「時事深層」

KDDI、「iPhone5」参入の衝撃

ソフトバンクの独占崩れ、auで11月にも発売

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2011年9月22日(木)

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 世界でもアップルはこの状況に悩まされており、これまでの「1国1通信会社」の原則を崩し始めていた。米国では当初AT&Tに独占販売権を与えていたが、今年2月にはベライゾン・ワイヤレスに、さらに今度のiPhone5からは第3位のスプリント・ネクステルも参入する。

 KDDIはスマートフォン市場で乗り遅れが目立っていた。ソフトバンクが初代iPhoneを発売した2008年、同社の小野寺正社長(現会長)は「テンキーで日本語を入力するのに慣れた日本市場にスマートフォンは合わない」と話し、当面スマートフォンと距離を置く方針を取ったのだ。だが、この読みは誤っていた。

 NTTドコモはソフトバンクとのiPhone獲得競争に敗れてから対抗機種探しに奔走し、2010年以降、英ソニー・エリクソンの「エクスペリア」や韓国サムスン電子の「ギャラクシーS」など矢継ぎ早にスマートフォンを投入したが、KDDIは座して動かなかった。

 昨年9月、小野寺氏は「従来型携帯に固執した面がある」との反省の弁とともに、田中孝司専務を社長に昇格させる人事を発表した。昨年12月に就任した田中氏はこの反省を踏まえ、スマートフォンへの対応を強化した。「1年半以上にわたりアップルと粘り強く交渉した」(KDDI関係者)という。

KDDIが払う代償

 実際KDDIはiPhoneを迎えるに当たって相当気を使ったようだ。

 「つながらないスマートフォンなんて意味ないですよね」。KDDIは今年1月から人気グループの「嵐」を使い、ソフトバンクのiPhoneを暗示するネガティブキャンペーンを開始した。ソフトバンクより通信回線の容量に余裕のあることを強調し、米グーグルの基本ソフト「アンドロイド」を採用したauスマートフォンの拡販を狙ったのだ。

 だが、9月8日の人事異動でこのネガティブキャンペーンを担当したマーケティング本部長が突然子会社に転出させられた。KDDI関係者は「iPhoneを迎えるために、示しをつけたのではないか」と話す。

 キラー端末であるiPhoneを獲得したことでKDDIが払う代償も大きそうだ。アップルはiPhoneを供給する通信会社に高いノルマを要求することで有名だ。その内容は明らかになっていないが、「ノルマには販売台数と通信料金の2つがある」(同アナリスト)という。まず台数は、通信会社の年間出荷台数の2割とも言われる。KDDIに置き換えれば年間200万台から300万台を確保する必要がある。

 次に通信料金だ。ソフトバンクの携帯電話向けパケット定額料金は月額5460円だが、iPhone向けだけは同4410円。iPhoneの販売を促すために、ほかのスマートフォンより安い料金をあえて設定しているのだ。KDDIも同様の条件を突きつけられているとすれば、現在のスマートフォン向け月額5985円より1000円近く安い「iPhone特別料金」を作らなければならなくなる。

 特別料金は、携帯電話会社の収入を目減りさせるだけなく、ほかの端末と差別化することでアップル以外のメーカーの離反を招く恐れがあるのだ。iPhone獲得は金星に違いないが、やり方を間違えると逆効果になる可能性もある。

日経ビジネス 2011年9月26日号8ページより

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『強敵!BRICs企業』。







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■速さ、価格、新常識を作る新興国企業
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・ブラジル:エンブラエル-LCC追い風の独壇場、JALも購入
・インド:インフォシス-中国に第2本社、脱インドで人材・顧客を多様化
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著者プロフィール

原 隆(はら・たかし)

日経ビジネス記者。日経ビジネス記者。日経BP社入社後は日経パソコンに約7年勤務。その後、日経コミュニケーション、日経ネットマーケティング(現日経デジタルマーケティング)を経て2010年1月よりビジネス編集部に在籍。電機・ITグループ所属、主にインターネット業界担当。趣味は酒と麻雀とピアノ。宮崎県出身、高田馬場在住15年目。「鳥やす」で焼き鳥とビールを飲むのが好き。Twitterアカウントは@haratakashi。飲んだときにしかほとんどつぶやかない

小板橋 太郎(こいたばし・たろう)

日経ビジネス編集委員。



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日経ビジネス “ここさえ読めば毎週のニュースの本質がわかる”―ニュース連動の解説記事。日経ビジネス編集部が、景気、業界再編の動きから最新マーケティング動向やヒット商品まで幅広くウォッチ。

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