東日本大震災:住宅、直したくても直せない…宮城沿岸部

2011年7月22日 10時47分 更新:7月22日 11時51分

窓をブルーシートで覆ったままの自宅前に立つ鈴木努さん=宮城県亘理町で2011年7月18日、川上珠実撮影
窓をブルーシートで覆ったままの自宅前に立つ鈴木努さん=宮城県亘理町で2011年7月18日、川上珠実撮影

 宮城県沿岸部では仮設住宅の建設が急ピッチで進む一方、住宅の修復工事がはかどっていない。損壊した住宅が多過ぎて、建材や職人の数が足りないためだ。取り壊す予定の家から使える建材をもらって応急修理をしたり、業者を見つけるのに時間がかかり避難所生活が長引いている被災者もいる。【川上珠実】

 ◇建材、職人不足で修理進まず

 「ぜいたくは言わねえけど、せめてサッシがあればねえ」。亘理町吉田の農業、鈴木努さん(64)は、粘着テープでブルーシートを張り付けた自宅の窓を寂しげに見つめた。

 木造2階建ての住宅は津波で半壊。1階の壁は泥水で天井付近まで茶色く変色したままだ。5月中旬まで妻洋子さん(61)と避難所に身を寄せたが、自宅近くで空き巣が発生したため、残してきた家財が心配で戻った。

 一人息子は大工だが、「大忙しで休みなし。建材も不足して回せないってすまなさそうに言うから『心配しないで仕事を優先しろ』って言ったんだ」。家を取り壊す知人からサッシ窓を譲り受け、大きさが近い離れの窓枠にはめてテープで補強し、寝泊まりできるようにした。「あと1、2年はこのままかも」と苦笑いする。

 仙台市建設職組合によると、ベニヤ板や瓦、サッシなどの建材は工場の被災で不足している上に修理依頼が殺到し、価格が1~2割上昇。加盟1880業者のうち、1割強が事務所が壊れるなどして仕事をできない状態にある。佐藤要次幹事長は「不景気が長引き、ちょうど辞めた職人も多かった。歯がゆいが、工事しきれないのが実情だ」と話す。

 避難所で生活する多賀城市大代の田中幸さん(80)は、1人暮らしの自宅の風呂やトイレが壊れた。4月に市へ修理の補助申請をして認められたが、業者が見つかってやっと工事が始まったのは6月末だ。ところが「修理が終わるのは9月か10月かはっきりしない」と言われた。「避難が長引くなら」と市に仮設住宅の入居を申請したが、既に修理を始めたので入居資格がないと断られたという。

 県建築安全推進室によると、国と県が費用を負担する「応急修理制度」の受付件数は2万5244件(13日現在)。「一般住宅の修理が遅れ気味と市町村から聞いているが、個人で修理する人もいるので全体の状況は把握していない」という。

top
文字サイズ変更
このエントリーをはてなブックマークに追加
Check
この記事を印刷

PR情報

スポンサーサイト検索

アーカイブ一覧

 

おすすめ情報

特集企画

東海大学を知る「東海イズム」とは?

東海大学の最先端研究や学内の取り組みを紹介