テレビに求められるものは何か。秋の改編に思う
2011年09月20日00時00分
毎度のことながら、テレビ局は10月改編の時期を迎えた。まず、私自身のことから。といってもあまり大きな変化はないが、その中で一つ、日曜朝の「サンデー・フロントライン」(テレビ朝日系)が9月25日の放送をもって打ち切りとなる。後の番組は、長野智子さんがキャスターをつとめる「報道ステーションSUNDAY」になると聞いている。サンデー・フロントラインは、昨年4月、サンデープロジェクトの後を受けての番組だった。
キャスターの小宮悦子さんとは、それまで8年近く一緒に「スーパーJチャンネル」をやってきた間柄だったので、応援してきただけに残念でならない。とはいえ、私自身、番組当初はスタジオ出演をしていたが、後半は「これがニュースだ」の選定委員をつとめていたぐらいで、すっかり疎遠になっていた。個人的な感想を言えば、とうとう最後まで何がやりたい番組なのか、わからず終いだった。テレビマンが好んで使う「番組コンセプト」のコンセプトが定まらなかったのだから、視聴者がついて行くわけがなかった。ただ、小宮さんという貴重なMC(司会者)がこのまま、テレビから遠ざかってしまうのは、斯界の損失だ。機会があれば、別のところでぜひ、またご一緒させていただきたいと思っている。
もう一つは大阪・朝日放送の夕方のニュース番組「NEWSゆう+」が9月30日の放送をもって打ち切りとなる。これは3年前、「ムーブ!」の後番組として、夕方のニュース番組が衣替えした形でスタートしたが、これも前番組の型破りな仕掛けや熱気とはほど遠く、試行錯誤を繰り返すばかりだった。ただ、サンデー・フロントラインの打ち切りといささか違うのは、「キャスト」と名前を変えた新番組とも私はおつきあいをさせていただくことになっている。関西方面のみなさん、引き続きよろしく。
と書きつつ、このコラムで私の個人的なことばかり書いていても仕方がない。そんなことはこのホームページの「活動」の項目を見ていただければ、わかることである。そんなことより、私はこの改編の意味を考えてみたい。今回の改編はいみじくもサンデープロジェクトとムーブ!の後番組が、いずれも短命のうちに幕を閉じたということである。
では、サンデープロジェクトとムーブ!の共通点はなんだったのか。両者の、それこそコンセプトは、ときには過激なまでのトークバトルと、徹底した調査報道番組だったと私は解釈している。
サンデープロジェクトは田原総一朗さんをメインに置いて、毎回のように与野党の政治家が出演。ある時期、「政治は日曜の朝変わる」とまで言われたことがあった。その政治の動きを探ろうと、毎日曜日には、いわゆる政治家の番記者が局の報道関係者室に詰めかけ、彼らから貴重な日曜日の休みを奪ったのはサンデープロジェクトだと言われたりしたものだった。
田原さんの過激で、かつ独断に満ちたスタジオ運び、放送後の月曜日と火曜日には与野党からの抗議、クレームに対応。押したり引いたり、押し戻したりが、番組プロデューサーの一番の仕事だった。もちろん局にも当然、それ相当の覚悟がないと、こんな番組は出来ない。
そしてもう一つは「言論シリーズ」に代表される警察、検察、裁判所といった権力との対峙。さらには、中央官庁の官僚、自治体の長、役人との対決。こちらも、慇懃に「誤解があるようなので、ご説明したい」と言ってくるのはまだおとなしい方。あの手この手で陰湿な圧力が局にかかっていたことは、取材する私たちにもわかっていた。
ムーブ!は政治家を呼ぶことは少なかったが、何しろ居並ぶコメンテーターは知事になった男をはじめ、口八丁手八丁。ひと癖どころか、一人が十癖も持っている輩ばかり。賛否取り混ぜて番組中から局に電話がかかり放しだったと聞いた。さらには大阪府、市、京都市などの自治体の役人や、傍若無人な振る舞いをして憚らなかった労組員。寄らば切るぞの勢いで、こうした理不尽を徹底的に暴いた。トークバトルには賛否様々、ときには怒鳴り声をあげていた視聴者も、この調査報道には等しく拍手喝采だった。そんなムーブ!の打ち切りは、はっきり言って、腰が引けてしまった局の上層部の意向と聞いた。
この二つの番組の打ち切りの際、私に聞こえてきた声は、まさに瓜二つだった。「サンプロがなくなって警察、検察、裁判所の幹部は『これで日曜日、心置きなくゴルフに行ける』と思っているじゃないですか」。もう一つは「ムーブ!が終わって、大阪の府や市をはじめ関西の役人は、やっと枕を高くして寝られるんとちゃいまっか」。
私はこれらの半ば冗談まじりの声を心地よく聞いた。テレビの仕事をしながら、新聞記者時代と同じくらい、いや、それ以上にこの仕事を誇り高く思えたのだ。
だが、この二つの番組の後発番組は、奇しくもこの秋、短命にして終了となった。そのことは視聴者がテレビに何を求め、何を期待しているのかを鮮明に浮き上がらせたのではないか。私のところに「テレビがつまらない」「テレビで見たい番組がない」という声が夥しく届くのは、悲しいことである。だが、その声は手前味噌ではなく、この二つの番組、サンプロとムーブ!が終わったころから激増したように思う。
