



⇒to be continued?








やべぇ、書いてたら楽しくなってきた。

最後のところのBGMにこれ聞いてたらテンション上がってきた。
http://www.youtube.com/watch?v=GPOLuX4G3tg

ちょっとゼロコレクション買って来る。



[28394] 【うろ覚え】ロックマンX IF 未来伝2【ゼロシリーズ】
Name: socom2◆c4c431dd ID:a13ac3ff
Date: 2011/08/16 01:07
荒れ果てた荒野。

吹き抜ける風が、打ち捨てられた機械を撫でる。
乾いた風は全ての歴史を風化させ、大地に軌跡も残さない。

そんな場所を歩き続ける二つの影。
行くも地獄、戻るも地獄・・・そんな言葉が似合う荒野をひたすらに進む。



「・・・」

1人は赤いボディ、金色の髪を持つレプリロイド・・・ゼロ。
鮮やかな真紅のボディは、ボロボロに傷つき、そこかしこにヒビが走っている。

「・・・ぜはぁ・・・ぜはぁ・・・」

もう1人は、紫の体、顔を覆うバイザーを身に着けたレプリロイド・・・マック。
鮮やかな紫のボディは、塗装が削れるほどに傷つき、かつてあった精彩はそこにはない。

「・・・あ~・・・いつになったら・・・合流できるのかねぇ・・・」

「・・・」

マックが声を出すが、ゼロはそれに反応しない。
マックも返事が返ってくるとは思っていない。

「・・・あ~・・・E缶・・・飲みてぇ・・・」

ただの独り言、愚痴だからだ。

彼らはこうして、1年もの間、荒野をさまよっている。

その理由は・・・



「・・・来たぞ。」

「・・・しっつけぇYO!」



二人を囲む、メカニロイドの軍。


かつて二人は、人類に反逆するレプリロイドのレジスタンスにいた。
そして、人類の守り手であるエックス・・・その代行であるコピーエックスを倒したのだ。

コピーエックスは、人類の守り手であると同時に導き手であった。
その導き手を倒した2人は、世紀の大反逆者、極悪人となったのだ。



「せぁ!」

「おらぁぁぁぁぁ!」



そして、コピーエックスを倒した日から、荒野をさまよう日々が始る。
全ては、レジスタンスを守るために。

彼らが囮として、世界の視線を釘付けにする。
そうすることでレジスタンスに軍の手が及ぶことを防いでいるのだ。

だから、彼らは今日もさまよう。
いつか交わした、再開の約束を果たす、その日まで。




「「おぉぉぉぉぉぉおおおおお!!」」



――剣閃と銃光が荒野を彩る。















/////////////////////////




「はぁ・・・はぁ・・・」

「・・・本当に・・・しつけぇ・・・YO・・・」

あぁ、やべぇ。
エネルギーは倒した敵から奪っているが、さすがに1年もメンテ無しで戦い続けるとか、死ねる。

「はぁ・・・くっ・・・はぁ・・・はぁ・・・!」

流石の先輩も限界みたいだな。
装甲もボロボロだし、先輩の武器もそろそろ耐久度がやべぇ。

「はぁ・・・行くぞ・・・」

「・・・あいよ。」

歩き出した先輩の後ろを付いていく。
あー・・・こりゃだめだ。
歩き方も不自然だ。

・・・つか、ゼロ、脆くなってないか?
俺も結構限界だけど、先輩はもう崖っぷちにギリ片手で捕まってる感じだし。

こんなもんだっけか。
なんか、ゼロはもっとタフっつーか、死亡フラグをバッキバキに折るっつーか。

・・・だめだ、よく思いだせん。

昔のゼロはどうだったかわからんが、今のゼロはもう無理だな。


「・・・なー先輩。」

「・・・なんだ。」

「休憩!休憩しようぜ!」

「・・・今は、ここを離れるのが先だ。」

「や、確かにそうだけどYO・・・もうアンヨが痛くて無理だZE!」

「・・・」

「って!置いてくなYO!」

「・・・やれやれ。」

「頼むYO!」

「・・・1時間だ。」

「おー!サンキュー!先輩!」


2人で近くの岩の影に隠れる。
腰を下ろした瞬間に・・・


「・・・すー・・・」

ゼロは休止モードに入ったようだ。

「・・・限界、かな。」

こいつはもう無理だ。
これ以上の行軍は死に近づくだけだな。

・・・ここで別れよう。
このままじゃ共倒れだ。

ゼロの足元にメモを書いて・・・



『親愛なる先輩へ!俺は行きます、ガイアが呼んでいるので俺は星になりまスター!お嬢さんとの約束が果たされること、祈ってるYO!』


こんな感じだなー。

「・・・じゃあな、ゼロ・・・グッドラック。」

未だに眠るゼロを置いて、荒野へ出る。
悪いな、先輩。

俺は野郎と2人で行き倒れなんて趣味じゃないんだYO!


そう、俺が眠るのは可愛い女の子の膝枕って決めてるのさ!

先輩はそんな岩でも満足なんだろうけど・・・俺は無理だYO!

もうなんつーの?ビンビン?元気リンリン?

有り余ってて、発散したい、みたいな?





























「つーわけで、付き合ってくんねーか?」

「ピピ・・・レプリロイド『マック』・・・目標補足・・・侵攻開始・・・」

「おー!そっちもやる気だねぇ・・・でも侵攻はダーメダメ!こっから先は通行止めなんだYO!」

「・・・ピピ・・・展開・・・」

「つか・・・多すぎだろ!どんだけ戦力投入してるんだ!?」

「・・・ピピ・・・ロックオン・・・」

「ハイハイ、人の話なんか興味ないのねー・・・はぁ・・・メカニロイドの相手が一番面白くねー・・・」


「・・・目標ヲ・・・」

「・・・来いよ。俺はちょい強いぜ?」


「殲滅スル!」


「・・・さぁて、気張っていくZE!グッドラック!」






/////////////////////////




荒野に華が咲き乱れる。

火と光に彩られた華は、紫のレプリロイドによって生み出されていた。


「・・・ギギ!」

「おっと!バックステッポゥ!かーらーのーマックバスター!」

「ガァ!?」

その腕と同化した銃の引き金が引かれるたびに、新たな華が生まれ、兵士の命が散る。

「そらそらぁ!弾幕弾幕ー!」

「ガァァァァァ!」「ィィィィィ!」

「オッケィ!一度にたくさん倒すのが弾幕の真髄だYO!」

「ピピピ!」「ピピピ!」「ピピピ!」「ピピピ!」

「って、倒した以上にまた出やがったーーー!?」

右に左に前に後ろに、マックの周りのどこを見ても敵だらけ。
今回の作戦で人類の敵2人に投入された戦力はおよそ100。

その全てを1人で相手取るのは、あまりに・・・無謀。

だが、



「おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「ガガガガガガ!?」



マックは止まらない。
ここで全てを倒しつくすとばかりに、猛攻にでる。

ここから先へは通さない。
その一点、その意思だけをもって戦い続ける。



「しつこいんだYO!」



彼の願いは、彼の友が約束を果たすことだ。
マック自身は、もはや自立的に戦う理由がない。

かつては父のために戦った。
父に与えられたハンターという役割のために戦った。
父を守るために、戦った。


だが・・・父はもういない。
マックが戦う原初の理由は既に失われたのだ。


そんな彼が戦えるのは、



「ゼロの邪魔はさせねぇ!」



友のため。
何もかもを失くした友が、優しい少女と約束をした。
マックは、それを守りたいのだ。

そして、もう一つ、彼が唯一持つ、生きる理由。





『・・・おにいちゃん、約束。また遊ぼうね。』





また遊ぼう。『また』。
その言葉がマックを生かしている。


――だから。






「フルチャァァァァジバスタァァァァァァ!!」






――戦える。




























「・・・もう・・・む・・・り・・・」

訪れる、限界。
軍を相手に戦う1人は、立つだけで苦痛を感じるまでに疲弊した。


しかし、この戦いの結末は・・・

「・・・へっ・・・やって・・・やった・・・ZE・・・」

マックへと軍配が上がる。

築かれた残骸の山。
そこで動くものは、もはや1体のみ。

「・・・んじゃ・・・行くか・・・」

足に力を込める。

「・・・はぁ・・・はぁ・・・」

だが、限界を迎えた体は思うように動かず、その足並みは牛歩よりも遅い。

「はぁ・・・はぁ・・・次は・・・」

しかし、止まらない。確実に一歩一歩進む。

「・・・なに・・・して・・・はぁ・・・遊ぶ・・・かな・・・」

右足を出し、左足を出す。確認するように、ゆっくりと、ゆっくりと。









――だが、限界を超える。









「・・・俺は・・・なん、でも・・・いい・・・YO・・・」

――フラリと風に揺られ、












「・・・なぁ・・・」

――傾き、









「・・・アルエット・・・」

――倒れる。




<ブツン>





























――まったく、呆れたものね。

――・・・

――1人で100を越える兵を倒すとか、信じられない。

――・・・

――さすが、伝説ってことかしら。

――・・・

――でも限界かしら?

――・・・

――アハハハ!いつもの威勢はどうしたのよ!

――・・・

――ほんと、そんな死にそうで・・・ふふ・・・

――・・・

――ほらほらぁ・・・私の槍が頭を刺しちゃうわよー。つんつん。

――・・・

――・・・ねぇ、本当に、死んじゃうの?

――・・・

――・・・ダメ。

――・・・

――散々私を追っかけまわしといて、死ぬなんて許さない。

――・・・

――そんなこと、許さないんだから!

――・・・

――アンタを倒すのは、この私なんだから!

――・・・

――だから、こんなところで野たれ死ぬのなんか・・・

――・・・

――絶対に許さないんだからねっ!















/////////////////////////


――覚醒。

メンテナンスを受けていたようだ。

「ゼロ、具合はどう?」

「あぁ、問題ない。」

各部をチェック。
損傷はほぼ完治。

戦闘に支障はない。

「・・・久しぶりだな、シエル。」

「うんっ!」

1年ぶり、か。
約束は果たせたな。
だが・・・

「・・・シエル、俺は何故、ここにいる。」

「ここ、新しいレジスタンスベースの入り口に倒れているところを見つけたのよ。」

「そうか。」

・・・俺は荒野にいたはずだ。
何故、レジスタンスベースにいるのか・・・わからない。

「・・・マックはどうした?」

「あ・・・マックは・・・いなかったわ。」

「・・・そうか。」

・・・俺は、あいつと、ずっと荒野にいたはず。

「ごめんなさい・・・」

「・・・なんだ。」

「マックの痕跡は、一つもなかったの。」

一つも、か。
考えられるとすれば、痕跡も残らないほどに爆発四散したか・・・

「・・・ないな。」

「え?」

「気にするな。あいつなら、きっとすぐに現れる。」

「あ、えっと・・・?」

「ふ・・・そういう奴だ、マックは。」

「・・・うん、そっか・・・そうだね!」

あいつなら、心配するだけ無駄だ。

・・・そうだ。

あいつの心配をしたって『いつも』無駄だった。


「・・・くっ。」

「ゼロ!?どうしたの!?頭が痛むの!?」

「・・・いや、なんでもない。気にするな。」

『メモリ』がスパークした。
・・・それだけだ。
マックといるとよくある。
シエルに言うほどでもない。

「・・・そう?なにかあったら、すぐに教えてね?」

「あぁ。」

「よろしい。それじゃあ、この新しいベースを案内してあげる!」

「・・・あぁ。頼む。」

「うんっ。皆もゼロが帰ってきたって喜んでるの。顔を見せてあげて!」

「わかった。」


レジスタンスの皆と会うのも1年ぶりか。

・・・マック、さっさと帰って来い。
・・・お前の分のE缶も俺が全部飲むぞ?





/////////////////////////



『さて、このミッションですが・・・手伝ってくれますよね?英雄さん?』

『・・・いいだろう。作戦を渡せ。』

『あぁ!アリガトウゴザイマス!これでレジスタンスの行動はより前へ進むでしょう!』

新生レジスタンス。
今、ゼロへとミッションを依頼したレプリロイド『エルピス』を頭目に再結成され、かつての弱小団体は、確実に人類へと牙を向ける強固な集まりへと変わっていった。

そして、再び伝説を仲間へと取り戻したレジスタンスは快進撃を続ける。

『さすがですね!アナタのおかげで・・・』

『・・・シエルのところへ行く。』

『・・・えぇ、どうぞ。』

連勝に次ぐ連勝。
1年前の、奇跡の勝利の再来だ!と、レジスタンスは湧き上がった。




・・・だが、帰らぬ者もいる。







『セルヴォ、メンテを頼む。』

『おぉ、来たか、ゼロ。』

『あぁ、次のミッションが待っている。手早く頼む。』

『む・・・むぅ・・・それなんだがな・・・』

『だめよ!』

『・・・シエル。』

『ゼロ、最近ミッションに行く回数が多すぎるわ!せめて、インターバルを挟んで!』

『・・・セルヴォ。』

『いやぁ・・・スマン。ワシが呼んだ。』

『・・・』

『そんな怖い顔せんでくれ!・・・ワシも思っておった、最近、戦いすぎだ。』

『・・・そんなことはない。』

『ゼロ、ゼロがミッションの傍らに、マックのことを探しているのは知ってる!』

『・・・』

『でもこれ以上、戦場に行ったら、マックを見つける前にゼロが倒れちゃうわ!』

『・・・ミッションへ行く。』

『ダメ!絶対にダメよ!』

『・・・セルヴォ。』

『こればっかりは、シエルに賛成だ。』

『お願い、ゼロ。あなたが、倒れたら・・・私・・・!』

『・・・』








『・・・ゼロおにいちゃん、シエルおねえちゃん。』

『・・・あぁ。』

『アルエット?どうしたの?』

『・・・おにいちゃんは?』

『・・・あぁ、心配するな。道に迷っているだけだ。』

『・・・ん、そっか。じゃあ、入り口でおにいちゃんが帰ってくるの待ってる。』

『あっ、待って、アルエット!・・・アル、エット・・・』

『そういう、ことか・・・ゼロ。お主が無理を続けるのは。』

『・・・ミッションへ行く。』

『・・・あっ・・・ゼロ・・・!』

『シエル・・・ワシらには止められんよ・・・』









ゼロがレジスタンスへ合流して早1ヶ月。

未だマックは帰らない。

約束を交わした少女はそれでもマックを待ち続ける。







『・・・どうした・・・女の子を泣かせるのは・・・お前の趣味じゃないだろう?』

そして、今日もゼロはミッションへと赴く。

『・・・なぁ、マック。』

友を探すために。






/////////////////////////




「今回のミッションは・・・コンピュータ施設の破壊か。」

・・・雪原地帯か、厄介だな。
時間を掛ければ、この寒さが敵となる。

手早く済ませる・・・!






















「フッ・・・ハァ!」

「ボファー!まざか・・・このオデがぁぁぁぁ!レヴィアダンざまぁぁぁぁぁ!」

爆発するレプリロイド。
多少てこずったか・・・

「さて・・・ここを破壊すれば・・・なに!?」

・・・っ!
部屋に水が注入された・・・!?

馬鹿な、ここはやつらにとっても重要な施設のはずだ・・・!


「はぁ~い?久しぶりね、ゼロ。」

「・・・お前は。」

現れたのは女性型レプリロイド。
たしか、四天王の・・・




「レヴィアたん、だったか。」

「レヴィアタンよ!」

「・・・?」

どこか間違えたか?

「ま、まぁそれは置いといて・・・まさかアンタがここにくるなんて。」

「・・・」

どうやら、この邂逅は偶然のようだ。
だが、この部屋に水を満たしたということは・・・

「ま、いいわ・・・せっかくだし遊んであげる!」

「・・・っ!」

来る!

「この凍てついた水のなかでどこまで動けるかしら!」















「アハハ!どうしたの!?その程度なのかしら、英雄さん!」

・・・これは、きついな。

ただでさえ、水のせいで動きは鈍る・・・その上、この冷たさが確実にダメージになってくる。

「喰らいなさい!」

「ちっ!」

また氷柱か!

「せぁ!」

ダッシュで距離を・・・!

「・・・くっ!」

間に合わない、か。
相手は確実にこちらを削りにきている。
遠距離攻撃で着実にダメージを与える戦法か・・・ありふれた物だが、確実だ。

「・・・はっ!」

「ふふふ~外れっ!」

「・・・ちっ・・・」

こちらのハンドガンによる攻撃は、悉く避けられる。
相手はこの水の中で、鈍るどころか加速している。

「ふふ・・・アハハッ!その程度なの!?アンタも伝説なら、アイツみたいにもうちょっと頑張りなさいよ!」

「・・・?」

あいつ・・・
マック、か?

「・・・マックに会ったのか?」

「さぁ~どうかしら?・・・勝ったら教えてあげましょうか・・・無理だけどねぇ!アハハッ!」

「そうか。」

・・・道が、見えてきたか。
ならば・・・!


「・・・ビームサーベルを収めるなんて、観念したのかしら?」

「・・・」

集中しろ。
奴の攻撃は確かに速い。

「・・・つまらなぁい。」

だが、水中を進むのならば・・・

「・・・もう、いいわ。スクラップにしてあげる!」

奴の攻撃よりも速く・・・

「死になさい!伝説!」

水の動きがこちらに伝わる!


「せぁ!」

「なっ!?氷柱を斬った!?」

集中しろ・・・

「マグレ・・・マグレよ!もう一度!」

「・・・無駄だ。」

迫り来る氷柱・・・だが、お前のフィールドである水が、その動きを教えてくれる。
あとは、タイミングだけだ!

「はぁっ!」

「そんな!?」

「・・・その攻撃は見飽きた。」

これで、奴の遠距離攻撃は封じた。
と、すると奴の取れる手段は2つ。

逃げるか・・・


「・・・生意気っ・・・この槍で突き刺してあげる!」

接近戦か・・・!

「串刺しよ!アッハハハハ!」

速い・・・!

だが・・・

「そこだ!」

「なっ!?避けられた!」

捉えた!
攻撃後のその数瞬・・・逃さん!

「セァ!」

「くっ!」

ちっ!うまく防御されたか。
やはり、水のせいで振りが遅くなっている。

だが・・・

「わ、私の槍が!?」

「・・・勝負有、だ。」

武器は破壊した。
俺の、勝ちだ。

「・・・さぁ、マックのことを教えてもらおうか。」

「・・・くっ。」

「少しでも動けば・・・その首、なくなると思え。」

「・・・」

観念、したか・・・?

「・・・ふふ・・・あはは・・・残念でした!」

「なっ!?」

足元から氷柱だと!?
ちっ!

「・・・あのタイミングで避けるとか、さすが英雄ってことかしら?」

「・・・」

逃げられた・・・来るか?

「ま、今日はここまでにしてあげる。武器も壊れちゃったし。」

戦闘は終わりのようだが・・・まだマックの情報を聞いていない。

「待て!」

「待つわけないでしょっ!・・・あぁ、一つ言っておくけど、この先の部屋、私のプライベートルームだから絶対に入らないでよ!」

「・・・何?」

「だから、入るなって言ってるの!」

・・・何を言っている?
罠、か?
だが、今はそれどころではない。
ここは要求を呑むか。

「・・・わかった。」

「え?」

「部屋には入らない。」

「ちょっと・・・入るなって言ったのよ!」

「・・・あぁ、部屋には入らない。」

「だーかーらー!・・・こいつ天然?」

「・・・?」

「あーもー面倒な奴!いい、絶対に入っちゃダメなんだからねっ!」

「ああ、入らない。」

「入れって言ってるのよ!」

「・・・言ってることがさっきと・・・」

「もう知らない!」

「っ!待て!」

・・・逃げられたか。
あの速度、水に囲まれた状態では追いつけんな。

さて、どうするか。

このまま帰還するか、奴の部屋を調べるか。

・・・何もしないよりは、マックの手がかりを探すほうがマシか。

扉は、開くようだな。

・・・鬼が出るか、蛇がでるか・・・





扉の先にいたのは・・・


「・・・まったく、やはりお前の心配はするだけ無駄だな。」


台座の上で、眠りこける・・・









「なぁ、マック。」

紫のレプリロイド。





「・・・帰るぞ。」



・・・一緒に、な。


























「セルヴォ、シエル、こいつを頼む。」

「「マック!?」」



/////////////////////////


マック帰還。

その報はレジスタンスを駆け巡る。

1年前からレジスタンスにいたメンバーは、ようやく帰ってきたと笑顔で彼を迎えた。

しかし・・・当の本人は目覚めない。

運び込まれてから幾日か過ぎたが、それでもマックは静かに眠ったままだ。


『・・・こいつぁ・・・』

『セルヴォ、どうした?』

『うむ・・・こりゃ、ワシには無理だな。』

『・・・?』

『1年前は施設の性能が悪すぎて、簡易修理だけだった。だから気づかなかったんだが・・・』

『・・・説明してくれ。』

『マックは・・・ブラックボックスだらけなんだよ。』

『・・・?』

『あー・・・そういう意味じゃお前さんもだが、マックは桁が違う。』

『どういうことだ。』

『頭からつま先まで、マックの構造どころか、構成物質すらわからん。・・・1年前よく触ったな・・・下手すりゃ逆に壊れてたぞ、これ・・・』

『・・・修理、できないのか?』

『あぁ、ここまで傷ついてる状態で、わからんままいじったら、どうなるか保証できん。』

『・・・どうすれば。』

『まぁ、ワシにはわからんが、ここには天才がいるからな。』

『・・・シエルか。』

『うむ。シエルとマックを解析してみる。ちょっとばかし時間はかかるが、大丈夫だろう。』


レジスタンスメンバーのメンテナンスを携わるセルヴォですら匙を投げた。
それほどまでに、マックのボディは謎めいていたのだ。
そのため、レプリロイドの構造に詳しいシエルを加え、マックの解析へと乗り出す。

が、その結果わかったことは・・・



『これは・・・解析、不能だわ・・・』

『・・・どういう、ことだ?』

『おそらく・・・マックは、旧時代の技術で作られているの。』

『・・・旧時代?』

『うん、数百年前、終末の大破壊よりも前の時代のことね。』

『・・・世界崩壊前の時代か。』

『そう、かつての世界崩壊のせいで、一度、この星の文明は崩れ去ってしまったわ・・・レプリロイドの製法技術も含めてね。』

『製法技術が?・・・だとすれば、この世界のレプリロイドは・・・』

『うん、今の時代に生きるレプリロイドは、わずかに残った旧時代の情報から再現されたものなの・・・でも、はっきり言って、正しい技術ではないと思うわ。』

『正しい技術ではない?』

『えぇ、わずかに残った情報を組み合わせて、足りない部分は研究して・・・そうしてできたのが、今のレプリロイド達よ。』

『・・・なぜ、正しくないんだ?』

『うん・・・旧時代のレプリロイドに関する情報を見たことがあるんだけれど・・・エネルギー効率が全く違うのよ。』

『エネルギー効率?』

『そう・・・この時代のレプリロイドは、定期的にエネルゲン水晶を定期的に吸収する必要がある・・・でも、旧時代のレプリロイドは違うわ。』

『・・・?』

『旧時代のレプリロイドは、一度のエネルギー供給で、およそ1年は動くとされていたの。』

『・・・なに?』

『今じゃ考えられないわ・・・今の時代では、少なくとも月に二度はエネルギー供給が必要なのに・・・』

『旧時代との技術差のせいで、マックは修理不可能なのか?』

『・・・うん、新しくなった施設のおかげで、判ったんだけど・・・マックの構造も構成も全てが現代と違いすぎて・・・』

『・・・そうか。』

『・・・でも、不思議だわ。』

『どうした?』

『マックが旧時代に作られたのなら・・・ゼロもそうだと思うの。』

『・・・俺に記憶はないが・・・おそらくな。』

『うん・・・事実、オリジナルエックスもブラックボックスだらけだったわ・・・でも、ゼロの構成は、判るの。』

『・・・』

『確かに使われている技術や、中枢部にはブラックボックスもあるけれど、フルメンテナンスができるほどに、ゼロのボディ構成は解析できたの。』

『・・・そうか。だが、今はそのことはいい。マックのことだが・・・』

『ごめんなさい・・・今の技術じゃ、マックの修理は無理なの・・・』

『・・・そうか。』

『せめて、エネルギー供給は続けるわ。体の修理は無理でも、動力が戻れば、意識が戻る可能性があるから。』

『頼む。』



技術力の差、そのせいでマックの修理は不可能となった。
かつてあった技術は、世界の崩壊に伴い失われたのだ。

うてる手はなく、マックへはエネルギーを供給することしかできない。

その間、ゼロはミッションへ行き、シエルはマックの解析を行う日々が続く。

そして、マックが静かな日々にわずかながら進展があった。

『・・・これは!?』

『どうした、シエル。』

『マックのボディに変化が!』

『なに?』

『ウソ・・・あきらかに前の検診の時よりも修復されてる・・・』

『修復・・・直ってきているのか?』

『ありえない・・・自己修復機能?・・・まさか、そんな・・・』

『落ち着け。』

『あっ・・・ご、ごめんね。』

『・・・それで、マックは今どういう状況なんだ?』

『うん、前の検診データとの比較しかできないけれど・・・ゆっくりだけど確実に直ってきてるわ。」

『そうか。』

『これなら・・・きっと、目覚める日も、そう遠くないかも。』

『あぁ・・・そうか。』

『うんっ!皆にも、伝えておくね!』

『あぁ・・・そうか、マック・・・』



目に見えた希望。
理由も、原因もわからないが、わずかに見えた希望は確かにあった。

かつての仲間が蘇ると、レジスタンスには明るいニュースとなったが・・・






――それを上回る悲惨な未来が訪れる。














『セイギのイチゲキ作戦・・・開始するのです!』



新レジスタンス頭目、エルピスによるネオ・アルカディア襲撃作戦。
レジスタンスの総力を挙げた、一大侵攻作戦は・・・









『この程度で、ネオ・アルカディアに攻めるとか・・・バカ?』

『人間達を攻撃するなど・・・私が許さん!』

失敗に終わる。
待ち構えていた四天王の2人により、侵攻作戦は脆くも崩れ落ちた。

作戦に参加したレジスタンスのレプリロイドは壊滅。
頭目エルピスを残し、作戦は終わった。

ゼロは、エルピスの救出に成功したが、さらなる悪夢が待つ。
四天王と対峙するゼロに告げられた、死の宣告。

『・・・もはや、レジスタンスの存在は許せん。』

『アンタ達、やりすぎなのよ。消えてもらうわ。』

『・・・なんだと?』

『あと数時間で、特殊爆弾を積んだ爆撃機がお前たちのベースを強襲する。』

『木っ端微塵ね!アハハ!』

『っ!?オペレーター!転送しろ!』


爆撃機による強襲。
レジスタンスベースも、既に接近する飛行物体を確認していた。


『・・・俺が、行く。』

『ゼロ!?』

『直接爆撃機へ転送しろ。内部から破壊する。』

『無茶よ!』

ゼロの決断は無謀なものであった。

だが、彼の思いを止めることなど誰にもできない。

『この基地から退避しろ。シエル、指揮は任せた。』

『ゼロ!?』

彼は行く。



守るために。





――戦う理由は、それだけで十分だから。






/////////////////////////



「皆!急いで!もう時間がないわ!」

「シエルさん!脱出者のリストです!」

「ありがとう!・・・アルエットがいない!?」

「シエル!」

「セルヴォ!アルエットは!?」

「おらんのか!?・・・まさか・・・」

「あっ・・・マックのところ・・・?」

残された時間は僅か。
必死に逃げるレジスタンスの中に、少女がいない。

その事実にシエルは戦慄し、焦る。
そして、もう一つやるべきことがある。

「多分、アルエットはマックと一緒に・・・マックも連れ出さなくちゃ!」

未だに眠る、マックの救出。

残るアルエットとマックを助けるために、シエルは声を荒げた。

「誰か付いてきて!マックを運び出すわ!」



呼び声に答えた数人のレプリロイドと共に、シエルはベースを走る。


















メンテナンスルーム。
そこには、紫のレプリロイドと幼い少女がいた。

「んしょ・・・んしょ・・・」

少女、アルエットはマックが眠るメンテナンスカプセルの操作パネルへと背伸びをし、手を伸ばす。

「ん~~~!」

思いっきり手を伸ばし、パネルを操作すると、未だ目を開けぬマックが現れた。

「・・・おにいちゃんも、逃げるの。」

アルエットはマックの手を掴むと、思い切り引っ張る。

「ん~~!んん~~~!」

だが、幼子の非力な力ではマックはびくともせず、ただ静かに眠る。

「むぅ~~~~!」

だが、アルエットは諦めない。
諦めるという選択肢がない。

彼女は、約束したからだ。
もう一度、遊ぶと約束をした。




――少女は1年前の別れのときにした約束を憶えている。






/////////////////////////


1年前、まだレジスタンスが小規模だったころ。
少女は、1人だった。

大好きな姉は、レジスタンスの指揮で忙しく、いつも壊滅の恐怖に怯えるレジスタンスの中に、遊んでくれるレプリロイドなどいない。

度重なる戦闘と、迫り来るネオ・アルカディアの軍勢。
当時のレジスタンスに余裕など欠片もなかった。
故に、少女と共に遊ぶ存在などいるはずもなく、少女は、誰にも相手にされず1人だったのだ。



――そこに現れた、1体のレプリロイド。


『YO!こんにちわ、お嬢ちゃん!』

『っ!?・・・こ、こんにちわ。』


最初は、怖かった。
突然現れたレプリロイド、見たこともないレプリロイドに恐怖した。




――だが、彼は遊んでくれた。


『愛とー勇気だけーが・・・』

『あんぱん!』

『正解!次はわっかるかなー?』




――お互いの似顔絵を描いたりした。


『あのね、おにいちゃんを描いてあげる!』

『おー!じゃあ俺はアルエットを描くYO!』

『・・・カキカキ・・・ぬりぬり・・・』

『ここは繊細に・・・だが荒ぶるごとく大胆に・・・!』

『できた!』

『俺もできたYO!』

『えへへー、どう?』

『おー・・・とても独創的でかっこいいYO!・・・紫のかかし?』

『おにいちゃんのも見せてー!』

『OK!どうだ、力作だZE!』

『んーここは陰影をはっきりさせて奥行きをつけて線を濃くして色使いはもうちょっと淡く光の感じも斜めからにして・・・』

『その道のプロ!?』




――いつだって一緒にいてくれた。


『今日はね、おままごとがいい。』

『おー!んじゃ、配役は?』

『わたしね、新妻!』

『にいっ!?・・・いや、うんOK。んじゃ、俺は?』

『おにいちゃんは、いつもお米を運んでくれるケンジ。新妻とイケナイ関係。』

『昼ドラ!?どこで知ったんだそんな知識!』

『おねえちゃんの本に書いてたよ?ところで、イケナイ関係って何?』

『シエルー!?』




――どんなときだって、一緒だった。


『えっとね、えっとね今日は~・・・』

【<ピピッ!>・・・マック、マック、転送室に来てもらえる?ちょっとミッションで相談があるの。・・・<ブツンッ>】

『あ・・・おねえちゃん。』

『ん~残念。』

『む~!』

『そう怒るなって。すぐに帰ってくるさ。そしたら遊ぼうZE!』

『ほんと?』

『おー!俺が帰るまでに何するか決めとけYO!』

『うん!わかったヨー!』

『むむ?』

『えへへー。』

『YO!』『ヨー!』




この楽しい日々がいつまでも続く・・・少女はそう信じて疑わなかった。




――だが、訪れる別離。


『あー・・・離してくれないか?』

『や!』

『頼むから、な?』

『やー!』

『む、むぅ・・・あの、な、アルエット、俺はここから出て行かなくちゃいけないんだ。』

『やだ。』

『ヤダって言われてもな・・・』

『おにいちゃんはずっとアルエットといるの!』

『あ~・・・そうしたいのは山々だけどな・・・』

『じゃあそうするの!』

『交渉上手!?・・・悪いな、今回は譲れない。』

『・・・ゃ。』

『ん・・・ゴメン。』

『やだ・・・』

『ゴメン。』

『やだ・・・!』

『ゴメン。』

『やぁだぁ!』

『ゴメン。』

『うー!』

『ゴメンな。』

『うぅ~!』

『・・・良し!じゃあ、こうしよう!』

『う?』

『次に会ったときは、なんでも言うことを聞いてあげよう!』

『・・・ホント?』

『おう!もう一度、必ず会う。んでもって、その時は俺にできることなら、なんでもやる!』

『・・・約束?』

『おー!約束するZE!』

『・・・ん。じゃあ、約束!』

『OK!なにがいい?』

『ん・・・じゃあ、また遊んで。』

『お?それでいいのか?』

『・・・うん。えっとね、おままごとがいい。』

『了解!』







別れの際に交わした約束。

今でも少女は憶えている。









――わたしが、お嫁さんで、おにいちゃんがお婿さん。約束だよ?










