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[政治]ニュース トピック:正論
【正論】弁護士、衆院議員・稲田朋美 行動が伴わない「どじょう」宰相
野田佳彦首相が財務相だった7月、財務金融委員会で「もし野田大臣が総理になられたら…」という質問を3つした。まず外国人地方参政権付与には反対だと明確に答弁し、次に集団的自衛権の行使は認めるべきだと答えた。が、最後に首相の靖国参拝について尋ねたところ、「慎重にならざるを得ない」と言うのでがっかりした。
≪なぜ靖国に参拝しないのか≫
菅直人前首相がひど過ぎたのと野田首相が「『A級戦犯』は戦争犯罪人ではない」という歴史認識の持ち主なので、保守層には期待する人も多いが、なってからの行動が伴わないとすれば罪は深い。野田政権は集団的自衛権の行使は認めないとの従来の政府見解を引き継ぐと明言した。外国人参政権も菅氏と全く同じ曖昧答弁だった。すでにしてブレているのだ。
野田首相はかつて「『A級戦犯』と呼ばれる人たちはもはや戦争犯罪人ではないのであって、戦争犯罪人が合祀されていることを理由に内閣総理大臣の靖国参拝に反対する論理はすでに破綻している」と主張し、「『A級戦犯』は戦争犯罪人と認識している」と述べた小泉純一郎首相が靖国参拝したことを、「パフォーマンスにすぎない」と厳しく批判していた。
野田氏の歴史認識は正しい。小泉首相は行動は正しかったが、理論は誤っていた。東京裁判は、ポツダム宣言の条件にも近代法の大原則である罪刑法定主義にも悖(もと)る、二重に国際法違反であり、裁判の名に値しない復讐(ふくしゅう)の茶番劇だった。「A級戦犯」を戦争犯罪人とすることは茶番劇を日本人が正当な裁判と認めたことになる。中韓両国にとって靖国問題はまさしく「A級戦犯」問題であり、「A級戦犯」が合祀された靖国を参拝することは侵略戦争を美化することだというのだ。
野田首相が「A級戦犯」を戦争犯罪人ではないと言うのなら、正しい歴史認識を世界に発信するため靖国に行くべきである。ところが、就任後の記者会見で、「これまでの内閣の路線を継承し、首相、閣僚の公式参拝はしない」と明言した。「国際政治などを総合判断することが必要だ」からだそうだ。有言不実行、結局、首相の歴史認識はニセモノだったのだ。
≪たらい回し批判の資格ありや≫
野田氏は福田康夫首相誕生の時、「自民党内での政権のたらい回しは国民の意志ではない。国民の信を得ていない政権は早晩行き詰まる。国民のための政治を実現するため一刻も早く解散・総選挙を行うべきである」としている。
安倍、福田、麻生と選挙をしない首相が続いたときには「日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦および先の大戦、いずれも日本にとっては国難とも言うべき時期に、わが国はきちんと選挙を行ってきたという歴史だ。『政局よりも景気』『危機の時に政治空白をつくるな』と政府・与党の中からもっともらしい意見が出ているが、国難の時こそ民意を問うのが筋なのだ」と述べていた。鳩山、菅、野田と政権をたらい回しにしてきたのは何なのか。
平成19年の参院選で自公政権が「消えた」年金記録照合を3月までに行うと約束して約4割が特定困難だった点を指摘、「公約偽装政権は即刻退陣を」さらには「国民にまずは謝罪し、きちんと責任とるのが筋」と主張していた。
≪政権公約の財源どこに消えた≫
政権交代したときの民主党の詐欺的マニフェスト(政権公約)は「消えた」年金記録どころではない。無駄を排して9・1兆円、天下りを廃止して12・1兆円、予算を組み替えて「20兆円・40兆円」すぐに捻出でき、子ども手当、高速道路無料化、高校授業料無償化、農家の戸別補償など約16・8兆円の政策が実現するとしていた。その財源はどこへ行ったのか。まさに「消えた財源」だ。
首相の言を借りれば、公約偽装の民主党政権は国民に謝罪し責任をとってさっさと退陣すべきだ。
野田氏は9兆円の税収減(リーマン・ショック)、ねじれ国会、震災を「消えた財源」の言い訳にしているが、16・8兆円は無駄排除と予算組み替えで実現するはずだったので、税収減もねじれも震災も関係ない。できるはずもなかった財源をあると言ったのだ。
平成21年8月には、「マニフェストに載せたことは命がけで実現する、載せなかったことには基本的には手をつけない。この意義がわかっていない自民党には、そもそもマニフェストを語る資格がない」と痛罵もした。だが、三党合意で子ども手当は廃止され、マニフェストになかった消費税増税については、実施前に信を問うから問題ないと詭弁を弄して、着手しようとしている。紛れもないマニフェスト違反である。いつまでごまかしの政治をするつもりか。
政治家を養成する「塾」では政治家になるすべは教えても、首相になってなすべきことまでは教えなかったのか。たとえ思想が高邁(こうまい)でも人生の最終目的は思想ではなく行動だ(トーマス・カーライル)。「どじょう演説」で高支持率を得た野田氏が、首相として何をやるのか国民は見ている。(いなだ ともみ)
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