Mon2011.09.19
葡萄の季節 2.
気圧の影響で体調がとても左右されるのか、それとも昨日の旅の疲れからか、
日曜日は一日まったりと友人と話をしたり葡萄を食べたりしながら過ぎて行った。
もぎたての葡萄は買って来たものと、比較にならないほど味が新鮮で糖度も高い。
なまじお菓子を食べるより甘さを感じるので、途中頭がクラクラして来たぐらいだった。
一昨日の旅は私と友人二人と主人の四人、
道中は高速バスだったので気が楽だったけれど、狭い空間での数時間は筋肉痛の原因だったのか、
今日になって首やら背中の節々が痛み始めたので、ゆっくり静養に充てた。
珍しくこの三日間、鍵盤に触れていない。
そう言えば中学生の頃、長旅の後のいきなりの本番の演奏でも通常モードで指が動くように…といって、
意図的に数日間鍵盤に触れないで、数日後にいきなり本番の曲を一発で演奏出来るよう、
特殊な訓練をしていたことが現在も多分生きている。
一度目の結婚生活を始めた20数年前から4年前まで、私は自宅に鍵盤楽器を置いていなかった。
そのことで、私に「演奏家偽証」の噂が立ったことがあったが、
私にとって鍵盤があるかどうか… などということは大した問題ではなく、
それが問題にさえならないぐらいの日々の仕事量と、かつての訓練の成果がこの年齢になってもまだ生きている。
7年ほど前だったか、インドのテロを扱った映画の中で似たようなシーンがあったことを思い出した。
テロリストは何気ない暮らしの中に紛れ、その機会をじっと待つ平凡な主婦をミッションとし、
その為に日頃の運動量に制限がある… という設定。
女性はその中で、意図的に重い荷物を持ち上げながら筋肉量を維持し、
裁縫や料理の中で凶器を扱う感覚を維持し、
そして何気ない自室での歩行で運動量を維持しながらその時を三年間待ち続ける… という設定。
勿論私はテロリストなどではないが、「運動量と感覚を維持する」 待機時間という意味では、
そんな感じに近いのではないか… と思っている。
多くのピアニストたちは、日々の運動量の激化でそのスキルを維持していたように思うが、
私はそれに比べたらマッスルな訓練は殆どやっては来なかった。
だから20年近くもの間自宅に鍵盤楽器がなかったことを、不便に感じたこともなかったので、
その間の私を知る知人の中から 「あの人は本当に演奏家なのだろうか?」 という噂が出たとしても、
ある意味当然のこと… とも思えるのだ。
私のスキルの半分以上が、イメトレで鍛えられたものだと言っても過言ではない。
イメトレとはただ、ぼーっと安らかに目を閉じて瞑想みたいなことをするのではなく、
実際に自分自身がなろうとしているシチュエーションを具体的に、頭の中に映像プログラミングして行くこと。
場合によってはこれは実際にそのアクションを起こしている状態に等しい脳内状況を生み出すので、
私はその時間を人より多く持って来たことで演奏能力の劣化は愚か、
むしろスキルの向上が見られたと言って良いだろう。
最近は主婦業もきちんとこなすようになり、日曜日などはその大半を台所で過ごしている。
手作りの料理は、それを喜んで食べてくれる伴侶の愛情とともに、そのスキルを上げて行くように思う。
結婚して、ほんとに良かった…。
最近折りに触れ、そう思う。
【Youtube bliss you】 autoplay

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COMMENT
+今年の葡萄
実はもう美樹さんには会えないと思っていたからです。
都内各所の美樹さんがいらっしゃると聞いていた場所を最近になって訪ねたのですが、美樹さんが店舗の事情でお名前だけをレンタルされているという話が本当だとわかりショックでした。
でもそういう話は聞いたことはあります。その出演者の名前を書くだけで売り上げや来訪者が見込めるので、経営者がそうやってしまう話です。
美樹さんの音を聞けないことよりも僕は、もう美樹さんとお話できないことの方がなんか寂しかった。
でも先日はあんな郊外でばったり隣で葡萄を、という美樹さんのお姿を拝見したので嬉しくなりました。
お名前もいつから変わられたのか知らない、時間に取り残された浦島太郎のような僕をまだ覚えてくれた美樹さんが嬉しかった。
素晴らしい伴侶にも恵まれたと聞いていましたけど、その方ともお話できてよかった。
今の僕ではもう英語のブラッシュアップの役にも立たないですが、多少なら時々あちらの友人と文通の往復程度はありますから、いつでも連絡して下さい。
これからは特に美樹さんには英語が必要になると思いますよ。
それに忘れちゃうんですよね、言葉は。
長くなりましたが先日はほんとうに楽しかったです。喜びのひとときをご一緒できて本当に楽しかったです。