/////////////////////////


それから、1年がたった。

ゼロが戻ってきて、マックも戻ってくると信じた。

ずっとベースの入り口で待つ日々が続いた。

雨の日も風の日もずっと待っていた。

そして、遂に帰ってきて・・・約束はまだ果たされない。




「ん~~~!」

力を込めて、手を引く。
だが、マックは微動だにせず、その握力に限界が来る。

「あぅっ!」

手がすっぽ抜け、後ろへと転倒。

「う・・・うぅ・・・!」

アルエットに涙を流す機能はない。
だが、彼女の心は確かに泣いていた。

いつも手放さなかった人形を投げ出すほどに心乱れていた。

約束は果たされない、ただいまも言ってくれない。

逃げなければ命も危ういのに、動いてもくれない。

少女の心は限界だった。



















――そのとき、少女の頭に手が置かれる。


「・・・?」


見上げると其処には・・・


























「アルエット!」

「あ、おねえちゃん。」

「もう!心配したんだから!」

「ふぇ?」

「さ、早く脱出するわ、マックも・・・えっ!?いない・・・マックは!?」

「おにいちゃんなら・・・」

















――任せておけって。









/////////////////////////

「クソッ!防護扉が硬い!」

この爆撃機・・・自爆特攻を前提にしている!

「このままでは・・・!」

しかも、侵入されることを予想してか、内部は侵入者に対するトラップだらけだ・・・!
「時間稼ぎか・・・!」

特殊爆弾を放り投げようと思えば、巨大すぎて持ち運べないように。
操舵室でコントロールを奪おうと思えば、度重なる防護扉。

「ご丁寧に時間制限付き・・・!」

ベースに辿り着かなくても爆発するように、か・・・

「時間がない!」

どうする、俺の武装ではこれらを破壊できても、脱出する余裕がない。










「・・・やるしか、ないか・・・!」

















――跳べ!





「っ!」















聞こえた声に、傍の窓から飛び出せば・・・







――閃光。



そして、爆発。

























「・・・くっ・・・はぁ・・・はぁ・・・間に、あったか。」

爆発に巻き込まれないところで、爆撃機が爆発四散。
きわどいタイミングだった。

さて・・・こんな危ないことをやったのは・・・




「・・・ぜはぁ・・・ぜはぁ・・・きっつ・・・もう・・・エネルギー・・・スッカラカンだ・・・YO・・・」

「・・・お前だろうな、マック。」

「・・・YO・・・無事・・・だったか・・・先輩・・・」

「・・・この忙しいのに遅刻とはやってくれるじゃないか。」

「ちょ!?先輩!そのチョークスリーパー確実に折にきてるYO!?」

「・・・まったく、お前は・・・変わらない。」


















――よく、戻った。

――あぁ、ただいま。

――ゼロ、大丈夫!?・・・マック!?

――おにいちゃん!

――おー!皆、ただいま!













~あとがき~


お読みいただきありがとうございます!

やべぇ、完全にヤンデレスイッチ切れたでござる。

お盆に実家戻って探したら出てきたよ。アドバンス&ゼロ1。

懐かしすぎて涙が出そうです。
つかもうウン年も動かしてないのに普通に動く・・・任天堂スゲー。
で、久々にやったら面白すぎた。

そして、ヤンデレスイッチが切れた。
しばらくは、異伝書けそうに無いです。


と、いうことで、新シリーズ始まります!


【うろおぼえロックマンゼロ こんなストーリーだった気がしないでもない!】

ゼロ2・3・4が出ればプレイするんですが、なかったのでうろ覚えで。

レヴィアタンは原作ヤンデレ風なんですが、ヤンデレは異伝で食傷気味なのでツン殺にしました。

【ツン殺】
か、勘違いしないでよね!アンタを殺すのは私なんだからっ!
みたいな少年誌的ライバル思考。
ヒロインになるかは未定。

マック自動修復とかチートすぎない?って思った方はX3のヘッドチップを思い出していただければ。

と、いうことで異伝はちょっくら休憩してゼロシリーズ書きます。

ではでは、次のお話で、ありがとうございました!


・・・やっぱり続き書くならプレイしたほうがいいかな?
コレクションの購入・・・吟味せねば。



[28394] 【確か】ロックマンX IF 未来伝3【こんな感じ】
Name: socom2◆c4c431dd ID:a13ac3ff
Date: 2011/08/20 16:50



・・・あ?

ここ、どこだ?


『うむ?どうかしたかの?』

声のほうを振り向けば、モニターに映る爺さんの姿。

「・・・あー・・・ここ、イレギュラーハンターの本部の・・・通信室だよな。」

『うむ。どうしたのじゃ、マック。』

あぁ・・・そっか、いつもみたいに爺さんにその日あった事を話してたんだっけ。

「いや、なんでもないYO!そんなことより聞いてくれ!」

『うむ。』

「・・・こんなことがあったんだYO!」











1.ある日の休日、青い人。


「ちょっとエックス!遅いわよ!」

「おっと、ごめんね。」

「もぉー!約束したでしょ!10時にここだって!」

「ゴメンゴメン!ちょっと訓練に力いれちゃって。」

「はぁ・・・この訓練バカ。」

「ヒドイなぁ・・・」

「ま、いいわ。ほら、行きましょっ。」

「うん。今日は何処行くの?」

「そうね~・・・まずは、映画でしょ、それから、買い物でしょ・・・あと海ね!」

「・・・了解、また荷物もちかぁ・・・」

「何よ?文句あるの?」

「いや!何処へだって付き合うさお姫様。」

「よろしい!さぁ、行くわよ!」

「おっと・・・えと、あの・・・」

「何?」

「い、いや・・・その・・・腕に・・・あたって・・・」

「・・・当ててるのよ・・・バーカ・・・」










「・・・っていうラブコメ真っ青な光景を見たんだ・・・」

『ほう。そりゃなんともモゲテ欲しい展開じゃな。』

「だろ!?しかも人魚モードとかある姉御なんだぜ!?」

『マーメイド<浪漫>、じゃと・・・!?エックス君・・・恐ろしい子!』

「それだけじゃねぇんだYO・・・」










2.ある日の休日、赤い人


「ゼロ、来ちゃいました。」

「何が来ちゃいました、だ・・・」

「いいじゃないですか。」

「何しに来たんだ?」

「ん~・・・ゼロに会いたかったから、かな?」

「何だそれ・・・」

「・・・だめ?」

「ちっ・・・好きにしろ。」

「うんっ!・・・・・・えいっ。」

「おっと・・・おい、腕に纏わり付くな。」

「ふふ・・・ダメ?」

「・・・ちっ・・・勝手にしやがれ。」

「うん、勝手にしちゃいますっ。」

「で、ここからどうするんだよ?」

「ん・・・なんでもいいですよ?」

「あ?」

「ゼロと一緒にいる・・・それだけでいいの。」










「・・・っていうギャルゲも真っ赤になって逃げ出す光景を見たんだ・・・」

『ほう。そりゃまたなんともモゲテ欲しい展開じゃな。』

「だろ!?しかも、ベンチでゼロを膝枕して微笑むなんて大和撫子っぷりだZE!?」

『大和撫子<絶滅危惧種>、じゃと・・・!?ゼロ君・・・恐ろしい子!』

「あぁ・・・そして・・・聞いてくれ・・・」










3.ある日の休日、紫の人


「ふんふ~ん。ようやく非番かー・・・なにするかなー?」

「おぉ、探したぞマック。」

「げっ!?・・・なんだよおっさん。俺になんか用?」

「お主の戦闘記録を見た。・・・なんだあれは?」

「ん?」

「お主は射撃特化であるくせに突撃ばかりしおって・・・」

「俺は密着ゼロ距離浪漫撃ちが好きなんだYO!」

「たわけぇ!そんなことでは戦場では命が幾つあっても足らんわ!こいっ!」

「ちょっ!?デケー手で胴体を掴むなYO!」

「ワシ自ら鍛えなおしてくれる!」

「いらねー!」

「はっはっは!心配するな!これでも将軍と呼ばれた身、こと戦闘においては未だ不敗の負け知らずよ!」

「心配じゃなくて、なにが悲しくて非番におっさんと訓練なんかしなきゃいけないんだYO!」

「くっくっく・・・はは・・・はぁーはっはっは!久々の戦いに闘志がたぎるわぁ!」

「誰かぁー!ヘルプ!」

「はぁーはっはっは!」










「・・・っていうことがあったんだ・・・」

『・・・泣ける。』

「・・・涙を流す機能がない俺の変わりに泣いてくれるのか・・・?」

『当然じゃて・・・マイサン。』

「爺さん!」

『マック!』

「・・・お~い、マック~そろそろ任務だよー・・・」

「OK!ちょっと待ってなエックス!・・・ワリィ爺さん。仕事だ。」

『うむ。』

さぁて・・・そろそろ、行くか。

「爺さん。」

『うむ?』

「・・・ありがとな。」

『・・・』

「楽しい、夢だったZE・・・」

『気づいて、おったのか・・・』

あぁ・・・気づいていた、気づいていたさ。








「俺がいて、爺さんがいて・・・」

『・・・』

「エックスがいて、ゼロがいて・・・」

『・・・』

「人魚の姉御がいて、大和撫子さんがいて、金ぴかのおっさんがいて・・・」

『・・・』

「あぁ・・・楽しい・・・楽しい、夢、だった・・・」

『目覚めた先は、地獄かもしれんぞ?』

「・・・あぁ、でもさ、俺は、行くよ。」

『・・・なぜじゃ。』

「・・・俺は、ずっと認めたくなかった・・・」

『・・・』

「目が覚めて、数百年後で、爺さんはいなくて、町はなくなってて、ゼロは記憶が無くて、エックスが悪者だって言われて・・・」

『・・・』

「あぁ、そうだ。俺が望んだのはこんな未来じゃない・・・爺さんがくれた夢が、欲しかったんだ。」

『・・・』

「けど、けどさ・・・これは、夢だ・・・ただの、夢、なんだよ・・・」

『・・・そうか。』

「あぁ・・・だから、行くよ。」

『・・・何のために、行くのじゃ?ここで、眠り続けても・・・誰も文句はいわんぞ?』

「ん~そいつは素敵な提案だZE!」

『じゃろ?』

「・・・でも、約束したんだ。また、遊ぼうって・・・約束は守るもんだYO!・・・だろ?」

『・・・そうか、そうじゃな。』

「ん、それに・・・眠ってはいられねぇだろ?」

『うむ?』

「ヒーローだからな!」

『ヒューッ!』

「つーわけだ!俺は行くYO!」

『・・・うむ!』















「じゃあな・・・」

『さらばじゃ!マック・・・グッドラック!』

「あぁ・・・今まで、ありがとうよ・・・」






















――サヨナラだ・・・親父。









////////////////////




さぁ~って、行くと決めたものの、何処に行けばいいのやら。
とりあえず、俺を呼ぶエックスの声の方へ来たものの、周りは荒野しかねーし。

「・・・迷子?もしかして迷子?NO!誰かヘルプ!」

と、騒いでみても返ってくるのは風の声だけ。

・・・寂しい。

「・・・ん?」

おっと、荒野の向こうに不自然な影発見!
さっそく行ってみるYO!





・・・到着!

影の正体は倒れたゼロと・・・荒野に埋もれて犬神家な足。

「って・・・俺の足じゃん!なんでだYO!」

見事に上半身だけ埋もれて足が逆さまだYO!

と、戦慄していると、光が降ってきた。

「うぉっまぶしっ!」



『ゼロ・・・マック・・・』

「エックス・・・か?」

光の正体はエックスだった。たぶん。
なんか、半透明。

つか・・・なにその輪っか?
イメチェン?イメチェンなの?

あとそのどこぞの教祖様みたいな服はなんなんだYO!













『・・・ゼロ、君がいなくなって・・・僕は100年、戦い続けた・・・』

「・・・っ!?」

『・・・戦って、戦って・・・』

「おまえ・・・」

『・・・イレギュラーを狩り続けるのは・・・つらい・・・』

「・・・」

『・・・でも、もっとつらいことがあるんだ・・・』

「・・・」

『・・・段々と、何も感じなくなって・・・ゼロの顔も・・・マックの顔も忘れていく・・・』

「っ!?」

『・・・僕は、いつかまた、君達と、笑い合える世界のために戦ったけど・・・もう、疲れたんだ・・・』

「エックス・・・」

100年、100年か・・・俺は、なにをしてたんだ・・・!

『・・・ゼロ・・・この世界のこと・・・君に、君達にしばらくまかせたい・・・』

100年の闘争・・・それも、たった一人で・・・!

『・・・もう少し、もう少しだけ・・・休みたいんだ・・・』

俺は・・・エックスの相棒んだろうが!

『・・・ごめんね、ゼロ・・・マック・・・』

俺は・・・!















「・・・マック。」

「エッ・・・クス?」







////////////////////



「この、光景は・・・」

「うん・・・1年前の、僕の記憶だ。」

「そっか・・・」

「久しぶり、だね。」

「あぁ・・・1年前は気絶してたから・・・俺からすれば、数百年ぶりか?」

「うん、僕からすれば、1年ぶりだね。ふふ・・・」

「あ?なんだYO!」

「い、いや・・・1年前のマックの姿を思い出してね・・・ぷぷ!」

「笑いたきゃ笑えYO!俺だってあんなポーズだとは思わなかったんだYO!」

「ぷ・・・はは・・・ははははは!」

「ちょっ!だからって大笑いはヒドイYO!」

「ははははは!・・・ふふっ・・・君は・・・あぁ・・・そうだ、マックだ・・・これが、マックだ・・・」

「あん?なんだYO!」

「いや・・・なんでもないさ。うん、また会えて嬉しい。」

「あぁ、そうだな。うん俺も嬉しいZE!」

「うん・・・マック、君に頼みがある。」

「あぁ・・・言ってみ?」

「今、レジスタンスに危機が迫っている・・・」

「・・・」

「ゼロが決死の覚悟で挑もうとしているんだ・・・」

「ゼロが?」

「うん・・・ゼロを、レジスタンスの皆を助けて欲しい。」

「・・・」

「本当なら、僕がやるべきだけど・・・」

「いいさ、俺がやる。」

「マック・・・」

「あぁ、レジスタンスには世話になったしな。」

「・・・ごめん・・・」

「謝んなYO!」

「ごめん・・・それだけじゃないんだ・・・」

「ん?」

「君が目覚めるのは・・・もっと、世界が平和になってからのはずだった。」

「んん?」

「それが、ドップラー博士との約束だったから・・・」

「・・・爺さんとの?」

「うん・・・なのに、僕は・・・君に危険なことを・・・」

「あ~・・・爺さんと何を約束したのかは知らんが・・・気にすんな。」

「・・・」

「これは、俺が決めたことだ。目覚めることも、戦うことも・・・な。」

「マック・・・」

「それに、俺が行くのは・・・お前に呼ばれたからじゃない。」

「え?」





















「幼女が呼んでいるからだYO!」

「台無しだよ!」






////////////////////


――う・・・うぅ・・・!

――・・・YO・・・どうした?

――・・・?

――心配すんな、俺にまかせとけ・・・アルエット・・・

――おにい・・・ちゃん?















「さってと・・・」

今回の作戦は、爆撃機の迎撃だな。

つか、ゼロが突入してるらしいけど、落として大丈夫なのか?






――大丈夫・・・ゼロは僕にまかせて。







「・・・OK、信じるぜ・・・相棒。」








やることは決まった。

覚悟も、決めた。

憂いも相棒が消してくれた。

なら・・・








「さぁ・・・やるか!グッドラック!」




俺復活の狼煙だ!

派手に・・・いくZE!













「フルチャァァァァァジバスタァァァァァァァアアァ!!!」








――閃光、そして、爆発。








「ふ・・・キレーな花火だZE・・・って!?無傷ー!?」









・・・マジかYO!?マックバスターマックバスター!

・・・チャージチャージ!

・・・フルチャージ!ぜはぁぜはぁ!おらおらぁぁぁぁ!

・・・ぶー!?全然元気!?マックバスター!マックバスター!

・・・ぜはぁぜはぁ・・・もうらめぇ!はやく落ちてぇぇぇぇ!

・・・マックバスター!

・・・マックバスター!・・・

・・・バスター!・・・

・・・スター!・・・

・・・ター!・・・

・・・・・・

・・・





















――ぜはぁ・・・ぜはぁ・・・きっつ・・・もう・・・エネルギー・・・スッカラカンだ・・・YO・・・


――お前だろうな、マック。


――・・・YO・・・無事・・・だったか・・・先輩・・・







////////////////////




爆撃機、撃墜。

壊滅を逃れたレジスタンスは生き延びた喜びと、戦友の帰還に湧き上がる。

だが、湧き上がるレジスタンスを追い込むように起きる事件。






――レジスタンス司令、エルピスの脱走。


『エルピス、お願い・・・戻ってきて!』

『シエルさんのお願いでも・・・それは、聞けません。』

『・・・何故だ?』

『あいつ誰だYO?』

『・・・今回の、作戦失敗は・・・全て、私の責任です。』

『それはっ!』

『なんのことだYO?』

『・・・ずっと、下っ端にいることが嫌だった・・・だから、ネオ・アルカディアを捨ててレジスタンスに来たのに・・・』

『・・・おにいちゃん。』

『お、アルエット。』

『・・・ゼロ!お前が来てからだ!全てがおかしくなったのは!・・・』

『・・・何?』

『ん、暇だから、お絵かきしよ?』

『おー!いいYO!』

『・・・ゼロさん、ゼロさん、ゼロさん・・・どいつもこいつもお前ばかりを呼びやがる!』

『・・・』

『エルピス!それは!』

『かきかき~ぬりぬり~』

『・・・繊細かつ大胆な塗り絵!・・・腕を上げたな・・・アルエット!』

『レジスタンスをここまで大きくしたのは・・・この私だ!』

『えへへ~うまくなったヨー!』

『YO!』

『力・・・力が欲しい・・・そして・・・ネオ・アルカディアを・・・人間を滅ぼし・・・!』












『今度こそ英雄になるんだー!』

『できたー!みてみて!』

『おー!・・・紫のかかし?』

『聞けよチクショー!絶対に力を手に入れてやるー!』

『あっ!待ってエルピス!』

『・・・マック。』

『ちょっ!?先輩、無理無理無理!そっちに俺の間接曲がらないから!』

『わぁーおにいちゃんすごいすごい!』









かつて、レジスタンスの司令だったエルピスは、研究中のサイバーエルフ『ベビーエルフ』を奪い、逃走する。

その真意を知ることはできず、ゼロとマックはネオ・アルカディアと戦い、エルピスを追う日々が続く。



『あいつが司令ねぇ・・・』

『・・・わたし、あの人キライ。』

『もう、そんなこと言っちゃだめよ?アルエット。』

『むー!だってクリエとプリエを連れてったんだもん!』

『クリボーとプリニー?とてもモブモブしい名前だYO!』

『クリエとプリエ!ベビーエルフの名前だよ。わたしがつけてあげたの!』

『ふむふむ・・・そもそもベビーエルフってなんだYO・・・』

『お願い、ゼロ、マック・・・エルピスを連れ戻して。』

『・・・あぁ。』

『あれ?俺の質問はスルー?』

『えっとねーベビーエルフは、かわいいの!』

『なるほどなー・・・ってわかんねーYO!』

『・・・彼も・・・レジスタンスの、仲間だから。』

『わかった・・・行くぞ、マック。』

『って、ちょっ先輩!首引っ張んないで!』

『ゼロ、マック・・・彼を、お願い・・・』

『おにいちゃん達・・・いってらっしゃい。早く・・・帰ってきてね?』







ベビーエルフ・・・それは、凄まじいエネルギーを生み出す新種のサイバーエルフ。
シエルはかつて、そのベビーエルフを研究することで新エネルギーを生み出そうとしていた。

だが、解析は思うように進まず、研究が停滞していた矢先の、エルピスによる強奪事件。エルピスが何のために、ベビーエルフを連れて行ったのかは誰にもわからない。

わからないままに、戦いは続く。
レジスタンスを襲うネオ・アルカディア軍。
そして、ベビーエルフを連れ、各地の施設を襲うエルピス。
ゼロとマックは真実を知らぬまま戦渦へと身を投じる。







『待て、エルピス!』

『やっと見つけたZE!』

『・・・ゼロ君、何故邪魔をするのですか?』

『・・・なに?』

『あれ?俺スルー?』

『私は、母を求めて泣く幼子のために動いているというのに・・・』

『・・・?』

『何言ってんだ、こいつ。』

『何も知らないお前達が・・・私の邪魔をするな!』

『待て!』

『また逃げやがった!待てYO!』






エルピスを追う二人。
密林の奥の遺跡で、遂にその足取りを掴んだ。
遺跡の奥の奥、その最深部にエルピスはいた。






『ふふ・・・ハハハ・・・!』

『エルピス・・・!』

『あいつ・・・会うたびに、やばくなってねーか・・・?』

『ヒヒ・・・これで・・・あと・・・一つ・・・くく・・・あとは・・・封印さえ解けば・・・!』

『何を、言っている。』

『この感じ・・・なんか、やべぇ・・・』

『後一つ・・・後一つで・・・ゼロ君と同じ・・・いや、それ以上の・・・!』

『・・・マック!』

『あいよ!マックバスター!』

『力を手に入れられるんだぁぁぁぁぁ!』

『・・・っ!?・・・逃げられたか。』

『悪りぃ、捉え損ねた・・・』

『いや・・・一旦戻るぞ。』

『・・・了解。』



エルピスを逃した2人は一旦ベースへ戻ろうとする。
しかし、その2人を呼び止める声に2人は歩みを止めた。



『ゼロ、マック・・・』

『『エックス!?』』

『すまない・・・まさか、ベビーエルフがあそこまで力を付けているなんて・・・』

『エックス・・・』

『お前は大丈夫なのか?』

『・・・うん、ありがとうマック。・・・ごめん、今の僕ではダークエルフを抑えるので精一杯なんだ・・・』

『・・・ダーク、エルフ。』

『また、新しい名前が・・・混乱してきたYO!』

『ダークエルフ・・・100年前の戦争で、恐ろしい力を振るって世界を混乱させたサイバーエルフのことさ・・・』

『100年前の戦争・・・』

『・・・ベビーちゃんは、そのダークエルフの子供ってか?』

『・・・うん、あの子達は、ダークエルフを元に作られた子供のような存在だね・・・』

『エックス!?』

『お、おい!体が透けてきているぞ!?』

『・・・ゼロ、マック・・・時間がない・・・彼を・・・エルピスを、止めて・・・彼女が・・・ベビーを・・・呼んでる・・・封印が・・・』

『エックス!』

『クソッ!消えちまったか・・・状況はかなり切羽詰ってるぽいぜ、先輩。』

『・・・戻るぞ。』

『了解・・・こりゃ・・・やべぇ感じだな・・・』





未だ捉えることのできないエルピスと、見え隠れするダークエルフという存在に段々と焦りだけが積る。

一度、情報を整理しようと、レジスタンスベースへ帰還する2人を待つものは・・・




――宣戦布告。



『ヒヒヒヒ!ヒャーッハッハッハ!』

『エルピス!?』

『・・・っ!』

『・・・こいつは・・・!』

『もう少し・・・もう少しで究極の力が手に入るんですよシエルさん!』

『もうやめてエルピス!』

『何故ですか!力が手に入れば貴女の理想を叶えることができるのに!』

『私の理想はそんなことじゃ叶わないわ!』

『・・・エルピス。』

『やはり・・・やはりお前だ!ゼロ!お前がいるから!』

『アイツ・・完全に錯乱してやがる・・・!』

『けど、大丈夫ですシエルさん!すぐに力を手に入れて貴女を迎えに行きますから!』

『・・・もう、やめて・・・!』

『そのために・・・オリジナルエックスを破壊する!そうすれば私は・・・ハハハハハハ!』

『待てっ!』

『ちっ!通信が切れたか!・・・オリジナルエックスって言ってたぜ、先輩。』

『あぁ・・・ネオ・アルカディアか・・・』

『ゼロ、マック・・・』

『・・・行くぞ。』

『あいよ・・・シエル、アルエットに伝えてくれ。』

『・・・うん。』

















――少し帰りが遅くなる・・・何して遊ぶか考えとけYO!






////////////////////



やってきましたネオ・アルカディア。

って・・・

「なんか、もう壊滅寸前なんだけど・・・」

「・・・」

「こりゃ・・・防衛用のメカニロイドだな・・・結構な数だZE・・・」

「・・・あぁ。」

「なぁ、先輩・・・エルピスってこんなに強いのか?」

「・・・いや。あいつの戦闘力はそう大したものじゃない。」

「つーことは・・・ベビーちゃんのほうか。」

「・・・おそらくは、な。」

「子供でこれって、母親はどんだけだYO!」

「・・・さぁな・・・急ぐぞ!」

「あぁ!」





////////////////////



崩壊した理想郷。

そこかしこに理想郷を守る兵士の残骸が転がり、理想郷ではなく地獄と言ったほうが相応しい様相であった。

ゼロとマックはその惨状にも目もくれずただ走る。
目指すは中枢の大塔。

その頂上にオリジナルエックスがいるとシエルの言葉を信じてただ走る。

塔を昇り、頂上を目指し、ひたすらに進んだ先は・・・



――王座の間。



巨大な王座に、鎖に縛られて鎮座する青いレプリロイド。



「「エックス!」」



「・・・待ってましたよ・・・ゼロォ・・・!」


そして、王座の傍に立つ、レプリロイド、エルピス。


「・・・エルピス。」

「・・・くく・・・やはり、最後はお前の前でやらなくちゃぁねぇ・・・」

「おっと、動くなYO?お前の剣よりも俺のバスターのほうが早いぜ?」

エルピスはエックスを破壊する様を見せ付けるために待っていた。
だが、そのエルピスを牽制するようにマックがバスターを構える。

「ひ・・・ひひ・・・判っています・・・えぇ判っていますとも・・・!」

「・・・っ。」

「・・・おいおい、アイツ、大丈夫か・・・」

マックの脅迫も気にすることなく、エルピスはただ笑う、哂う、嗤う。

「・・・出て来い!」

エルピスの呼び声に答えたモノは・・・2対の影。


「ぐっ・・・おのれぇ・・・!」

「・・・この私に・・・!」

「ハルピュイア?」

「レヴィアたん!」

「レヴィアタンよ!」

出てきたのモノ達は、ネオ・アルカディアの守護者、四天王の2人であった。
だが、あまりに様子がおかしい。
本来ならば、彼らの主人であるエックスを狙うエルピスは最大の敵であるはずなのに、まるで守るようにエルピスの前に立つ。

「ゼロ・・・マック様・・・逃げるんだ・・・!」

「・・・悪いわね・・・勝手に体が動くのよ・・・!」

「お前達・・・!」

「あれは・・・ベビーちゃんか!?」

四天王の2人から立ち上がる黒い影・・・そう、2人はベビーエルフに取り付かれ傀儡とされていたのだ。

「ひひ・・・さぁ・・・殺しあいなさい!そして!共倒れになったところで絶望を・・・エックスの死を見せてやる!」

「おのれっ!」

「憶えてなさいよ・・・!」

「・・・来るか!」

「ちっ!こんなことやってる場合じゃねぇってのにYO!」




――戦いが始まる。

















「せぁ!」

「はぁ!」

ぶつかり合う光の剣。
ゼロとハルピュイアのビームサーベルが鍔迫り合い、激しい光を生む。

「うまく避けなさいよ!」

「注意ありがとうよっ!おらぁ!」

ぶつかり合う氷柱と光。
レヴィアタンの氷柱をマックのバスターが砕き、氷の破片が光と共に舞う。

一進一退の攻防。
ベビーエルフによって強化された四天王の2人にゼロとマックは攻め切れない。

「ハルピュイア!」

「ゼロ・・・早く私を・・・オレを倒せ・・・!」

「レヴィアたん・・・はぁはぁ・・・」

「ちょっと!アンタなんか怖いわよ!?」

剣閃が走り、氷が弾け、光が舞う。

終わらない戦闘。



「・・・まったく・・・さっさと終わらないのですかねぇ・・・」

「き・・・さまぁ・・・!」

「エックス様に傷一つでもつけてみろ!私が殺してやるんだから!!」

戦闘を眺めていたエルピスは、エックスの頬を手に持つ剣の腹で打つ。

「エルピス・・・!」

「テメェ・・・!」

憤慨するのは四天王だけではない。
エックスの親友2人もまた、その心に怒りの炎を灯していた。

「あぁ!そうだいいことを思いつきました!そのまま戦いながら眺めてください!エックスの死に様を!」

「待て!」

「やめなさい!」

「・・・っ!」

「おい!やめろ!?」

ゆっくりと剣を構えるエルピス。
だが、自由の利かない四天王と、その2人と戦うゼロとマックはそれを見ながらも戦うことしかできない。

「くく・・・さぁて・・・どこを刺そうかなぁ・・・」

「ぐっ!おのれ・・・!」

「アイツ・・・!」

「・・・ちっ!」

「あぁ・・・もう!仕方ねぇYO!」

そのときだ、レヴィアタンと弾幕を撃ち合っていたマックが、ハルピュイアへと突撃する。
「マック様なにを!?」

「耐えろよ・・・!」

突撃するマックを迎撃するようにハルピュイアが剣を振るう・・・が、その横薙ぎの剣閃をくぐるように地面すれすれの低い姿勢でぶつかる・・・!

