政治【主張】安保再改定提言 共同行動強化で国守る 集団的自衛権は権利の行使を2011.9.22 03:42

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【主張】
安保再改定提言 共同行動強化で国守る 集団的自衛権は権利の行使を

2011.9.22 03:42

 日本はこの9月で、サンフランシスコ講和条約と日米安全保障条約に調印して60周年の節目を迎えた。本紙はこれを機に、安全保障専門家とともに新たな国際環境の変化に対応するため、「自立」と「相互協力」を両輪とする日米安保条約の再改定案を提言した。

 両国がアジア太平洋地域で対等な義務と負担を担うことで、従来の片務性を解消することを目指す。野田佳彦内閣が国民の繁栄と安全を守るため、この安保再改定案を生かして議論を活発化させていくことを強く期待する。

 ≪互いに血を流せるか≫

 独立回復と同時にスタートした日米同盟は、時代がちょうど一回りしたことになる。2国間同盟が還暦を迎えるほど永続した例は歴史上も珍しい。それは、日米の外交・防衛当局者がその時々の国際環境の変化に柔軟に対応してきたためであろう。

 冷戦終結後の1996年には、橋本龍太郎首相とクリントン大統領が日米共同宣言を発表して、この条約が「アジア太平洋地域の国際公共財」であるとする安保再定義を行った。昨年1月は安保改定50周年であったことから、日米同盟の再々定義をする絶好の機会であった。

 だが、当時の鳩山由紀夫首相が米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画を、「最低でも県外」と巻き戻したことで吹き飛んでしまった。かろうじて日米外務・防衛閣僚4人が「共同発表」を出して、その場を繕った。

 半世紀を経た同盟の今後を誓うなら、時代に合わせた安保再改定か、日米首脳による共同文書を目指すべきであった。

 同盟の本質とは、互いを守るための血の契りである。利益と価値観を共有する国家が、軍事を中心として相互援助する条約だ。とりわけ首脳をはじめ両国民の信頼関係が必要条件となる。

 それを鳩山政権は普天間移設の約束を違えて後退させ、続く菅直人政権は何もせずに先送りした。現在、訪米中の野田首相が今回の日米首脳会談を機に、オバマ大統領との失われた信頼を回復し、日米同盟の立て直しに乗り出すのであれば、その意味は大きい。

 戦後日本は世界最強の軍事力と経済力を持つ米国と組むことで、冷戦期にはソ連からの侵攻を防ぎ、最近では東日本大震災に対する「トモダチ作戦」のありがたさが身にしみたはずだ。日本はなお、軍事大国化した中国、核開発を進める北朝鮮、軍備を増強するロシアに対峙(たいじ)している。

 ところが日本は、米軍庇護(ひご)下の60年間で、経済力と安全は享受できたが、自らの国を自らの手で守ろうとする自立心や気概を喪失してしまったのではないか。

 ≪まず自立・自存防衛を≫

 敗戦後の日本には軍事力も資力もなく、同盟相手の米国に提供できるものは基地しかなかった。したがって、1951年にサンフランシスコで結ばれた旧日米安保条約は、日本の基地供与と米軍による軍事的庇護が交換条件のようになった。

 現行条約5条では、米国は日本の防衛義務を負うが、日本はその逆の義務はない。代わりに6条で日本は日本の安全と極東の平和と安全の維持のため、米軍に基地提供の義務を負うと明記した。

 独立国家の同盟条約としては、他に類例のない「非対称の義務」であり、条約の片務性が指摘されてきた。吉田茂首相が復興期に選択したこの「軽武装・経済優先」路線を、彼の後継者たちがそのまま防衛を米国に依存する「吉田ドクトリン」に高めてしまった。

 本紙の再改定案は、日本が自立・自存の防衛を固めた上で、日米が「相互性」と「双務性」に立って共同行動を強化することを柱としている。憲法解釈で行使できないとする集団的自衛権も「権利の行使」として書き込んだ。

 日米協議の対象地域は「極東」に限られていたのを「アジア太平洋」に改め、相互性を明示するために日本の自衛隊が米国内基地を使用できる原則も明記した。

 鳩山、菅両首相ともに言葉だけは「日米関係の深化」を掲げた。それを継承した野田新首相の責任は極めて重い。野田首相はこれまで、日米関係の重要性を述べ、憲法9条の改正にも触れ、「自分の国は自分で守るという覚悟を、あらためてしっかりと固める」と公言している。あとは、自身が掲げる「正心誠意の実行」である。

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