2011年7月21日 20時25分
新築マンションを棟ごと購入した男性が、壁などにひびがあるとして設計・施工業者に賠償を求めた訴訟の差し戻し上告審判決で、最高裁第1小法廷(金築誠志裁判長)は21日、「建物に現実的な危険がなくても、放置すると危険が表れ得る場合、業者は賠償責任を負う」との初判断を示した。そのうえで男性側敗訴の福岡高裁判決(09年)を破棄し、危険性の程度を判断させるため審理を再び高裁に差し戻した。
小法廷は、業者側が賠償責任を負うケースとして「外壁がはげ落ちて通行人の上に落下したり、ベランダや階段の欠陥で利用者が転落する恐れがある場合」と例示。建物の美観や居住環境の快適さを損なう程度の欠陥は該当しないとした。
最高裁は07年、「建物としての基本的な安全性を損なう欠陥がある場合は賠償責任が生じる」と審理を差し戻したが、今回は責任の範囲を具体的にした。
男性は90年、大分県別府市で賃貸と居住を目的に約5億6000万円でマンションを購入したが、バルコニーや壁にひびがあるとして補修費や慰謝料を求め提訴。1審は業者側に約7400万円の賠償を命じたが、2審は「倒壊するような危険な状態ではない」と男性側逆転敗訴とした。
差し戻し後の2審は最高裁が示した基準を「現実的な危険性を生じさせる欠陥がある場合」と限定的に解釈し再び請求を棄却していた。提訴から約15年を経た訴訟は更に長期化する。【伊藤一郎】