米アップルが今秋にも発売する「iPhone5」を、KDDIが日本で販売することが判明した。日本では初代iPhoneから3年間続いたソフトバンクによる独占販売体制が崩れる。加入者数でソフトバンクに追い上げられているKDDIにとって強力な援軍になりそうだ。
関係者によると、KDDIは米アップルと既に「iPhone5」の国内での販売契約を締結し、全国のauショップなどで11月頃から販売を開始する方向で関係各方面との準備に入っている。iPhone5は10月中旬頃、全世界で発売が開始される見通しだ。
1社独占崩れる
これまでiPhoneを独占販売してきたソフトバンクモバイルは9月29日に2012年冬春モデルの新製品発表会を実施することをインターネット上で公表しており、この日にiPhone5の発売を発表する可能性がある。つまり、iPhone5は国内では少なくともソフトバンクとKDDIの2社が扱うことがほぼ確実になった。
iPhoneはソフトバンクが2008年にアップルとの独占販売契約獲得に成功し、国内で初めて発売した。初代の「iPhone3G」、2代目の「iPhone3GS」、3代目の「iPhone4」と、3機種いずれも爆発的にヒットし、日本のスマートフォン時代を牽引してきた。
ソフトバンクは明らかにしていないが、米調査会社ガートナーなどの統計から類推すると、3年間での累計販売台数は今年9月末までで750万台前後に上る勢いだ。2009年3月期に70万台、2010年3月期に150万台、2011年3月期に320万台と倍倍ゲームで増やしてきた。現在ソフトバンクの月間加入者純増数は20万〜30万件。このうち半数程度がiPhoneの新規契約者と見られている。新規だけでなく、ソフトバンク内での機種変更を合わせればiPhoneが月間30万件近い契約を獲得していることになる。
KDDIにとってiPhone5の獲得は強力な援軍になりそうだ。KDDIは国内携帯電話加入者シェアでNTTドコモに次ぐ2位だが、2006年に携帯電話事業に参入したソフトバンクの猛追を受けてきた。今年6月末、ソフトバンクは累計加入者数を3000万件(買収したPHSのウィルコム加入者を含む)の大台に乗せ、8月末には、KDDI3353万件に対し3071万件まで迫る。その差は1年前の900万件から300万件弱まで接近していたのだ。
このままソフトバンクの独走を許せば、KDDIが3位に転落するのは時間の問題だった。
ソフトバンクはもともと電波を発信する基地局の整備が遅れていた。「現在はかなり回復したが、インターネットを快適に利用できる基地局インフラを持つKDDIがiPhoneを獲得すれば、iPhoneの市場の裾野は格段に広がるだろう」(通信アナリスト)。
これまでソフトバンクに独占販売権を与えていたアップル側にも作戦変更の事情があったようだ。ソフトバンクがiPhoneで躍進しているとはいえ、さすがにその伸びは鈍ってきていた。出荷台数を見ると、昨年7〜9月期に93万台、10〜12月期に85万台、1〜3月期に93万台とほぼ横ばいになっている。