日本原子力学会は19日、北九州市で東京電力福島第1原子力発電所事故に関する特別シンポジウムを開いた。「アクシデント(事故)が起きてからでないと、問題を意識できないのはなぜか?」――。パネルディスカッションでは会場から厳しい声が相次いだ。
原子力学会の標準委員会の宮野広委員長は「想像力に乏しいからだ。事業者や国などとのコミュニケーションの不足も問題」と事故対策の遅れを指摘した。同学会は2007年3月に「原子力発電所の地震を起因とした確率論的安全評価実施基準」をまとめた後、津波による原発のリスク評価も重要課題に挙げていた。だが、津波のリスク評価基準を作る前に東日本大震災による大津波が福島第1原発を襲い、炉心溶融という重大事故に陥った。
宮野委員長は「いろいろ提案しても実現できないのは、やっていないのと同じ。提案が受け入れられるには、コミュニケーションを深めないと……」と反省する。「原子力発電所の津波を起因とした確率論的リスク評価実施基準」案をこのほど作成した「津波PRA分科会」の山口彰主査は「津波のリスク評価は重要課題に挙げられていたので、迅速に対応すべきだった」と述べた。
「(事故が起きる前に対策を打つには)よりよい方向に常に改善するという姿勢が必要」と指摘したのは東京大学の岡本孝司教授。岡本教授は原子力安全委員会の指針が50年近く改訂されていない例などを挙げ、「事故を教訓に原子力安全に関する規制の仕組みの改善を続け、安全を担保しなければならない」と訴えた。
福島第1原発事故後の対応では、原子力学会の提案が受け入れられ、原子炉の「冷温停止」に向けて役立ったケースもある。3月に同学会の技術分析分科会が提案した循環注水システムだ。北海道大学の奈良林直教授は「事故の要因を詳しく分析して、既存のプラントにいかに教訓として生かすかが重要」と指摘する。
北海道大学の杉山憲一郎特任教授は全電源喪失事故が起きても手動で操作できるベント(排気)設備が原発に導入されれば、住民は避難しないで済むとして、「原子力発電に対する国民の信頼を回復するために、こうした設備の導入を学会として提案できるのではないか」と述べた。また、「福島第1原発の周辺に国際協力研究所(仮称)を設立し、事故緩和や除染技術、低レベル放射線の影響などを研究すべきだ」と提案した。
福島第1原子力発電所、東京電力、宮野広、原子力学会、岡本孝司
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