「無報酬でもやりたい仕事でないなら、辞めてしまいなさい」
きっとこんなアドバイスを聞いたことがあるでしょう。極端に聞こえますが、起業家のDavid Fuhriman氏は、このアドバイスが彼のキャリアを正しい方向へ軌道修正する、大きな助けになったと言います。以下は、Fuhriman氏の談話です。
Photo remixed from Benjamin Ragheb.
2009年5月12日、私は義理の兄がイエール大学ロースクールの卒業時に受け取った、次のようなリストを読みました。
- 深夜0時前の1時間の睡眠は、2時間分の価値があり、午前中の1時間の仕事は、2時間分の価値がある。
- 毎日、子ども達を学校に迎えにいきなさい。学校の帰り道こそ、子どもが話をしたい時なのです。
- スキルが美徳を超えることのないように。
- 新婚や子育て中は、必ず2週間以上の休暇をとるようにしなさい。
- 失敗したら素直に認め、素早く気持ちを切り替えること。
- 仕事では常にベストを尽くしなさい。ただし、その仕事を無報酬でもやりたいと思えるほど好きではないなら、辞めてしまいなさい(極端に聞こえますが、心を自由にする言葉でもあります)。
この最後の1行は電撃のように私を打ちました。もちろん似たようなアドバイスはこれまでにも聞いたことがありました。たとえば、「あなたが愛していることをしなさい、そうすれば毎日の仕事が仕事ではなくなるでしょう」などです。しかし、先ほどのアドバイスは全く特別でした。「無報酬でもその仕事をするか?」これは非常に高い判定基準です。
私は自分の仕事を楽しんでいました。浮き沈みはありましたが、概ねOKでした。私は自分のしていることを楽しんでいたのです。私は技術と財務会計の分野で働いており、それは十分にやりがいのある仕事でしたし、会社も成長していました。しかし、無報酬ならば私はその仕事を決してしないだろうことを知っていました。
無報酬でもやりたいほど好きなことは一体何か? 無報酬でも喜んでするようなことがあれば、確かにそれはよいスタートになると考えました。そこで私は、CFA(証券アナリスト)やCAIA(オルタナティブ投資アナリスト)の資格を取ることを検討しました。きっと自分はセキュリティ分析の仕事をもっとしていきたいのだと思ったからです。しかし、違いました。
次に、私は金融商品について調査し、信用取引口座を開設し、いくらかのお金を投資しました。しかし、これも違いました。そして今度は、不動産分析を行い、中西部の利回りのいいプロパティにも手を伸ばしました。しかし、これも違ったのです。
結局、私はかつてやっていたことに戻ってきました。中小企業の成長を助けることです。今度は全国的、さらには国際的な規模にまで何かを育てたいと考えました。私は、テック系のイベントに参加するようになり、インターネットであらゆる記事を読みあさり、たくさんの本を買い込みました。そして、ついに無報酬でもやりたいことを見つけたのです。
それは自分が得意なことでもありました。私はテクノロジーとビジネスの橋渡しをする仕事がとても得意だったのです。私は、新しい仕事をフルタイムでするため、元の仕事を辞めました。そして、無報酬でもやりたい仕事には、2つの重要な要素があることを発見したのです。
■個人的な充実感
これは多くの人が直感的に理解していることでしょう。誰にでも会社に行きたくない朝はあります。中には数週間、数年間もそうだという人もいるかもしれません。ここで私たちの多くが陥る罠があります。無報酬でもやりたくなるような十分な満足感を与えてくれるものは何か? を見つけようとしてしまうことです。つまり、ほとんどの人は、ビデオゲームやスポーツ、その他の娯楽活動など、自分が楽しんでいることを仕事にすべきだと考えてしまうのです。そのような観点は、好きなことを本当に発見する能力をブロックしてしまいます。
「無報酬でもやりたいこと」を見つけるためには、あなたが12歳のときに何をするのが好きだったかを探ることです。なぜなら、12歳という年齢は個性を開発し、成長しながらも、まだ多少の無垢さを残している年齢であり、お金をたくさん儲けたいとか、ステータスのある職業につきたいといった欲望にまだ染まっていない年齢だからです。Black Eyed Peasも歌っています。
ぼくの肩に世界がのっかっているみたいだ
ぼくが大人になるにつれて、人はみんな冷たくなっていく
誰もが金儲けのことしか頭にないんだ
利己的な考えでは間違った方向へ行ってしまうだろう
12歳のころ何をするのが好きだったか? 私はサッカーをするのが好きでした。そして、サッカーのどんなところが好きだったのかとよく考えてみると、私はチームの中でベストプレイヤーでいることが好きであり、チームを引っ張っていくのが好きでした。そして、あっと言わせる創造的なプレイをしてみせるのが好きでした。フィールド上で起きた問題に瞬時に解決策を見つけることや、ゲーム前にじっくり戦略を練るのが好きでした。また、練習を重ね、改善しつづけていくことが好きでした。そして今、12歳のころ好きだったことと同じことをやっています。ただし、こんどはハイテク企業と一緒にです。
■マスタリー(熟達)
私たちは無報酬でもやりたいことを仕事にするべきなのです。なぜなら、そのような仕事をするときにだけ、内発的動機づけを持つことができ、また、少しでもより良いものにしようと努力し続けることができるからです。
「マスタリー」は、私が探求の過程で見つけたキーワードです。ダニエル・ピンクの『Drive(邦題:モチベーション3.0)』や『Delivering Happiness』などの本を読んで、人は何か価値あることのエキスパートになろうと集中しているとき、外発的動機づけで物事を成し遂げようとはしなくなる、ということを理解したのです。
例えば、私は大学生のとき地質学のクラスをとっていました。実際、私は地質学には興味がなく、ただ単位をとるために受講していました。よって、そのクラスについてはほとんど何も覚えていません。そのかわり、経済学が好きで副専攻にしていました。経済学の理論を学ぶことが楽しかったのです。私は経済学についてどんどん習熟して行っていたので、クラスでA評価をとることに全く苦労しませんでした。
しかし、マスタリー(熟達)は、完璧な達成や完全な知識に到達するという意味ではありません。ダニエル・ピンクは著書の中でこう言っています。
なぜ、人は完全には到達できないものを求めるのだろうか。だが一方で、それが魅力でもある。だからこそ、到達しようとする価値がある。喜びは実現することよりも追求することにある。とどのつまり、マスタリーはどうしても得られないからこそ、達人にとっては魅力的なのである。
内発的動機づけに基づいて何かをするときにのみ、マスタリーを追求することができるのです。決してお金をもらうためではありません。
皆さんはどうでしょうか? どんなことなら無報酬でもやりたいですか? きっとあなたはそれを見つけ、その仕事に専念するために今の仕事をやめる時が来るでしょう。そして、今よりずっと心から仕事を楽しみ、その分野のエキスパートになることと思います。
If you wouldn't do your job for FREE, then QUIT. | BernMedical
DAVID FUHRIMAN(原文/訳:伊藤貴之)