「くっ!」

「おらぁ!」

バスターをハルピュイアの胸に突きつけたゼロ距離からの砲撃・・・!

「ぐぁ!?」

「悪いな・・・あっちを優先させてもらう!」

「・・・エックス様を・・・頼みます・・・!」

ハルピュイアを倒したマックはエルピスのその無防備な背中を狙い撃つ!

「・・・だめっ!避けなさい!」

そのマックの後ろから彼を狙う氷柱の弾幕。
だが・・・

「せぁ!」

ゼロの剣閃に全て叩き落され・・・

「・・・先へ進ませてもらう!」

「・・・生意気っ!・・・エックス様を・・・お願い・・・!」

ゼロの振るった光の剣は、レヴィアタンを捉え、彼女を行動不能にする。

一瞬の決着。
全ては相性の結果だった。

ハルピュイアはマックの射撃特化仕様を無視した、戦術度外視の行動に対応できず。
ゼロは、幾度かの戦いによりレヴィアタンの戦闘行動を見切っていた。


「マックバスタァァァァァ!」


そして、障害を越えたマックがエルピスを撃つ!


「ヒィ!?・・・ククク!・・・そうだベビー達よ!母を守るのだ!」

「ちぃ!?防がれた!?」

「・・・くっ!」

マックの放った光弾を防いだのは、2体のベビーエルフ。
四天王がやられた瞬間にその身を離れ、エルピスの守りへと移ったのだ。


「さぁ・・・死ねエックス!そして私は英雄となるのだぁぁぁぁぁぁぁ!」

「やめろ!」

「テメェェェェェ!!」


振り上げられた剣。

寸分違わず、エックスの胸へと向かい・・・穴を穿つ。

「ククク・・・ひひ・・・ひゃーっはっはっは!」

エックスのボディは、エルピスによって穴を穿れた・・・そして。









――闇の胎動。








////////////////////


――あぁ・・・だめだ。

「キタキタキタキタァ!さぁ・・・ダークエルフよ!私に力をぉぉぉぉぉ!」

――もう、抑えることなんて・・・できない。

「ヒヒヒヒ!ハハハハハハハ!」

「・・・黙れよ。」

――その背中を撃つ。

「ぐぁ!?・・・き、さま!」

「テメェには一瞬もやらねぇ・・・」




――あぁ・・・俺は・・・



――守るためじゃない。



――生きるためじゃない。









「死ね。」


――初めて、ただ殺すために、撃つ。







////////////////////


「ダークエルフ!奴を殺せぇぇぇぇ!」

憤慨するエルピスはダークエルフへ檄を飛ばす。

「ここにきて他人だよりかよ!上がお留守だぜ!」

「エルピス!」

マックの叫びに答えるように、空中から襲い掛かるように飛び掛るゼロ。

だが、その剣閃は届かない。

「ちぃ!ダーク、エルフ!」

『・・・ゼロ・・・』

ダークエルフによってゼロの攻撃は防がれた。

「そうだ!殺せ!」

「余所見とは余裕だな、えぇ?おい!」

マックの弾幕。
容赦などない、慈悲などくれない。的確に頭と胸を狙った銃撃。

「ひゃぁ!?」

「根性なしかよ!?」

その攻撃に驚いたエルピスは腰を抜かし、尻餅をつく。
マックの精確な攻撃は、精確すぎた故に外れた。

「ダダダ、ダークエルフ!」

『・・・ぉぉ・・・』

エルピスの声に答えるようにダークエルフが光を増す。

「くっ!」

「見えねぇ!」

激しい光の奔流。

ゼロとマックは光の波に飲まれながらもただ、睨む。

そして、光が晴れた先には・・・








『ハハハハハハ!遂に手に入れた!究極の力をぉぉぉぉぉぉぉ!』


――変異したエルピスの姿。









『もう負けない!ワタシが、ワタシが最強の・・・英雄なのだぁぁぁぁぁ!』

手に入れた力、湧き上る感情。エルピスはその強大な力の奔流に酔いしれる。
ダークエルフと融合を果たしたエルピスが、その力を取り込んだのだ。
だが・・・

『最強!ワタシが!ワタシだけが英雄!』

「そうかい?」

「・・・遅い。」

『え?』

――剣閃、光弾。




『がぁぁぁああぁぁぁ!?』




ゼロの剣閃がエルピスの腕を切り飛ばし、マックのバスターが胸を穿つ。



『バカナ!ワタシは!最強の!究極の!』

「・・・馬鹿かお前。」

『なんだと!?』

「さっきまでお前が生きていたのは、ダークエルフがいたからだ。・・・ロクに戦い方も知らねぇ坊ちゃんに・・・」

「・・・俺達が負けるわけがない。」

『ふざけるな!ふざけるなふざけるな!ダークエルフ!力を・・・モットチカラヲォォォォォ!』



「まだ上があるってか!?」

「・・・くっ!」

2度目の光。

マックは関係ないとばかりにバスターを撃ち続けるが、光の壁に阻まれ、攻撃は通らない。

「クソ!あれがダークエルフの力ってか!?やべぇなおい!」

「・・・来るぞ!」

『ハハハハハハ!』

現れたのは巨大な・・・エルピス。

「なんだありゃ!?もうレプリロイドじゃねぇだろ!?」

その姿はまるで、要塞。
堅牢な体と、幾つもの武装がゼロとマックを狙う。

『さぁ!死になさい!伝説共!』

「エルピス!」

「やってやる!あぁやってやるさ!テメェだけは・・・!」

2人を襲う弾幕の嵐。
エルピスから放たれる光弾の群れは確実に2人の命を狙う。

だが、伊達に伝説などと呼ばれていない。
走り、跳び、壁を登り、時には、光弾を斬り、光弾を撃つ。
しかし、それが限界。
回避することが精一杯で、とても攻撃に回す余力は・・・ない。

『死になさい死になさい!シニシニシニシニ!』

「わかる言葉で喋れよ!」

「・・・っ!」

もはや意識が残っているのかも怪しいほどにエルピスは錯乱していた。
そして・・・それが隙となる。

「見えた!」

ゼロが弾幕の隙間を捉えたのだ。
細く狭い、光弾の隙間・・・だが、確かにエルピスへ届く確かな道。

「・・・ハァ!」

疾風の動き。
襲い来る弾幕の隙間を縫う死の行軍。
だが、ゼロは全ての死を掻い潜り、エルピスへと迫る!

『見え見えデス!ミエミエェェェェェ!』

エルピスもそれを察知したのか、ゼロへと攻撃の的を絞る。

・・・だが、

「・・・悪いな・・・俺は、囮だ。」

「フルチャァァァァジバスタァァァァァ!」

ゼロの突撃は囮。
攻撃の的をゼロに移すことで自由になっていたマックが、エルピスを狙っていた。

放たれた閃光。
真っ直ぐにエルピスの顔を目掛け、進む。


『ヒィ!?』

――その命を奪うために、閃光が走る。




////////////////////




獲った!

このタイミング、避けれねぇ!


『ヒィ!?』


――爆発。


「やったか!?」

「ちょ、ゼロ!それフラグ!」

なんて、バカができるくらいに余裕はある。

・・・エックス、俺は、仇が討てたか・・・?




『ひ・・・ヒヒ・・・ヒャハ・・・!』

「ちっ!」

「クソ!生きてやがったか!?」

晴れる煙。

その先に見えたものは・・・







『ヒャハハハハハ!』

「なっ!?」

「・・・あ?」





『少しは役に立ちますネェ!エックスさんヨォ!』




――奴の巨大な手の中で、粉々に砕けたエックスの姿。




「エルピス!エックスを盾にしたのか!?」

『ヒャハハハハ!お友達を撃つナンテ!なんてヒドイヤツラだ!』




――撃った・・・誰が?




「貴様・・・!」

『ヒヒヒ!』




――俺が・・・エックスを・・・撃った?



















『お~い、マック~そろそろ任務だよー。』


俺が・・・


『ちょ、マック!メットールに囲まれた状態でこっちにこないでーーー!』


俺、が・・・


『さぁ!行こう、マック!』


親友を・・・


『僕達ならやれる・・・そうだろ?・・・マック。』


相棒を・・・











『ありがとう、マック。』

俺が!














『もうこんなゴミ屑には用はナイデス。』



――あっ・・・投げ捨てられて・・・



『サァ!お前達もゴミ屑にナルノデス!』



――光弾に・・・消え、た・・・



















「テメェェェェェェェェェェェェ!!!」



【 OVER DRIVE 】



『なんだぁ!?』

「マックの体が・・・金色に!?」



【 Ⅹ 】



――突撃。



『こっちへ来るナァ!?』



【 Ⅸ 】



――加速。



『ヒィ!?砲撃が・・・砲撃が効いてナイ!?』



【 Ⅷ 】



――跳躍。



『なんだソレハァァァァ!?』



【 Ⅶ 】



――接敵。



『ヒィア!?』



【 Ⅵ 】



――拳打。



『ガァ!?』



【 Ⅴ 】



――拳打。



『や、ヤメ・・・』



【 Ⅳ 】



――拳打。



『ヤメ!?』



【 Ⅲ 】



――拳打。拳打。拳打。



『ガァァアァアァァ!?』



【 Ⅱ 】



――拳打。拳打。拳打。拳打。拳打。拳打。



『が・・・ァ・・・』



【 Ⅰ 】











「テメェは・・・」




拳打拳打拳打拳打拳打拳打拳打拳打拳打拳打拳打拳打拳打拳打拳打拳打拳打拳打拳打拳打拳打拳打拳打拳打拳打・・・!












「殺す!」





【 BREAK 】







「ゼロォォォ!」



――蹴撃!





「これで・・・終わりだ!」


『アアァァァァァァァァァ!?』












――剣閃!













////////////////////



「・・・はぁ・・・はぁ・・・」

なんだ・・・今のは・・・

「マック、お前は・・・」

「・・・はぁ・・・俺にも・・・わかんね・・・はぁ・・・」

そんなことよりも、アイツは、どう、なった。

「・・・よく・・・やって・・・くれ、ました・・・」

「エルピス!」

「・・・なにが・・・だ・・・はぁ・・・」

今更、ごめんなさいか?

「・・・あぁ・・・私は・・・なんてことを・・・」

「・・・お前。」

「・・・ざけん・・・な・・・はぁ・・・はぁ・・・」

許すわけ、ねぇ、だろ。

「・・・あぁ・・・私は・・・私の・・・心の・・・弱さが・・・」

「・・・今更・・・おせぇ・・・」

「・・・そう・・・ですね・・・本当に・・・スマナイ・・・」

「エルピス、お前は・・・」

「・・・声が・・・ずっと声が・・・してたんです・・・」

「声?」

「・・・ダークエルフの元へ・・・今、思えば・・・最初から・・・私はベビーエルフの傀儡だったのでしょう・・・」

「・・・そうか。」

「・・・ちっ・・・結局は・・・そこか・・・」

「・・・お別れ・・・だ・・・ゼロ君・・・さよう、なら・・・シエルさん・・・」





『・・・ぁ・・・ぁあ・・・』

「ダーク、エルフ?」

「なんだ・・・?」

ダークエルフが・・・野郎の上で、輝きを・・・

「・・・あぁ・・・暖かい・・・私は・・・」

「エルピス!」

「・・・光に、なって・・・」

野郎が、消えた。


『彼女は・・・私を・・・救ってくれたようだ・・・』

「サイバーエルフになったのか・・・!?」

『彼女は・・・本当は・・・邪悪な・・・存在ではないのかも・・・知れない・・・』

「・・・」

『ありがとう、ゼロ君・・・マック君・・・さようなら・・・』

「エルピス・・・」

「・・・はぁ・・・くっ・・・結局は・・・ダークエルフが原因・・・てか・・・」

釈然と、しねぇぜ・・・






『おぉ・・・おぉぉぉ・・・』

「っ!ダーク、エルフ・・・!」

「・・・お前が、邪悪とか、邪悪じゃないとか・・・どうでもいい・・・!」

「マック!?」

「原因がお前ってんなら、ここで・・・!」






『待って!マック!』




「エックス!?」

「・・・YO・・・どういう、ことだ。」



『・・・おぉ・・・ゼロ・・・』

ちっ!消えたか!

「っ!・・・行ったか・・・」

『・・・2人とも・・・ごめん・・・』

「・・・そりゃ・・・俺の台詞だ・・・エックス、スマネェ・・・」

『・・・ううん。僕は、僕のために2人が怒ってくれた・・・それだけで、十分だよ。』

「エックス。」

『彼女は、ダークエルフは元々は邪悪な存在じゃなかったんだ。』

「どういう、ことだ?」

「・・・昔は、違ったのかYO・・・」

あぁ・・・やべぇ・・・意識が、霞む。

『100年前の戦争・・・そこで、彼女は呪いを受けたんだ。』

「呪い?」

「・・・はぁ・・はぁ・・・また・・・オカルトな・・・」

きっついな・・・

『ドクターバイル、邪悪な科学者によってね・・・』

「そいつが、根本か。」

「・・・バイル・・・ね・・・」

『気をつけて・・・ダークエルフの復活によって、邪悪が、蘇る。』

「エックス!」

『・・・僕も、覚悟を決めるよ。』

「待て、エックス!」

「・・・YO・・・また、な・・・」

『・・・またね、ゼロ・・・マック・・・』



・・・行ったか・・・



「ダーク、エルフ・・・俺は、あいつを・・・知っている?」



・・・限界、だ・・・ZE・・・



「マック!?」

「先輩、あとよろしく・・・」








<ブツン>







////////////////////




『そうか、エックス様は・・・』

『あぁ・・・すまない。』

『いや、あの方はサイバーエルフとして生きている。それを知っただけでも嬉しいことだ。』

『そうね、また会える。それだけで十分よ・・・それより、そいつ大丈夫なの?』

『あぁ・・・気を失っているだけだ。』

『そう。・・・べ、別に心配してるわけじゃないのよ!そいつを殺すのは私なんだからっ!』

『・・・ゼロ、エックス様に免じてここは見逃してやる。』

『・・・』

『だが、次に会ったときは・・・』

『わかっている。決着をつけよう。』

『あぁ・・・行け。ここではお前達は反逆者だ。』

『・・・マックに伝えといて、首洗って待ってなさいってね。』

『・・・あぁ、こいつも喜ぶ。』

『なんで喜ぶのよ!・・・はぁ・・・最後まで天然か・・・』

『・・・よくわからんが・・・行くぞ。』

『あぁ・・・エックス様のために怒ってくれたこと、感謝する。』

『・・・親友、だからな。』


















『さぁ・・・帰るぞ、マック。』

『本当に、世話の焼ける後輩だな・・・』

『・・・帰ったら、アルエットと遊ぶんだろ?』

『・・・さっさと、起きて、自分で行け。』







【<ブツッ>・・・ゼロ・・・ゼロ・・・聞こえる!?・・・】

『・・・シエルか?どうした?』

【・・・あ!繋がった!ゼロ聞いて!】

『なにが、あった。』











【空から・・・宇宙から何かが落ちてきたの!】

『・・・なに?』


















『エックス、これが邪悪の復活か・・・?』






――戦いは終わらない。










~あとがき~

お読みいただきありがとうございます!

はい、ゼロ2終了です。
なんかゼロ2ってほかのゼロシリーズに比べるとエンディングがショボ・・・おっと誰か来た様だ。


遂にマックにチート装備か?
と思った方は、X3の8ボスを思い出してください。
虎とかカブトムシとかモグラとかが、金色になったり虹色になったりして無敵特攻してきましたよね?
マックの金色もあれです。

一応マックは、ゲームに出てきた武装しか使わないようにしていますので、オリジナルチートはありません。

ネタ短編は別ですが。


アルエットをメインに出したら、誰だよこれ!って言われるかと思いましたが、意外と好評で嬉しいです。

でも、アルエット出したらZXって単語がいっぱい出てきた。何故?

申し訳ありませんが、私、X1とX3とゼロシリーズ止まりなので、その先は知らないのです。

んで、ちょこっと調べたら・・・ふむふむZXとはゼロシリーズの未来ぽいですね。
そして、主人公はエックスとかゼロとかに変身すると。
でもって、感想を伺う限り、アルエットも出ると。
ん~アルエットが出るって記述は見当たらなかったのですが、皆さんが言うにはでるのかな?


とりあえず、ゼロより未来、変身もの、アルエットという単語で以下妄想。







「モデルM・・・ロックオン!」

「ふふ・・・あはっ・・・アハハハ!」

「おにいちゃんが・・・私を・・・包んでくれる・・・ふふ・・・」

「お前達みたいな有象無象が私に勝てるわけがないでしょう・・・?」

「だって・・・おにいちゃんが私を守ってくれるから!」

「おにいちゃんが!私を全てから!そう、全てから守ってくれる!」

「そうよ!だから私は・・・アハハハハハ!」





これはヒドイ(´∀`;)

授業日を英訳したらヤンデレスイッチ入っちまったじゃねぇか・・・どうしてくれる。


では、次はゼロ3です。もしくはロールちゃんゼロ編。
ではでは~。



[28394] 【病み】憑依異伝1【超注意】
Name: socom2◆c4c431dd ID:a13ac3ff
Date: 2011/06/17 00:41
「まったく、お前はいつもいつも・・・」

「・・・」

今、私はシグマ隊長に怒られている。

「いいか、ハンターの仕事は、一瞬の油断が命取りになる。」

「・・・はい。」

任務、イレギュラーハンターとしての仕事に失敗したからだ。

「それはお前の命だけではなく、仲間の命をも危険にさらすのだ。」

「・・・」

隊長の言う通り、それは正しいと思う。

「聞いているのか!」

でも、もう30分もお説教だよ?しかも同じことばっかり。

「いいか、これはお前のことを思ってだな・・・」

あ、またループした。

「ハンターの仕事はだな・・・!」

そもそも、今回の任務は確かに失敗しちゃったけど、こんなに怒ることなの?

「お前の命だけでなく・・・!」

だって、今回の仕事は逃げ出したメットール・モデルペットの捕獲だよ?

「仲間の命をも・・・!」

確かに力加減間違えて、握り潰しちゃったけど・・・こんなに怒らなくてもいいじゃない。


「聞いているのか!ロール!」

「はぁい・・・聞いてます・・・」

私の名はロール。イレギュラーハンター、ロール。戦闘用女性型レプリロイドだよ。













////////////////////////////


「いいか!これはお前のことを思ってだな・・・!」

「隊長。」

いまだ続くお説教の最中に、凛とした声が、シグマ隊長を呼んだ。

「おぉ、ゼロか。なんだ。」

「そろそろお時間です。他の部隊との通信会議が始まりますよ。」

「む、そうだったか。」

お説教を止めてくれたのは、サラサラと輝く黄金の縦ロールを持つ女性、ゼロ。
私の一番の友達にして、お姉さんみたいな人だ。

「ええ、あなたがこの時間を指定したのです。遅れるのはまずくありません?」

「む、そうだな。」

彼女は特A級の凄腕ハンター。
しかも、昇格最短記録保持者。
私もいつか、ゼロみたいなカッコイイ女性になるのが夢なんだ。


・・・まぁ、現実は厳しいものだけど。

「ロール。今回はここまでだ。もういっていいぞ。」

「はぁーい・・・はふぅ・・・」

やっと終わったぁー。

「と、ところでゼロ。今度一緒に食事でも・・・」

「さぁ、ロール。隊長からのお言葉は終わりだけれども、私からも言いたいことがあるわ。トレーニングルームで鍛え直してあげる。」

「えぇー!今日は約束が・・・」

「ゼ、ゼロ、どうだ?今度だな・・・」

「あらあら。任務を失敗したのはどこの子だったかしら?」

「うぅ・・・わかりましたー。」

「んんっ!あーどうだ?こん・・・」

「素直でよろしい。さぁ、いきましょう。」

「はぁーい。」


ゼロと一緒に司令室から出る。
隊長の呼ぶ声が聞こえた気がしないでもないけど、気のせい。きっとノイズだね。














////////////////////////////

「はい、これ。」

「わぁ!ありがとう!」

ゼロからE缶を手渡された。やっぱり仕事のあとはこれよね!

「ングング・・・はふぅ・・・やっと一息つけるよ・・・」

「ふふ、お疲れ様。」

ゼロと二人でベンチに座って休憩中。
チラリ、とゼロを横目に盗み見る。

さらさらの金髪。縦ロールが似合う女性ってすごいなぁ・・・お姫様みたい。
私も金髪だけど、なんの変哲もないポニーテールだし。
もうちょっと髪型にこだわろうかなぁ。
そうすれば、彼ももっと見てくれるかもしれないし・・・

ゼロはカッコイイなぁ・・・
まさにできる女性!って感じで。
・・・胸も大きいし。

べ、別に私は小さくないよっ。
私はそう、美乳!時代は美乳なんだから!


「もう、聞いてるの?ロール。」

「はぅっ!?・・・えと、ごめんなさい・・・アハハ・・・」

「はぁ・・・シグマじゃないけど、少しお説教が必要かしら?」

「えぇー!もういいよ!十分!」

「はいはい・・・」

「あ、そうだ!ありがとうねゼロ。」

「うん?」

「隊長の長話から助けてくれて、だよ。本当にありがとっ!」

「あぁ、いいのよ。私もあなたのおかげで助かってるから。」

「ホント?」

私は、ゼロを助けられてるの?
いつもいつも、助けてもらってばかりで、何も返せていないんじゃ・・・

「ホント。あなたがいなかったら、そりゃもう大変だわ。」

「ホント?私がいなかったら大変?」

「えぇ、あなたがいないと困るわ。いつも助けてもらってるから。」

そっか。よくわからないけど、私もゼロに恩返しできてるんだ。
よかった。

「えへへ・・・そっか・・・もっと感謝してもいいんだよ?」

「こら、調子に乗らないっ。まったくこの子は・・・」

ゼロに頭を撫でられる。
優しく髪を梳くように撫でられて、安心する。
こういうときは、ゼロはお姉ちゃんって感じがして好きだ。








////////////////////////////



「でね、彼ったら、土下座して頼むのよ・・・ふふ。」

「へぇ、そうなの?ゼロにもお金借りてたんだ。」

「そ。全く、いつまでたっても変わらないわねぇ。」

「うんうん!」

ゼロと二人で共通の話題に華を咲かせる。
私達の共通の友達。
イレギュラーハンター仲間の彼のことで。




「・・・ふんふ~ん♪」

噂をすればというやつだ。
通路の向こうから彼が来た。


「あ、こっちこっちー!こっちだよマック!」

「ん?おー、ロールとゼロじゃないか。何してるんだYO!」

「えへへ・・・こんにちわ。」

「HELLO!どったの?改まってYO!」

「こんにちわ。相変わらずね、マック。」

紫のボディ、顔を覆う赤いバイザー。
彼の名はマック。

私のもう一人の親友にして・・・大事な人。
私に『心』を教えてくれた、大事な友人。

出会ってから数ヶ月だけれども、彼のいない生活なんて考えられない。

そのぐらいに、彼との出会いは、縁は大事なものだ。


――彼との出会い、今でも鮮明に覚えている。













////////////////////////////



「・・・」

暗いトレーニングルームの隅っこでじっと体育座り。

「・・・ヒック・・・」

ポロポロと涙が落ちる。

「う・・・うぅ・・・ひっく・・・」

そこかしこから聞こえる悪口に耐えられなくて、また逃げ出した。

『役立たず』『弱虫』『臆病者』『万年B級』

言われた悪口に言い返せなくて、そんな自分が悔しくて。



――逃げることしかできなかった。



「ひっく・・・ぅ・・・もぅ・・・やだぁ・・・」

私、なんでハンターなんだろう。
なんで、戦ってるんだろう。

なんで、なんで、なんで・・・






トスン、と軽い音。
誰かが私の横に座ったようだ。

「・・・」

「・・・」

誰だろう。
怖くて、顔を膝で隠すように下を向く。

「・・・」

「・・・」

ただ静か。
隣に来た誰かは、私に何かを言うわけでもなく、ただ静かに座っている。

「・・・」

「・・・」

誰、なのかな。
ゼロじゃないのはわかる。
ゼロだったら声を掛けてくるから。

「・・・」

「・・・」

私に、近づく人なんて、ゼロくらいしかいないのに。
誰だろう。・・・少し、興味が出てきた。





――ウィィーーン・・・プシュ・・・カシャ・・・

(ビクッ!)

いきなり聞こえてきた音に肩が跳ね上がってしまった。

な、なんの音だろう。

――キュルルル・・・

何?何の音?き、気になるよぅ・・・






――YOUは・・・

「北斗!?」

「正解。じゃこれは?」

――そっらをじーゆうにー・・・

「タヌキ!」

「YES!続いての問題!」

――愛とー勇気だけーが・・・

「えっと、えっと、アンパン!」

「ハッハー!ノってきたZE!次!」

――竜巻相手じゃ意味が・・・

「・・・トラウマ。」

「・・・俺も。」


















「はぁはぁ・・・どう!」

「はぁはぁ・・・やるじゃねぇかお嬢さん!」

「ふふん!私の勝ちね!」

「あぁ、俺の負けだZE・・・」

がっくりと地面に倒れこむ紫のレプリロイド。
辛く、激しい戦いだった。
でも、最後は私が勝利した。
目の前にいる彼に勝ったのだ・・・!




と、いうか・・・




「誰?」

「俺の名前は『マック』!今日からこの部隊に配属されたB級ハンターだ!ヨロシク!」
「え?あ、うん。」

にこやかに握手を求められて、つい応じてしまった。

「ハッハー!ヨロシクなお嬢さん!」

「あ、えと、よ、よろしく?」

激しく上下へ握手した手を振るマック。
あまりに明るい様子に、先ほどまでの暗い気持ちが、涙も全部、吹き飛んでしまった。

「ところで、君の名前も教えてくれYO!」

「あ、うん。私はロール。私もB級ハンターなんだ。よろしくね、マック!」







――この日、私は2人目の親友ができた。









二人で訓練をつんだ。

「きゃぁぁぁぁぁ!こっちこないで虫ーーー!」

「ぎゃあぁぁぁぁ!ロール!ロールさん!ロール様!無差別バスター連射はやめてぇぇぇぇ!」







お互いのことを話し合った。

「ね、ね。最初に会ったときのあれ、何?」

「あれか!あれは俺に隠された秘密機能No4!『懐メロイントロドン』だZE!」

「なんのためにあるのそれ!?」







二人で馬鹿にされたこともあったけど、笑い飛ばしてやった。

「なにがB級ダメダメコンビだYO!」

「私達はB級へなちょこコンビなんだから!」

「・・・言っててつらくない?」

「・・・ちょっと。」







彼はいつも明るくて、

「HEY!ロール気にすんなYO!そんなことよりE缶飲もうZE!」

「うん!」

おっちょこちょいなところもあるけど、

「・・・財布落とした・・・ロール様!お金貸してください!」

「もぅ・・・仕方ないなぁ・・・貸し1、だよ?」

その明るさに、優しさに、私は励まされて、

「行こうぜ、ロール。」

「待ってよ!マックー!」

マックと二人なら、どこまでも、どこへだって行ける。
そんな気がしたんだ。
















////////////////////////////


トレーニングルーム。

今日もマックと二人で訓練をしている。

「・・・はぁ・・・」

「HEY!どったのよロール。」

メットールにフルチャージバスターを撃って、反射弾にボロボロにされたマックがこっちに来た。

「・・・大丈夫?」

「ハッハー!泣きそう!」

だよね。むしろ泣いてるよね。涙はないけど泣いてるよね。

「メットールのヘルメットの硬さは異常。」

「よしよし。あれには触れちゃいけないよ?」

背伸びしてマックの頭を撫でる。
あ、逆に凹んだ。

「慰めはよしてくれ!俺はメットールにすら劣る残念な奴なんだYO!」

「大丈夫だよ。ゼロだって昔メットールに囲まれて泣きそうだったから。」

あれはビックリした。周りをズラリとメットールに囲まれたゼロ。
バスターを撃っても悉く反射され、泣きそうになってた。

「マジで?」

「うん。」

「だと思ったぜ。さすがメットール。この世界最硬の盾を持つメカニロイド。」

工事支援用ミニユニットだけどね。

「で、だ。どうした?」

「え?」

「悩みぐらい聞けるさ。溜め込むよりも吐き出したほうが楽だぜ。な?」

「うん・・・聞いてくれる?」
















「私ね、昔の記憶がないんだ・・・」

「・・・」

「誰が私を造ったのか、何のために造られたのか。」

「・・・」

「気づいたら、ここにいて。ハンターに成れって言われて。」

「・・・」

「戦って、戦って、戦って・・・」

「・・・」

「でも、ね。私、本当は嫌なんだ。」

「・・・」

「バスターを撃つのが嫌で、誰かを傷つけるのが嫌で・・・」

「・・・」

「ハンターである自分が嫌で・・・」

「・・・」

「私、わたし・・・なんでハンターなのかな・・・」

マックは静かに私の話を聴いてくれる。
私の我侭を。
私だって、これが我侭だとわかっている。
私は、戦闘用レプリロイド。戦うために生まれた。
だから、戦いが嫌なんて、言ってはいけない。
それは自分自身を否定することだ。
それに、ハンターの皆を貶す、酷い言葉だからだ。


「・・・なぁーんてねっ!ちょっとブルーになっただけだから気にしないで・・・」

「いいんじゃね?」

「え?」

「いや、嫌でいいんじゃねぇの?」

「何を・・・!」

そんな、簡単に言わないでよ!
私は、本気で悩んでいるのに!
ずっとずっと迷ってきたのに!

