韓国の歴史教科書から消える「自由民主主義」の表記
現政権でも6種類中4種類が表記なし
用語復活を目指す教科部に反発し、歴史教課開発委員の約半数が辞意表明
韓国政府が先月発表した教科書記述指針で「民主主義」という用語を「自由民主主義」に変更したことを受け、これに反発した諮問機関の一部委員が辞任を表明し、波紋を呼んでいる。こうした中、1973年以降に導入された社会・歴史の教科書では、一貫して「自由民主主義」という用語が使用されていたことが明らかになった。
ところが、金大中(キム・デジュン)政権で検定を通過し、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権1年目に配布された高校の「韓国近現代史」検定教科書を皮切りに、教科書からこの用語が消え始めた。これらの教科書のうち相当数は、大韓民国建国の正統性を否定し、北朝鮮を好意的に描写するなど、左派寄り教科書として議論になった。
本紙が20日に入手した教育科学技術部(省に相当)の内部資料によると、第3次教育課程(1973-81)と第5次(87-92)、第6次(92-97)、第7次(97-09)の各教育課程で使用した国定社会・歴史教科書には、全て「自由民主主義」という用語が表記されていた(第4次教育課程分は未確認)。
こうした教科書の記述方式が揺らぎ始めたのは、左派寄りという非難が起こった第7次教育課程の検定「韓国近現代史」教科書(03年配布)からだ。この教科書は、全6種類のうち2種類から「自由民主主義」という用語が消えた。
現政権になって作成された歴史教科書では、以前にも増して「自由民主主義」の用語が姿を消した。09年改正記述指針により、今年から高校で使われ始めた「韓国史」教科書6種類のうち、4種類がこの用語を使用しなかった。
現行の中学・高校の社会・歴史教科書では、49種類のうち30種類が「自由民主主義」の用語を使用していることが分かった。これらの教科書では、自由民主主義について「自由主義と民主主義が結合した政治原理で、個人の自由を尊重し、国家と権力は国民の同意と支持を基盤とする」と記述している。
「自由民主主義」の用語をめぐり議論が起こったのは、教育科学技術部が先月、改訂版の教科書記述指針(歴史教科教育課程)を発表したのがきっかけとなった。現行の教育課程で「民主主義の発展」と表記されていた部分が「自由民主主義の発展」に変わっていた。教育科学技術部は「大韓民国の憲法の精神に立脚し、国家のアイデンティティーを明確にするため修正した」と発表した。
しかし、教育課程開発の実務陣に相当する「歴史教育課程開発政策研究委員会」(教育科学技術部傘下)の委員たちは先月16日「教育科学技術部が一方的に“民主主義”の概念を“自由民主主義”に変更する過程で、十分な話し合いを行わず、手続きする上で間違いを犯した。主に市場や競争、南北対立を強調する人々が使用する、学問的に検証されていない用語を使えば、教育現場に大きな混乱を招く」と主張した。19日と20日には、教育科学技術部の諮問機関に当たる歴史教育課程開発推進委員会の委員20人中9人が、同じ理由により辞任の意向を表明した。
これに対し教育科学技術部の関係者は「“自由民主主義”は過去数十年間にわたり使われてきた用語なのに、今になって、検証されていないという理由で反対するのは、政治的意図があるものとみられる」と語った。
兪碩在(ユ・ソクチェ)記者