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きょうの社説 2011年9月22日
◎金沢おどり 文化を育て、継承する場に
きょう22日に開幕する「金沢おどり」の顔触れをみれば、2004年の初演から大き
く変わっていることに気付く。最初の年にいなかった芸妓は10数人おり、その華やかな舞台にあこがれて茶屋に入った女性も少なくない。芸妓の「伝統芸能継承者」という顔にスポットを当てたのが「金沢おどり」である。邦 楽や日本舞踊に関心ある女性にとって、芸妓は職業として芸の道を志す有力な選択肢になっているのだろう。 「金沢おどり」のこれまでの歩みを振り返れば、三茶屋街が1年の精進の成果を示す最 大の舞台として定着するとともに、若い力を呼び込み、文化を継承する場として機能してきたことが分かる。 言うまでもなく、文化はその価値に気付き、評価する人たちがいてこそ次の時代に継承 されるものである。その点でも、「金沢おどり」はお座敷に縁のない人に鑑賞機会を提供し、回を重ねるごとにファン層を広げ、継承の土壌を耕してきた。総踊り曲の「金沢風雅」などは、演じ手、鑑賞者の濃密な関係があってこそ生まれた作品といえる。 今年は「金沢おどり」の舞台がNHK・Eテレの「にっぽんの芸能」、さらには呼び物 である「一調一管」の主役2人がドキュメンタリー番組としてNHK総合「にっぽん紀行」で紹介される。 かつて「美ち奴」という、ひがし茶屋街の芸妓がNHK「芸能百選」に出演するなど全 国区の舞踊家として活躍した。今年は金沢のお家芸の総合力を、洗練された「舞台芸術」として発信するチャンスである。認知度がさらに高まれば、伝統を担う新しい力を全国から呼び込むことも可能である。 金沢の三茶屋街は、京都に比べれば花街の数も芸妓も少なく、専門の学校や歌舞練場も ない。だが、踊りも囃子も流派が異なる三茶屋街の競い合いのエネルギーがプラスに作用し、芸の水準は専門家の間でも折り紙付きである。 今年も新人1人がデビューし、舞台に新たな息吹をもたらすだろう。「金沢おどり」は 芸の道へ踏み出す貴重な志を大事に育て、花を咲かせる場でもありたい。
◎台風15号が猛威 都市型水害の備え十分か
台風15号の影響で、西日本から関東、東北の広い範囲で暴風や大雨による被害が出た
。北陸では他地域ほどの大きな被害はなかったが、一時100万人以上に避難勧告が出た名古屋市の洪水被害は、都市型水害の恐ろしさをあらためて印象付けた。名古屋市は2000年9月の「東海豪雨」で激甚災害の指定を受け、大規模な治水事業 が既に実施されている。それにもかかわらず、今回も市街地を流れる庄内川や天白川があっけなくはんらんし、想定外の被害が出た。住宅密集地で、わずか10分足らずで水位が2メートル上昇する状況など、だれが予想しただろう。 石川県では2008年7月、金沢市羽場町芝原橋で1時間に138ミリの最大雨量を記 録し、浅野川がはんらんした。この時は富山県西部でも79棟の家屋が床下浸水している。石川県は、この水害を教訓に100年に1回程度の大雨を想定して浅野川浸水想定区域図を新たに作成し、浅野川流域で水害対策を講じた。それでも最近のゲリラ豪雨の異常な雨量や今回の大雨台風のすさまじさを見ていると、都市型水害への備えは十分とはいえない。 都市部は、排水能力を超えたとたんに水があふれ、水の逃げ場がないために、あっとい う間に水没地域が広がってしまう。吸水性に乏しいコンクリートに覆われた都市部は、大雨のリスクが高いことを理解しておきたい。 雨水の流入が短時間で急増すると、排水ポンプの能力を超え、下水から水があふれる現 象が各地で起きている。金沢市でも浅野川ポンプ施設が大雨のため冠水し、機能停止に追い込まれたことがあった。市街地では計画的に雨水貯留施設や排水ポンプの新設、点検整備を進めていく必要がある。 例年なら一部は台湾や大陸方向に向かう台風が今年は日本列島付近に接近してくるケー スが目立つ。台風被害は今後もあると思わねばならない。台風15号がもたらした大雨の観測データを基に、降雨量と各河川の流量を照らし合わせ、手薄な部分から可能な限りの手を打ってほしい。
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