2011年7月25日 16時29分 更新:7月26日 2時6分
東日本大震災の復旧対策を盛り込んだ11年度第2次補正予算は25日の参院本会議で、共産党を除く与野党の賛成多数で可決、成立した。被災した個人、企業の「二重ローン」対策や、東京電力福島第1原発事故への対応が柱。2次補正の成立は菅直人首相の「退陣3条件」の一つで、民主党は8月末の国会会期末をにらみ、残る再生可能エネルギー固定価格買い取り法案と特例公債法案の早期成立を目指す。
枝野幸男官房長官は25日の記者会見で、2次補正の成立について「県や市町村にも活用いただき、迅速に復旧が進んでいくように、さらに努力していきたい」と表明した。政府は被災地復興に向け、3次補正予算案の検討を本格化する。
2次補正の総額は1兆9988億円。福島第1原発事故の損害賠償経費や福島県民の健康調査費用などに2754億円をあてる。被災した個人や企業の「二重ローン」対策に774億円、被災者生活再建支援制度の拡充に3000億円を盛り込んだ。使途を定めない復旧・復興予備費8000億円も計上した。
財源は全額を10年度決算剰余金でまかなうため、国債の新規発行はしない。【西田進一郎】
第2次補正予算が成立したことで、菅直人首相が掲げる退陣3条件の一つがクリアされた。残る2条件のうち、再生可能エネルギー固定価格買い取り法案は8月上旬にも成立する見込み。しかし、赤字国債発行に必要な特例公債法案の成立のめどは依然として不透明だ。民主党執行部は8月末の国会会期末までの新内閣発足を目指すが、見通しが立たない。
枝野幸男官房長官は25日の会見で、首相の退陣時期について「特に特例公債法案の成立のめどをつけなければいけない」と述べ、退陣の条件整備を急ぐべきだとの認識を示した。民主党の輿石東参院議員会長も同日の参院議員総会で「(特例公債法案を)成立させて、次へ向かう体制を作る」と足並みをそろえた。
政府・与党は8月2日にも再生可能エネルギー法案を衆院通過させ、8月上旬に同法案を成立させたい考えだ。焦点の特例公債法案がお盆前の12日までに成立すれば、3条件が整い、正式な退陣表明につながる。民主党執行部はお盆中に党代表選を実施し、今国会会期中に次期首相の指名選挙まで行うシナリオを描いてきた。
自民党の谷垣禎一総裁は25日、「首相が掲げた一つの条件は満たされた。一日も早い退陣を求めていく」と記者団に語った。野党側の協力を得ようと、首相や岡田克也・民主党幹事長は09年衆院選マニフェスト(政権公約)の見通しの甘さを謝罪。しかし、谷垣氏は「(謝罪の姿勢が)大勢でなければ、先へ進みがたい」と述べ、民主党内の動きをなお見極める姿勢を示した。
一方、民主党の鳩山由紀夫前首相のグループは25日、国会内で緊急会合を開催。鳩山氏はあいさつで「魂を売り飛ばしてはならない」と述べ、公約見直しに向けた執行部の動きをけん制した。野党との妥協を急げば民主党内の反発を招き、野党と距離を置けば法案成立が遅れ、首相退陣が遠くなる。民主党執行部はそんな袋小路に陥りつつある。
「民主党が早く新たな体制でスタートできるよう、菅首相に潔く決断していただく以外に選択肢はない」
2次補正を可決した25日の参院本会議で、賛成討論に立った民主党の小宮山幸治参院議員は、与党の立場でありながら、壇上で首相に即時退陣を迫った。2次補正成立により、首相への退陣圧力が強まる一方で、早期退陣への道筋をまだ描けない。国会会期は残り1カ月余り--窮屈な政治日程を抱えた民主党の焦りが募っている。【野口武則、岡崎大輔】
11年度第2次補正予算が25日成立したことを受け、今後の焦点は本格的な復興対策となる3次補正予算案と12年度当初予算案の編成に移る。ただ、民主党は、退陣表明した菅直人首相ではなく「新しい首相の下で行う」(岡田克也幹事長)構え。首相の「居座り」が続けば、作業が停滞する恐れもある。
復興対策本部は週内に「復興基本方針」を決定する方針。今後5年を「集中復興期間」と位置付け、復旧・復興に19兆円かかると試算。政府は、1次・2次補正で手当てした6兆円を除く13兆円の大部分について盛り込む3次補正予算案と12年度当初予算案の編成作業を本格化させる方針。12年度予算案では、12年度から3年間の歳出・歳入の枠組みである「中期財政フレーム」を定め、それに沿って各省の予算要求の基準となる「概算要求組み替え基準」を策定する。
ただ、遅れ気味の作業がスムーズに進む保証はない。政府は財政健全化のため、来年度予算は復興事業を除く歳出を徹底して削減する方針。組み替え基準では、どの省庁の予算を削るかの政治判断が必要で、枝野幸男官房長官は「常識的に判断して(菅首相が行わないのは)明らか」と説明。3次補正も「新首相の下で行う」のが与野党の既定路線で、首相の進退がはっきりしないと作業が進まない。
例年8月末に出そろう各省の概算要求は、1カ月程度遅れるのが確実な情勢。復興財源の増税論議も8月から本格化する見通しだが、首相の進退を巡る混乱が長期化すれば作業はさらに停滞する。【坂井隆之】