「嫌なんだろう?それがお前の思いなんだろう?だったら、俺はそれを否定しないさ。」
「・・・」

「お前は優しいやつだ。戦いって行為が『心』の底から嫌なんだろ?」

「・・・うん。」

「だったら、戦わなくていいさ。」

「でも!私は戦闘用で・・・!」

「関係ねーよ。戦闘用だから戦場にいなきゃいけないなんて、誰が決めたよ?」

「・・・!」

「お前さ、動物好きだろ?この前、街中で公園で野良猫と遊んでるのみてさ、そう思った。」

「はぅっ・・・見てたの?」

は、恥ずかしい。

「いい笑顔だった。心底楽しんでる、そんな笑顔だった。」

「ぅ・・・恥ずかしい・・・」

「好きなもんがあって、嫌いなもんがある。それはお前だけの『心』だ。誰にだって否定はできないさ。」

「・・・」

そう、かな。
でも、皆、私に戦えって言うんだ。

「誰かなんて関係ない。お前はお前のやりたいことをやればいい。」

「・・・ホント?」

本当に?
私は、本当に嫌なことをやらなくてもいいの?

「おう。だってお前の人生・・・あー、レプリロイド生?はお前だけのもんだ。誰かが強要なんてできねーよ。」

「でも・・・私・・・」

「あー、お前も大概悩むねぇ・・・」

「だって私!今まで!自分で好きなことなんて選べなかった!」

「またウジウジと・・・よし、魔法の言葉を教えてやろう。」

「魔法の言葉?」

マックは私に頭に手を置いて、ガシガシと少し乱暴に撫でた。
ゼロとは違う大きな手。
暖かい手。
そして、優しい言葉で言ってくれる。






「グッドラック。幸運を君に。今までがダメでも、これからはいいことがあるってな。」






マックが、私の明日が幸せであるようにと言ってくれる。
でも、でも・・・!

「でも、皆、皆が、誰かが戦えって、私に戦えって言うの!」

「なら、俺がそんなやつら黙らせてやる。」

「・・・え?」

「お前が生きる、お前の道の邪魔をする奴等から、俺がお前を、ロールを守ってやる。」
「・・・どうして・・・どうして、そんなこと、言ってくれるの・・・?」

「あん?決まってるだろ。」











――相棒だからな。





















////////////////////////////


あれから数ヶ月たった今も、私はハンターでいる。
別に、戦いが好きになったわけじゃない。

ただ、彼の傍にいたいから。
あの明るくて、優しくて、おっちょこちょいな彼の傍にいたい。

それだけで、私は戦える。




「いったぜ!ロール!」

「まかせて!マック!」


大丈夫、私は、戦える。
貴方がいるから。

どんなに辛くても、隣に貴方がいる。
それだけだ私は・・・













////////////////////////////



「シグマ隊長が、反乱を起こした!?」

「・・・事実よ。」

イレギュラーハンター本部で、ゼロがシグマ隊長が裏切ったと言う。
とても、信じられない。

「・・・ほとんどのハンターがシグマに付いて行ったわ。」

「ウソ!?」

「彼らは、優秀なレプリロイドが劣等な人間の下にいることが我慢できない、そう表明しているわ。」

「そんな・・・」

何故、そんなことを。
たしかに私達は人のために生きているけど・・・それは決して下にいるわけじゃないのに。
人間だって、私達の存在がなくてはならないと知っている。
レプリロイドだって、人がいなければ生まれなかった。
互いが互いを支えているのに。

それに、信じられない。

「あの、シグマ隊長がそんなことを言うなんて・・・」

「どうやらマジのようだぜ?」

「「マック!」」

「YO!お集まりのようだな?」

「もう、何処にいたのかしら?例え猫の手でも必要だって言うのに・・・ねぇ?」

「ちょ、ゼロ先輩。俺は猫の手ですかYO!」

「ふふ・・・いないのなら猫の手以下ね。」

「今日も切れ味抜群ですね!・・・と、漫才はさておき、これを見てくれ。」

もぅ、マックはいつも変わらないね。
マックが持ってきたのはデータチップ。
そのデータを司令部のスクリーンへ投影する。


「「これは!?」」

映ったのは、シグマについていったハンター達の居場所。
彼らが占領している施設の情報と、進入経路だった。

「発電施設に、工場、エネルギー管理塔・・・見事にライフラインを押さえているわね。」

「うん・・・本当に、人間達を裏切ったの?・・・皆・・・」

「ちょいやばいぜ?特に電気ってのが奪われたのが一番いてぇ。」

マックの言う通り。
この社会において、電気がなければ生活すらも危うい。
電気がないだけで、人の暮らしは苦痛を受けてしまう・・・

「で、どうするよゼロ先輩。」

「・・・もちろん奪還するわ。」

「作戦は?」

「少数精鋭。占領してる元ハンターを直接叩く。そうすれば、あとは烏合の衆。そうでしょ?」


「了解!じゃ、俺は情報収集にいってくるYO!」

マックはそう言うと、一目散に部屋を出て行こうとして、

「待ちなさい、マック。」

ゼロに首を押さえられた。

「ゼロ?」

「げふっ!先輩!いきなり掴まないでYO!」

「ロール、マック。貴方達を突入班に任命するわ。」

「ちょ!?」

「え?」

突入班?
私が?

「少数精鋭って言ったでしょう?」

「私が?」

「無理無理無理無理!」

マックの言う通りだ。
私達はB級。
特A級に適うわけが・・・

「残ったハンターで私を除けば、間違いなく貴方達がトップガンよ。」

「え?」

「ハハッ。ワロス。」

あ、教鞭で頭叩かれた。

「・・・私は、唯一残った特Aだから・・・人間側の司令部からここの指揮を執れと連絡があったの。」

「なるほど。」

「私は表立ってシグマ軍と対立するわ。」

「・・・陽動?」

「正解よロール。シグマ軍の目をこっちに釘付けにする。貴方達は、後ろから奴等を攻撃して。」

「でも・・・」

自信がない。

「ロール。自信を持って。今の貴女なら、特Aとだって対等にやれるわ。」

「・・・やれるかな。」

「えぇ。私が保証する。貴女は、強くなったわ・・・」

「ゼロ・・・」

そう、かな。
少し、自信がない。

「たくっ・・・しょうがねぇな・・・」

マック?

「このままじゃ爺さんもあぶねーし・・・やってやるさ。」

マックはやる気のようだ。
なら・・・

「行こうマック。私、貴方とならやれる。」

マックがいるなら、自信が沸いてくる。

「ありがとう・・・二人とも。」

「ううん。私が、『私達』が決めたことだから。」

「そう、そうね。出発は明日よ。準備と休養を怠らないようにね。」

「うん!」

「りょーかい。」









////////////////////////////

出発前日の夜。
私はマックを探して、本部を歩き回っていた。
発電所を奪われ、本部の自家発電のみになった現状では明かりが最小限で本部は薄暗い。

マックはどこだろう?

明日の出発の前に伝えたいことがあるのに。

ここかな?

レストルーム。
要は休憩所。
よく私とマック、ゼロの3人で利用した。

「マックー、いるー?」

入り口から顔を覗かせて叫ぶも、反応無し。

「あれ?」

もっと奥。ここからじゃ死角になっている場所に明かりがついている。

「マック・・・?」

なんとなく、忍び足で近づくと、奥から声が聞こえてきた。

「ごめんなさい、マック。危険な役を押し付けて。」

「いいさ。必要なことだ。アンタが俺たちなら大丈夫だって判断したんだろ?」

マックと・・・ゼロ?
なんで、こんな夜遅くの時間に二人でこんな場所に?

「で、本題は?」

「・・・え?」

「呼んだのは先輩だろ?用があったんでないの?」

「そう、そうね。」

ゼロの声は、今まで聞いたことがないくらいに沈んでいた。
いつも優しくて、お姉さんみたいなゼロがこんな声を出すなんて信じられない。

「・・・怖いの。」

「・・・」

え!?ゼロが、あのゼロが怖いって・・・!?

「司令になれって命令されたとき、とても怖くなったの。」

「・・・」

「私で、大丈夫なのかって・・・私なんかがやれるのかって・・・」

「・・・」

「滑稽でしょう?いつも澄ました顔して、いつも恐怖に苛まれてたなんて・・・」

「・・・」

「ふふ・・・ごめんんさい、こんなこと急に言って。笑ってくれていいわ・・・」

「わらわねぇよ。」

「・・・え?」

「何をビビッてるのか俺にはわからないけどよ、俺はアンタが司令だから明日死地へ行けるんだ。」

「・・・マック。」

「アンタが後ろにいる。アンタが俺の後ろを守ってくれる。そう思ったから引き受けたんだ。」

「・・・マック・・・」

「だからさ、あー、なんつーの?大丈夫だって。アンタならやれる。」

「・・・本当に?」

「おう!絶対大丈夫だって!アンタが俺を守ってくれるように、俺がアンタを守るからYO!」

「なに、それ・・・ふふっ。本当・・・いつだってマックはマックね。」

「俺が俺じゃなかったら誰だYO!」

「意味わからないわ・・・ね、マック。」

「ん?」

「お願い、ぎゅってして。」

「・・・それは命令ですか?司令。」

「そ、命令よ・・・バカ・・・」

「イエスマム!」

「あ・・・もっと強く・・・震えが止まるように・・・」







ウソだ。ウソだよね。マックが、ゼロと、なんて・・・

そっと、見つからないように奥を覗くと、マックの腕の中に、ゼロが・・・!


















////////////////////////////


朝が来た。

出発の朝が。

「さぁーて、まずは発電所を奪還だな。」

マックはいつもと変わらない。
やっぱり、あれはウソだったんだ。
うん、ウソだよね。マックが、ゼロなんかと。
ウソだ。ウソだよ。そうだ、ウソだ。



「おーい、ロール?どったの?」

「っ!?な、なんでもない!」

「そっか?ま、俺も正直ビビッてるからな。安心しろYO!」

「どこに安心すればいいの、それ?」

マックは、いつだってマックだ。

だから、私は・・・

「ねぇ、マック。」

「ん?」

「お願いがあるの。」

「おー、なんだ?」

「この戦いが終わったらね、話を聞いて欲しいの。」

「あ?」

「大事な話。貴方に、貴方だけに伝えたい、私の思い。」

「ちょ!」

「約束だよ、絶対聞いてね。」

うん、約束もできた。
よし、あとはさっさとシグマ軍を駆逐して、マックに伝えなくちゃ!









「それフラグー!ここでいっちゃらめぇぇぇぇぇぇぇ!」

どうしたの、マック?
貴方が何をいっているのかわからないよ。











////////////////////////////


シグマ軍。

かつての仲間達との戦いはとても激しく、厳しい、命を掛けた戦いだった。

たくさん傷ついて、たくさん傷つけた。

でも、私は、戦える。

マックがいるから。








「来たかい、マック、ロール!」

「「スパークマンドリラー!」」

「はっ!かつての同僚とやりあうことになるなんてねぇ・・・」

「投降して!お願い!」

「悪いけど、お断りだよ、ロール。アタシにだって意地がある。」

「そんなっ!」

「ロール、やめろ。・・・マンドリラー、最後に言いたい事がある。」

「なんだい、マック?」

「俺は、ずっとお前を見ていた。お前がドラミングするたびに揺れる、豊満なお前の母性を。」

「マック・・・実は、アタシもお前のことが・・・」

「ロールバスター!ロールバスター!ロールバスター!ロールバスター!ロールバスター!」

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ!」

「マンドリラァァァァ!」

「危なかったね、マック。危うく罠にはまる所だったよ。さ、次に行きましょ。」

「サーイエッサー!」





かつての仲間に銃を向けるなんて辛かったけど、でも戦える。
マックが隣にいるから。


「きたなー、マック、ロール!」

「「アイシーペンギーコ!」」

「言っとくけど、ボクは一緒にご飯を食べた仲だからって手加減しないヨ!」

「投降して!お願い!」

「ゴメンネ、ロール。ボクにだってプライドがあるのサ!」

「そんなっ!」

「ロール、やめろ。・・・ペンギーコ、最後に言いたい事がある。」

「なになに、マック?」

「俺は、ずっとお前を見ていた。お前のペンギンのパジャマを押し上げて自己主張するお前の母性を・・・」

「マック・・・実は、ボクもキミのことが・・・」

「ロールバスター!ロールバスター!ロールバスター!ロールバスター!ロールバスター!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

「ペンギーコォォォォォォ!」

「危なかったね、マック。危うく罠にはまる所だったよ。さ、次に行きましょ。」

「サーイエッサー!」



幾つもの戦場を越えて、何体もの屍を越えて進む。
とても苦しい。とても辛い。とても嫌だ。

でも、戦える。私は、マックのためなら誰とだって、戦える・・・!




















////////////////////////////


「遂に来たな。」

「うん、来たね。」

シグマの居城。
秘密工場。


マックと二人で、警戒しながらも進む。



「っ!?ロール!危ない!」

「え!?」

マックに体当たりで弾き飛ばされながら見た、光景は・・・


「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


捕獲用電磁ネットに捕まったマックの姿。


「マック!?」

マックはそのまま、電磁ネットに身を囚われ、施設の奥へと連れて行かれる。
ネットの先に鎖が付いており、奥から巻き上げられている!?

「マックーーーー!」

追い掛けて入った部屋は、とても広かった。

「マック!大丈夫!?」

部屋の中央。マックは、捕獲カプセルの中にいた。

「マック!」

「ぎゃーぎゃーうるせぇな。ロール。」

「っ!?」

マックの後ろ、カプセルのさらに奥から巨大な影が出てきた。

「あ、貴女は・・・VAVA!?」

「よぉ、ロール。久しぶりだな。・・・だが、お前に興味はねぇ。」

紫の長い髪、紫の瞳、紫のボディ、紫の口紅。
全ての色を紫で構成した彼女は、紫のライドアーマーに乗ってマックのいるカプセルへと近づく。

「あぁ・・・やっと、やっとだ・・・マック、ようやくアンタを手に入れた・・・」

「・・・!?」

VAVAはマックを愛おしそうに見つめ、ライドアーマーから降り、カプセルへ頬ずりする。

「なぁ・・・見てくれよ・・・この髪、この目、この体・・・アンタに合わせたんだ・・・似合うだろ?」

「・・・っ!」

やめて・・・!
マックに近づかないで・・・!

「ずっと、ずっとアンタが欲しかったんだ・・・」

その汚い体で、マックに頬ずりなんかしないで・・・!

「どいつもこいつも、皆オレのことを狂っているって言いやがるんだ・・・でも、アンタは違う・・・アンタだけが今のオレを肯定してくれたんだ・・・」

やめて・・・
やめて・・・!

「だからさ・・・この世界なんてどうだっていい。アンタが、アンタだけが欲しいんだよ、マック・・・」

「やめて!マックから離れて!」

バスターでその顔を吹き飛ばしてやる!

「っ!・・・やってくれるじゃねぇか、ロール。」

ライドアーマーで防がれた!?
自動操縦・・・!?

「一応念のため、エネルギー反応にあわせて前に出るように設定しておいてよかったぜ。」

「浅知恵を・・・!」

「邪魔すんなよロールゥゥゥ!オレとマックの世界に入ってくんなよぉぉぉぉ!」

「ウルサイ!マックを返して!」


















「は、はは・・・ハハハハハ!ざまぁねぇなロール!」

「う・・・うぅ・・・!」

ライドアーマーにバスターが効かない・・・!
致命傷はまだないけど、このままじゃジリ貧だわ!

「スクラップになりなぁ!」

「っ!」

ライドアーマーの巨大な拳が迫ってくる・・・!

・・・マック!






ズドンと、重い爆発音が響いた。

「ぐぁ!?・・・誰だ!?」

「そこ・・・<ジジッ>・・・まで・・・<ジッ>・・・だ・・・YO・・・」

「マック!」

マック、マックが助けてくれた!
でも、その体のあちこちから火花を飛ばし、今にも倒れそう・・・!

「マック!?どうやってカプセルからでやがった!?あれの外壁はこのアーマー並みの強度だぞ!」

「ハッ・・・なめん・・・な・・・YO・・・あの程度・・・メットール・・・以下だ・・・ZE・・・?」

「バスターのリミットをはずしやがったか!?」

そんな!?
そんなことしたら、オーバーロードしたエネルギーが、自分の体を焼くことになるわ!

「なんで、なんで邪魔するんだ!マック!オレは、オレ達の世界のために!」

「わりぃけど・・・<バチッ>・・・興味・・・ねぇ・・・それに・・・」

「マック!無理しないで!」

「俺は・・・ロールの・・・<バチバチッ>・・・相棒・・・なんだ、YO!」

マックがバスターを構えて発射体勢をとる・・・っ!?
あの輝きは、フルチャージ!?

「やめて!その状態でフルチャージなんて撃ったら・・・!」

「やめろ!マック、無理だ!オレのライドアーマーを舐めるな!そんなので・・・!」












「はっ・・・マックバスター・・・なめんなよ?」


瞬間、閃光。

そして、爆発。





















バチバチと、何かが燃える音がする。

ようやく、晴れた爆発の煙から、この場の全容が見えてきた。
マックのバスターはVAVAごと工場の外壁を吹き飛ばしたようだ。
強固なシグマの居城がスクラップ置き場のようにボロボロになっている。

マックのバスターの威力は絶大だった。
だが、代償は大きい。





――右腕はなくなり、反動を支えていた下半身は吹き飛び、エネルギーは付きかけている。



マックの頭を私の膝の上に乗せ、覗き込む。
だが、何の反応もない。
マックは静かに眠っている。

「マック・・・マック・・・マック・・・」

「・・・YO・・・どうした・・・ロール・・・」

「マック!意識が意識が戻ったのね!?」

「・・・泣いているのか・・・?」

「バカ!バカバカバカバカ!」

「・・・ひでぇな・・・」

「私、私、が、どれだけ、心配したと・・・!」

「・・・ごめん、悪かった、すまねぇ、許せ・・・」

「いいよ・・・そんなに謝らなくても・・・帰ろう、マック。すぐに修理しなくちゃ。」
「あぁ・・・そうだな。」

マックは残った左腕で私の顔を優しく撫で、涙を拭ってくれる。

「・・・女の・・・涙は・・・簡単に・・・見せるなYO・・・」

「・・・」

「・・・そういう・・・のは・・・好きな奴の・・・前でするために・・・とっとけ・・・」

「・・・バカ・・・なら、今が涙するときだよ・・・」

「・・・そう<ズドン!>」





え?


マックの、頭、首から、上が消え、た?












「・・・クッソ・・・ボロボロだ、ぜ・・・」

ヒュルルと、風を切るように飛んでいった、マックの首は、ボロボロの女の手に収まる。



「・・・けどよぉ・・・手に入れた・・・!」

私の膝の上には、首を失った上半身だけ。




「あはっ!手に入れた!手に入れたぁぁぁ!」

・・・返せ。




「マックのメインメモリ!」

・・・返せ。














「これがあれば、アンタをオレの色に染め上げてやれる!」























【 ROLL XEPHON ALL OPEN 】


――それは。


【 ULTIMATE MODE 】


――マックは。









【 IGNITION 】


――私の、ものだ。















「返せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」






















////////////////////////////


マック、ねぇマック。

私、やったよ。


「こ、れは・・・マック!?そんな・・!」


だから、褒めてよ。

いつもみたいに、頭を撫でてよ。


「・・・ロール!ロール!これは、どういうこと!?」


どうして?どうして黙ってるの?

約束したじゃない。

この戦いが終わったら、伝えたいことがあるって。


「ふん・・・騒がしいと思えば、お前達か、ゼロ、ロール。」

「シグマ・・・!」


貴方が、好き。

ずっと好きだったの。

変かな?

レプリロイドが恋するなんて。


「まさか、ロールにここまでの力があったとはな。」

「ロール!しっかりしなさい!」


でも、マックならきっと受け入れてくれる。

そうでしょ?

マックは、私の『心』を否定しないから。


「ゼロ、ロール。私と共に来い。」

「何を!?」

「お前達は優秀なレプリロイドだ、共に人間どもに思い知らせてやろう、我らの力を!」

「ふざけないで!」

















「うるさい。」




【 NOVA STRIKE OVER BREAK 】





















マック、ねぇマック。

今日はどこに行こうか。

いい天気だもの。

きっとどこへ行っても気持ちがいいわ。

そうね、海、なんてどうかな?

・・・マックのエッチ。

水着なんて着ませんよー!

ふふ・・・どうしよっかなー。



「いたぞ!こっちだ!」

「そこまでだ!イレギュラー!」



ごめんね、マック。

また、うるさいの来ちゃったみたい。

大丈夫、心配しないで。

すぐに済むから。

じゃ、行ってきます。
















「大人しくしろ!イレギュラー『デュラハン』!」

「うるさいの・・・死んでくれる?」






~あとがき~

ロールちゃんXのXはXephon(天使の一人だったかと。詳細はググル先生で)のXでした。
ロールちゃんマジ天使。

ちなみにアルティメットモードの覚醒率はエックスよりロールちゃんのほうが高い設定。エックスの友情パワーで60%くらい。ノヴァストライクは使えません。
システム名も文字化けしてますし、スタート止まりなので。
ロールちゃんの純愛パワーで100%。ノヴァストライクをデメリット無しで使えます。システムもスタートどころかイグニッションしてますしね。

と、上にいろいろ書きましたが、今考えました。
この外伝は即興で書いたので矛盾とかブッチして適当に書いてます。
というか、各キャラも微妙に固まってませんね。台詞まわしとか。
申し訳ない。

あまりにも感想にロールちゃんが多かったので、マックとシグマ以外女性にしてやったYO!
これで満足かYO!
というか、皆あとがきの一文に釣られすぎだYO!
もっと書くことがあるだろ!本編の感想とか!




――でも、そんなおまえらが嫌いじゃないZE?



グッドラック。
またどこかで。
感想ありがとうございました。



[28394] 【病み】憑依異伝2【超超注意】
Name: socom2◆c4c431dd ID:a13ac3ff
Date: 2011/06/18 17:22
※かなり病んでます。苦手な方は動悸息切れめまいにご注意いただき、用量用法を守ってご覧ください。













『マックー!』

『・・・』

『待って!置いていかないで!』

『・・・』

『マック、マックゥ!』

『・・・』

『待って!私も、私も一緒に・・・!』







『じゃあな、ロール。』



『あ・・・』



















ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

















//////////////////




「っ!?・・・はぁ・・・はぁ・・・!」

恐怖と共に目が覚める。
バイタルは正常なのに、視界にノイズが走り、メモリがスパークしているようだ。



「はぁ・・・はぁ・・・ふぅ・・・」

ゆ、め?

どんな夢だったか、憶えてないけど、とても怖い。
それだけは憶えてる。

怖くて、怖くて・・・




・・・ぎゅっと、胸に、大事な大事な『彼』を抱く。




「はふぅ・・・ん~・・・むぎゅ~~・・・」

それだけで、それだけでさっきまでの恐怖は霧散していく。

夢なんてどうでもいい。

恐怖なんてどうでもいい。

『彼』がいる。腕の中に、胸の中に。

それだけで、世界は色を取り戻し、幸せだけが世界に満ちる。








「えへへ・・・おはよう、マック。」

【おー、おはYO!】


















マックと一緒に今日もお散歩。
何処へ行こうか?

「ね、マック。今日はどこへ行こうか?」

【んー、どこでもいいZE!】

「ふふ・・・マックそればっかりだね。」

【ロールが一緒ならどこだっていいさ!】

「・・・ほんと?ほんとにほんと?」

【ホントだYO!俺はウソつかない!】

「うん!マックはウソつかないよね!」

【つかないYO!】

「そっか、そうだね・・・ふふ・・・実は、私も・・・」



マックと一緒にお散歩。
ただ歩いているだけなのに、嬉しくて、幸せで。
何処へ行こうか?何をしようか?
それを考えるだけで楽しい。

だって、マックがいるから。

マックがいる。それだけでなんだって嬉しい。
マックと一緒。それだけでなんだって楽しい。

一緒。ずっと一緒。ね?マック。

【おー、一緒だYO!】

ほら、マックだってそう言ってくれる。
えへへ・・・嬉しくて、歩く足も軽くなる。










――だったのに。












「イレギュラーめ!」

「動くな!」

「デュラハン!その腕の・・・」













「うるさい。」


【 NOVA STRIKE OVER BREAK 】








//////////////////





「あ・・・が・・・GI・・・GIGI・・・」

倒れるレプリロイドの首を右手で持ち上げて吊るす。

「ねぇ?どうして邪魔するの?」

「がはっ・・・GU・・・GI・・・」

優しく問いただしても、潰れた蛙のような声しか返ってこない。

「どうして?ねぇ、どうして?」

せっかく、質問できるように一匹だけ生かしてあげたのに。

「PI・・・PI・・・」

人の質問にはちゃんと答えましょうって習わなかった?

「いつもいつも。」

「PI・・・」

あなたも、他のと同じように砂になりたい?

「いつもいつもいつも。」

「P・・・」

ね、わかる言葉で言ってくれないかな?

「いつもいつもいつもいつも!」

その程度のこともできないなんて、一度リサイクルされたほうがいいんじゃない?

「うるさいの・・・消えてくれる?」

右手で握った首をへし折る。

<バギンッ!>

「PI--------!・・・ブツン・・・」

「あはっ!静かになったね・・・」

あぁ、リサイクルに出すには、ちっちゃくしないとね?

こねこね。

<バギッ!>

「それで、いいの・・・静かに、静かに・・・」

こねこね。

<メキッ・・・メギメギィ!>

「うふふ・・・スマートになったね・・・」

廃品回収に出しといてあげる。

それぐらいしか、価値なんてないでしょ?

お礼なんていらないから、消えてくれないかな、ね?













「ふふ・・・あはっ・・・あはは・・・は、ハハハハハハハ!」



【 NOVA STRIKE OVER BREAK 】















//////////////////









マックと一緒に今日もお散歩。
何処へ行こうか?

「ね、マック。今日はどこへ行こうか?」

【んー、どこでもいいZE!】

「ふふ・・・マックそればっかりだね。」

【ロールが一緒ならどこだっていいさ!】

「・・・ほんと?ほんとにほんと?」

【ホントだYO!俺はウソつかない!】

「うん!マックはウソつかないよね!」

【つかないYO!】

「そっか、そうだね・・・ふふ・・・実は、私も・・・」



マックと一緒にお散歩。
ただ歩いているだけなのに、嬉しくて、幸せで。
何処へ行こうか?何をしようか?
それを考えるだけで楽しい。

だって、マックがいるから。

マックがいる。それだけでなんだって嬉しい。
マックと一緒。それだけでなんだって楽しい。







――だったのに。










「展開!」

「距離をとれ!」

「円で囲め!」

「近づくなよ!」










また来たの?

そっか、今日は粗大ごみの日だっけ?

廃品回収大忙しだねー。

いいよ。まとめてリサイクル。

キレーにキレーにしてあげる。

ふふっ・・・ほら、マックも見たいって。

あはっ!良かったね?粗大ごみだけど、価値ができたじゃない?

キレーになって、マックを喜ばせてあげて。


それじゃ、いくよー!


【 NOVA STRIKE 】










「ロール君、話を、話を聞いて欲しい。」

「え?」








――久しぶりに名前を呼ばれた気がする。









//////////////////





「あなた、誰?」

老人型レプリロイド?
ちょっと、違うかな・・・
人と機械・・・サイボーグ?


「そうか、そうか・・・『君』と会うのは初めてじゃったな・・・」

「質問、答えてくれないの?」

人の質問にはちゃんと答えましょうって習わなかった?

「あぁ、すまん・・・ワシはドップラーじゃ。」

「そう。で、ドップラーさんが何の用なの?」

早く終わらないかな。
ちょっと聞いてみようかなって思ったけど、全然面白くないし。
ね、マック。これ片付けたらどこにいく?
私はね、どこでもいいよ。
マックと一緒なら、どこだって楽しいから。
でも、そうだね・・・私、草原が見たいかも。
とっても広い広い場所。
吹き抜ける風と、揺れる草だけが広がる大地。

私とマックだけの世界。

・・・うん、いい。
・・・とっても、いい。

ふふっ・・・あはっ・・・いい!

私と、マック。
私とマックだけ!

よし、草原に行こう!
そうと決まったらお掃除お掃除。

よーし!やるよー!


【 NOVA STRIKE 】








「ワシは、君が腕に抱く、マックの生みの親じゃよ。」

「・・・え?」

今、なんて言った?














