「結果を求める時期が近い」。ニューヨークで野田佳彦首相との初の会談に臨んだオバマ米大統領は、こう言って米軍普天間飛行場移設問題で目に見える進展を促した。日本の首相がくるくる代わり、日米関係が停滞していることに対する米側の強いいらだちがうかがえる。
東日本大震災後、トモダチ作戦をはじめとする米国の圧倒的な人的物的支援で、私たちは日米同盟のありがたさと日米関係の強固な絆を再確認した。だが、日本が震災を理由に外交を動かさないですむ時期はとうに過ぎている。日米首脳会談でオバマ大統領が示したビジネスライクな要求は、「震災外交」というモラトリアム(猶予期間)が終わりを告げたことを意味するものだ。
普天間飛行場問題に限らない。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)参加も、決断や行動が遅れるほど、日米関係にマイナスになるだけでなく、国際的にも不利な立場に追い込まれる。復興だけでなく、外交も急がなければならない。
今の日米関係は順風満帆からはほど遠く、不正常とさえ言えよう。本来なら、日米安保条約改定から半世紀の昨年、同盟深化をうたう共同宣言をまとめる段取りだったのが、日本の政局混迷で宙に浮いた。今月はサンフランシスコ講和条約と旧日米安保条約調印から60年という歴史の節目なのに、同盟をじっくり論議する機運は生まれなかった。
民主党政権になって、首相がワシントンを公式訪問してホワイトハウスで米大統領と会談した例はない。国連総会など国際会議の場を利用してしか日米首脳が会談できない現実が、そもそも異常である。
野田首相は、オバマ大統領が就任後2年半余で会った4人目の日本の首相だ。「個人的な信頼関係を築くいいスタートが切れた」と会談後に語った野田首相だが、過去3人の首相は途中で政権交代があったり、政権運営の不手際が目立ったりで、いずれもゴールまでたどりつかないまま早期退陣を余儀なくされた。
これでは米側が日本のリーダーの言動に信頼を置けないのは当然だろう。その意味で、野田首相がオバマ大統領に「安定した政治の実現」が野田政権の使命だと強調したのは妥当な認識である。それなくしては、日米同盟の深化も、国際社会における日本の発言力強化も不可能である。
理念先行で行動が伴わなかった鳩山由紀夫元首相、外交当局と連携せず外交ビジョンも希薄だった菅直人前首相。野田首相は民主党政権2代の轍(てつ)を踏んではならない。民主党だけでなく、日本にとってもラストチャンスの覚悟で、外交の立て直しに本腰を入れるべきである。
毎日新聞 2011年9月23日 2時31分