東京電力は、福島第一原子力発電所の事故の賠償のうち、個人事業主や中小企業について、避難指示などで休業した場合、去年の売り上げから原材料費などを除いた「粗利益」分を支払うなどとした賠償基準を公表し、来月中の支払い開始を目指すことになりました。
東京電力は、福島第一原発の事故の賠償のうち、農林漁業、製造業、それに観光業など個人事業主や法人の損害に対する賠償基準を公表しました。それによりますと、支払われる賠償金額は、原則として去年の売り上げを基に算出されます。このうち個人事業主や中小企業が避難指示を受けるなどして休業していた場合、去年の売り上げから原材料費などを除いた粗利益分が賠償金として支払われます。また、この間にかかった生産設備の減価償却費も上乗せするとしています。また、営業はしていたものの、風評被害で去年よりも売り上げが減少した場合は、減少分に一定の割合を掛けて算出された利益の分を補償します。一方、農業の風評被害の場合、前の年の売り上げに対して、農産物の価格が下落した分を支払うとしています。当面は、事故から半年間についての損害を賠償の対象とし、その後は3か月ごとに請求を受け付けるとしており、今月27日に請求書類の送付を始め、来月中の支払い開始を目指すことにしています。請求の手続きや金額の算出が複雑なため、商工団体や農業団体に属さない個人事業主などからは、スムーズに申請を行えないのではないかと懸念する声が出ています。また、すでに手続きが始まっている個人向けの賠償で、避難した人たちから請求書類が膨大で分かりにくいという苦情などが相次いでいます。これについて、記者会見した廣瀬直己常務は「分厚い資料を見ただけで嫌になるという声も寄せられ、本当に申し訳なく思うが、損害項目を漏らさずに記載するためには文書を薄くするのは難しい。説明会や電話で丁寧に応じたい」と話しています。