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上関町長選:「原発抜き」の将来像争点 20日告示

原発計画地域
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 中国電力(広島市)が上関(かみのせき)原発建設を計画している山口県上関町の町長選が20日に告示される。投開票は25日。3選を目指す現職の柏原重海氏(62)と、前町議で新人の山戸貞夫氏(61)の一騎打ちになる見通しだ。柏原氏は原発推進派、山戸氏は反対派で、両派の対決は9回目。2氏の対決は03年以来2回目となる。町長選では推進派が当選し続けてきたが、野田佳彦首相は「新規原発建設は困難」と表明。原発の賛否を巡り、約30年に及んで固定化してきた町長選の構図は変わりつつある。【小中真樹雄、遠藤雅彦】

 「原発財源が期待できないとなると、別の行き方を考えなくてはならない」。柏原氏は9月町議会の議場で語気を強めた。福島第1原発事故後も「町活性化に原発関連の交付金は必要」との立場を変えていないが、町長選の争点は「原発抜き」も想定した町の将来像をどう描けるかにかかってきたからだ。

 9月議会では原発なき町づくりも見据えた地域ビジョン検討会(仮称)の発足を決めた。検討会には、町長ら執行部と全12町議の参加を想定。町議も推進派(9人)、反対派(3人)の立場を超え、町の将来像を話し合う計画だ。しかし、国のエネルギー政策の形はまだはっきりとは見えてこない。計画中の上関原発が、首相が言う「新規原発」に入るかどうかも不透明だ。「原発建設の権限は私にはない。有権者から今後の建設について尋ねられたら『国の判断を待つ』としか答えようがない」。柏原氏はいらだつように語った。

 町の離島・祝(いわい)島で7日に出馬会見を開いた山戸氏は「原発前提の町運営」はありえないと強調した。「原発が町長選の争点ではない。町がどうやって生き延びていくかが問われている」

 祝島島民のほとんどは原発計画浮上以降「反対」を訴え続けている。原発を巡る長期の争いは、町民間に深い亀裂を生んだ。原発交付金がなくなった後の町政運営について、山戸氏は「急ぐ必要のないものは後からやるしかない」と話す。

 祝島では「自然エネルギー100%プロジェクト」と銘打ち、太陽光パネルを各戸に設置する運動を1月から始めた。今月15日には設置第1号の工事もあった。山戸氏はこのパネル設置を町全体に広げることを訴えているが、設置費用はまだ寄付金頼みの状況だ。

 【ことば】上関原発計画

 中国電力が山口県上関町長島に出力137.3万キロワットの改良型沸騰水型原子炉2基を建設する計画。事業費は約9000億円。82年に構想が表面化して以来、賛成・反対をめぐって町を二分してきた。中電は来年6月に1号機の本体工事に着手、18年3月の営業運転開始を目指している。しかし福島第1原発の事故を受けて、同県の二井関成知事は6月、来年10月に失効する建設予定地の公有水面埋立免許の延長を認めない方針を示し、計画の大幅な見直しは必至となっている。

毎日新聞 2011年9月19日 10時10分(最終更新 9月19日 13時07分)

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