■溶媒効果セミナーの要点
分子は単独では存在しません。生化学では分子は溶媒に囲まれています。たとえば、酵素の結合部位は連続的な疎水溶媒とみなすことができます。
タンパク質のポケットの奥深くに低分子が結合していることは、タンパク質を溶媒とみなしリガンドは疎水的環境に溶存しているとみなされます。
同様に膜モデルでも同じで、低分子が通過するときは、膜構造に溶存していると考えられます。これらは、疎水溶媒とみなされます。
水にくらぺて誘電率が小さいのです。シクロヘクサンを思い浮かべてください。
生体の中の低分子はシクロヘクサンのような疎水性有機溶媒に溶存していると考えてください。
これらは、疎水結合とも呼ばれている結合なのです。水分子が少ないので、静電相互作用の割合は小さくなります。
分子科学計算を難しくしているのは、疎水結合の解析ができないことです。
量子化学計算における溶媒効果は、周囲に連続的に溶媒が存在するとして、
その溶媒による誘電率の影響の度合いを考慮して波動関数を補正することです。
したがって、溶媒による誘電率を入力する必要があるのです。タンパク質のポケット深くに結合しているリガンドの波動関数は、
疎水溶媒の影響による補正計算になるのです。周囲に水分子が十分にあるのではありません。このような計算法を連続体モデルといいます。
この方法の欠点は、溶媒と溶質間の電荷移動が考慮されていないのです。
ディスクリートモデルは、水分子をリガンドの周りに配置して電荷移動などの分子間相互作用を解析することになります。
これも溶媒効果ですが、しかしパッケージソフトでは溶媒効果と呼んでいません。
分子間相互作用を最小化・最適化計算できるほど、
Gaussian 09 は効率的な計算をするでしょうか。分子動力学法の助けも必要になるでしょう。
GaussView で、ディスクリートモデルの初期座標をモデルすることができます。
分子間モデリングは技術的に高度な技術です。
溶媒効果の絶対的計算法はありません。近似的な手法に過ぎません。また、大きな補正値が計算できるとは限りません。
モデルの誘電率も正確にわかりません。溶媒考慮計算の面白いところは、近似的な方法を使って、真実に迫るところにあるのです。
実験事実を論理的に説明できる解析データを得ることが必要なのです。計算手法の正確さも必要です。
医薬品開発で使われる水・オクタノール分配係数も計算できるようになりました。物質を合成する手間も必要ではなくなりました。
化学技術者の人件費が高くなり、コンピューターが低価格化しています。分子設計の効果が発揮されるようになりました。
セミナーは量子化学のセミナーではなく、Gaussian 09 を使う溶媒効果計算に熟達することにあります。
とりあえず、正確に計算しましょう。量子化学は長期的に学んでください。
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