テレビマン諸氏、志高く入ったこの世界ではなかったのか。天高い秋、いま一度、勇気と誇りを取り戻そうじゃないか。
キャスターの小宮悦子さんとは、それまで8年近く一緒に「スーパーJチャンネル」をやってきた間柄だったので、応援してきただけに残念でならない。とはいえ、私自身、番組当初はスタジオ出演をしていたが、後半は「これがニュースだ」の選定委員をつとめていたぐらいで、すっかり疎遠になっていた。個人的な感想を言えば、とうとう最後まで何がやりたい番組なのか、わからず終いだった。テレビマンが好んで使う「番組コンセプト」のコンセプトが定まらなかったのだから、視聴者がついて行くわけがなかった。ただ、小宮さんという貴重なMC(司会者)がこのまま、テレビから遠ざかってしまうのは、斯界の損失だ。機会があれば、別のところでぜひ、またご一緒させていただきたいと思っている。
もう一つは大阪・朝日放送の夕方のニュース番組「NEWSゆう+」が9月30日の放送をもって打ち切りとなる。これは3年前、「ムーブ!」の後番組として、夕方のニュース番組が衣替えした形でスタートしたが、これも前番組の型破りな仕掛けや熱気とはほど遠く、試行錯誤を繰り返すばかりだった。ただ、サンデー・フロントラインの打ち切りといささか違うのは、「キャスト」と名前を変えた新番組とも私はおつきあいをさせていただくことになっている。関西方面のみなさん、引き続きよろしく。
と書きつつ、このコラムで私の個人的なことばかり書いていても仕方がない。そんなことはこのホームページの「活動」の項目を見ていただければ、わかることである。そんなことより、私はこの改編の意味を考えてみたい。今回の改編はいみじくもサンデープロジェクトとムーブ!の後番組が、いずれも短命のうちに幕を閉じたということである。
では、サンデープロジェクトとムーブ!の共通点はなんだったのか。両者の、それこそコンセプトは、ときには過激なまでのトークバトルと、徹底した調査報道番組だったと私は解釈している。
サンデープロジェクトは田原総一朗さんをメインに置いて、毎回のように与野党の政治家が出演。ある時期、「政治は日曜の朝変わる」とまで言われたことがあった。その政治の動きを探ろうと、毎日曜日には、いわゆる政治家の番記者が局の報道関係者室に詰めかけ、彼らから貴重な日曜日の休みを奪ったのはサンデープロジェクトだと言われたりしたものだった。
田原さんの過激で、かつ独断に満ちたスタジオ運び、放送後の月曜日と火曜日には与野党からの抗議、クレームに対応。押したり引いたり、押し戻したりが、番組プロデューサーの一番の仕事だった。もちろん局にも当然、それ相当の覚悟がないと、こんな番組は出来ない。
そしてもう一つは「言論シリーズ」に代表される警察、検察、裁判所といった権力との対峙。さらには、中央官庁の官僚、自治体の長、役人との対決。こちらも、慇懃に「誤解があるようなので、ご説明したい」と言ってくるのはまだおとなしい方。あの手この手で陰湿な圧力が局にかかっていたことは、取材する私たちにもわかっていた。
ムーブ!は政治家を呼ぶことは少なかったが、何しろ居並ぶコメンテーターは知事になった男をはじめ、口八丁手八丁。ひと癖どころか、一人が十癖も持っている輩ばかり。賛否取り混ぜて番組中から局に電話がかかり放しだったと聞いた。さらには大阪府、市、京都市などの自治体の役人や、傍若無人な振る舞いをして憚らなかった労組員。寄らば切るぞの勢いで、こうした理不尽を徹底的に暴いた。トークバトルには賛否様々、ときには怒鳴り声をあげていた視聴者も、この調査報道には等しく拍手喝采だった。そんなムーブ!の打ち切りは、はっきり言って、腰が引けてしまった局の上層部の意向と聞いた。
この二つの番組の打ち切りの際、私に聞こえてきた声は、まさに瓜二つだった。「サンプロがなくなって警察、検察、裁判所の幹部は『これで日曜日、心置きなくゴルフに行ける』と思っているじゃないですか」。もう一つは「ムーブ!が終わって、大阪の府や市をはじめ関西の役人は、やっと枕を高くして寝られるんとちゃいまっか」。
私はこれらの半ば冗談まじりの声を心地よく聞いた。テレビの仕事をしながら、新聞記者時代と同じくらい、いや、それ以上にこの仕事を誇り高く思えたのだ。
だが、この二つの番組の後発番組は、奇しくもこの秋、短命にして終了となった。そのことは視聴者がテレビに何を求め、何を期待しているのかを鮮明に浮き上がらせたのではないか。私のところに「テレビがつまらない」「テレビで見たい番組がない」という声が夥しく届くのは、悲しいことである。だが、その声は手前味噌ではなく、この二つの番組、サンプロとムーブ!が終わったころから激増したように思う。
テレビマン諸氏、志高く入ったこの世界ではなかったのか。天高い秋、いま一度、勇気と誇りを取り戻そうじゃないか。
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