2011年7月21日 20時33分 更新:7月21日 21時54分
沖縄県・尖閣諸島近くで発生した中国漁船衝突事件で、那覇検察審査会は21日、那覇地検が不起訴とした中国人船長(42)を公務執行妨害罪などで起訴すべきだと議決した。2回目の起訴議決となり、中国人船長は那覇地裁が指定した弁護士によって強制起訴される。しかし船長は帰国しており、公判を開くのは事実上不可能な見通しだ。【井本義親】
那覇検察審査会が再び「起訴すべきだ」と議決したことで、中国人船長は今後、裁判所が指定した弁護士が検察官役(指定弁護士)となり、強制起訴されることになる。ただ、船長は公務執行妨害容疑で逮捕・送検後に釈放され、中国に帰国している。本人に対する起訴状の送達などは事実上困難とみられ、現実に裁判が始まる可能性は極めて低い。
日中間には刑事手続きを協力し合う「日中刑事共助条約」があり、今後の手続きは条約にのっとって進められるとみられるが、両国政府間に被告を引き渡す義務はない。ある検察幹部は「検察として指定弁護士による起訴状送達に協力することがあるかもしれない。ただ、協力が得られる可能性は極めて低い」と説明する。
一方で、刑事訴訟法は、2カ月以内に起訴状を本人に送達しないと公訴棄却としなければならないと規定している。ある法務省関係者は「船長が日本に来るわけはなく、どんな意味があるのか分からない議決。検察審査会制度の見直し論議に飛び火するのではないか」と話した。【鈴木一生、石川淳一】