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2011年9月23日(金)付

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日米首脳会談―外交立て直しの起点に

外交もまた出直しである。野田首相が国連総会出席のため、ニューヨークを訪れ、まずオバマ米大統領と会談した。両首脳は日米同盟の深化で一致した。首相は会[記事全文]

パレスチナ―米国は拒否権使わずに

国連総会で、中東和平が焦点になっている。いっこうに進まないイスラエルとの交渉にしびれを切らしたパレスチナが、国家として正式に国連に加盟しようとしているからだ。米国は止め[記事全文]

日米首脳会談―外交立て直しの起点に

 外交もまた出直しである。

 野田首相が国連総会出席のため、ニューヨークを訪れ、まずオバマ米大統領と会談した。

 両首脳は日米同盟の深化で一致した。首相は会談後、「個人的な信頼関係を築くいいスタートが切れた」と自賛した。

 それにしてもである。

 就任から3年に満たないオバマ大統領が会う日本の首相は、麻生、鳩山、菅各氏に続いて、野田氏で実に4人目である。

 首脳外交の時代に、これだけトップがころころと交代していては、戦略的な外交の展開など望むべくもない。

 首脳間の本当の信頼関係は、たった1度の短い会談でできるはずもない。相手の国内的な立場にも配慮しつつ、約束を誠実に履行する。そして、手を取り合って課題に立ち向かう。こうした地道な連携を重ねて初めて実現する。その努力は、すべてこれからだ。

 いまの日米関係に突き刺さった最大のトゲは、沖縄県の米軍普天間飛行場の移設問題だ。

 大統領は初顔合わせにもかかわらず、具体的な結果を明確に求めてきた。首相も日米合意の実現に「沖縄の理解を得るよう全力を尽くす」と応じた。

 現行計画が一向に進まず、米国側がいらだつ事情はわかる。しかし、首相のいう「沖縄の理解」がもはや得られそうにないことは、誰の目にも明らかだ。

 つい最近も、沖縄県の仲井真弘多知事が米国で講演し、きっぱりと県外移設を求めた。日米合意が強行されれば「全県的な激しい基地反対運動につながり、日米安保体制に悪影響を及ぼしかねない」と警告もした。

 知事が米国社会に向けて直接発したメッセージは重い。

 日米安保体制の安定的な維持のため、両国政府はともに打開策を探るしかあるまい。同盟の知恵としなやかさが試される。

 野田外交は、基軸である日米同盟の確認からスタートした。そこから、多極化する国際政治での日本の立ち位置を確認しつつ、誠実かつしたたかに展開をしていくことが求められる。

 そのためには、強固な日米関係を土台に、東アジア、さらにはアジア太平洋地域の安定的な秩序をつくることだ。とりわけ、昨年の尖閣事件で一時、冷え込んだ中国との関係を本格的に改善する必要がある。

 10月に首相の訪中が予定され、11月にはアジア太平洋経済協力会議や東アジアサミットといった多国間外交の舞台が控える。首相には、そうした一連の機会を通して、日本外交の全体像を紡ぎ出していってほしい。

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パレスチナ―米国は拒否権使わずに

 国連総会で、中東和平が焦点になっている。いっこうに進まないイスラエルとの交渉にしびれを切らしたパレスチナが、国家として正式に国連に加盟しようとしているからだ。

 米国は止めようと必死だ。オバマ米大統領は、パレスチナが申請しても、安全保障理事会で拒否権を使うと明言した。

 パレスチナ自治区のヨルダン川西岸では、国連加盟を求める市民のデモが起きている。「アラブの春」による民衆革命の刺激もあり、なぜ自分たちは主権国家として認められないのか、という不満が募っている。

 93年にイスラエルと暫定自治で合意してから、自治政府は選挙などで実績をあげてきた。人口は西岸とガザ地区を合計すれば400万人を超える。

 一方、交渉を続けてもイスラエルは占領地への入植をやめない。パレスチナの立場は弱くなるばかりという失望は深い。

 国連加盟は象徴的な意味だけではない。国際刑事裁判所(ICC)や国連人権理事会にも加盟できる。占領地での不法行為を国際的に糾弾すれば、イスラエルには打撃になるだろう。

 ここまで事態をこじらせたのは、仲介役の米国の責任が大きい。昨年9月に和平交渉を再開し、1年以内の和平合意を目指すと確認した。ところが、直後にイスラエルが西岸占領地で入植地の建設を再開した。それを止めることができなかった。

 オバマ氏も板挟みだ。

 拒否権を使えば、アラブ世界から「二枚舌外交」と反発をかう。しかし来年に大統領選挙を控えているので、米国内に支持者が多いイスラエルに圧力をかけるのも難しい。国内では右派から「テロリストとイスラエルを同等に扱っている」と批判される状態だ。

 国連でオバマ氏は「イスラエルの安全保障への米国の関与は揺らぐことはない」と語った。米国が「公正な仲介者」の地位を失うことは、イスラエルの利益にもならないはずだ。

 パレスチナが国連加盟を求めることは理解できる。ただ、安全保障理事会は採決を急ぐ必要はない。米国も頭から拒否権を行使するのは控えるべきだ。

 国連加盟について、自治政府と統一政府を目指すイスラム組織ハマスは反対しているという。内部で意見が割れているとすれば、その意思統一の時間も必要だろう。

 イスラエルには熟考を求めたい。周囲の民衆に敵視されたままでの安全保障はありえない。「2国家共存」を受け入れる以外に選ぶ道はないはずだ。

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