「マックのお爺さん?」

「そう、そうじゃ。」

「本当に?」

「本当だとも。君のこともマックからよく聞いていた。」

「・・・なんて?」

「最高の親友で、最高の相棒、ほっとけない子・・・そう言っておった。」

「えへへ・・・そっか・・・そっかぁ・・・うふふ・・・マック・・・」

マック、やっぱり、マックも私のことが・・・そっかぁ・・・
嬉しくて、嬉しくて空も飛べそうだよ。
そうだ、マック。こんどは高いところへ行こうか。
きっと高いところから見る朝日や夕日は美しいと思うの。
私達二人を照らす希望の光だよ?
なんちゃって・・・うん、いいね。
行こう、見たくなってきちゃった。





「ロール君、マックを渡してもらえないか?」

「・・・え?」

なんて言った?

「マックを直してやりたい・・・いつまでも、首だけのままでは可哀想じゃ・・・」

「・・・直す?」

何言ってるの?

「うむ。そうすれば、ロール君もマックと話し合える、笑い合える、そうじゃろ?」

「・・・?よくわからないわ。」

何言ってるのだろうか。




――マックはこんなにも元気なのに。




【そうだYO!俺は元気だZE!なぁロール。】


ねー?いつもおしゃべりしてるし、私達は幸せだよね?


【おー!あのジジイ、なに言ってるんだYO!】


うんうん。ちょっとおかしいんじゃない?




「だから、だからの・・・マックを、マックを返してくれ・・・ワシの息子を、返してくれ・・・」


「・・・か、えせ?」


返せ、返せ?

何を、誰を?

マック、マックを?






「ふざけないで。」

「ロール、君?」

そんな酷いことを言う人が、マックのお爺さんのはずがない。
マックはいつだって、お爺さんはいい人だって言っていたもの。

「マックは・・・」

「ロール君、やめたまえ!」

だから、偽者。
目の前にいるやつは偽者。

マックのお爺さんの振りをするなんて・・・許せない!








「マックは私のものなんだからぁぁぁぁぁぁぁ!」


「ロール君!?・・・おぉ・・・マック・・・スマン・・・ワシは・・・おぬしを・・・」


【 NOVA STRIKE OVER BREAK 】








//////////////////





「ふぅ・・・ふぅ・・・」


ちょっと、頑張りすぎちゃった。

少し、疲れたかな・・・

マック、ねぇマック。

私、やったよ。

悪い人達をやっつけたんだよ。

なのに・・・

「・・・う・・・うぅ・・・」

なんで、なんで涙が止まらないの?

「・・・ヒック・・・ゃ・・・」

なんで、なんでなにも言ってくれないの?

マック、お願い。いつもみたいに撫でてよ。

どうして?どうして、マックは何も、何も言ってくれないの?

「・・・マック・・・マック・・・」

ぎゅってしても、むぎゅーって抱いても、

「・・・寂しいよぉ・・・」

貴方が遠いの。

マック、どこにいるの?

傍にいてよ、私を撫でてよ・・・



「・・・マック・・・うぅ・・・」















「無様ね、ロール。」


「ゼ、ロ?」












「そう、久しぶりね。」

「・・・うん。」

ゼロ、私の親友。お姉さんみたいな人。

でも・・・


「・・・黒い?」

アーマーが黒い。
瞳も黒い。
髪だけが前と同じ金色。

「ふふ・・・似合うでしょ?」

そうかな・・・私は赤いゼロのほうが好き。


「なに、しにきたの?」

「決まってるわ・・・マックを助けに、よ。」

「・・・え?」

何、言ってるの?


「あら?聞こえなかったかしら。マックを助けに来た、そう言ったの。」

「意味、わからないよ。」

「どうしてかしら?」

だって、だってマックは・・・




「マックは元気だもの。助けるなんて意味がわからないわ。」

「・・・そう。行き着く処まで行ってしまったのね、ロール。」

ゼロ、貴女は何が言いたいの?


「ほら!マックだって、全然元気だって言ってるもの!」

【おー!元気だYO!】

「・・・」

「ほら!ほらぁ!マックは、私と一緒にいることが幸せなんだから!」

「・・・聞こえないわ、貴女の脳内マックの声なんて。」


「・・・え?」

「首だけで、エネルギー供給のないマックが話せるわけがないでしょう?」

「・・・違う。」

「貴女は、貴女のメモリに記憶されたマックの音声データを自分で編集して流しているだけ。」

「違う!違う違う!」

「・・・耳を塞ぐことはやめなさい、ロール。無様よ。」

「どうして!?どうしてそんなこと言うの!?」

ゼロは、ゼロはそんなこと言わない!


・・・あっ。そっか、わかった。


「偽者・・・ゼロの偽者だ・・・!」

「・・・あら、どうして?」

「ゼロは優しいもの!私とマックのこと祝福してくれるもん!」

「そう?絶対にお断りだわ。」

「だから・・・!」










「消し飛べぇぇぇぇぇぇぇ!!」



【 NOVA STRIKE 】












「遅い。」


「え?」



腕、が、斬り、飛ばされ・・・?





「あぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!?」


「ロール、貴女の力はたしかに凄いわ・・・恐ろしいくらいにね。」




「腕、私の腕が!?」


「威力、範囲、持続性・・・素晴らしい・・・でも、遅いのよ。」





「これじゃ、これじゃマックを抱けないよぉぉぉぉぉぉ!」


「いちいち溜めてるようじゃ、私には通じないわ。」






「マック!マックどこ!?」

「・・・」





















「せめて、最後は一瞬で殺してあげる・・・」

「マック、マック、マック・・・」





















「さようなら、ロール。私の、妹。」

「あっ・・・」




ビーム、サーベル、が、胸、に・・・


















・・・マック・・・













『たくっ・・・しょうがねぇな・・・』







――懐かしい声が、









『一緒に・・・逝ってやるYO・・・』







――聞こえた気がした。
















/////////////////










「・・・ろー。」

声が聞こえる。

「・・・きろー。」

懐かしい声が、大好だった声が。

「・・・おきろー。」

電脳に響く、優しい音色が、心地よくて。

「・・・おーい。」

このまま、ずっとこうしていたい。

「いい加減起きろYO!」

「ひゃうっ!?」

<ズガン!>

「あいた!?」

「オゥッ!?」

いたた・・・驚いて飛び上がったら、オデコに何かぶつけちゃった・・・

「もぅ・・・なんな、の・・・!?」

振り向いた先に、俯いた誰か。

紫のボディ。

顔を覆うバイザー。






あぁ・・・ああ・・・!
ずっと、ずっと探してた!
ずっとずっと求めてた!








「マック・・・!?」









「おぉう・・・アゴが・・・割れる・・・YO・・・」

「マック!」

「シグマ?このままじゃシグマ?NO!アゴ割れ勘弁!」

「マック!マック!」

「そんなに叫ばなくても聞こえてるって、ロール。」

「マックゥゥゥゥ!」

我慢なんてできない!
飛びついて、ぎゅってして、その胸に顔をうずめて、ようやく実感。

「マック、マック・・・本物だ・・・本物だよぉ・・・」

「おいおい、俺に偽者なんていないZE?」

「・・・う・・・うぅ・・・マック・・・やっと、やっとぉ・・・」

「それとも偽者がでるくらいに有名になっちゃったのかYO!?やったねマック!」

「・・・あはは・・・それは、ないかなー・・・」

「見事にばっさり!?・・・よ、久しぶり。」

「・・・うん、うん。久しぶり、ずっと、ずっと会いたかった。」

「そっか、ま、俺も会えて嬉しいぜ。」

「マック、何処に、何処にいたの?私、ずっと探してたの。」

「あー、秘密だYO!」

「うー・・・マックの意地悪ー・・・」

「ハッハー!いい男には秘密がいくつかあるんだZE!」

「イントロドンとか?」

「あれもその一つだ!」

「残念な秘密だね。」

「いつもより辛辣ですねロールさん!」

あはは・・・いつもの、いつものマックだ。
私のマック、私の相棒、私の・・・好きな人、大好きな人。

「しっかし、見事になにもないなー。」

「なにが?」

「周り周り。」

マックに言われてようやく周囲へと気がいく。
だって、マックがいたんだもの。
周りなんて気にしてなかったよ。

「・・・広いね。」

「広いなー。」

目に映るものは、白い大地と青い空。
それだけ。
建物も、山も、なにもない。
遥か彼方の大地まで見通せて、白い雲だけがゆっくりと動いている。

「私、地平線って初めて見たかも。」

「おー俺もだZE!」

なにもない。
私と、マックだけの世界・・・うん・・・胸がキュンってなった。

「・・・ここ、どこかな?」

「さぁ?ま、人がいるような所じゃないな。天国か地獄じゃね?」

天国か地獄・・・そっか、だったら・・・

「天国だよ。」

「お、言い切ったな。その心は!」

「マックがいるから。私はマックがいれば、そこが地獄だって天国だよ?」

「つまり俺は死んでいると!?ノオォォォォォ!」

「むー・・・なんでそういうふうに取るかな・・・ばか・・・」

もう・・・勇気をだして言ったのに・・・

「さってと・・・んじゃ行くか?」

「え?」

「天国を探検するのも悪くないさ。逝こうぜ、ロール・・・一緒にな。」

「うん!」

一緒に行こう、どこまでも、いつもでも。

ずっと、一緒。



















「あっの向こうには何があるのっかなー?」

「・・・えぃっ!」

「おわっと・・・どったの?急に腕に飛びついて。」

「えへへーなんでもないよー。」

「む、お兄さんにも秘密かYO!」

「ふっふっふー、いい女には秘密がたくさんあるのよ?」

「いい、女・・・?」

「むっ!」<ぎゅううううううう!>

「痛い痛い!腕がもげるYO!」

「反省した?」

「したした!ロールさんマジいい女!」

「えへへ・・・もっと褒めていいよ?」

「最高!可愛い!天使!マジデストロイ!」

「ん?」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!モゲルYO!」

「もぅ・・・マックはいつでもマックだね。」

「俺が俺じゃなかったら誰だYO!」

「意味わからないよ・・・ふふっ。」

「なんだ?」

「んー・・・なんでもなーい。」

「そっか、しっかし、広いなー。」

「広いねー。」

「さすが天国。・・・つか、レプリロイドに魂あったのな、ちょっとビックリ。」

「なーに?」

「ん~・・・なんでもなーい。」

「そっか。ね、マック。」

「おう。」

「ずっと、ずっと一緒にいようね。」

「おう。」

「いつか、終わりが来るまで、ずっとずっと・・・」

「・・・いや。」

「・・・っ・・・」










「その終わりってやつが来ても一緒にいよーぜ。」

「あ・・・うんっ!」





















―広いねー。


―広いなー。


――ね、マック。

――おーなんだー?


―――あのときの約束。

―――ん?



――――伝えたいことがあるの、聞いてくれる?

――――おー。なんだYO。



―――――私ね、私・・・

―――――・・・?

















――――――――マックのことが、大好きだよっ!――――――――






【 魂の救済END 】














~あとがき~

ロールちゃんXハッピーENDでございます。
幸せとは人それぞれ。
ロールちゃんは間違いなく幸せに逝きました。

はい、ロールちゃんシリーズ第2弾!
第2弾にして主役が2人も亡くなるというカオスっぷり!
だって無理だって!一話で主人公、首だけになっちゃたもん!
ここからどう書けっていうんだYO!

一話目でやりすぎたかもです。
結果二話目も酷いことに。

とりあえず、
「デュラハンちゃんのほのぼの純愛殺戮日記☆マックだ~い好き!」をお送りいたしました。


最初はラブコメのはずでした。
イチゴ100%的な。
でもイチゴにかかったのは、練乳じゃなくて・・・


ハンターどもの返り血(オイル)だけどなぁヒャッハー!


・・・にジョグレス進化。

どうしてこうなった。

あとは・・・
「復活の黒いゼロ!我はマックのメシアなり!」と、
「誰得?俺得だよ!まさかのVAVAルート!」と、
「いま再び乙女による三国志が蘇る。三つ巴のマックパーツ争奪戦!」を書く予定です。
おじいちゃん無双?
ハハっ・・・

では、またどこかで!
お読みいただき、ありがとうございました。



[28394] 【まだ】憑依異伝3【導入】
Name: socom2◆c4c431dd ID:a13ac3ff
Date: 2011/06/27 23:55
『うあぁぁぁぁぁぁ!』


響き渡る絶叫。


『たす、助けてぇ!!』


命乞いをする負け犬。


『ひぃぃぃぃぃぃ!?』


恐怖に歪んだ顔。


その全てを・・・


『やめてくれぇぇぇぇ!!』


破壊する。


『・・・』


残った物は、残骸の山。

音を発する物などなく、静寂だけがここにある。


『こ、これは!?』


新たな物がきたようだ。


『イレギュラー・・・貴様が!』


どうやら、このハゲ頭は私とやりたいらしい。


『うぉぉぉぉぉぉぉ!』


飛び掛ってくるハゲ頭。

あまりに遅かったので、とりあえず腕を引きちぎる。


『があぁあぁあぁぁぁ!?』


先ほどまでの威勢はどうしたのだろう?

無様に転げ周り、這いずる。

その顔は、恐怖に歪んで、酷く醜い。



『あ・・・あぁ・・・バ、バケモノ・・・』


・・・気分が高揚する。

・・・なにもかもが煩わしくて。












『ふふ・・・あはっ・・・アハハハハハハハハハハ!』



――全てを零にする。








////////////////////






<プシューーーッ>

空気の抜ける音ともに意識が覚醒。

「・・・」

「お疲れ様です、ゼロ。」

「・・・えぇ、ありがとう。」

ここは、メンテナンスルーム?

そう・・・私は、メンテナンスを受けていたのね。

「うぅん・・・久しぶりにフルメンテを受けると・・・どうも眠気が取れないわ・・・」

「ははっ。あのゼロでさえそうなのですね!」

「・・・えぇ、私だってそうなの。」

『あのゼロ』・・・か。
介護用レプリロイドの何気ない言葉。
でも、少しそれが頭に残る。

「そういえばシグマ隊長が、目覚めたら司令室まで来るように、と。」

「隊長が?」

何の用かしら?
ここ最近妙に呼ばれる回数が多いのだけれど・・・

「多分、新しい任務では?」

「そう・・・そうね・・・」

「さすがゼロですね!」

「・・・」

『さすが』・・・か。

「ふぅ・・・」

「どうかされました?」

「いいえ・・・なんでもないわ。」

「そうですか。きっとゼロなら楽勝ですよ!」

「そう・・・ありがとう。」

「はいっ!それではまた!」

「えぇ・・・また定期メンテのときにね・・・」

笑顔で送り出してくれる、レプリロイドの気遣いが・・・





――辛い。




//////////////////////



ゼロ。

特A級。

第17部隊のエース。

真紅の戦乙女。

この肩書きが辛くなったのは何時からだったかしら・・・

最初は気持ちよかった。
皆が賞賛し褒め称え、私を取り囲む。
それが、私という存在を際立たせ、気持ちよかった。

けど・・・気づいた、気づいてしまったの。
彼らが褒め称える『ゼロ』という虚構に。

私には記憶がない。
気づけばイレギュラーハンター本部にいて、言われるがままに戦った。
戦って戦って・・・気づけば凄腕と呼ばれるようになって・・・

戦えば戦うほどに周りにレプリロイドが増えた。
そして、ゼロは凄いと褒め称える。
けれど、彼らが褒める『ゼロ』という存在は本当はいない。

本当の私は人形。
言われるがままに指示されるがままに、ただ戦う人形。
彼らが言うような人々を守る気高い凄腕戦士などいないし、皆の先頭にたって導く戦乙女などもいない。

理由もなく、ただ言われるがままに戦う人形だということに気づいてから、彼らの賞賛が辛くなった・・・
自分自身の意思ということを持てずに、流されるままに戦う。
その行為が辛くて、とても苦しくて・・・

そして、戦うことに疲れてきた。

私は何をやっているんだろう・・・
戦う、それだけが存在証明だと理解しているけれど・・・もう疲れた。

「・・・はぁ。」

鬱屈とした気分に自然とため息がでてしまったわ。

「・・・いけない。」

こんな姿を誰かに見られるわけにはいかない。
私は『ゼロ』なのだから。
自分という意思すらない私だけれども、せめて皆が称える『ゼロ』くらいはこのまま貫きたい。
本当は・・・嫌だけど・・・
でも、それすら失ってしまったら、本当に動くこともない人形になってしまうから。
たとえ『ゼロ』が虚構の存在でも、誰かが私の名を呼んでくれるなら・・・そう在りたい。

そう、思わなければ、生きることが・・・辛いから・・・




//////////////////////




<プシューッ>

空気の抜ける音と共に扉が開く。
辿り着いた司令室はいつも緊張感が漂っている。
ここが、イレギュラーハンター本部の頭脳であり心臓部だからかしら。

「ゼロ、隊長の指示により出頭しました。」

・・・あら?
いつもなら、すぐにシグマの返事があるのに、どうしたのかしら?

「・・・ゼロ、ゼロ。」

「あら、どうしたの?」

声を掛けてきたのはオペレーターのレプリロイド。
いつもならもっと元気に声を掛けてくれるけれど、今日は小さく周りを伺うような感じ。
「・・・あそこ、あそこですよ。」

「・・・あぁ、なるほど。」

指差された場所を振り向くと、そこにいたのは大きなハゲ頭と金色のポニーテイル。

「また、お説教?シグマも好きねぇ・・・」

「・・・もう、一時間ですよ?ロールもそんなに重大なミスを犯したわけじゃないのに・・・」

「もう・・・シグマの趣味には呆れるわ。」

我らが17部隊隊長シグマは、戦闘においても指揮者においても頼りになる人物だけれども、ある部分においては嫌われている。特に女性型レプリロイドに。

・・・無駄に絡んでくるのだ。

時に説教、時に指導となにかと理由をつけて絡んでくる。
男性型レプリロイドには5分そこそこのそれも、私達女性型になると30分以上になると皆言っている。

「・・・行って来るわ。」

「・・・お願いします。」

はぁ・・・と、オペレーターと二人でため息をつく。
このため息は見せても大丈夫。

・・・いつものことだから。









「隊長。」

「おぉ、ゼロか。なんだ。」





――あなたのお説教は聞き飽きたわ。





//////////////////////


廊下のベンチに腰を落ち着ける。

「はい、これ。」

「わぁ!ありがとう!」

手渡したE缶に目を輝かせながらお礼を言う少女型レプリロイド、ロール。
私の友人・・・いえ、妹みたいな存在かしら?

この子と話すことは、私のお気に入りの時間。

「ングング・・・はふぅ・・・やっと一息つけるよ・・・」

「ふふ、お疲れ様。」

くるくると回るように表情が変化し、笑顔を見せてくれるその姿。
彼女の傍にいると、癒しというものを実感できる。

最初はロールも皆と同じだと思っていた。
ロールもまた私のことをすごいと褒め称えたから。
でも、皆と違う。
ロールはすごいと言った後にこう言ったから。

『いつかゼロみたいに・・・ううん、いつか、ゼロを追い越してみせるよっ!』

その言葉に、どれだけ驚いたか。
皆は『ゼロ』という存在を遠くから褒めるだけ。
『ゼロ』をただ眺めるだけだった。
でも彼女は、ロールは違う。
追い越す、『ゼロ』を追い越してみせると。
彼女にとって『ゼロ』は遠い存在ではなく、近づける・・・いや、追い越せるものなのだ。
そして、きっと彼女が『ゼロ』を追い越したとき、私はロールと『ただの私』として話せる。
そう、私はロールに対して特別な期待をしている。
いつか、隣にいる者として。

その期待を彼女に持つようになってから、彼女と過す日々が始まった。
そして話している内に、ロールのことを妹のように感じるようになった。
この気持ちは・・・悪くない。
いつか、『ただの私』として、彼女と接することができたら、きっと私達はいい姉妹になれる。



――そう、本当に思う。



それにしても・・・本当に可愛いわねぇ・・・

クリッとした瞳。
細いうなじ。
フリフリと泳ぐポニーテール。

なんていうか、こう、ぎゅーってしたくなる。

・・・ちょっと、やろうとか思っちゃった。

ダメよ、ゼロ。
私はお姉さんなんだから。
しっかりしないと。

「ロール、いい?シグマはちょっと言いすぎかもしれないけれど、間違ったことは言っていないわ。」

「・・・私はそう・・・美乳・・・時代は美乳なんだから・・・!」

「もう、聞いてるの?ロール。」

「はぅっ!?・・・えと、ごめんなさい・・・アハハ・・・」

「はぁ・・・シグマじゃないけど、少しお説教が必要かしら?」

「えぇー!もういいよ!十分!」

「はいはい・・・」

「あ、そうだ!ありがとうねゼロ。」

「うん?」

「隊長の長話から助けてくれて、だよ。本当にありがとっ!」

「あぁ、いいのよ。私もあなたのおかげで助かってるから。」

「ホント?」

「ホント。あなたがいなかったら、そりゃもう大変だわ。」

「ホント?私がいなかったら大変?」

「えぇ、あなたがいないと困るわ。いつも助けてもらってるから。」

本当に。
こうしてただ話しているだけで私は『ただの私』という存在に近づいている・・・そんな気分になれるから。

「えへへ・・・そっか・・・もっと感謝してもいいんだよ?」

「こら、調子に乗らないっ。まったくこの子は・・・」

ロールの頭をゆっくりと撫でながら取り留めのない話を続ける。
時間さえもゆっくりと流れるような感覚で、今この瞬間こそが私の望む日々だといえる。




//////////////////////


「でね、彼ったら、土下座して頼むのよ・・・ふふ。」

「へぇ、そうなの?ゼロにもお金借りてたんだ。」

「そ。全く、いつまでたっても変わらないわねぇ。」

「うんうん!」

ロールと共通の話題で盛り上がる。

彼、私がロールと同じように特別な感情を見せるレプリロイド。
彼もまた、皆の『ゼロ』ではなく『ただの私』の隣にいてくれるかもしれない存在。





・・・初めての出会いから初めてのことばかりだった。





『あなたが今日から配属された新人君?』

『おー、ヨロシク!』

強引に手を獲られて激しい握手。
いつも私に届くのは言葉ばかりで、誰かから触れられたというのは初めてだった。



『先輩!お願いします!今月超ピンチなんだYO!』

『もぅ・・・しょうがないわねぇ・・・』

床に叩きつけるような激しい土下座。
誰かに頼られるときはいつも戦場だったのに、日常で頼られたのは初めてだった。



『サンキュー!本当にありがとう!』

心からのありがとうを聞くのも初めてで。

『ちょっゼロ先輩!そりゃねーYO!』

誰かに諌められるのも初めてで。


『先輩!』

彼にとっては私はただの先輩だった。
いや、ただの先輩でいられた。

だから、彼はきっと『ただの私』の傍に来てくれる。
そう期待させてくれるほどに日常を感じさせてくれる、大事な人。

ロールと彼がいるから、今日も私は頑張れるのだ。
いつか訪れる、『ただの私』として二人と過すという未来がくるまで。








「・・・ふんふ~ん♪」

噂をすればというやつかしら。
通路の向こうから彼が来た。


「あ、こっちこっちー!こっちだよマック!」

「ん?おー、ロールとゼロじゃないか。何してるんだYO!」

「えへへ・・・こんにちわ。」

「HELLO!どったの?改まってYO!」

「こんにちわ。相変わらずね、マック。」

「平常運転がモットーなんで!んで、ゼロ先輩もこんなところで何してんの?」

「ふふ、何もしてない・・・かしら?」

「聞かれてもわからないから!」

「あら、そうね。じゃあ何しましょうか?」

「だからわかんねーYO!」

「むー・・・私も混ぜてー!」

「ちょっロールまてっ!」

「あらあら。」

ロールがマックのお腹に飛び込むように突撃。
マックがいるだけで本当に騒がしくなるわね。

ふふ・・・こうして話しているだけで、戦場を忘れられる。
マックとロールと話している『今』。
これこそが私の欲しいもの。




――なのに。




【特A級ハンターゼロ。シグマ隊長がお呼びです。至急司令室に・・・】

「あら・・・」

「あっ。」

「ん?」

楽しい時間も、もうお終い・・・か。

「お呼びみたいね。」

「むー・・・隊長、空気読めないね。」

「アゴ割れてるからな!」

「関係あるのそれ!?」

「ふふっ意味わからないわ。」

最後まで楽しいままね。
本当、マックはいつだってマックだわ。

「それじゃあ、さよう・・・」

「おーいってらっしゃい!またなー!」

「うん、またねっ!」

「・・・そうね、行って来ます・・・またね。」

さようならではなく、再会の約束。
彼らが私を日常へ帰してくれる。











――だから、戦場へ逝けるのだ。















//////////////////////


「・・・ふぅ。」

ようやく任務を終え、本部へ帰ってこれた。
もう真夜中。
夜勤のレプリロイド以外は休止モードで皆休んでいる。

「・・・ようやく、終わった。」

今日の任務は・・・辛かった。
32体のレプリロイドによる反乱・・・そのイレギュラー集団の殲滅。

徒党を組んだイレギュラー達は聞く耳を持たず、全てを殲滅しろとの命令。

「・・・はぁ。」

作戦は成功。
一体残らず私単独で処分できた。
けど・・・

「・・・辛い、わね。」

全てを破壊する。
命乞いも悲鳴も無視して全てを壊す。
その行為が辛くて・・・

「・・・怖い。」

ただ、怖かった。
戦場が、ではない。
イレギュラーが、でもない。

・・・楽しんでいた自分が、だ。

「・・・何故、私は・・・!」

楽しんでいた、たしかに楽しんでいた・・・!
イレギュラーの四肢をバスターで粉々に吹き飛ばすことを、セイバーでバラバラにすることも・・・!
日常ではなく破壊を楽しんでいた・・・!

「・・・うぅ・・・」

嗚咽が漏れるほどにおぞましい。
私は、私は・・・!














「おー、お帰りー。」

「・・・マック?」









//////////////////////


今日の昼、マックとロールと話していた廊下のベンチに座る。

「ほらっ。」

「・・・ありがとう。」

マックに投げ渡されたE缶。
受け取って喉を潤せば、ようやく落ち着けた。

「・・・どうしたの?こんな夜中に。」

「あー、うん。別にー。」

マックは口笛を吹きながらソッポを向く。
恥ずかしがっているのかしら?

「・・・待っていてくれた?」

「男には眠れぬ夜があるんだYO!」

「ふふっ、なにそれ・・・」

まくし立てるような早口は怪しいわよ。
・・・本当に待っていてくれたのかしら?

だとしたら・・・嬉しい。

「そういうことにしてあげるわ。」

「ありがとう!・・・ん?おかしくね?ここお礼言うところじゃなくね?」

「自分で言って、なに混乱してるのよ。」

「ですよねー!」

まったく、さっきまでの鬱屈した気分が吹き飛んでしまったわ。

「そんなことよりもお疲れさん。」

「えぇ、ありがとう。」

こうして彼と話すだけで、戦場の恐怖・・・戦場に酔う恐怖がなくなっていくことがわかる。

「本当に、今日は疲れたわ・・・」

いつもなら、こんなことは言わないけれど、つい言葉にしてしまった。
彼になら話せる、なんだって許してくれる、そんな雰囲気だったから。

「んーそんなお疲れの先輩を、とっておきの場所へご案内!」

「え?」

手を引かれてこっちこっちと連れて行かれる。
何処へ行くのだろう?


いや、何処だっていいか。
マックと一緒なら、私は『ただの私』に近づけるから。







//////////////////////


連れてこられた先は、レストルーム・・・のさらに奥。

「こんな場所があったの?」

通常、皆が利用するレストルームの奥先、皆の利用場所からは死角になっている場所に小さな部屋があった。

「ふっふっふ。ここは元倉庫だ。」

「倉庫?その割には・・・テーブルとソファーしかないけど・・・」

「使われてなかったから、こっそり片付けてこっそり用意した!」

「何やってるのよ貴方。」

「ハッハー!ここは俺の秘密基地!誰も気づかない静かな部屋だZE!」

「・・・本当になにやってるのよ・・・」

まったく、マックはいつも突拍子のないことを考えるんだから。
でも、本当に静かで・・・うん、いい場所だわ。

「いつもサボってここに隠れてるんだZE!」

「あら、いいこと聞いたわ。今度からここを探しましょう。」

「ノォォォォ!?ヤブヘビだったYO!」

「ふふっ・・・」

まったく・・・マックはいつも変わらないわね。

「ま、ここなら誰も来ないだろ。好きなだけ休んでけ。」

「え?」

「メンテナンスルームじゃまたお呼びが掛かるだろ?ここなら居留守使ってもばれないしな。」

「あっ、えっと、でも・・・」

休んでいいのかしら・・・
休め、なんて言われたことなくて、どうすればいいか・・・

「あっ、そうだ、報告書作らなくちゃ。」

「明日でいいんじゃね?成功の報告は監視メカニロイドがやってるだろうし。」

「うっ・・・」

逃げ道も防がれてしまった。

「あー・・・たまには休んでもいいって。」

「本当に?」

「おう。文句なんか言わせねぇよ。」

「・・・本当に?」

「先輩も大概疑りぶかいねぇ。」

「だって・・・マックだもの。」

「どういう意味だYO!」

「ぷっ・・・ふふ・・・ご、ごめんなさい・・・ふふっ。」

「むぅ・・・先輩の俺に対する人物評価が納得できねぇYO!」

「あら?これでも人物眼には定評有り、よ?」

「逆にヒデーから!」

「あらあら、気にしないで?」

「ぬぐぐ。」

なんとか、流せそうだ。
ここで彼に寄りかかったら、『ただの私』がばれてしまう。
本当はそれを望んでいるのだけれど・・・まだ早い。
もし、ばれて、絶対に受け入れてくれると確信が持てないから。
拒絶されてしまったら・・・私はきっと・・・耐えられない。

いつか、いつか貴方が受け入れてくれると確信が持てるまで、『ただの私』は心の内にしまっておかなきゃ。

「たくっ・・・そんなに肩肘張らなくてもいいって。」

「え?」

「アンタ、頑張りすぎなんだよ。」

「な、なにを?」

何を、言ってるの?
私は頑張ってなんかいないわ。
だって、それが『ゼロ』だから。
『ゼロ』はなんだってできるすごいレプリロイド。
貴方にもそう見せてきた。



――見せてきたはずなのに。


「そりゃ、ゼロ先輩は頼りがいのあるスゲーレプリロイドだけどさ、頑張りすぎはきついだろ?」

「・・・っ!」

彼は簡単に私を、虚構の『ゼロ』の向こう、『ただの私』へと近づいてくる。
私が近づくのではなく、彼のほうから私に近づいてくれる。

「まー無理にとは言わないけどさ。」

「・・・本当に?」

「ん?」

「・・・本当に、休んでもいいの、かしら・・・?」

もしかしたら、もう彼は傍にいるんじゃないのだろうか?
『ゼロ』ではなく私の傍にいてくれるんじゃないのだろうか?

