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海外番組への規制はないのに国産番組ばかり――。「日本は市場競争だけで、海外作品を排除してきた。国際的にも珍しい」と砂川浩慶立教大准教授(メディア論)は指摘する。
欧州連合(EU)では、EU外の番組放送時間に厳しい制約がある。EU指令(法律)は報道やスポーツ中継などを除いたテレビの放送時間の半分以上を、加盟国内制作の番組にするよう義務づけている。
近年、韓国ドラマが急速に浸透する台湾では「規制」の動きが起きた。現地紙「中国時報」によると、政府機関「独立規制機関(NCC)」が、大手テレビ局「東森」に、韓国ドラマの比率を下げ、経営計画通りにするよう指導した。
事の発端は、国会にあたる立法院で今年1月、野党・民進党の議員が同局を含めた3局のドラマ専門チャンネルのほぼ100%が韓国ドラマ、と問題視。「台湾文化を守るため規制を強化するべきだ」と主張したことという。
日本は戦後、米国から多くの海外ドラマが輸入された時期はあったが、視聴率を稼いでスターを生み出してきたのは国産番組だ。言葉の「壁」に加え、国を挙げて経済成長を進める際、自国の番組で一体感を強めてきた背景がある。外貨を稼いだ自動車や電機メーカーがスポンサーとなり、制作費をかけた良質な番組を作れたことも一因だ。
河島伸子同志社大教授(文化政策論)は「EUの規制の背景にはお茶の間に入り込むテレビ番組が文化や民主主義を支えるという意識がある」と指摘する。
番組制作環境が厳しさを増すなか、日本でも海外番組がますます増えるのか。
砂川准教授は「日本の番組の質はまだ高い。規制より海外への展開を後押しする方法を考えるべきだ」と話す。(高久潤)