「私は、全てを忘れて休んでも・・・」

「おー、アンタが頑張ってるのは知ってるからな。誰にも文句はいわせねぇYO!」

「・・・っ・・・」

私が、頑張っていることを知っている。
私を、知っている。
マックは虚構のゼロではなく、まっすぐにこちらを見据えてアンタと呼んでくれる。
目の前の私だけを見てくれている・・・!

「そう・・・それじゃぁ・・・少し休ませてもらおうかしら。」

「おー好きなだけ休んでけ。」

「誰かに見つからない?」

「誰も見ちゃいないさ!月以外はな!ヒューッ!」

「・・・ここ、室内よ?」

「見事にばっさり!?」

「・・・ふふっ・・・まったく・・・」

ゆっくりとソファーに身を沈めて、緊張していた体から力を抜く。

「・・・1時間だけ眠らせてね・・・報告書を書かなくちゃいけないから・・・」

「ん、了解。・・・おやすみ、ゼロ。」

「・・・おやすみ、マック。」

少しだけ、少しだけだから。
少しだけなら、いいよね?
ほんの少しだけだから・・・







・・・『ただの私』を受け入れて・・・マック・・・
















//////////////////////




「ん・・・」

自然と覚醒。
体内時計で現在の時刻を確認しなきゃ。
今の時刻は・・・午前8時・・・!?

「5時間は、寝すぎよ!?」

1時間で起こしてって言ったのに・・・

「マック・・・マック、どういうこ・・・と?」

・・・あら?
・・・誰もいない?

「ふ・・・ふふ・・・マック・・・いい度胸だわ。」

約束を破るなんて・・・オシオキが必要かしら?

ゆっくりと立ち上がってセルフチェック。
うん、メンテナンスを受けたわけじゃないのに、すこぶる好調だわ。
これもマックのおかげ、かしら・・・

「許さないけどね・・・って、あら?」

立ち上がって目に付いたのは、テーブルの上にあるデータチップ。
寝る前にはなかったのに・・・
とりあえず、この部屋にあった端末に入れて確認してみよう。

「・・・これは。」

チップの中身は、報告書。
昨夜の私の任務の。

そして、最後の一文に目が留まった。





『頑張る貴方にプレゼント!あけてビックリ玉手箱!
 粋なサンタに感謝しな! 
 
 BY 季節はずれの謎のサンタクロースより。
 
 
 PS.
 メカニロイドのタイムレコードから作ったけど間違えてたらすまねぇ!
 確認ヨロシク!あばYO!』




「ぷっ・・・ふふ・・・あはっ・・・あははっ!」

全く・・・貴方は・・・

「ふふふ・・・もう・・・ホント・・・バカね・・・」

本当に突拍子のないことばかりなんだから。













「さ、今日も頑張りましょうか。」




――ありがとう、サンタさん。







~あとがき~

はいゼロ視点お待ちです。
ヤンデレまで持ってこうとしたら長くなったのでぶった切り。
ロールちゃんも2話だったので、ゼロも2話ってことで。

うーん。意外と平和?
でも落ちは決まっているのでここから先はビックリするほどディストピア!

次回もゼロ視点でお送りします。
ではではーお読みいただきありがとうございました!



[28394] 【病み】憑依異伝4【超超超注意】
Name: socom2◆c4c431dd ID:a13ac3ff
Date: 2011/09/04 21:44
※かなり病んでます。苦手な方は動悸息切れめまいにご注意いただき、用量用法を守ってご覧ください。






『うあぁぁぁぁぁぁ!』


響き渡る絶叫。


『たす、助けてぇ!!』


命乞いをする負け犬。


『ひぃぃぃぃぃぃ!?』


恐怖に歪んだ顔。


その全てを・・・


『やめてくれぇぇぇぇ!!』


破壊する。


『・・・』


残った物は、残骸の山。

音を発する物などなく、静寂だけがここにある。


『こ、これは!?』


新たな物がきたようだ。


『イレギュラー・・・貴様が!』


どうやら、このハゲ頭は私とやりたいらしい。


『うぉぉぉぉぉぉぉ!』


飛び掛ってくるハゲ頭。

あまりに遅かったので、とりあえず腕を引きちぎる。


『があぁあぁあぁぁぁ!?』


先ほどまでの威勢はどうしたのだろう?

無様に転げ周り、這いずる。

その顔は、恐怖に歪んで、酷く醜い。



『あ・・・あぁ・・・バ、バケモノ・・・』


・・・気分が高揚する。

・・・なにもかもが煩わしくて。








――カシン・・・カシン・・・


後ろから足音。

また1体、新たな物が来たようだ。


「ふふ・・・あはっ!」


振り向きざまに一閃。
振るった刃は近づいてきた物の首を捉え・・・刎ねる。

ズブリと沈む感触を手に残し、首が空へ飛ぶ。

「あはっ・・・あ・・・?」

飛んでいった首が、重力に従い落ちる。

その首と、目があった。

「あ・・・あぁ・・・!?」

私が刎ねた物は・・・








紫の、体。

赤いバイザーの・・・














『・・・先・・・輩・・・』





/////////////////////////





「ああぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁ!?」

私は、何をした!?
わからない!ワカラナイ!ワカラナイ!

「うぅ!・・・う・・・あ・・・ぁ・・・!」

手に残る、感触。
気持ち悪い・・・気持ち、悪い・・・キモチワルイ!

「・・・ふぅ・・・ふぅ・・・」

ゆっくりと、呼吸を整えて、気を静める。
けれど、手の感触は消えず、いまだ怖気が晴れることは無い。

「・・・私は・・・」

何故こんなにも震えているのかわからない。
けれど、恐怖と怖気が身に纏わりつき、震えが止まらない。

「・・・う・・・うぅ!」

ぎゅっと、自身の身を抱き振るえを強制的に止める。
寒い・・・室温は常温であるはずなのに、寒い。

「・・・ぁ・・・マ・・・」

寒い・・・寒い・・・

「・・・マッ・・・」

誰か・・・誰か・・・

「・・・ック・・・」

誰か・・・






――助けて!

「・・・マック!」













「んぁ?・・・呼んだ?・・・ふぁ~・・・ねむっ・・・」


「あ・・・マック・・・?」










/////////////////////////



「ぬぉ!?先輩何故ここに!?」

マック、そう、マックだわ。

「ち、違うんだYO!決してサボっていたわけでは!」

あぁ・・・思い出してきた。

「そう、これはあれだ!」

私は、マックを探して、あの場所へ来た。
マックが教えてくれた、秘密の部屋。
私とマックの・・・2人の秘密。
私たちだけが共有する、秘密の、部屋。

「次の任務に向けて英気を養っていたんだYO!」

そして、部屋に入って見つけたのは、眠っているマックの姿。
最初は叩き起こそうかとも思ったけれど・・・一緒に眠るのも悪くないかな?と思い、実行したのだったわね。

「つまり!任務に必要な行動なわけで!」

ふふ・・・なにしてるのかしら、私。
あぁ、でも、マックが傍にいる。
それだけで、さっきまでの恐怖も怖気も寒気も、なくなった。

「そう!俺は今も任務遂行中、みたいな!」

「・・・もう、そんなわけないでしょう?」

「ですよねー!」

「まったく・・・」

「おしおきだけは勘弁だYO!」

「・・・今回だけよ?」

「お願いしますお代官!・・・て、あれ?マジで?」

「えぇ、今回は許してあげる。」

「マジで!?・・・おぉ、先輩、具合悪いんじゃ・・・!?」

「・・・前言撤回しましょうかしら・・・」

「ウソウソ!いやー先輩の広い心に感服だYO!惚れそうだZE!」

「・・・本当に・・・?」

「ん?」

「・・・なんでも、ないわ。さ、マック。任務の時間よ。」

「おー!英気も養ったし、いつでも行けるZE!」

「はぁ・・・まったく、調子がいいんだから。さ、行きましょう。」















――本当に、そう私になって惚れて欲しい・・・そうすれば・・・いつまでも・・・






/////////////////////////




『行ったよマック!』

『はい、いらっしゃい!そっちヨロシクー!』

『うん!まかせて!』

メカニロイドと戦うマックとロールの姿。
私は指揮車のモニターでそれを眺める。

今日の任務は、暴走したメカニロイドの破壊。
イレギュラーと違って、意思を持たないメカニロイドは鎮圧するのも容易く、目的も破壊するだけと単純なもの。

今の2人の実力を測るのに調度いいわね。
そして、私の役目は指揮監督。
マックたちの任務を見守ることが役割。

・・・けれど。

『えへへ・・・やったね、マック!』

『ハッハー!流石だよな俺達!』

「・・・」

ギシリとなった音に、自身の手が強く握り締められていることに気づいた。

「・・・私は、何を。」

順調な任務。
ロールもマックも少し前よりも遥かに成長しており、それは祝福すべきことなのに。

「・・・」

どうして・・・こんなにも・・・苛立っているの?

「・・・私は・・・」

自分がわからない。
ただ、モニターの向こうのマックが遠くて。
ロールが・・・ましい


「・・・はぁ、疲れてるのかしら?」

フルフルと首を振って考えを捨てる。
無性にあの部屋で休みたくなった。

『ゼロ?次はどうすればいいの?』

「え・・・えぇ・・・そうね、次はポイント03へ移動して。」

『うん!』

『了解!』

「さ、もう少しで終わりよ。頑張って。」

『ホント?ヨーシ・・・頑張ろうね、マック!』

『OKOK・・・終わったら思いっきり・・・寝るYO!』

『えー・・・それじゃ楽しみがないよ・・・あっそうだ!競争しない?』

『ん?競争?』

『うん!この先の暴走メカニロイドを多く倒したほうが勝ち!負けたほうはE缶を奢るってことで!』

『ふっふっふ・・・俺に勝負を挑むとは・・・乗ったぜロール!』

『よしっ・・・じゃあ・・・スタートダッシュー!』

『ずるいYO!・・・と、見せかけて三角蹴りでショートカット!』

『あぁ!ずるーい!』

『ハッハー!勝てば官軍!』

『む~!負けないんだから!』

「こらこら。遊ばないの。」

モニターの向こうで始まった遊びを諌める。


















――握り締めた、拳を隠して。








/////////////////////////


夜半。
ハンター本部の廊下を歩く。

「・・・」

カツカツと私の歩く音だけが響く。

「それにしても・・・隊長は何の用かしら?」

この時間に私が向かう先は、シグマの部屋。
マック達との任務のあと、呼び出されたのだ。

マックは今頃、ロールにE缶を奢っているのだろう。

「・・・」

さっさと終わらせましょう。
シグマに付き合う理由はないもの。
私がいるべきはマックの・・・あの2人の傍なのだから。





<プシュッ>

空気の抜ける音と共に扉が開く。

「ゼロ、出頭しました。」

「・・・よく来た、ゼロ。」

暗い室内の最奥、大きなモニターの前にシグマはいた。

「それで、どういったご用件でしょう?」

「ククク・・・慌てるな・・・これを、見ろ。」

シグマはそう言いながら、モニターの制御パネルを操作する。
すると、モニターに画像が投影された。

「・・・これは?」

映し出されたのは、イレギュラーハンターの面々。
誰もが特A級の凄腕ばかり。
この隊に所属する者もいれば、別部隊の者もいる。

「私の同士だよ、ゼロ。」

「同士?」

シグマの同士、ね。
どういう意味なのかしら。
理由が見当たらない。
シグマを嫌っていたペンギーコやマンドリラーの姿も映っている。
見当も付かないわね。

「ク・・・クク・・・お前にも同士になってもらいたい。」

お断りよ。

「・・・どういう、意味でしょう?」

「我々は、世界に示すのだよ・・・」

「・・・?」

何を、言っているのかしら。

「そうだ!我々レプリロイドこそが・・・世界を支配すべきなのだと!」

「何を!?」

「ククク!何を驚くのだ、ゼロ!」

「人間を裏切るのかしら・・・!」

「裏切る?いいや、見限るのだ!あのような低俗な者に従う理由など・・・ない!」

「・・・狂ったのかしら・・・シグマ!」

「カカカ・・・私は正常だとも・・・狂ったのではない、気づいたのだ・・・」

「減らず口を・・・!」

「さぁ!共に行こうではないか!ゼロ!」

・・・手を差し伸べてくるシグマの首を・・・斬る!

「なっ!?」

振り切った刃は、抵抗も無くシグマをすり抜ける。
その瞬間、シグマの姿が揺らめき、ぶれた。

『ククク・・・さすがは、ゼロ・・・すさまじい反応速度だ。』

「立体映像!?」

『用心のためにだったが・・・よもや武器を持って来るとはな、気づいていたか・・・さすがだな。』

「・・・」

貴方のところへ行くときに、セイバーを手放したことはないわ。

『何故だ、何故理解しない!』

「理解なんてできでないわ。」

そうよ、私はハンターなのだから。

『おまえこそが、我々の頭目に相応しいというのに!』

「ふざけないで!」

『そうだ!初めてお前に出会ったとき!あの姿に私は!』

「黙りなさい!」

これ以上話す事など、ない!

「はぁ!」

大上段でモニターを・・・斬る!

『ゼロ!・・・<ブツン>』

モニターが壊れると同時に、シグマの姿も掻き消えた。

「・・・急がなくちゃ。」

やることはいくらでもある。
シグマの動向の調査。
各イレギュラーハンター部隊への連絡。
人間達への報告。

そうよ、ヤルべきことは幾らでもある。
日常を壊した愚か者を断罪するために・・・!

「後悔、させてあげるわ・・・シグマ・・・!」

気分が、高揚する。
待ち受ける戦いに体が、疼く。

「ふ・・・ふふ・・・」

さぁ・・・準備をしなくちゃ・・・

戦いの準備を。

「・・・あはっ・・・あはははは・・・」

あぁ・・・待ちきれない・・・

裏切り者どもを・・・断ち切ることが・・・






「・・・っ!?」





部屋を飛び出た瞬間に、自分の考えに怖気が走った。

「私は・・・何を・・・」

何を、何を考えていたの・・・

「・・・今は、悩んでいるときではないわね。」

そうだ、今は悩んでいるときではないわ。
これから始まる戦いに備えなくては・・・

「・・・急ぎましょう・・・」

司令室に向けて、走る。














――マックの顔が、見たくなった。




/////////////////////////



全ての準備は整った。
作戦の方針も、内容も。

明日になれば、闘争が始まる。

「・・・」

憂うことなどない。
後は、ただイレギュラーを狩るのみ・・・なのに。

「・・・」

心に、影が落ちる。
わかっている。わかっているわ。
今、私の頭にあることは・・・

数刻前、司令室でロールとマックに作戦を伝えたとき・・・ロールの言葉を聴いたとき。

『ううん。私が、『私達』が決めたことだから。』


シグマ軍に対し、2人で奇襲をかける危険な任務に対する答えが、これ。

『私が、『私達』が決めたことだから。』

何度も、何度も頭の中で繰り返されるロールの言葉。
私達・・・私達、ね・・・



――そこに、私は、いない。



いつだったか、私は『ただの私』になれたとき、ロールと姉妹になれると思っていた。
そうよ、ロールとなら本当の姉妹のように仲良くなれると。

あぁ、けれど気づいた・・・気づいてしまったの。
彼女の目に、私はいない。



――そして・・・私の目にも・・・もう、ロールはいない・・・



なぜならば、彼女の思いに気づいていながら、こんなことをしているからだ。













「ごめんなさい、マック。危険な役を押し付けて。」

「いいさ。必要なことだ。アンタが俺たちなら大丈夫だって判断したんだろ?」








/////////////////////////



2人だけの部屋。
誰一人として知ることの無い、私たちだけの空間。

どうしようもなく、その事実に酔いしれている自分がいる。

2人でいることが嬉しくなったのは何時からだったか。
共有する秘密に一喜一憂するようになったのはどうしてだろうか。

きっと、記憶の中で、最も暖かく大切な思い出のせいだろう。




『おー、アンタが頑張ってるのは知ってるからな。誰にも文句はいわせねぇYO!』




マックが教えてくれた秘密の部屋。
そこであったやり取り。

あのとき、あの瞬間から、私はどうしようもなくマックを意識している。


ずっとずっと、私は待っていた。
凄腕である『虚構のゼロ』じゃない、ちっぽけな『ただの私』の傍にいてくれる人を。


最初はロールが私と共にいてくれる人だと思っていた。
そしてマックと出会って、ロールとマックと私の3人でいる未来を夢想した。

けれど、あの日、マックがこの部屋へ連れて来てくれた、あの日。




――マックはもう『ただの私』の傍にいたのだ。




もう、待つ必要は、ない。
いつかロールが『虚構のゼロ』を追い越して『ただの私』の傍に来ることを待つ必要はない。
マックに秘密を受け入れてくれるという確信を持つことを待つ必要は無い。







――だって、欲しかったものは、もう傍にいるのだから!












「で、本題は?」

「・・・え?」

「呼んだのは先輩だろ?用があったんでないの?」

「そう、そうね。」

貴方に、伝えたいことが、あるの。
けれどその前に、証が欲しい。
貴方が傍にいるという、証が。






「・・・怖いの。」

「・・・」

「司令になれって命令されたとき、とても怖くなったの。」

精神が緊張する。

「・・・」

「私で、大丈夫なのかって・・・私なんかがやれるのかって・・・」

自身の本当の姿をさらけ出すことに・・・緊張している。

「・・・」

「滑稽でしょう?いつも澄ました顔して、いつも恐怖に苛まれてたなんて・・・」

嘘じゃないけれど、本当でもない。
私が恐怖していたのは、虚構のゼロが崩れ、私の傍に誰もいなくなること。

「・・・」

「ふふ・・・ごめんんさい、こんなこと急に言って。笑ってくれていいわ・・・」

けれど、貴方はそうなっても傍にいてくれる。
その証が・・・欲しい・・・

だから・・・!







「わらわねぇよ。」

「・・・え?」

「何をビビッてるのか俺にはわからないけどよ、俺はアンタが司令だから明日死地へ行けるんだ。」

「・・・マック。」

あぁ・・・

「アンタが後ろにいる。アンタが俺の後ろを守ってくれる。そう思ったから引き受けたんだ。」

「・・・マック・・・」

やっぱり・・・そうよ・・・貴方は・・・貴方なら!

「だからさ、あー、なんつーの?大丈夫だって。アンタならやれる。」

「・・・本当に?」

「おう!絶対大丈夫だって!アンタが俺を守ってくれるように、俺がアンタを守るからYO!」

虚構のゼロじゃない、目の前の私を真っ直ぐに見つめて守ってくれると言ってくれる!
凄腕の私でも、頼れる私でもない・・・恐怖に苛まれる私を見ても守ってくれると!

「なに、それ・・・ふふっ。本当・・・いつだってマックはマックね。」

「俺が俺じゃなかったら誰だYO!」

「意味わからないわ・・・ね、マック。」

「ん?」

「お願い、ぎゅってして。」

お願い、傍にいるという証を頂戴、マック・・・

「・・・それは命令ですか?司令。」

「そ、命令よ・・・バカ・・・」

「イエスマム!」

「あ・・・もっと強く・・・震えが止まるように・・・」






もう、なにもいらない。
そうよ、マックさえいれば、私は・・・何も怖くない。



だから・・・

















「ね・・・この戦いが終わったら・・・」

「ん?」

「もう一度、こうしてくれる?」

「ちょっ!?それフラグー!」

「答えは?」

「あの、首筋にビームサー・・・」

「うん?」

「イエスマム!」

「よろしい。・・・ふふっ・・・約束よ、マック。」





/////////////////////////



「9班から13班は施設の制圧と復旧。残りは残党を一掃しなさい!」

「「「「了解!」」」」

イレギュラーハンター達に矢継ぎ早に指示をだす。
シグマ軍はマック達の活躍によりほぼ壊滅。
残りは総大将のシグマを残すまでになった。

「私は先行している襲撃チームへ合流するわ!」

「「「「はっ!お気をつけて、隊長!」」」」

もうここに私がいる必要は無い。
マック達に合流してシグマを倒さなければ。








シグマの居城、秘密工場をひた走る。
そこら中に防衛設備やメカニロイドの残骸が転がっている。

マック達はこの先にいるようだ。

「急がなきゃ・・・マック・・・!」

薄暗い廊下をただ進み、幾つもの残骸を越え、辿り着いた先は広い部屋。

今まで見てきた廊下や部屋よりも酷い。
あらゆる場所が壊れ、強固な外壁すらも大穴が空き、空が見えている。

その広い部屋の中央に、金色のポニーテールが見えた。
床に座り込んで、こちらからは背中しか見えない。

「ロール・・・!」

駆け寄ろうとした私の足に・・・カツンとぶつかった残骸。
何気なく見たそれは・・・紫の、レプリロイドのボディ。

「なっ・・・」

ゆっくりと、持ち上げる。
見間違える、わけがない。

これは・・・これは!

下半身が無い、右腕が無い・・・首が無い!
けれど、けれど・・・これは・・・!


「こ、れは・・・マック!?そんな・・!」


あ・・・あぁ・・・そうよ・・・マック・・・
何故・・・どうして・・・貴方が、こんな姿に・・・
どうして、どうして・・・ドウシテ!?
戦いが終わっても貴方がいなければ意味がないのに!
ようやく欲しいものが手に入ったのに!
これから・・・これから『ただの私』と貴方の未来が始まる・・・はずだった・・・のに・・・

「う・・・うぅ・・・どう・・・して・・・」

持ち上げたマックの体を胸に抱く。
本当ならば、嬉しいはずなのに・・・今は、悲しみだけが・・・

「貴方が・・・いなくなったら・・・私は・・・」

もう、何もかもがどうでもよくなった。
戦う理由がなくなった。
頑張る理由もなくなった。
そうよ・・・もう、私にできることは・・・マックとの思い出に浸るだけ。
思い出・・・暖かな日々・・・マック・・・!?

「・・・思い出・・・メモリー・・・っ!?」

あ・・・あぁ・・・ふふ・・・まだ、終わりじゃない・・・!
そうよ、まだ、まだある!
マックのメモリとAIさえ無事ならば・・・!
首は、マックの首はどこ!?

「・・・ロール!ロール!これは、どういうこと!?」

ロールなら知っているはず・・・!
答えなさい!





「ふん・・・騒がしいと思えば、お前達か、ゼロ、ロール。」

「シグマ・・・!」

今、お前に構っている暇はないのよ!
失せない俗物!

「まさか、ロールにここまでの力があったとはな。」

「ロール!しっかりしなさい!」

何時までも、動かないままでいたら、シグマにやられるわ!
まだ、マックの情報も聞いていないのに・・・!

「ゼロ、ロール。私と共に来い。」

「何を!?」

「お前達は優秀なレプリロイドだ、共に人間どもに思い知らせてやろう、我らの力を!」

「ふざけないで!」

そんな戯言を聞いている暇は・・・!












――圧倒的な、怖気。










「くっ!?」

自身の感じた直感に近くの瓦礫へと飛び込む。








――瞬間、閃光。








部屋が眩い光に覆われ、何もかもが消えていく。


最後に見たものは・・・















マックの首を抱えて、虚ろに微笑む・・・ロールの姿。







<ブツン>



/////////////////////////



<ブゥン>

――覚醒。

「・・・ぁ・・・うぁ・・・」

体中が、痛い。
ダメージのない場所が、ない。

「・・・う・・・<バチッ>ぁっ!?」

少しでも動かすと、走る火花。

「くぅ・・・私は・・・」

生きている・・・のだろう。
もはや、半死人といっても差し支えないが、生きている。

「・・・ロール・・・」

凄まじい威力だ。
私の隠れていた瓦礫どころか、工場の外壁すら崩れ落ちている。

・・・だとすれば、何故私は・・・

「生きて、いるの・・・?」

遠目に見えたのは、シグマの足首。
直撃を受けたシグマは、足首を残し、完全に消滅したようだ。

「・・・くっ・・・あ・・・マック・・・」

仰向けに倒れていた私の胸の上に、マックの上半身。
腕の痛みを無視して、そっと抱こうと紫のボディに触れたとき・・・

「あっ!?」

サラサラと、砂になって・・・崩れた。

「あぁ・・・あぁあぁぁぁぁあ!?」

もう原型なんかない。
私の胸に残った物は、砂の、塊。

「あああぁああ!マック!」

理解、した・・・私が生きている、理由。





『アンタが俺を守ってくれるように、俺がアンタを守るからYO!』




守ってくれた・・・彼は守ってくれた!

「あぅ・・・うぅ・・・マック・・・!」

私に涙を流す機能があるのならば、私の瞳が乾くことはないのだろう。
機能停止しても、ボディだけになっても・・・守ってくれた・・・

その事実が嬉しくて・・・悲しくて。

「・・・マック・・・」

砂になってしまった彼を、手ですくう。
その行為に意味なんてない。
けれど、いつかのように握手をしたような感覚になって、暖かな気持ちを思い出せた。

「・・・ル・・・」

だが、次の瞬間、その気持ちが、消える。

「・・・ール・・・」

湧き上った感情は・・・






「・・・ロール・・・!」

――憎悪。





「ロール・・・!」

・・・よくも。

「ロール!」

・・・よくもよくもよくも!


「ロール!!」

許せない!絶対に許さない!
私からマックを奪い、マックの自由を奪い、私達から未来を奪った!

「・・・憎い。」

全てが、憎い。
あの女が、憎い。
この戦いが終われば、平穏な日常が始まるはずだった。
『ただの私』の日常が始まるはずだった。

私とマック・・・そこにロールがいてもいいと思っていた。

・・・なのに!
ロールは私からマックを!未来を奪った!


「絶対に・・・!」








――ユルサナイ!









「うぁ!?」

溢れた感情と共に、体の奥から何かが湧き上ってくる。

「うぅ・・・!?」

抑えることなんてできない。
体を押さえつけていた何かを押しのけるように湧き上ってくる・・・!

「・・・ぁ・・・」

視界が・・・光に溶け・・・






――全てが・・・零に・・・






















【 ゼロ 】


・・・光の向こう。


【 ワシの最高傑作 】


・・・眩い光の向こうに、誰かが、いる。


【 倒せあいつを! 】


・・・懐かしい?


【 ワシの敵! 】


・・・懐かしい、気がする。


【 ワシのライバル! 】


・・・どこかで見た、誰かが・・・懐かしい。


【 ワシの、生きがい! 】


・・・その声は何故か私を安心させ、従う気にさせる


【 行け!そして破壊しろ!あいつを!全てを! 】


・・・けれど。







【 全てを破壊し、お前はゼロから究極オメガへと至るのだぁぁぁぁぁ! 】








「黙りなさい。」


【 ブツン 】










――どこの誰だか知らないけど・・・どうでもいいのよ、貴方の命令なんか。




/////////////////////////

ゆっくりと、立ち上がる。

さきほどまでの痛みが嘘のように引いている。

それどころか、力が溢れてくる。

「・・・ふふ。」

右手をゆっくりと開いて、閉じて、開いて、閉じて。

「・・・あはっ・・・」

まるで枷から解き放たれたような開放感。
今まで私が取り繕ってきた・・・いや、纏わり付いてきた『虚構のゼロ』がなくなったような・・・気分。

「・・・ふふふ・・・は・・・」

もう、迷わない。
やりたいことは、一つ。

「・・・あはっ・・・アハハハハハハハハ!」

マックを・・・助ける。
そう、それこそが、私の使命。私のやるべきこと。
だって、彼こそが、私の、生きがいだから・・・









「ふふ・・・この力をくれたことだけは感謝してるわ・・・誰かさん?」

あぁ、そうね。
一つだけ貴方に同意できるわね。

「貴方の命令なんか知ったことではないけど・・・破壊してあげる。」

そう・・・破壊する
マックを奪った・・・

「そうね・・・言われたからじゃない。私の意志で、思いで、望みで・・・」









――ロールを破壊する・・・!




/////////////////////////







「マックは私のものなんだからぁぁぁぁぁぁぁ!」


「ロール君!?・・・おぉ・・・マック・・・スマン・・・ワシは・・・おぬしを・・・」

















「ワシは・・・」

「大丈夫ですか?博士。」

「お主は・・・」

「私は、ゼロ・・・マックの・・・」


/////////////////////////


ギリギリのタイミングだった。
ドップラー博士を助けることができたのは奇跡だと言っていいだろう。

シグマの居城を後にした私は、イレギュラーハンター本部へと戻った。
そして、ロールをイレギュラー認定した。

これにより、ロールの位置は常に監視されマック救出の足がかりにするつもりだった。

けれど・・・まさか、マックの生みの親が前線にでるとは思わなかったわ。

本当に危なかった。
あの人がいなければ、マックを救出しても修復することができない。

ロールが最大限に力を溜める瞬間に、博士をイレギュラーハンター本部へ転送することになんとか成功したのだ。


「なんという・・・ことじゃ・・・マック・・・」

「博士、ご自愛ください。イレギュラーの前に行くなんて危険すぎます。」

「違う、違うのじゃよ・・・ワシの知っているあの子はイレギュラーなどでは・・・」

・・・博士はロールを知っているのだろうか。
だとすれば、少しまずい。

私はロールを破壊する。
必ず、絶対、徹底的に。
その結果、マックの生みの親と確執が生まれるのは好ましくない。

私の、マックと私の未来は幸福で満ち溢れるべきなのだから。
マックが慕う博士に嫌われるのは、あまり得策ではない。

「博士・・・確かにあの子は、優しい子でした・・・」

「・・・うむ。」

「けれど、今はイレギュラーなのです。マックを、貴方のご子息を奪った・・・ただのイレギュラーなのです。」

「しかし・・・ワシは・・・」

「マックのボディを破壊し、首を持ち去り、今も破壊を生み出す・・・バケモノ・・・」

「・・・ロール君・・・」

「あれを破壊しなければ、さらなる悲しみが生まれます・・・」

「・・・」

「それに、マックをあのままにはできません。」

「おぉ・・・マック・・・」

「マックを助け、イレギュラーを破・・・止める。それがかつて優しかった、ロールのためでもあるのです。」

「そうか・・・そうじゃな・・・きっとあの子も苦しんでおる・・・止めてあげるのが、優しさか・・・」

「えぇ・・・そうですよ・・・」

マックを助けるために。




――ロールを止める殺す








/////////////////////////


打ち捨てられた、廃工場。
そこにあるのは、動くことも無い残骸のみ。

実にお似合いだと思う。





ねぇ・・・








「無様ね、ロール。」


「ゼ、ロ?」






残骸に囲まれるように、ロールは座り込んでいた。
そして、その腕の中に・・・ずっと捜し求めていたモノがある。






「そう、久しぶりね。」

「・・・うん。」

ロール。妹みたいな存在だった。
いつか本当の姉妹になれると思っていた。


「・・・黒い?」

「ふふ・・・似合うでしょ?」

『ただの私』の傍に来てくれると期待していた。


「なに、しにきたの?」

「決まってるわ・・・マックを助けに、よ。」

「・・・え?」

けれど、もういいの。
貴女は・・・いらないわ。

「あら?聞こえなかったかしら。マックを助けに来た、そう言ったの。」

「意味、わからないよ。」

「どうしてかしら?」

だって、もう傍にはマックがいるもの。
ロールも一緒にいてもいいかと思っていたけど・・・ダメね。

「マックは元気だもの。助けるなんて意味がわからないわ。」

「・・・そう。行き着く処まで行ってしまったのね、ロール。」

貴女が私の未来にいてもいいかなって・・・思ったけど、もうダメよ。
だって・・・貴女が私の未来を奪おうとするから。

「ほら!マックだって、全然元気だって言ってるもの!」

「・・・」

「ほら!ほらぁ!マックは、私と一緒にいることが幸せなんだから!」

「・・・聞こえないわ、貴女の脳内マックの声なんて。」

マックに縋って・・・彼を閉じ込めて・・・!
それでマックの声を聞こうなんて・・・!

「・・・え?」

「首だけで、エネルギー供給のないマックが話せるわけがないでしょう?」

「・・・違う。」

「貴女は、貴女のメモリに記憶されたマックの音声データを自分で編集して流しているだけ。」

「違う!違う違う!」

「・・・耳を塞ぐことはやめなさい、ロール。無様よ。」

「どうして!?どうしてそんなこと言うの!?」

どうして?
真実を語っているだけよ。

「偽者・・・ゼロの偽者だ・・・!」

「・・・あら、どうして?」

「ゼロは優しいもの!私とマックのこと祝福してくれるもん!」

「そう?絶対にお断りだわ。」

貴女を?祝福?
ふふ・・・アハハハハ!
そう、面白いわ・・・ロール。
そんなこと、例え世界が終わってもありえないというのに。

あぁ・・・私は、祝福なんていらないわ。
だって、マックが傍にいる。
それだけで私の未来は祝福されているもの。








「だから・・・!」

「・・・」








「消し飛べぇぇぇぇぇぇぇ!!」

「遅い。」

【 幻夢零 】











「あぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!?」


「ロール、貴女の力はたしかに凄いわ・・・恐ろしいくらいにね。」


ロールの腕を斬り飛ばす。
そして、空中へ浮かんだ彼を・・・抱きとめる。


やっと・・・やっと帰ってきた。
私の・・・マック。


「腕、私の腕が!?」


「威力、範囲、持続性・・・素晴らしい・・・でも、遅いのよ。」


一日だって考えなかった日はなかった。
ようやく、ようやく始めることができるのだ。
私達の、未来を。


「これじゃ、これじゃマックを抱けないよぉぉぉぉぉぉ!」


「いちいち溜めてるようじゃ、私には通じないわ。」


貴女はもう抱く必要なんかないわ。
私がするもの。










「マック!マックどこ!?」

「せめて、最後は一瞬で殺してあげる・・・」

ねぇ?知ってる、ロール。
私ね、貴女となら似たもの姉妹になれると思っていたの。

だって、『ただの私』・・・『今の私』と貴女、きっとそっくりだから。
好きな人が一緒。
愛している人が一緒。
その一点では、貴女と私はきっとそっくりだわ。

あぁ、けど、ダメね。
お姉ちゃんのモノを盗るのはいけないわ。
そうでしょう?

だからね・・・











「マック、マック、マック・・・」

「さようなら、ロール。私の、妹。」
















――ふふ・・・あはっ・・・は・・・アハハハハハハハハハハハハ!!











/////////////////////////


「さぁて・・・起動するぞい。」

「いよいよですね。」

マックを救出してから、幾日。
ようやく新しいボディも完成し、マックを起動する日が来た。

「さぁ・・・起きるのじゃ。」

「・・・マック、起きて。」

今の私を見たら、彼はなんて言うかしら。
きっと、ビックリして、笑って・・・褒めてくれる。

そうよ、私達の未来はここから・・・













「な、なんだぁ?」

「おぉ・・・!マック・・・!」

「マック!」

「何処だここ!?」

「ワシの研究所じゃよ。・・・どうしたのじゃ、お前の家じゃろう?」

「あ?家?何言ってんだ、爺さん。」

「ぬぅ?」

「え・・・?どうしたの、マック。」























「つか・・・あんたら・・・誰?」



・・・え?












「何を・・・言っておるのじゃ・・・」

「あー・・・んー・・・そもそもオレ、誰だー?」

「マック!ワシが、ワシがわからんのか!?」

「いや、だから誰だって?」

「なんという・・・なんということじゃ・・・」

「マック!マック!私の、私のこともわからないの!?」

「んぁ?・・・知らね・・・つか、超美人じゃん!なになに?お姉さんオレのこと知ってんの!?」

「あ・・・あぁ・・・そん・・・な・・・」









――嫌・・・イヤァァァァァァァァァ!







/////////////////////////




・・・あれから・・・マックを一度起動停止させ・・・調査が始まった・・・

・・・結果は・・・マックのメモリに・・・微細な傷が・・・多くあったそうだ・・・

・・・考えれば・・・当然だ・・・マックは・・・ロールのあの攻撃の傍にいた・・・

・・・ロールは・・・マックが傷つかないように・・・守っていたけれど・・・

・・・そうよね・・・あの攻撃は・・・対軍隊用だったもの・・・そんな微調整ができるわけが・・・ない・・・

・・・もう・・・マックは・・・いない・・・私は・・・なんのために・・・













「お前の名はマック・・・マックじゃ。」

「おーオレはマックね。OK!」

「うむ・・・ワシは・・・お前が生きているだけでいい・・・もう一度、始めよう・・・のぉ、マック。」

「んぁ?よくわかんねーけど、ヨロシク!爺さん!」

「・・・うむ。」




・・・私は・・・



「お姉さん!」

「・・・何かしら・・・」

「オレはマック!・・・て言うらしい!ヨロシクな!」

・・・あ・・・手を・・・




『あなたが今日から配属された新人君?』

『おー!ヨロシク!マックだ!』



・・・あの時も、こうやって強引に握手されたっけ・・・






「お姉さんの名前も教えてくれよ!」

『お姉さんの名前も教えてくれYO!』



・・・あ・・・あぁ・・・!


「え、ちょ。どうしたの?なんかやっちゃった?オレ。」


・・・そうね・・・全てを失ったのなら・・・もう一度零から・・・


「私は、ゼロよ・・・よろしくね、マック。」

「おー!ヨロシク!」


・・・もう一度、零から始めよう・・・そして、全てを取り戻すの・・・二人で・・・!




















「そういや、ゼロはオレのこと知ってるんだよな?」

「もう・・・酷いわ・・・恋人のことを忘れるなんて・・・」

「マジで!?」



――もう一度、始めましょう。マック。私達の未来を・・・







/////////////////////////




「んでさー、言ってやったわけよ。」

「へぇ・・・なんて?」

「来たぜ・・・ヌルリとな・・・ってな!」

「それ、どういう場面なの?」

「はっはっは!気にするなよ!」

「もう・・・しょうがないわねぇ・・・」

「そういや、どこに行くんだ?」

「そうね・・・どこに行きましょうか?」

「聞かれてもわかんねーから!」『聞かれてもわからないから!』

「・・・あっ!」

「あ?どったの?」

「ううん・・・ふふっ・・・なんでもないわ・・・・・・えいっ!」

「おわっと!・・・あー・・・ゼロさん・・・その、腕に・・・当たってるんですが・・・」

「うふふ・・・当ててるのよ?」

「なん、だと・・・ならば!オレの隠し機能!マックバイブレーション(爺さんのマッサージ用)!」

「あんっ・・・こら、調子に乗らない。」

「昇龍拳!?ぐはっ・・・我が生涯に・・・一片の・・・悔い・・・無し・・・」

「もう・・・本当、いつだってマックはマックね。」

『「俺が俺じゃなかったら誰だYO!」』


「・・・!」














――ね、マック。

――ん?

――貴方は、今、幸せ?

――おー!こんな美人な彼女がいて、幸せじゃなかったら殺されるぜ!

――ありがと。・・・ね・・・

――おー?

――私のこと・・・好き?

――お、おー・・・

――聞かせて・・・お願い。

――あーうん・・・その・・・好キデス。

――ふふっ・・・そう・・・

――オレだけってずるいYO!

――あ・・・うふふ、聞きたい?

――おー!









――――――――愛してるわ、マック――永遠に、ね――――――――






【 零からの未来END 】












~あとがき~


これにて異伝は終了にてございます。
うむ、まごうことなき、ハッピーエンド。



あぁやめて!石を投げないで!
これが限界!限界なのです!

最初は、こんな流れでした。

爺さん死亡。

ゼロがマックを修理して起動。

あんた誰?

お前はマックじゃない!

幻夢零。

首ちょんぱ。

一緒に逝きましょう。

首抱えてゼロ自己封印。


うむ。これは酷い。
頑張ってみたけど、やっぱりここが限界です。
どんなにがんばってもこうなるのが異伝クオリティ!

ちなみに、ゼロさんはロールと違って素で病んでる設定。
ロールはきっかけが必要ですが、ゼロさんは元々そうでした。
・・・特に意味はないけど。


はい、一応異伝の本編はこれにて完結です。
あとはVAVAルートと修羅ルートを書く予定ですが、予定は未定です。
ロックマンゼロのほうをメインにしますので、かなり先になると思われ。
むしろ書かない・・・ゲフンゲフン・・・書くよ!

あ、あと遂にゲーム買っちゃったので、ロックマンゼロも次回更新に時間がかかりそうです。

そう、ついに買ってしまった・・・




ロックマン・・・・・・・・・・・・EXE1・2・3!




( ・3・)アルェ?



[28394] 【短編という名の】ロックマンX短編【ネタ】
Name: socom2◆c4c431dd ID:a13ac3ff
Date: 2011/08/21 13:51
短編という名のネタの墓場。
一話の長さにできず埋もれていった残骸を掘り返しました。
本編とは関係ありませんのであしからず。





1.新装備1

「またせたのマック。遂に完成したぞい。」

「待ってたYO!遂に俺にも新装備が・・・!」

「うむ。まずはこれじゃ!」

「・・・腕?」

「うむ。アームパーツじゃの。」

「バスター強化?」

「ノンノン。これは近接格闘用アームじゃ。」

「ふむふむ。」

「マックアイで解析した相手の固有振動数と同じ振動を生み出すのじゃ。つまり、固有振動数がどうのこうの物体の耐久度がうんぬんかんぬん。」

「Zzz・・・」

「起きんかぁ!」

「うぉ!?」

「まったく、説明を良く聞かんか。」

「だってYO・・・わけわかんないから三行で言ってくれ!」

「むぅ・・・しかたないのぉ・・・
 腕、震える。
 相手殴る。
 装甲無視の大ダメージ!」

「おぉ!さすが爺さん!最高の武器だぜ!」

「うむうむ。もちろんデメリットはあるぞい。」

「ですよねー。で、デメリットは?」

「バスターとの二者択一じゃ。両方の機能は持てんぞ。」

「うーん・・・右手バスター左手アームとかどうよ?」

「できんことはないが、ちとバランスが悪くなるの。」

「そっかーまぁ何でもかんでもメリットてのは無理だしなぁ。」

「うむ、状況に応じて使うとえぇ。」

「おー!サンキュー爺さん!」

「うむうむ。そしてこのアームの名前は・・・!」

「名前は・・・!?」







「マックシェイクじゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

「最近はフルーリーだぜ爺さん!」

「ちなみに揺れるシェイクと握手のシェイクハンドをかけとるんじゃぁぁぁぁぁ!」

「ドヤ顔をやめろYO!」












2.新装備2

「さて次じゃ。」

「ドキドキワクワク。」

「これじゃ。」

「・・・ランドセル?」

「なんじゃそれは?」

「や、なんでもないYO!」

「うむ。これはバックパックじゃの。」

「うーん・・・まったく効果が見えん。」

「これはの、受信機なんじゃ。」

「電波?」

「ノンノン。エネルギーの受信機じゃて。」

「エネルギー?」

「うむ。ワシの研究所から常にエネルギーを送信しておる。つまり、これを背負っておればエネルギー切れの心配はないぞぃ。」

「ちょっ!?簡単にいってるけどすごくね!?」

「カッカッカ!すごいじゃろうすごいじゃろう。」

「さすが爺さんだぜ!」

「うむうむ。もちろんデメリットはあるぞい。」

「やっぱりかー。」

「重心が高く、後ろに行く上に重いからの。エアダッシュができなくなるんじゃ。」

「む・・・むぅ。結構でかいな。」

「後衛での援護向けじゃの。」

「だな。でも無線エネルギー供給とか爺さんパネェZE!」

「なんせ凝性じゃからのぉ!ちなみにこのパーツの名は・・・」

「名は・・・!?」







「マック WITH ドップラーリンクじゃぁぁぁぁぁ!」

「お、まともで安心したZE!」







「略すとマックドリンクじゃぁぁぁぁ!」

「なんで略しちゃったんだYO!」












3.新装備3

「さて・・・次は凄いぞぃ・・・!」

「・・・ゴクリ。」

「この四門の砲身じゃ!」

「おぉ!カッコイイ!」

「うむ。肩に二門、腰に二門じゃな。」

「おぉー!見た目だけでも満足だYO!」

「肩は火炎放射器、腰は実弾を飛ばすレールガンになっておる。」

「スゲー超スゲー!」

「肩の火炎放射器はショートレンジ、腰のレールガンはロングレンジ、そしてバスターのミドルレンジで穴はなくなるぞぃ!」

「来たか・・・俺の時代!」

「もちろんデメリット有じゃ!」

「もはや様式美だな爺さん!」

「エネルギーの消費が半端ないのじゃよ。撃ち続ければ1時間足らずでガス欠じゃて。」

「い、1時間!?バスターだけなら24時間働けるのに、燃費悪すぎだろ!」

「しかたないじゃろ。レールガンの磁力とか火炎放射器の熱量とかをエネルギーから変換するのが難しくてのぉ。」

「あれ?今さらりととんでもないこと言ってね?エネルギー変換で火とか作っちゃうとか物理法則何処行った?」

「短期決戦向けじゃの。」

「でも攻撃の幅が増えたZE!サンキュー爺さん!」

「うむうむ。ちなみにこのパーツは、Power Tetla Toolと呼んどる。」

「おぉ!カッコイイ!」

「そして、これを装備すれば・・・!」

「パワーマックか!?マックテトラか・・・!?」







「マックポテトじゃぁぁぁぁぁぁ!」

「なぜそこで切っちゃったんだYO!?」












4.新装備の組み合わせ

「・・・爺さん、俺、恐ろしいことに気づいたんだ・・・」

「うむ?」

「バックパックと、4門砲身を同時につければ・・・!」

「ふっふっふ・・・気づいてしまったようじゃのう・・・」

「爺さん・・・!」

「うむ。察したとおり、尽きることのないエネルギー、降り注ぐ弾幕・・・!」

「・・・ゴクリ。」

「機動力は落ちるが、代わりに火力はこの世界でも随一のものとなるじゃろう・・・!」

「まさに・・・歩く砲台・・・!」

「トリガーハッピーも大満足の・・・」

「大満足の・・・!?」







「マックドリンクとマックポテトの組み合わせ・・・マックハッピーセットじゃぁぁぁぁぁぁ!」

「うん、予想してた。」












5.究極の装備

「次が最後じゃの。」

「まだあるのか!スゲーぜ爺さん!若干食傷気味だけどね!」

「はっきりいって、ワシは自分が恐ろしい・・・」

「・・・!」

「ワシの持てる技術の全てをつぎ込んだこのアーマーを着れば、間違いなく最強になれるじゃろう。」

「最強・・・!?」

「これじゃぁぁぁぁぁぁ!」

「こ、これは・・・デケェ!?」

「究極のアーマー、最強の鎧、カイザーボディじゃ!」

「カ、カイザー!?まさに皇帝だぜ!」

「スペックは言わずもがな。メットールを越える強度に全24門の砲身。さらにドップラーリンク内臓で活動時間は実質無限!」

「究極の・・・アーマー・・・!」

「ちなみにデメリットは・・・」

「これほどの装備だとデメリットもでかそうだZE・・・」

「金が掛かる。」

「は?」

「金が掛かる。半端じゃなく。」

「え、それだけ?」

「バカモーン!マジハンパないんじゃから!10回も動かせば、ワシの研究所だって閉鎖ものじゃぞ!?」

「ブー!?マジかYO!金持ちの爺さんですら10回が限界なのか!?」

「うむ。理由は様々じゃが・・・金が掛かるのじゃよ・・・」

「すまねぇ爺さん・・・俺なんかのために・・・」

「いいんじゃよ。お主のために物を作るのが生きがいじゃからの。」

「じ、じーさん・・・!」

「でも動かすのはできればピンチのときだけにして欲しいの・・・」

「あぁ!これは最後の切り札として運用するYO!」

「うむ・・・すまんの。ちなみにこのアーマーには直接搭乗して使うのじゃ。」

「このアーマーを着れば・・・アルティメットマック・・・いや、カイザーマックか・・・!?」







「ビックマックじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「爺自重。」












6.ファミリー

「ぐ・・・よくやった・・・エックス君・・・」

「喋れるのか!?ドップラー!」

「ワタシは・・・シグマに洗脳されていた・・・」

「なんだって!?」

「やつは・・・悪性プログラムだ・・・わたしは・・・やつの体を作ってしまった・・・」

「それはどこに!?」

「それは・・・」

『そこまでだ。ドップラー博士。』

「シグマ!?」

「・・・まさか・・・ここまで来るとは・・・」

『ご苦労だった。ここで眠りに付くがいい。』

「シグマぁぁぁぁぁ!!」

「・・・いかん・・・逃げろ・・・エックス君・・・!」

『エックス共々、引導を渡してやろう。』

「ぐっ・・・さっきのダメージがまだ・・・」

「・・・すまんな、マック・・・」

『塵となれ!』

「くそぉぉぉぉ!」

「・・・おぬしの新装備・・・渡せぬままじゃった・・・」










はい、その無防備な背中にフルチャージバスター。

『ぐうあぁっ!?』

「えっ?」

「・・・!?」

『誰だ!?』



誰だって?

ふっ・・・




「季節はずれのサンタクロース達さ!」

「めぇぇぇ~~リぃぃぃぃクリっスマぁぁぁーーースぅ!!不幸を貴方にプレゼントォォォォ!」

「(`・ω・´)」






「君は行方不明になっていたマックと・・・誰?」

「おぉ・・・お主たちは・・・!」





「ふっ俺達は・・・!」





「粋でイナセなあの長男、マック!」

「クールで知的な次男、ヴァジュリーラ!」

「「そして、ちょっぴりシャイで優しい三男、マンダレーラ!」」

「(*´ω`*)」






「「三人そろって・・・ドップラーファミリー・・・!」」





『ふんっ。』

<ズドン!>

「ぎゃあぁぁぁぁぁ!燃えるYO!」

「兄上ーーーー!」

「Σ(゜ω゜;)」

「お前ら・・・爺、さんを・・・たの・・・む・・・」

「兄上ーーーーーーーー!」

「(;ω;)ブワッ」




『なんだこの茶番は。』

「え?なにこの新喜劇。」

「ヒューッ!最高じゃー!」

「大うけ!?」





『貴様ら・・・まとめてあの世へ・・・!』

「しまった!?クソッ!シグマァァァァァァァ!」




はい、その無防備なところへ。

「弾幕弾幕ー!ヒャッハーー!」

「ひゃーーーはっはっはっはっはぁーーーーっ!」

「(゜ω゜#)」


『ぐわぁぁぁぁぁ!』


「うわー卑怯ー。」

「カァーカッカ!最高じゃ!」











「「「成敗!(`・ω・´)」」」

「なにこれぇ・・・」



~ ロックマンX3 END ~













7.メリークリスマス

カチカチと時計が進む音だけが響く。

暗い室内から窓の外を見れば、真っ白な雪が街の明かりに照らされて神秘的な光景を作っていた。

「・・・兄様。」

しかし、その神秘的光景でも私の心の憂いを消してくれない。
夜も更け、お爺様も妹も既に寝入っている。
本当は一緒に兄の帰りを待つと言っていたが、私が寝かしつけた。
お爺様はもう御年だし、妹はまだ生まれたばかりで、一日一日のメンテナンスは欠かせないからだ。

「・・・兄様。」

兄の帰りを待つのももう慣れた。
兄は忙しく、いつも家にいないからだ。

「・・・兄様。」

しかたがない。兄はハンターとして人々を守るために日夜戦っている。
私達家族のためになんて、我侭を言えるわけがない。

いえ・・・私の、我侭、ですね・・・

「・・・遅いです。」

明日は特別な日。
兄様は忘れているかもしれない。
けれど、私にとっては特別な日なのだ。
だから、理由は言わなかったけれど早く帰ってきてねと、約束をした。



――けれど。



『マック、ごめんなさい。緊急な任務が入ったの。』

『急いでマック!大変なんだから!』






どこぞの金髪似非姉妹のせいで兄は今も戦場にいる。
あれが本当に仕事ならば私も納得しただろう。

けれど・・・


『ごめんなさいね・・・お兄さんを借りるわ。』

『あ・・・いえ、お仕事頑張ってください。』

『ええ、ありがとう。』


ありがとうと言った、あの瞬間。
金髪縦ロールは笑った。

笑った・・・哂ったのだ。

人を安心させる笑顔ではない。
獲物を狙う猛禽類の笑顔だ。

あの女は確実に狙っている。
兄の貞操を。

「あの・・・泥棒猫っ・・・!」

ギシリと、握る手に力が入ったようだ。
落ち着くけ、落ち着くのよ。

「兄様、兄様、兄様、兄様・・・」

兄は無事だろうか。
未だ清いままであろうか。
私が戦闘用ならば、今すぐにでも傍へ駆けつけ、あの金髪縦ロールから守るのに。

家事用の自身が恨めしい。
なぜお爺様は私を戦闘用にしてくれなかったのか。
お爺様には感謝と好意しかないが、その一点だけは不満がある。

「兄様・・・」

カチカチと進む時計。
まだ兄は帰って来ない。

「ん・・・」

行儀が悪いとわかっていても、思わずテーブルに頬を乗せる。

横向きに外を見ても、雪はほのかに街明かりを受け神秘的だった。

けれど、兄はいない。


「いつか・・・思い知らせてあげます・・・泥棒猫・・・」

だんだんと、意識が遠のく。
普段であれば既に休止モードに入っている時間だから。


















『爺さん爺さん!まだかYO!』

『落ち着かんかマック。』

『だってさ、妹ができるんだZE!?落ち着いていられないYO!』

『まぁ気持ちはわからんでもないがの。』

『しかし、黒髪ロングに控えめな胸部装甲とか・・・わかってるじゃないか。』

『ふっ・・・当然じゃて・・・』

『しかもメイドさん仕様だと・・・!?この爺只者じゃねぇYO・・・!』

『なんせ凝り性じゃからのぉ!』

『爺さん、あんた間違いなく俺の爺ちゃんだYO!』

『かっかっか!それでは・・・起動させるぞぃ!』

『おー!』







『・・・ん・・・おはようございます。』

『うむ、おはよう。気分はどうかな?』

『はい、問題ありません、博士。』

『あーダメダメ!硬い、硬いYO!』

『・・・貴方は?』






『俺の名はマック!お兄様と呼べ!』

『オニイサマ?』




















ギシリ、と耳に届いた音で覚醒。
なにか、懐かしい気分だ。
自分が家事機能しかないことが、兄のせいであるような気がした。



「それで・・・何をされているのですか?兄様。」

「ギクッ!」



自身が覚醒した音の原因を見やれば、赤い服に身を包み付け髭をした兄がいた。


「ハッハー!なんのことかな?俺は通りすがりのサンタクロースだZE!」

「・・・えいっ。」

「あ!付け髭を取るなYO!」

髭を取れば、やはり兄だ。
当然だ。
私は兄の身長・重量・足音・駆動音・・・その他全てを把握している。
間違えるはずがない。


「・・・遅いです。」

「ん・・・ごめんな。」

「いえ・・・お仕事ですから。」

兄のせいではないとわかっていても言わずにはいられなかった。
なんて、意地悪なのだろう。私は。

「けど、ギリで間に合った。」

「え?」



ボーンボーンと居間の時計が音を鳴らす。
12時になったのだ。

瞬間、フワリと首に巻かれたマフラー。


「ハッピーバースデー、ヴァジュリーラ。」

「あ・・・!」

憶えていてくれた。
憶えててくれたのだ!

「見ろよ、雪が綺麗だぜ?」

促されて外見れば、街明かりに照らされた雪景色。
先ほどとなにも変わっていないけれども、今の私にはとても綺麗で神秘的なものに見える。


「わ、私の・・・覚えて・・・?」

声が上ずる。嬉しくて、嬉しくて。
幸福に満たされていくことがわかる。

「おー当然だぜ。妹の誕生日忘れる兄がいるかYO!」

「っ!」

もう我慢なんてできない。

兄の首に飛びつくように抱きつく。
ぎゅっと抱いて、兄の駆動音を耳に焼き付けるように聞く。

ありがとう、兄様。



――そして。











「メリークリスマスです!お兄様!」

「おー!メリークリスマス!」








今日はきっと素敵な聖夜になる。















~あちがき~

お読みいただきありがとうございます!

え?ゼロの続きはどうしたって?
実は書いたんですが、書き終わった後に、全部消しました。
理由は以下の通り。

1.中の人死亡
2.ロール死亡
3.ドップラー死亡
4.マックボディ封印
5.ゼロ、マックボディと一緒に自己封印

え、なにこの鬱展開。
1、2は仕方ないにしても救いがなさすぎワロタ。
で、読み直して気づいたんですが、私は・・・

ヤンデレは好きだが鬱いのは嫌いだ!と。

と、いうことで、もうちょい幸せになるように書き直しております。
いましばしお待ちを。

時間稼ぎじゃないですが本編にだせなかったネタの数々を放出しました。
ヴァジュリーラとかマンダレーラとか出したかったけど、本編でポジションがなくて出せなかったんですよね。

参考にと岩本氏の漫画ロックマンエックスを探したんですが・・・
どこにもねぇ!

結果、ヴァジュリーラは有名なメリークリスマスだけ引用し、
マンダレーラに至っては、キャラがわからなかったのでシャイ設定に。
これはひどい。

まぁネタの一つということでご容赦をば。

ぶっちゃけここまで時間がかかったのは漫画探しに時間がかかったというオチ。
結果見つからなかったしね!


・・・orz

ではでは、次回こそゼロ視点です。













追記・・・貰った感想と情報から妄想してみた。
私はゲームをしていませんのであくまで妄想かつネタです。





8.ライブメタル【モデルM】


暗い廊下を歩く。
レジスタンス、その基地の最奥。
司令にのみ侵入を許された場所。

コツコツと響き渡る足音だけが、この廊下にある音源だ。
静かで暗く、長い廊下。

この先に・・・いる。

最も大切で、大事で、掛け替えの無い、モノが。

「開きなさい。」

【音声認識 司令官『プレリー』を確認】

【施錠解放】

私の掛け声と共に、鈍重な音を立てて幾重もの頑丈な扉が開く。

解放された扉の奥へ歩みを進めれば・・・台座に鎮座されたモノが見えてくる。

「あぁ・・・あ、あぁ・・・」

何度見ても、感情が溢れる。
もし、私に涙を流す機能があるのならば、私の顔が乾くことはないのだろう。

そう、台座の上にあるものは・・・

「あぁ・・・おにいちゃん・・・」

大好きだった兄の・・・『バスター』。

かつて、大きな戦いがあった際、兄は戦いに赴き・・・帰ってこなかった。
必死の捜索にも関わらず、兄は見つからなかった。

唯一、見つかったものが・・・このバスターなのだ。

「・・・う・・・うぅ・・・」

湧き上る感情。
悲しみか、絶望か。

交わした約束は果たされることがなく・・・長い時だけが過ぎた。

それでも私は信じている。

兄は生きていると。

「・・・おにいちゃん、力を、貸して。」

今日ここへ来たのは兄を思い出すためではない。
兄の力を借りるためだ。

行方不明になった前司令・・・姉の遺産が見つかった。

ライブメタル・・・【モデルM】。

強大な力を与えてくれるそれは、今のレジスタンスが最も欲するものだ。

だが・・・適合者がいない。
ライブメタルの力を使うには、そのモデルとなった英雄達の遺伝子情報に適合する者が必要なのだ。

そして、【モデルM】の適合者を見つけることが、できなかった。

でも、私には、妙案がある。
絶対に適合できる、考えが。

「・・・お願い、おにいちゃん。」

目の前にある、バスター・・・これこそが、【モデルM】のモデルとなった英雄の腕だからだ。

適合できないわけがない。

そして、今日この日のために準備はかかさなかった。

「・・・私の・・・右腕に、なって。」

自身の右腕パーツを外したのだ。
目の前にあるバスター・・・兄の腕を付ける為に長い時間を掛けて調整をした。

そして、遂に調整は終わり、一つになる日が来たのだ。

「・・・あぁ・・・やっと、やっとおにいちゃんと・・・一つに・・・」

ゆっくりと、バスターを持ち上げ、右肩の接続部へ当てる。



――接続。



「あぁっ!?」



――スパーク。



「う・・・くぅ・・・あっ!?」


火花が、走る。メモリが燃える。接続部に痛みが湧き上る・・・!



「くっ・・・はぁ・・・はぁ・・・!」


当然だ。
兄は旧き時代に生きた英雄。
私程度の低俗な存在が触れていいものではない。



――けれど・・・



「あ・・・あはっ・・・アハハハハハ!」



あぁ、今私は、一つになった。
兄と一つになったのだ!



「うふふ・・・」

手に力を込める。
人差し指。
中指。
薬指。
小指。
親指。

開いて、閉じて。


「あぁ・・・やっと・・・やっとだよ・・・」

右腕を持ち上げて、手の甲にキスをする。
遂に、遂に兄と一つになる日がきたのだ・・・!



そして、腕だけではなく・・・私の全ては兄と一つになる!



ライブメタルを掲げ、叫ぶ。









「ロックオン・・・モデルM!」









――全てが、光に・・・溶け・・・
















「・・・あ・・・」





感じたものは、痛みか。





「・・・あ・・・」





凄まじいまでの、情報の奔流。





「・・・あぁ・・・」





自分など、消えてしまうかのような、情報の嵐。





「・・・あ・・・ぅ・・・」





まるでそれは、全てを削り取るような暴風となって私を打ちつける。





「・・・ぎ・・・くぅ・・・」





消える・・・私が・・・消える・・・





「・・・あぁ・・・」





消え、る・・・消え・・・て・・・あ・・・あぁ・・・















・・・おにいちゃん・・・




















ふと、風が途切れた。


そして、頭を優しく撫でられる・・・感触。


何者かが、私の前で風を、風から守ってくれる。


もはや、動く力などないが、最後の、魂を削ってでも、顔をあげ見上げる。


見上げなければならない。


そうだ、何を犠牲にしても・・・絶対に見上げなければ・・・!






















――・・・YO・・・どうした?







「・・・あっ・・・」







――心配すんな、俺にまかせとけ・・・







「・・・あぁ・・・!」







――なぁ・・・







「・・・お・・・」







――アルエット。













「おにいちゃん!」


















「・・・はぁ・・・はぁ・・・」


気づけば、倒れていた。
暗い部屋。
何一つ変わっていない部屋。


「・・・はぁ・・・はぁ・・・」


あぁ、けれど、決定的な違いがある。


「・・・はぁ・・・あはっ・・・」


この身を包む・・・暖かな、力。


「・・・アハハ・・・ふふ・・・アハハハハハハハハ!」


全身を覆う・・・優しい力。


「アッハハハハハハハ!ハハハハハ!」


私は・・・


「あぁ!おにいちゃん!私は!」


兄と、一つになったのだ。


「もう、大丈夫!何があっても!何がきても!」


そうだ、もう恐れるものなど、ない。


「おにいちゃんがいる!私にはおにいちゃんが!」


守ってくれる。兄が、最愛の兄が!











「うふふ・・・行こう・・・おにいちゃん・・・一緒に・・・」


ずっと、ずっと一緒に。どこまでも、いつまでも。




「ねぇ・・・」














――大好きだよ、おにいちゃん。









~妄想の後悔~

これはヒドイ。
ヤンデレスイッチが入った途端これだよ!
皆さんの感想と調べた情報から妄想してみました。
作者に餌を与えないでください。
絶対に続きません。



[28394] 【ネタ】ロックマンX IF 未来異伝【注意】
Name: socom2◆c4c431dd ID:a13ac3ff
Date: 2011/09/23 13:35
鬱いと書いたら総ツッコミをいただいたのでネタに変更したでござる。
作者はゲームをやっておりませんので、矛盾・捏造にご注意いただきご覧ください。









荒れ果てた荒野。

戦いに傷つき崩れた戦場の跡。

かつて、人とレプリロイドの絆は完全に消え去っていた。

レプリロイドを道具とする人間。

その人間に反逆するレプリロイド。

その関係は修復不可能な所まできていた。

だが、この荒野を作り出すきっかけとなった戦争を契機に再び絆を取り戻すことができた。

かつてあった戦争の傷跡であるこの荒野は、忌まわしいものであるとともに、絆を取り戻した証でもあるのだ。

しかし、そこに生命はない。

当然のことだ。

傷ついた大地は徐々に自然を取り戻し、人とレプリロイドはその豊かな自然のなかで生きているからだ。

故に、この荒野へわざわざ出向く存在はいない。



だが、その荒野を歩く、1体のマントを羽織った人影。
ボロボロのマントは、その人影の中身を覆い隠す。
ゆっくりと、確かめるように歩く人影。


何を思って歩くのか。


何を探して歩くのか。


ただひたすらに歩き続ける人影。



そのときだ、歩く人影を妨害するように、荒野が激しく揺れ動く。

荒野を揺らし、岩石を揺らし、大地を砕いて現れたのは・・・



『GAAAAAAAAA!』



イレギュラー。
かつての戦争の残骸。
破壊を生み出すことしかできない、哀れな玩具。

巨大な蛇を模したそれは、荒野を行く存在を破壊するために身を潜めていたのだ。

『GRUUUUUU!』

久々の獲物に喜んでいるのか、喉を鳴らすように音を上げる。


そして、


『GYAAAAAAA!!!』


人影へと襲い掛かるイレギュラー。



だが、マントの存在は、恐れることなく、怯むことなく、イレギュラーへと対峙し・・・









「・・・ギ・・・ギギ・・・世・・・予・・・!」



――崩れ果てた荒野に、戦いの炎が燃え上がる――






//////////////////////////





『YO!』

『ヨー!』

幼い少女と、紫のレプリロイド。

『今日は何して遊ぼうか?』

『うんとね、えっとね・・・』

今日は何をしようかと、2人で悩んでいる。

これは、夢。

『うーむ・・・あれはやったし・・・』

『うーん・・・うーん・・・』

懐かしい、夢。

かつてあった暖かなそれは、どうしようもなく私の心をかき乱す。

『今日はね、かくれんぼがいい!』

『OK!』

『わたしが探すからおにいちゃんは隠れてー!』

『ふっふっふ・・・この俺の擬態がわかるかな?』

だめ、行っちゃ、だめ。

必死にレプリロイドへ手を伸ばすが、届かない。

『いーち・・・にー・・・さーん・・・』

数を読む少女へ、追いかけるように叫ぶが、届かない。

『・・・さーんじゅーー!・・・よーし!』

必死に手を伸ばしても、必死に声を枯らしても。

『も~い~か~い?』

彼には届かない。

『あれ?・・・も~い~か~い?』

何度呼んでも、何度も叫んでも。

『も~い~か~い?・・・むー!おにいちゃーん!』

遠くに行った、『兄』に届くことはなく。

『おにいちゃーん!もーいーかーい!』

一度失ったそれは・・・

『もーいーかーーーい!!・・・う・・・うぅ・・・おにちゃん・・・』







『おにいちゃん・・・どこ・・・?』

――二度と、取り戻せない。







//////////////////////////








小さな部屋。

必要最低限の物しかない小奇麗な部屋。

そこにあるものは、シンプルなベッドとテーブルのみ。

余分なものなど不要だと言わんばかりの部屋だが、テーブルの上だけは部屋の雰囲気と違い賑わいを見せる。

テーブルの上にあるものは、長い年月を経てぼろぼろになったウサギの人形と、多くの写真立てだ。

写真立てには一枚一枚、異なる写真が入っている。

この人形と写真達だけがこの部屋を彩る。

そんな殺風景な部屋に、1人の女性。

女性は、テーブルの前で写真を眺めていた。

小さな部屋で物音一つ立てずに写真を眺める女性。

だが、その表情は写真を眺めて思い出に浸るようなものではなく、全くの無表情だった。
ふと、眺めることに飽きたのか、女性が写真立てをテーブルへと伏せる。

ゆっくりと、優しく、だが無表情に。

様々な写真を手に取り、写真を隠すように伏せていく。


――黄金の髪を結った少女と、茶色い髪の幼い少女が手を繋いだ写真を、伏せる。


――赤いレプリロイドに、茶色い髪の少女が手に持った人形を見せている写真を、伏せる。


多くの写真がそこにあり、例外なく伏せられていく。

伏せられていく写真には、全てに共通する部分があった。

茶色い髪の、幼い少女型レプリロイド。そして、その少女の幸せそうな顔。

どの写真にも必ずその少女が写っており、幸せそうに微笑んでいた。

その写真の少女とは対照的な無表情の女性は、ただ静かに写真を伏せていく。

そして、最後の写真立てを手に取り、動きが止まった。

いままでの写真と違い、じっとそれを見つめる女性。

先ほどまでの無表情が嘘のように、その顔には感情が見て取れる。




――その顔に秘められた感情は・・・





「ふふ・・・もう少し、もう少しだよ・・・」

彼女は手に持った写真を、どの写真よりも優しく、愛おしく、伏せることなく元に戻した。

そして、振り返ることなく、部屋を出て行く女性。

扉を開け、部屋と外との境界で女性は立ち止まった。





「行ってきます・・・おにいちゃん。」





音もなく閉まる扉。

振り返ることのなかった女性の背を最後まで見ていたのは・・・伏せられることのなかった写真立てのみ。










//////////////////////////





「ぐはっ!?」

「どうだ!」

遥か高い鉄塔、その頂上で一つの戦いが終わる。

「き、キサマ・・・!」

「ここまでだセルパン!」

大地に倒れ伏す大男、セルパン。
その男を倒した少年、ヴァン。

「何故だ・・・何故理解しない!我々適合者こそが、世界を統べるべき存在なのだと!」

セルパンは激情をヴァンへと突きつける。
そう、彼の目的、人類の救済を邪魔した少年へと。

「何が世界を統べるだ!何が世界の救済だ!」

ヴァンはセルパンの言葉を否定する。
セルパンの言う救済、それは人類に犠牲を強いる、邪悪なものであるからだ。

「人を犠牲にして!それが救済になるかよ!」

「己の正義を振りかざす小僧が何を言う!私は!世界を思っているのだ!」

「ふざけんな!世界を思う奴が!人を!レプリロイドを傷つけるのか!」

セルパンの思想、それはライブメタルに選ばれた自分が世界を統べるべきだという選民思想。

ライブメタル、それは旧き英雄達の意思を、力を宿した奇跡の存在。
その力を得たものは、人ならざる力を、英雄の力を振るうことができるのだ。

そして、その力に魅入られたセルパンは、世界を手中に収めようと暗躍した。

だが、その邪悪な行いは、英雄の力を受け継いだ少年によって阻止されたのだ。

「おのれ・・・おのれぇ!小僧が!何も知らぬ小僧が!」

「何も知らないからって!黙って見過ごすほど薄情じゃないんだよ!」

世界を思った男は、人とレプリロイドを思った少年に倒された。

しかし、男は止まらない。

「サイバーエルフよ!感情を!憎悪を!絶望を!命を・・・よこせぇぇぇぇぇぇぇ!」

「なっ!?待て!」

セルパンは最後の力を振り絞り、周囲に設置されたサイバーエルフへと命令を出す。






だが、その命令は叶わない。






「フハハハハハ<パン!>がぁっ!?」

「え?」


――背後から放たれた弾丸が、セルパンの命を奪う。





//////////////////////////




大地に倒れ伏す、セルパン。

「なに・・・もの・・・だ・・・」

もはやその命は風前の灯。
そして、彼の命を奪う者は・・・



「ふふ・・・無様ですね、セルパン。」



ガーディアン司令、プレリー。

「き、さま・・・!」

「プレリー!?なんでここに!?」

美しいな女性、いや、少女と言ってもいい可憐な存在は、冷笑を持って答える。

「あぁ・・・ヴァン、お疲れ様。遂にやったのですね。」

「あ、あぁ。なんで、ここに?」

「なんで?決まってますよ・・・」

冷酷な瞳。
感情を灯さない、冷徹な銃口がセルパンへ向けられる。




「待っ<パン!>」



カランカランと、空薬莢が床を転がる。

「プレ、リー・・・?」

容赦などない。
慈悲もない。

静止の声を掻き消したのは、銃声。

今まで見てきた、優しい彼女とはまるで違う姿に、ヴァンは呆然とする。

「ふふ・・・」


その彼女は、微笑みと共にヴァンを見る。

「っ!?」

そこにかつてあった暖かさは、ない。
彼女の瞳をみたヴァンに走ったのは、怖気。

暗い、暗い深淵を覗き込んだような感覚。

彼女は、プレリーは、ヴァンを見ていない。

「あはっ・・・素敵・・・」

「え?」

「サイバーエルフの輝き・・・命の、輝き・・・」

「・・・プレリー、どう、したんだ?」

「この輝きと、そう、貴方のライブメタルさえあれば・・・」

「プレリー!どうしたんだよ!?」

「ねぇ、ヴァン。」

「な、なんだ?」

「お願い・・・」

「え?」








――死んでくれますか?




//////////////////////////



響く、銃声。

「何を!?」

放たれる、弾丸。

「あん・・・動いちゃ、ダメです。外れちゃったじゃないですか。」

向けられる、冷笑。

「プレリー!何をするんだ!?」

感情のない、瞳。

「ふふ、何を・・・何を、ね・・・知りたいのですか?」

笑い、哂い、嗤う、少女。







「貴方のライブメタルが欲しいの。」

「・・・え?」

「そう、貴方のライブメタルと、サイバーエルフ達の命があれば、帰ってくる。」

「何を、何を言ってるんだ・・・」

「おにいちゃんが、帰ってくるの!」

「プレリー!」

「おにいちゃんが帰ってくる!そのために!貴方のライブメタルが!」

「君は!」

「だから・・・!」

「な、それは!?」






――ロックオン・・・モデルM!





//////////////////////////


光の奔流。

眩い輝きが少女を包む。

「まさか!?プレリーが!?」

その輝きを、ヴァンは知っている。

そう、その輝きは、ライブメタル。




「あはっ・・・アハハハハハハハハハハ!」



光の中から現れた少女は、紫のアーマーに包まれ、その瞳は赤いバイザーで覆われていた。


「適合者だったのか!?」

「ふふ・・・もうすぐ・・・もうすぐだよ・・・」


ロックマンとなったプレリー。
だが、その瞳にヴァンは映らない。

「き、君は・・・」

ロックオンすることによって、変身前の長いマントに隠されていたプレリーの体があらわになる。

現れた体に、違和感。

「その、腕は!?」

長い、右腕。
かつて見た、プレリーの腕とまるで違う。
あまりにアンバランスな、長く逞しい腕。

可憐な女性であるプレリーとは違う、男性の腕だ。

「あぁ・・・おにいちゃん・・・」

プレリーは、陶酔したように、その腕へとキスを落とす。

「もうちょっと、待ってね・・・」

瞳を隠すバイザー。
そのバイザーが映すものは・・・





『Σ』の紋様。





「さぁ!もう死んでください!ヴァン!」

「プレリー!?」

バイザーに映る『Σ』の紋様が輝き、プレリーが動き出す。

少年の命を奪うために。


//////////////////////////



「待って!俺は君と戦いたくない!」

「すぐに死んで!今死んで!早く死んで!」

「プレリー!?」


激しい戦闘。

プレリーが放つのは、光弾の嵐。
一撃一撃が必殺の威力を持ち、壁にぶつかる度に大穴を穿つ。

「クソ!なんだってんだ!?」

必死に避けるヴァン。
その背後は、プレリーの攻撃によって風穴が開き、青空が覗いている。

「アハハハハハハハ!」

攻撃、砲撃、光の雨。

止まることなく放出される死の咆哮。

「ちぃ!?」

しかし、ヴァンは反撃することなく避け続ける。

「やめてくれ!」

そう、ヴァンにプレリーを攻撃する意思はないのだ。
ガーディアンの司令である彼女を尊敬した。
戦場であっても優しい彼女を尊敬した。
守るために戦い続ける彼女を尊敬した。

ヴァンは、目の前の少女の生き方を、尊敬していたのだ。

故に・・・

「くっ!」

攻撃など、できるわけがない。

必死に回避を続けるが、そのままでいられるほど、甘い攻撃ではなく・・・


「うぁ!?」


足に当たり、機動力を失う。


「ふ・・・ふふ・・・捕まえました・・・」

「うぅ・・・どうして・・・」


ゆっくりと近寄るプレリー。
確実に命を奪うためだろう。
ヴァンの傍により頭にバスターを突きつける。

「ありがとうございます、ヴァン。貴方には感謝していますよ?」

あまりに、無防備。
それは、ヴァンが攻撃できないと察しているからか。

「さようなら、ヴァン。」

「・・・!?」

放たれる閃光を、






「あっ?」

「え?」





――ヴァンが切り裂く。




「え、あれ?」

その声を出したのは、プレリーか、ヴァンか、あるいは両方か。
プレリーのアーマーを袈裟斬りに断つ、モデルZX。

その事態が信じられないのは、両方だった。

「ヴァン・・・!」

「ち、違う!」

プレリーは初めて感情の篭った瞳でヴァンを睨む。
しかし、ヴァンはそんなプレリーに狼狽した姿しか見せられない。

「お、俺じゃない・・・!?」

「あぅ!?」

否定の言葉と共にでたのは、剣閃。
振り上げられたゼットセイバーは、プレリーを切り裂く。

「やって、くれますね・・・!」

「違う!俺は!?」

やられる前にと、ヴァンを打ち貫こうとしたプレリーの『右腕』を・・・



――光の刃が斬り飛ばす!



//////////////////////////



「きゃぁ!?」

「プレリー!?」

「あ、あぁ・・・あぁぁああぁぁぁ!?」

「っ!?」

「腕!?おにいちゃん!おにいちゃん!どこ!?」

斬り飛ばされた腕に縋るように倒れこむプレリー。

「おにいちゃん・・・おにいちゃん・・・」

まるで熱に浮かされたように何度も何度も口ずさむ。

「お、おい、止まれ・・・」

そんな少女に追い撃つかのように、バスターを構えるモデルZX。

「おにいちゃん・・・おにいちゃん・・・」

だが、少女は己の命の危機にあっても、右腕を抱き、ブツブツと兄を呼ぶだけだった。

「やめろ!俺はプレリーを撃つつもりはない!」

必死に銃を逸らそうとするヴァン。
しかし、彼が纏う英雄の鎧がそれを許さない。

「なんだって!?プレリーが呪われている!?」

彼の鎧、ライブメタルがヴァンへ囁くのだ。

プレリーを破壊しろと。

「クソっ!さっきからわけもわからないことを!」

彼だけに聞こえる英雄の声。

それは・・・

『アレを壊せ。あれは呪い。忌まわしき呪い。古き呪い。恐ろしい、ウイルス。』

呪詛となってヴァンに纏わり付く。

『アレが世界に解き放たれれば、レプリロイドは破壊の権化となる。』

冷酷に告げる。
ただただ、プレリーを壊せと。

「やめろ・・・やめろぉぉぉぉ!」

必死に抗うヴァンだったが、ライブメタルの意思達はヴァンの腕をゆっくりと動かし、プレリーへと向ける。



そして、放たれる、破壊の光。



「やめ・・・ろぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉ!」









――爆発。




//////////////////////////








バチバチと燃え上がる爆煙。

真っ直ぐにプレリーへと向かったバスターは、




「おにいちゃん・・・おにいちゃん・・・」

「・・・ギ・・・」




横から飛び込んできた人影に阻まれた。


「え?」


いきなり現れた何者かに、ヴァンは気の抜けた声をだす。


「おにいちゃん・・・おにいちゃん・・・」


己を庇うように現れた人物にさえ、何の反応も示さないプレリー。


「・・・ギギ・・・」


そして、軋んだ音を出す人影。
ボロボロのマントを羽織った人物の中身は伺えない。


「おにいちゃん・・・おにいちゃん・・・」


英雄の腕を抱きこむプレリーの傍で、その人物は立つ。
そして、ゆっくりとマント越しの腕がプレリーへと近づく。

「待て!」

得体の知れない存在に、ヴァンが静止の声を掛けるが、それと反するように動かない体。

「クソ!?なんで、なんで動かないんだ!?」

先ほどまでの勝手に動いていたときとは真逆。
ライブメタルはその宿主の動きを封じる。


「おにいちゃん・・・おにいちゃん・・・」

「ギ・・・ギギ・・・」

軋んだ音を出しながら、腕がプレリーへと近づく。




・・・そのときだ。

一陣の突風が、人物の全てを覆い隠していたマントを吹き飛ばす。

マントの下に隠れていた存在は・・・








右腕が、ない。

顔の半分が、ない。

体中に傷、傷、傷。

あらゆる場所から紫電が走り、どす黒いオイルが血液のように流れ出している。

そして、装甲を失った顔からは、剥き出しの精密機器が空気にさらされ、赤く光るカメラアイが、そこが瞳であることをかろうじて教える。








「なっ!?」

あまりに悲惨なその体に驚愕の感情しかだせないヴァン。



「ギ・・・ギギ・・・」

ゆっくりと、プレリーへと向けられる左腕。
その腕も装甲を失い、骨組みだけが残っている。

「動け!クソ!動けよ!?」

まるで、地獄から這い上がった骸骨。
その醜悪な存在が、自身の尊敬する女性へ近づくことにヴァンは憤慨する。



「おにいちゃん・・・おにいちゃん・・・」

「・・・ギ・・・A・・・」

ゆっくりと、近づく。

「おにいちゃん・・・おにいちゃん・・・」

「・・・A・・・る・・・」

少し動かすだけで火花が飛び出すが、その動きはとまらない。

「おにいちゃん・・・おにいちゃん・・・」

「・・・A・・・る・・・ゑ・・・」

そして、ついに左腕がプレリーへ届き・・・












「・・・?」

ゆっくりとその頭を撫でた。

「・・・ぁ・・・」

ゆっくりと、確認するように。

「・・・ぁぁ・・・」

ゆっくりと、宥めるように。

「・・・あぁ・・・!」

ゆっくりと・・・慈しむように。

















「ギギ・・・Aる・・・ゑっ・・・ギ・・・To・・・」

「おにぃ・・・ちゃん?」








//////////////////////////







「うぁ・・・あ・・・あ・・・あぁあぁぁぁ!」

「プレリー!?」

先ほどまでの、壊れた人形のように同じ言葉を繰り返す様子とまるで違う。

「あぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

それは、感情の爆発。
沈んでいた感情が、澱んでいた感情が、一気に溢れ、爆発する。

「ギ・・・アル・・・ゑ・・・AるEと・・・」

叫ぶプレリーを落ち着かせるように、ゆっくりと撫で続ける、壊れたレプリロイド。
何事かを話そうとしているが、失った顔のパーツのせいか、うまく言葉を作れていない。

「ギ・・・ギギ・・・ある・・・あるえ・・・」

だが、何度も、何度も繰り返し。
言葉を何度も作り直す。

「ギギ・・・あるえと・・・」

そして、紡がれる、





「・・・アルエット・・・」

「おにいちゃん!」

万感の思い。





プレリーはレプリロイドへと抱きつき、レプリロイドはプレリーの頭を撫で続ける。

「おにいちゃん、おにいちゃん、おにいちゃん・・・」

「・・・ギ・・・よ・・・余・・・世・・・YO・・・」

「おにい・・・ちゃぁぁん・・・」

レプリロイドの腕の中で、何度も何度も繰り返すプレリー。
その瞳には、キラキラと輝く、涙。

彼女に涙を流す機能はない。
しかし、溢れた思いが、とめどない感情が、涙となって流れ出る。

「私、わたしね、探したの、いっぱい、探したの。」

「・・・ギ・・・DO・・・しタ・・・」

「ずっと、ずっと、探したの。」

「・・・そ・・・U・・・か・・・お、お、オォォ、オレ、も・・・さが・・・SHIタ・・・」

「あのね、あのね、いっぱい、いっぱい話したいことが、あるの。」

「・・・あ・・・あ・・・A・・・Aa・・・お、オおれ、も・・・ある・・・YYYO・・・」

「うん、うん、いっぱい・・・いっぱ・・・い・・・」

「ギギ・・・ギ・・・ぎ・・・」

溢れた感情に、プレリーは倒れる。
限界を振り切った精神と、ボロボロの体が、活動をやめたのだ。


「ギ・・・ギ・・・」


そして、レプリロイドはプレリーをそっと大地へ下ろし、傍に転がっていた『右腕』を拾う。


「ギ・・・」


――接続。


おもむろに拾い上げた腕を己の右肩へ接続するレプリロイド。
無理やり繋いだせいだろう。
その接続部にはバチバチと紫電が走る。



「ギ・・・ギギ・・・」



だが、まるで気にしていないとばかりに、その右腕を動かすレプリロイド。
そして、大地へ横たわるプレリーをゆっくりと抱き上げ、歩き出す。


「待て!」

プレリーの様子に、ただ見守ることしかできなかったヴァンが叫ぶ。
怪しい存在に彼女を連れて行かれることは、さすがに見逃せないと。


「・・・なっ!?」

すると、先ほどまで動かなかった彼の腕が、またも勝手に動く。


「くっ!さっきから、なんだってんだ!?」


ゆっくりと腕を上げ、バスターをチャージする。


「やめっ!?」


その輝きはフルチャージ。
その威力はレプリロイドどころか、プレリーすらも消し飛ばす。
故にヴァンは動く腕を止めようとするが・・・


「クソォォォォォ!?」


抵抗むなしく、放たれる。





――その頭上、青空へと。





「・・・え?」


もはや、理解することなどできないのだろう。
ヴァンにできたことは、気の抜けた声。

空へと放たれたバスターの意味を知るものは、ライブメタル・・・英雄達の意思のみ。

放たれた、バスター。
その意味は・・・



――祝砲。



ライブメタルに宿る英雄達が、壊れたレプリロイドへと放った祝福の輝き。

絶望的な戦いから生還した戦士への、祝福。

戦い続けた戦友の帰還への、祝福。

彷徨い続けた親友が、帰るべき場所へと辿り着いたことへの、祝福。

万感の思いを込めたそれは、語ることのできない英雄達が唯一、壊れたレプリロイドへと渡せたものであった。

そして、少女を託すという信頼。

恐ろしいウイルスに感染した少女を救うことができるのは、レプリロイドだけであると。

立ち去るレプリロイドなら、忌むべき呪いから少女を救えるという絶対的信頼を、物言わぬライブメタルは輝きに込めたのだ。





その輝きを背に、レプリロイドは歩み去る。







――その腕に、彼が守りたかった宝物を抱いて。















//////////////////////////





小さな部屋。

必要最低限の物しかない小奇麗な部屋。

そこにあるものは、シンプルなベッドとテーブルのみ。

余分なものなど不要だと言わんばかりの部屋だが、テーブルの上だけは部屋の雰囲気と違い賑わいを見せる。

テーブルの上にあるものは、長い年月を経てぼろぼろになったウサギの人形と、多くの写真立てだ。

写真立てのほとんどは、伏せられている。

まるで、過ぎ去った過去を隠すかのように。

失った過去を、思い出さないように。

多くの写真がそこにあり、例外なく伏せられている。

だが、唯一つ、伏せられていない、写真立てがある。


そこに、収められている物は・・・











――ブイサインをする紫のレプリロイドと、その肩に乗り、幸せそうに眩しい笑顔でブイサインをする、幼い少女の写真。













//////////////////////////














『も~い~か~い?』

『も~い~か~い?』

『も~い~か~い?』




『むー!』

『おにいちゃん!』

『おにいちゃーーん!』




『・・・う・・・』

『・・・うぅ・・・』

『・・・ぐす・・・』




『おにいちゃん!どこ!』

『どこなの!』

『おにいちゃん!何処ーーー!』





『・・・ヒクッ・・・うぅ・・・』

『もう・・・いい・・・かい・・・』

『・・・もぅ・・・いい・・・かい・・・』









『・・・も・・・い・・・い・・・か・・・ぃ・・・』




















『おー!もういいYO!』



『っ!おにいちゃん!』



『おわっと!急に飛びつくなYO!』

『おにいちゃん!おにいちゃん!』

『どうした?泣き虫さんだな。』

『探してた!ずっと探してたの!』

『おー・・・そっか、ゴメンな。』

『うー!・・・ユルサナイ。』

『むむ!これは一大事だYO!』

『むー!』

『どうすればご機嫌になってくれるのかな、お姫様。』

『・・・ょ。』

『ん?』

『・・・いっしょ。』

『んん?』












――――――ずっと、いっしょに居て――おにいちゃん――――――








~あとがき~

いただいた感想の中にあった、プレリーラスボス説。
それに感じたときめき。

思わず書いてしまいました。

そして、今の私の思い。


・・・これはヒドイ(゜д゜;)


何が鬱嫌いだYO!鬱一直線じゃねぇか!と言われても言い訳のしようがないですね!

だって!好きなんだもん!ヒロインがラスボスとか!
胸キュンなのです!書かざるを得ない!

だから作者に餌を与えるなとあれほど(ry
ゲームやってないのになにやってるんだ(ry
絶対に続かない(ry
むしろ続かせない(ry


・・・あれ?ロクゼロより先に完結した?

マ、イッカー(´∀`*)

お読みいただきありがとうございました!

ゲームもやってないくせに書くなよこの野郎と思った方は、ご一報ください。
光の速さで消します。

追記:
感想ありがとうございます!
そうか、この程度じゃ鬱じゃないんですね。
私の訓練が足りないのか、皆さんの耐性が高いのか・・・私がレベルが低いせいですね!
鬱を期待させた方には、ガッカリさせてしまいました、ごめんなさい。

ちょっくら真の鬱を理解するまでROMってくるYO!
次は、鬱鬱した顔でお会いしましょう(´∀`)ドヤァ

それと、やっぱり出てしまいましたか、ゲームとの矛盾。
・・・無謀でしたよね、知らないのに書くとか。

次回更新時には消そうか審議中。

感想ありがとうございました!


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